笹崎里菜
笹崎 里菜(ささざき りな、1992年4月16日 - )は、2011年のミス東洋英和。2014年に日本テレビより女子アナの内定を得ていたが、過去のバイトにより内定取り消しとなった。
その後裁判を経て、2015年に日本テレビ所属のアナウンサーとなった。
目次
「銀座のクラブでバイト」で「局アナ内定」を取消し。笹崎里菜さん(東洋英和大)が日本テレビ告訴
「日本テレビに来春アナウンサーとして入社予定だった女子大生が、内定を取り消され、しかもその理由が不当で裁判沙汰になっている」
そんな衝撃の事実を11月10日発売の『週刊現代』がスクープしている。この女子大生は、ミス東洋英和にも輝いたことのある笹崎里菜さん(22歳)。彼女は裁判に至った事情を『週刊現代』に顔を出して実名で告白しているのだ。一体、彼女の身に何があったのか?
「女子アナの内定取り消し」をめぐって「法廷闘争」という前代未聞の事態は、日本テレビ局内でも極秘扱いだったようだ。ある中堅社員が言う。
「ウチの会社が、7月に突然『アナウンサーの夏採用(追加募集)を行う』と発表したから、どうしたんだと社内でも話題になりました。社員の間では『女子アナ内定者が一人内定を辞退した』という話になっていたけど、真相は辞退じゃなくて取り消しだったんですね。まったく知らなかった」
笹崎さんと日本テレビの「争点」は何か?
「独占スクープ ミス東洋英和が日テレの『女子アナ内定』を取り消された理由」というタイトルの『週刊現代』の記事の中で、笹崎さんの代理人弁護士は、同誌にこうコメントしている。
「原告は、来年の4月1日付で日本テレビに就職する予定の、いわゆる『採用内定者』でした。ところが、日本テレビ側は今年5月28日付の 『内定取消通知書』をもって、一方的にその採用内定を取り消したのです。その日本テレビの行為を不服として、原告は『来年日本テレビに入社する権利がある』ことを確認する訴訟提起をしたのです」
つまり、一度は日テレに内定をもらっていた女子大生が、その内定を取り消されたため、裁判を起こしたというわけだ。入社予定だった女子アナが、自分を雇用せよとテレビ局を訴える――こんな話はこれまで聞いたことがなく、この裁判が今後、世間の注目を集めることは間違いない。
端的に言うと「笹崎さんが、母親の知り合いが経営する銀座の小さなクラブで短期間アルバイトをしていたこと」が影響して、日本テレビ側が「内定取り消し」を決めたようだ。
笹崎さんが、裁判に踏み切るまで、「夜のクラブでのバイトがアナウンサーにふさわしくないのか」「このバイト歴を就職活動時の自己紹介シートに書かなかったのは内定取り消しの理由になるのか」など、日本テレビの人事部側と何度も話し合ったようだ。
就職採用の場面で、いまやどんな会社にでも起こりうる事態だが、『週刊現代』を読む限り、日本テレビは明らかに分が悪そうだ。笹崎さん側と日本テレビとのやり取りは、採用関係者には必読のものだ。
さらに興味深いのは今後のこと。彼女は「日テレへの入社」を求めて裁判を起こしているのであり、彼女が勝てば、来春、日テレに入社することになるのである。
「会社と裁判して入ってきた『女子アナ』となれば、バラエティの現場ではイジリがいがあって、使いたがる現場のプロデューサーもいるかもしれません。でも、会社の上層部はそうはいかないでしょうね。入社しても、彼女が望まないADや記者をやらせて、彼女が自分から辞めるように仕向けるでしょう。そのイジメに耐えられるかどうか……ですね」(前出・日テレ社員)
「女子アナvs.テレビ局」の、前代未聞の裁判は11月14日から始まるという。
「局アナ内定取り消し」女子大生に日本テレビが送っていた書簡が冷酷
『週刊現代』11月10日発売号がスクープして以降、ライバル民放も大きく取り上げるなど大騒動となっている「日テレ女子アナ内定取り消し事件」。
注目の裁判が11月14日に始まったが、この裁判で証拠提出されているのが、日本テレビの人事部長、人事局長と女子大生が交わした手紙のやり取りだ。
11月17日発売の『週刊現代』は、女子大生の騒動後の心境と「往復書簡」の内容を詳細に紹介している。日本テレビ人事局の冷酷さに驚いてしまう内容だ。
渦中の女子大生は「ミス東洋英和2011」にも輝いている笹崎里菜さん(22歳)。
「学生でこれだけ輝いてるんだから、アナウンサーになって磨いたらとんでもないことになる」と『とくダネ!』(フジテレビ系)で小倉智昭キャスターが絶賛したほどの逸材で、すでに「女子アナ通」の間では有名な女子大生だ。
2013年の9月、日本テレビ主催のセミナーに参加し、女子アナとして同社に2015年4月に入社する「採用内定」を得た。ところが今年の5月28日、日本テレビから一方的に内定を取り消される。その理由は「銀座のクラブでホステスをしていたバイト歴が、高度の清廉性を求められるアナウンサーに相応しくない」というものだった。
「往復書簡」は、笹崎さんが「バイト歴」を人事担当者に自ら報告、日本テレビ内で問題になった4月から5月にかけてのものだ。
4月21日、笹崎さんは、日本テレビの人事担当者から「アナウンサーになったあと週刊誌などにバイト歴が書かれると、あなたやあなたの家族が大変傷つくであろう」と言われ、内定の辞退をすすめられたことを受けて、それでも内定辞退はしない旨を切々と綴った書簡を送った。
これに対し、日本テレビ側は人事局長が、5月2日付で、笹崎さんに非情とも言える返事を送った。
〈銀座のクラブでホステスとして就労していた貴殿の経歴は、アナウンサーに求められる清廉性に相応しくないものであり、仮にこの事実が公になれば、アナウンサーとしての業務付与や配置に著しい支障が生ずることは明らかです〉
〈ホステスとしてのアルバイト歴だけを意図的に申告しなかったわけですから、貴殿の行為は、重要な経歴の詐称に他ならず、弊社との信頼関係を著しく損なう背信行為〉
こう、宣告して、日本テレビは笹崎さんに繰り返し「内定辞退」を迫っている。訴状によると、日本テレビの人事部長は笹崎さんに「(内定辞退は)取り消しよりは騒がれずにすむ」とも言ったという。よほど彼女に自主的に辞めてほしかったようだ。
「経歴詐称」などと宣告された笹崎さんは、悲痛な中身の返事を書いたのだが、これに対して、日本テレビが返した書面は、5月28日付の〈弊社として、貴殿の弁明を受け入れることはできません〉という「内定取消通知書」だったのだ。
『週刊現代』が詳しく報じている、笹崎さんと日本テレビの「往復書簡」の全貌を読むと、「青田買い」をしながら、曖昧な理由で就活ができない時期に内定を取り消すという、日本テレビの採用活動のお粗末さが伝わってくる。
『週刊現代』編集部の担当者が言う。
「14日に行われた第1回口頭弁論に日本テレビ側代理人は出席せず、次回期日は1月15日となりました。これも、12月中は日本テレビ側代理人の都合がつかない、という理由のようで、時間稼ぎをしている印象があります。笹崎さんの日本テレビに入社したいという思いは変わっておらず、今週号でも、週刊現代だけにその心情を語ってくれています」
ミス東洋英和が日テレの「女子アナ内定」を取り消された理由。「まさか、そんなことで…」
日本テレビはこの夏、急遽新人アナの追加募集を行った。理由は、その直前に一人の女子アナが「内定取り消し」を受けたからだった。ミス東洋英和の身に何があったのか。本人が初めて真相を語る。
前代未聞の裁判が始まろうとしている。原告は現役女子大生。朝ドラ『花子とアン』でも注目を集めた東洋英和女学院大学の4年生だ。そして被告は、日本テレビ放送網株式会社。今年も視聴率3冠を独走する、民放キー局の日テレである。
原告女子大生が10月9日に裁判所に提出した訴状によると、この裁判の目的はこう書かれている。〈原告が被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることを確認する〉これは一体、どういう意味なのか。原告側の代理人を務める緒方延泰弁護士が説明する。
「原告は、来年('15年)の4月1日付で日本テレビに就職する予定の、いわゆる『採用内定者』でした。ところが、日本テレビ側は今年5月28日付の『内定取消通知書』をもって、一方的にその採用内定を取り消したのです。その日本テレビの行為を不服として、原告は『来年日本テレビに入社する権利がある』ことを確認する訴訟提起をしたのです」
つまり、一度は日テレに内定をもらっていた女子大生が、その内定を取り消されたため、裁判を起こしたというわけだ。訴状には、原告についてこう書かれている。
〈平成25年9月12日に、被告から、平成27年度採用にかかる被告アナウンサー職の採用内定を受けた〉
つまりこの原告、笹崎里菜さん(22歳)は、日テレからアナウンサーとして内定を受けた、「女子アナの卵」なのである。入社予定だった女子アナがテレビ局を訴える―そんな話はこれまで聞いたことがなく、この裁判が今後、世間の注目を集めることは間違いない。笹崎さんの存在は、「女子アナ通」の間ではすでによく知られている。女子アナウォッチャーが言う。
「彼女は『2011年ミス東洋英和』に輝き、ファッション誌の読者モデルとしても活躍していた。日テレに内定したことは昨年秋の段階でネットの『女子アナ板』(女子アナマニアが集まる掲示板)に書かれていました。ところが、この夏に発売された写真週刊誌『FLASH』(9月9日号)に、匿名ではありましたが、笹崎さんが『研修の厳しさに嫌気が差し、日本テレビの内定を辞退した』という記事が出たのです。それを受け、件の女子アナ板に『この理由は本当なのか?』『もったいない』といった書き込みがなされていました」
実はこの写真週刊誌の記事も、笹崎さんが裁判を起こすことを決意する、一つのキッカケとなった。今回、代理人を通じて笹崎さん本人に取材を依頼し、話を聞いた。笹崎さんが言う。
「最初は、取材をお受けするかどうかすごく悩みました。なぜなら、私の最終的な望みは、日本テレビに入社することです。この裁判は恨みを晴らすためではなく、『入社させてほしい』とお願いするためにやるものです。だから、日テレさんの悪口は言えないし、言いたくない。私は、日本テレビのアナウンサーとして働きたいと、今でも強く思っています。それなのに、まるで私が軽いノリで受験をして、研修がキツかったからあっさり内定を辞退したかのような記事が出て、ショックでした。事実はまったく違います。私が黙っていると、このように事実ではない報道がまた出てしまうかもしれない。そこで、裁判が始まる前に、自分の口で本当のことを言っておこうと思ったのです」
女子大生がたった一人で原告となり、巨大企業、しかもテレビ局を訴えるとはただごとではない。笹崎さんはなぜ、日テレから「内定取り消し」を受けたのか。本人や周囲の証言と訴状をもとに見ていくことにしよう。
今年の3月18日、すでに内定者として研修を重ねていた笹崎さんが人事担当者A氏に電話で告げた言葉が、騒動の発端だった。それはこんな内容だった。
「以前、母の知り合いの関係者が経営している銀座の小さなクラブで、お手伝いを頼まれて短期間アルバイトをしていたことがありますが、そういうものは大丈夫なのでしょうか」
銀座の小さなクラブで、お手伝いでホステスのアルバイトをしていた―笹崎さんのその経歴を、日本テレビ側が初めて把握したのはこのときだ。だが、最初はそれほど劇的な反応を示していない。翌日、ちょうど内定者研修があるため、A氏は「詳しいことは明日話そう」と言って電話を切った。
翌日の研修後、他の内定者が帰った後に会社に残った笹崎さんは、A氏の同僚である人事担当者B氏にアルバイトの中身について説明した。B氏は、「一旦預かります」と言って、その日の話し合いは終了した。その翌日の3月20日、B氏から笹崎さんに電話が入る。それはこのような内容だった。
「今回の(アルバイトの)ことは大丈夫だとわかったので、人事としてもあなたを守ります、ということになりました」一度は「あなたを守ります」と宣言した日テレ側の態度は、この後、急速に硬化していく。時系列を追って記していこう。
3月25日 B氏から電話が入る。「明日、会社に来てもらいたい。その前に今夜、会って話しましょう」その夜、B氏は笹崎さんにこう告げた。
「(アルバイトのことを)上に上げたら問題になってしまった。明日は人事部の部長、部次長から話がある。ホステスのバイトをしていたことがバレたら、週刊誌には好きに書かれる。笹崎は耐えられるか。これまで研修で頑張ってきたことは知っているけど、それはいったん置いて、よく考えてほしい」
食事をしながらの会談だったが、場の空気はお通夜のように沈み込んだ。頭が真っ白になりながらも、笹崎さんは「辞める気はありません」と返答した。
3月26日会社で会った人事部長は、より露骨に、笹崎さんに入社をあきらめることを促してきた。
部長「元ホステスがアナウンサーやってる、と書かれてしまう。会社としてというより、笹崎自身の問題だから。夏目三久のときはいろいろと書かれて、本人が傷つき、退社することになってしまった。そういうのを見ていて、本人が一番傷つくことはわかっている。笹崎は大丈夫か?」
笹崎「大丈夫です。母も応援してくれています」
部長「これは笹崎だけじゃなく、家族にも関わることだ。お父さんに(ホステスのバイトを)言ってないんだろ。騒ぎになったらお父さんのところにも取材が殺到して、お父さんが会社を辞めなければならなくなるかもしれない。家族でよく話し合ってくれ」
こう言われ、笹崎さんはその夜、父に相談した。内緒でホステスのバイトをしたことは叱られたが、「これでお父さんが仕事ができなくなるなんてことはないから、大丈夫」と父に言われた。
4月2日 部長から、ついに「内定取り消し」の事実が伝えられる。
部長「残念だが笹崎を採用することは日テレとしてはできない。日テレとして傷がついたアナウンサーを使える番組はないという判断となった」 傷がついたと、人事部長は確かに言ったという。そして、こう続けた。「内定辞退という方法もある。取り消しよりは騒がれずにすむ」
これを受け、こんなやりとりがあった。
笹崎「辞退する理由がないので辞退はいたしません。取り消されるとしたら、理由は何ですか」
部長「(内定時に交わした)誓約書の項目4『貴社への申告に虚偽の内容があった場合』に該当する」
5月2日笹崎さんが人事部長宛てに入社したい思いを手紙で送ったところ、人事局長名で「ご連絡」という書面が届いた。その書面には、彼女の入社が不可能であることが、このような言葉で綴られていた。
〈アナウンサーには、極めて高度の清廉性が求められます。他方で、銀座のクラブでホステスとして就労していた貴殿の経歴は、アナウンサーに求められる清廉性に相応しくないものであり、仮にこの事実が公になれば、アナウンサーとしての業務付与や配置に著しい支障が生ずることは明らかです〉
問題を整理しておこう。日本テレビの「内定取り消し」の判断のポイントは次の2つだ。
- ホステスのアルバイト歴が、高度の清廉さが求められるアナウンサーという職業にふさわしくない
- ホステスのアルバイト歴を申告しなかったのは、会社への虚偽申告に当たる
これらの判断は、果たして妥当と言えるのか。笹崎さんの代理人・緒方弁護士はこう指摘する。
「日テレ側は、彼女が昨年9月のセミナーで記入した『自己紹介シート』に、クラブでのバイト歴を記載しなかったことをもって『虚偽』だと主張します。しかし、そもそもこのセミナーなるものが、時期が早すぎて経団連の『採用選考に関する企業の倫理憲章』に違反しており、彼女もそれが採用活動の一環であるという認識が乏しかった。
そのような場で、しかも『すべてのアルバイト歴を漏れなく書け』と口頭で指示もされていない条件下で、ホステスのバイト歴を書かなかったことは、法的に到底『虚偽』とは言えないでしょう」
一方で、「ホステスのバイト歴は清廉な女子アナにふさわしくない」という判断については、特定社会保険労務士の今中良輔氏がこう疑義を呈する。
「判断がかなり雑だな、という印象です。一般企業であれば、ホステス歴を理由に内定を取り消すことはありえないでしょう。ではアナウンサーになりたい人はホステスをやってはいけないのか。この裁判で彼女が負ければ、『女子アナは清廉でホステスは清廉でない』という日テレの主張が認められることになり、司法が職業の貴賎を認定することになりかねません。日本テレビは彼女がどのような事情で、どんな店でどのように働いたかを勘案することなく、ホステスという言葉で一括りにしている節がある。放送局という公共性の高い企業でありながら、判断のプロセスに合理性を欠いています」
ホステスのアルバイトをした経緯について、笹崎さん本人はこう語る。
「そもそもは母の知人の紹介でした。その方がお店の経営者と親しく、『手伝ってみない?』と声をかけてくださったんです。大学2年の9月から12月まで短期留学する予定で、その費用の足しになればと、2年生の8月の1ヵ月間、週1回か2回くらいお店で接客の手伝いをしました。銀座のクラブというよりも、昔のテレビに出てくるスナックのような、こぢんまりとしたお店でした。母の知人もカウンターの中で働いていたので、私としても安心できたんです。最初は1ヵ月だけのつもりだったのですが、帰国後も母の知人に声をかけられたので、1月から3月まで週1くらいのペースで働きました。8月にやったときに、このバイトはおカネだけじゃなく、人生経験にもなるとわかったからです。お客さんには企業の経営者の方もいて、就職活動の相談なんかもさせていただきました。その後、5月から7月にも、週1ペースでお店に出ていました」
実際、本誌も店を訪ねてみた。彼女の言う「スナックのような」という表現がピッタリの、テーブル4席とカウンターだけのアットホームな店だ。同店の経営者が言う。
「彼女みたいに若いコは他にいないし、聞き上手だからお客さんにも可愛がられていましたよ。でも、営業の電話をするわけでも同伴するわけでもなく、門限があるから11時には帰っちゃうし、彼女個人の名刺も作っていなかった。本当に手伝い、という感じで、ここでのバイトが原因で内定を取り消されたと聞いてビックリしています」
日テレの人事担当者はこの店を訪れておらず、店の様子も笹崎さんの働きぶりも確認せぬまま、内定取り消しをしている。その判断は「きわめて乱暴」と、前出の今中氏が指摘する。
「母あるいは母の知人に頼まれた、この『働く動機』もポイントになります。本人が求人誌を見て応募したわけではない。母の知人が店内にいることも含めて、この店で働くことは、彼女にとってごく自然な流れだったとも言えます。この裁判は彼女一人のものではなく、社会に対する問題提起の側面を持っています。ホステスのアルバイトをしていた過去が、女性の将来を塞ぐことがあっていいのか。個人的にはあってはならないと思う。司法がどのような判断を下すか注目しています」
今回の裁判の結果は判例として残り、今後、同種の裁判に影響を及ぼす。ホステスのバイトをする女子大生が特殊な存在ではなくなっている昨今、娘を持つ親たちにとっても、他人事とは言えないだろう。
日テレ側の主張も聞くべく、広報・IR部に対面による取材を申し入れた。しかし、戻って来たのは書面による回答だった。
「貴誌からの取材依頼につきましては、対面での取材にかえ、以下のコメントとさせていただきます。本件は民事裁判で係争中の事案であり、当社の主張は裁判の過程で明らかにさせていただきます」
笹崎さんが言う。
「私のために裁判沙汰になってしまい、申し訳ない気持ちもあります。ただ、私にとってアナウンサーになることは夢。このような理由で夢をあきらめることはどうしてもできません。それからもう一つ、この裁判は世間の皆さんに、女子アナという仕事について考えていただく機会にもなると思っています。大学時代にホステスのバイトをしていた女子アナは、受け入れてもらえないのでしょうか?私の経歴は、裁判によって公になります。その上で、もし私が女子アナになれたとしたら、批判も含めて、過去はすべて引き受けるつもりです」
注目の裁判は11月14日に始まる。
「バイトで銀座ホステス」の過去で女子アナ内定取り消しは法的に妥当か
11月14日、東京地裁706号法廷で“元”女子アナの卵が大手メディアを訴える異例の裁判が始まった。51の一般傍聴席は報道陣らで満席になり、注目度の高さをうかがわせた。
原告は東洋英和女学院大学国際社会学部4年の笹崎里菜さん(22)。ミス東洋英和2011やファッション誌「JJ」の読者モデルとして活躍し、来年4月から日テレの女子アナになる予定だった。
訴状によると、笹崎さんは平成25年9月に日テレからアナウンサー職の内定を受け、研修を受けていた。しかし、今年3月、笹崎さんが電話で人事担当者にクラブでのアルバイト歴を報告したところ、4月に日テレ側から内定取り消しを伝えられたという。
14日の第1回口頭弁論には笹崎さん本人は出廷しなかったが、代理人が「地位確認に関する仮処分申し立ても検討したが、日テレ側から『仮処分決定が出たとしても命令には従わない』とされ、提訴に至った。裁判所には(就職予定の)来年4月までの救済を求めたい」と主張。日テレ側は請求の棄却を求めた。
訴状をもとに、問題の経緯を振り返る。
25年9月2日、大学3年だった笹崎さんは、日テレ主催の「アナウンスフォーラム」というセミナーに参加した。5日には同社の呼びかけで「上級セミナー」に参加。「来年の採用選考においても同じ内容のシートを書かせるので、今やっておくと練習になる」と説明を受け、自己紹介シートに氏名住所や自己PR、学歴と職歴などを記入した。
その際、職歴の記入方法について具体的な指示がなかったことから、アルバイト歴の中で「自己アピールに資する」ものを選び、ホステスについては記載しなかった。
11日、日テレから「本試験を受けてほしい」との連絡を受けた。笹崎さんはこの時点で、セミナーが採用活動の一環であったことを認識したと主張している。
12日に行われた試験は健康診断と役員面接、漢字の読み書き問題で、終了後に人事担当者に指示されて読み問題の解答を下から読むと、こう読めた。
「あな うん す ぶもん ない てい」
そして、担当者から「日本テレビは、漢字が苦手ではあるが、負けず嫌いで素直な性格に期待し、笹崎里菜さんを2015年度入社のアナウンサーとして内定することにします」と書かれた紙を手渡された。
その場で「採用内定通知書」が交付され、以後の就職活動を行わないことなどが盛り込まれた「誓約書」に署名押印。その後も、研修に参加し、順調に女子アナへの道を歩んでいた。
状況が一変したのは今年3月19日。笹崎さんは人事担当者に電話で「以前、母の知り合いの関係者が経営している小さなクラブで、お手伝いを頼まれて、短期間アルバイトをしていたことがありますが、そういうものは大丈夫なのでしょうか」と尋ねた。内定時、「ネット上に写真が掲載されていれば消してもらうよう」指導されていたことに関連し、クラブで集合写真を撮影したことを思い出したためだった。
20日、人事担当者は笹崎さんに「大丈夫ということがわかったので、人事としてもあなたを守ります」と説明。しかし、26日には人事局の部長らとの面談で「母の知り合いといっても、元ホステスが女子アナをやっていると週刊誌に書かれる。耐えられるのか」などと問われた。「耐えます」と答えた笹崎さんだが、4月2日の面談で部長から「残念だが、笹崎を採用することは日テレとしてはできない。日テレとして傷がついたアナウンサーを使える番組はないという判断になった」と告げられ、内定辞退を求められた。
内定辞退を拒否した笹崎さんに5月2日付で人事局長名義の文書が届いた。
この文書は「アナウンサーには極めて高度の清廉性が求められる」として、「銀座のクラブでホステスとして就労していた貴殿の経歴は、アナウンサーに求められる清廉性にふさわしくないものであり、仮にこの事実が公になれば、アナウンサーとしての業務付与や配置に著しい支障が生ずることは明らか」とした。
そして「ホステスのアルバイト歴だけを意図的に申告しなかった」のは経歴詐称に当たると指摘。同月28日付の内定取り消し通知書で、25年9月5日に記入した自己紹介シートにホステスのアルバイト歴を書かず、虚偽の申請をしたと主張した。
笹崎さん側は、シート記入時にすべてのアルバイト歴を記入するよう求められていないと主張。日テレ側の主張を「職業に不当な貴賤の別を見る驚くべき主張」として、内定取り消しの無効を訴えている。
内定取り消しの相談にも応じるNPO法人労働相談センターの矢部明浩副理事長によると、相談の大半が企業の業績悪化によるもので、アルバイト経験を理由にした取り消しは異例という。
矢部氏は、日テレが内定取り消しに動いた背景に、ホステスの経歴がネットで拡散されることへの懸念があると分析。「企業としてリスクを極小化したいという判断だろうが、過剰忖度だ。逆に世間から『内定を取り消す企業』とみられる新たなリスクを負った」と指摘する。
労働問題に詳しい京都第一法律事務所の秋山賢司弁護士は、ホステスのアルバイト経験が(1)日テレが内定を出した当時に知ることのできない事情だったか(2)内定取り消しの理由として客観的、合理的に社会通念上相当か-が争点になると話す。
その上で「ホステスの仕事がアナウンサーの適格を損なうかは難しい判断。日テレは詳細に職歴を書くことを求めたり、内定までに職歴の確認を求める段階を持つべきだったのではないか」と指摘している。
「他局なら、ここまで問題視されたか疑問」と話すのは、ある女子アナウオッチャーの男性。日テレは保守的な企業風土で、スキャンダルのあった女子アナの仕事を減らすなど厳しい対応が目立つという。ウオッチャーは「局の顔として色のついていない方が、幅広い仕事を発注しやすいのは確か。でも、キャバクラやホステスのアルバイトを経験する若者が増える中、経験者をすべて排除したら、アナウンサーの質を落とすことにつながる」と懸念する。
一方、女子アナからは、日テレの判断に一定の理解を示す意見も出ている。地方局の女子アナ(30)は「ホステスの経験はアナウンサーとして役立つ部分もあると思うが、リスクを考えれば慎むべきだったのではないか」と語る。
その理由を「テレビの視聴者は主に女性。特に年配の女性の中には『元ホステスの読むニュースなんか聞きたくない』と思う人もいるかもしれない。特に早朝から夕方まで生放送の情報番組が続く日テレでは、主婦層から『NG』が出た女子アナは活躍の場が減ってしまう」とした。
日本テレビ広報・IR部「本件は民事裁判で係争中の事案であり、当社の主張は裁判を通じて明らかにさせていただきます」とコメント。第2回口頭弁論は来年1月15日に開かれる。
来歴・人物
神奈川県出身。東洋英和女学院大学国際社会学部国際コミュニケーション学科卒業。
2015年、日本テレビに入社。同期入社は尾崎里紗、平松修造。