佐藤陽太

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佐藤 陽太(さとう ようた)とは、情弱女性のPCに遠隔操作ソフトをインストールする東京都葛飾区亀有の無職の34歳である。

東京の男にPC乗っ取られた京都女性

「セキュリティーソフトを入れてあげる」。

インターネットで知り合ったばかりの男の申し出に安易に応じたことが、1週間に渡る恐怖の始まりだった。指示されるまま自分のパソコン(PC)に「遠隔操作ソフト」をインストールし、パスワードも教えた女性。女性のPCを遠隔操作で“支配下”に置くと男は態度を一変させた。

「(個人情報を)中国に送ったる。何人も自殺に追い込んできたんや」「カメラの前で服を脱げ」。東京からネットを通じ女性に複数回に渡って裸になるよう強要した男が使ったのは、ウイルスでもなんでもない、市販の遠隔操作ソフトだった。

ネット上のやり取りだけで、京都市内の女性(22)を脅し、数回にわたって裸にさせたとして、京都府警が2014年5月、強要で逮捕したのは東京都葛飾区亀有の無職、佐藤陽太(34)だった。

交流サイト「Skypeちゃんねる」で知り合った女性のPCを遠隔操作し、抜き出した個人情報を流出させると脅していた。

府警はその後、「セキュリティーソフトを入れてあげる」と嘘をついて遠隔操作ソフトをダウンロードさせ、パスワードを聞き出し遠隔操作可能な状態にしたとして、不正指令電磁的記録供用でも再逮捕した。

2人が「Skypeちゃんねる」で知り合ったのは2014年4月19日だった。ネット電話「スカイプ」でチャットをしながら、佐藤はその日のうちに「セキュリティーソフトを入れてあげる」と持ちかけ、女性は言われるがまま、PCに遠隔操作ソフトをダウンロードし、パスワードも教えた。

しかし、それは自分のPCを、会ったこともない男の支配に委ねることと同じだった。

佐藤は、このソフトを使って4月19~25日の1週間足らずの間に、実に20回も女性のPCにアクセスした。女性のメールの履歴や、女性がPC内に保存していた写真を勝手に閲覧するだけでなく、女性になりすまし、スカイプ上の友人に性的な内容のメッセージを送ることさえしていた。

不正指令電磁的記録供用罪は、4人が誤認逮捕された遠隔操作ウイルス事件で、元IT関連会社社員、片山祐輔(31)が問われている罪でもある。

片山は、無料ソフトを装った遠隔操作ウイルスを、誤認逮捕された男性3人を含む6人に取得させ、感染したPCを遠隔操作。ネット掲示板にアイドルグループへの襲撃予告を書き込むなどしたとされる。

一方、今回の佐藤容疑者が使ったのは、市販もされている「遠隔操作ソフト」だった。

このソフトを、ネットでつないだ2台のPCにインストールし、共通のIDやパスワードを入力すれば、相手のPCの画面が自分のPCに表示され、操作することが可能になる。

まるで他人のPCを“乗っ取る”かのようなソフトだが、ソフト自体は合法だ。遠方からPCのメンテナンスをする際や、無人観測所のデータ回収などでも必要不可欠なソフトとして活用されており、国内でも複数のソフトが商品化されている。

個人利用は無料で使えるものもあり、今回、佐藤が使っていたソフトも、商用利用は有料、個人利用は無料だった。このソフトでは、個人パスワードを設定することで、相手のPCがネット接続されていれば、毎回同じパスワードを入力するだけで、遠隔操作が可能になる。

遠隔操作で女性のPC上の個人情報を丸裸にした男は、「19歳の女子大生」を名乗っていた女性が、実際には22歳だったということを知ると、その小さな嘘にもつけ込んで態度を一変、女性を執拗に脅し始めた。

「(個人情報を)中国に送ったる」「俺はスカイプで何人も自殺に追い込んできたんや」「自分にはヤクザの知り合いがいる」。

そして、女性はPCのカメラの前で、裸になることまで複数回強要され、指示に従った。女性が出かけると、帰ってきたらすぐにPCの電源を入れるように指示し、その日の行動を報告させた。

男の傍若無人な振る舞いは4月26日、女性が府警山科署に相談するまで続いた。捜査が始まると、PCのIPアドレスなどからすぐに佐藤が浮上。佐藤のPCには女性の裸の映像が保存されていた。嫌がらせに裸の写真・動画などをネット上に流出させるリベンジポルノや、女性の自宅に直接押しかけるなど、行動がエスカレートすれば、より大きな事件に発展した可能性もあった。

若年層のネット利用が増えるにつれ、あまりに無防備なネットユーザーも急増している。危機感を募らせる捜査関係者は「ネットの危険性を理解し、注意して利用してほしい」と警鐘を鳴らす。

見知らぬ人の指示に安易に従わない、パスワードは教えない、トラブルになったらすぐに信頼できる人に相談する-。ネットを使う以上、最低限の“護身術”も身に着けておく必要がある。