ディオ・ブランドー
ディオ・ブランドー(Dio Brando)は、荒木飛呂彦の漫画作品『ジョジョの奇妙な冒険』に登場する架空の人物。
Part1での表記「ディオ」は元レインボー、ブラック・サバスのロニー・ジェイムス・ディオ[1] 、Part3以降の表記「DIO」は、そのロニー・ジェイムス・ディオが結成したバンド「ディオ (Dio) 」に由来する [2] 。
目次
人物
悪のカリスマ。幼年時代から年齢にそぐわぬほどの知性と冷酷さを持っている。上昇志向が強く、利用できるものは何でも利用しようと考え、ジョースター家の養子となってジョースター家の乗っ取りをたくらんでいた(故に厳密にはその人生の大半においてディオ=ジョースターであるはずだが作中のツェペリ男爵はディオ=ブランドーと呼んでおり、また多くのメディアでもディオ=ブランドーと表記される。本人は養子になった後一度もどちらの姓も名乗ったことがない)。終始ジョナサンを見下し、「自分にとってはサル同然」という旨の言葉を浴びせたりもしたが、最後に現れた際はジョナサンを侮辱したゾンビを一喝するなどしており、「自分をここまで追い詰めた相手」として敬意を払う様子を見せた。
ロバート・E・O・スピードワゴンからは「ゲロ以下のにおいがプンプンするぜ」「生まれついての悪(ワル)」と評されるように、数年も世話になったジョースター卿に何の情も抱かず毒を盛るほどであるが、母への思慕の情はあった。酒に溺れるばかりで自堕落な父・ダリオに対しては母に苦労をかけて死なせたこともあって嫌悪しており、彼が死んだ際には墓標に向かって痰を吐いている。
復活を遂げたPart3では自身の細胞である「肉の芽」(後述)を植え込むことで忠誠を誓わせた者や、肉の芽を使用せずともその絶大なカリスマ性に惹かれて彼の元に集まったスタンド能力者たち、また金で雇った賞金稼ぎを従えていた。DIOの持つ「悪の魅力」に心服するスタンド使い・ンドゥールは彼を「悪の救世主」と評している。
Part6の回想シーンで描かれたPart3以前のDIOはエンリコ・プッチとお互いの家を行き来している描写がある。
家族・血族
- 父:ダリオ・ブランドー
- 義父:ジョージ・ジョースターI世
- 義兄弟:ジョナサン・ジョースター(初代ジョジョ)
- 愛人もしくは食料:日本人女性、その他3人
- 息子(異母兄弟):ジョルノ・ジョバァーナ(五代目ジョジョ)、ヴェルサス、リキエル、ウンガロ
劇中での活躍
Part1『ファントムブラッド』
少年期に父親のダリオが死亡したことで身寄りがなくなり、イギリスの貴族ジョースター家の養子となる。「世界一の金持ちになってやる」という決意のもと、手始めにジョースター家の財産乗っ取りを密かに企てる。計画の第一歩として、ジョースター家の正当な跡取り息子であるジョナサンを精神的に追い詰め堕落させるため、執拗な嫌がらせを繰り返す。しかし嫌がらせの手をジョナサンのガールフレンドのエリナにまで伸ばし、彼女に無理矢理キスをした事により、ついにジョナサンを激怒させ、その秘められた爆発力と成長力から予想外の反撃を受けることとなる。
大学に通うようになってからは大学ラグビーで活躍する傍ら、法律の分野を首席で卒業する予定である(実際には卒業していない)など学業の面でも優秀であった。この頃には(エリナ事件を受けてジョナサンを苦境に追い込むのは逆効果と判断し)ジョナサンを堕落させる試みは諦めており、表向きだけ友人として付き合っていた。財産に関して法的に干渉する権利を得たのを機に、ジョージ・ジョースター卿を病死にみせかけ毒殺する計画に移る。しかし計画半ばで、ジョナサンが偶然見つけた、ダリオが遺言状としてジョースター卿に宛てた手紙の内容から「ディオの父親の死因である病の症状が現在のジョースター卿と酷似している」ことをジョナサンに気付かれてしまう(さらにディオの父親ダリオは病死ではなくディオの手で毒殺されたこと、同様の手口によりジョースター卿をも殺害しようとしていること、さらにはジョースター家の財産を乗っ取ろうとしていることが、全てジョナサンに悟られてしまった)。そこで口封じのためジョナサンが研究していた石仮面を利用して彼を殺害しようと試みるが、その過程で石仮面に秘められた能力を発見する。毒殺の証拠を持ち帰ったジョナサンが通報した警官隊に包囲された際、危機を脱するため決意したディオは、人間をやめる旨を宣言して自ら石仮面を被り、ジョナサンをかばったジョースター卿を刺殺し仮面の能力を発現させる。不死身の吸血鬼となったディオは、無比の身体能力や再生力など人間を超越した力を手に入れ(テレビアニメ版ではこれに加え髪の毛が若干伸び、雷のような刺々しいデザインの髪型になった)、警官隊を惨殺、ジョースター邸を全焼させジョナサンにも重傷を負わせたが、彼の機転により強力な再生力が追いつかないほど全身を焼かれ、瀕死の重傷を負う。
ジョナサンに負わされた傷が治りきるまで、一旦小村ウィンドナイツ・ロットに逃れ、その後はゾンビらを多数生成し世界征服を目論む。だが、修行により波紋法を身に付けたジョナサンらに突破され、彼との一騎撃ちとなる。波紋によって全身を溶かされ敗れるが、全身を溶かされる前に自ら首をはねたため、辛うじて首だけが助かり密かに生き延びる。
1889年2月7日、幼馴染のエリナと結婚し豪華客船で新婚旅行中だったジョナサンの前に再度姿を現し、瀕死の重傷を負わせる。そして、失った体の代わりにジョナサンの肉体を手に入れ再起を図るも、最後の力を振り絞ったジョナサンと相打ちとなり、彼と共に客船の爆発に巻き込まれて海底へと沈んだ。
Part2『戦闘潮流』
直接の登場はないが、Part1から続いて登場した波紋使いのストレイツォは、ディオに影響されて吸血鬼の力に憧れるようになっていたために石仮面を被って吸血鬼と化し、スピードワゴンとジョセフ・ジョースターを襲う。
また、ディオが生成していたPart1のゾンビの生き残り(自分の正体を知った者を殺害しては一片も残さず食って仲間を増やさないなど、狡猾な性格で徹底して正体を隠しながらイギリス空軍司令官にまで上り詰めた。テレビアニメ版での表記は「ゾンビ司令官」、声 - 山本兼平)が、ジョナサンとエリナの息子でありジョセフの父親でもあるジョージ・ジョースターII世を殺害している。その後、ジョージII世の妻のエリザベス・ジョースター(リサリサ)がゾンビの生き残りを波紋で消滅させるが、目撃者がいたことから「イギリス空軍司令官殺し」の国家反逆罪で全世界へ指名手配され、スピードワゴン財団の協力で姿をくらませることになり、その影響でジョセフと離れ離れになってしまう。
Part3『スターダストクルセイダース』
豪華客船の爆発で死亡したと思われていたが、沈没する直前にジョナサンの遺体の首から下を奪い、エリナが脱出に使用した物とは別に用意していた棺桶型シェルターで眠りに就いていた。100年後(正確には96年後の1985年)、トレジャーハンターにより海底からそのシェルターが引き上げられたことで長き眠りから目覚め、再び活動を始めた。エジプト・カイロのとある屋敷を拠点とし、途中知り合ったエンヤ婆の手によりスタンド「世界(ザ・ワールド)」が覚醒し、再び世界を手にしようと配下を増やしていた。
自らの覚醒によってジョースターの血統である空条承太郎たちが自分の存在を知覚し、倒しに来ることを予想したDIOは、配下のスタンド使い数十名を刺客として差し向ける。
エジプトでの決戦では自身のスタンド「世界(ザ・ワールド)」の時間停止能力を利用して花京院典明を殺害し、波紋使いであるジョセフを瀕死に追い込んだうえ、ジャン=ピエール・ポルナレフを戦闘不能にした。しかし、自身のスタンドと同じ時間停止能力に目覚めた承太郎には苦戦する。DIOを欺くために一時的に心臓を停止させていた承太郎に頭部を殴られ、大ダメージを負ったところで瀕死のジョセフから血を吸ってパワーアップを果たすが、激昂した承太郎に自身の時間停止の終了時点で時を止められて形勢を逆転され、最後は「スタープラチナ」の攻撃を受けてスタンドごと本体であるDIO自身も頭部を粉々に破壊される。頭部(脳)さえ無事なら他者の肉体を乗っ取って復活できるDIOも、これで完全に敗北し、死亡する。その後、ジョセフを復活させるために血を抜かれたDIOの肉体は、復活したジョセフと承太郎の見届ける中で日の出の光を浴びてバラバラの灰となり、消滅した。しかし、その絶大な影響力は死後も依然消えることはなく、Part4以降にまで及ぶこととなる。
Part4『ダイヤモンドは砕けない』
虹村形兆の回想の中で「親父に肉の芽を植えつけた人物」として登場。DIOの部下であった形兆と億泰の父親は、DIOの死による肉の芽の暴走により肉体を侵食され、酷い見た目になって知能も低下し、生き続けるだけのただの肉の塊になってしまった。息子の形兆は、そんな父親を「普通に死なせてやる」ことのできる能力者を探すため、杜王町で「弓と矢」を用いてスタンド使いを増やす。
ちなみに主人公の東方仗助は、10年前(Part3の頃)、ホリィと同様にDIO復活に伴うスタンド発現の悪影響を受け、高熱で生死の境をさまよった。
Part5『黄金の風』
主人公のジョルノ・ジョバァーナは、DIOがジョナサンの体を乗っ取った後に生まれた息子である。シリーズ初期にジョルノが持っていた写真に登場する。
他のPartとは違い独立した話であるため、その後のストーリー展開にはあまり影響しない。
Part6『ストーンオーシャン』
エンリコ・プッチ神父の回想でのみ登場。1987年、スタンド能力の素質がある者を探して旅をしていた頃、修行時代のプッチ神父と知り合い親友となる。DIOが自らの小指の骨を彼に渡すシーンが描かれた。回想シーンでは、DIOがプッチの膝の上に足を置いたり、プッチと共に帆船模型の製作をしたり、本を読みながら語らいを楽しんだりと、これまでの尊大なキャラクターとは違った温和な一面を見せる。
プッチの人生を変えた張本人で、DIOは彼に「天国へ行く方法」を託すことになる。 また、ジョルノとは別に生ませた3人の息子であるウンガロ、リキエル、ヴェルサスが登場している。
吸血鬼の能力
- 気化冷凍法
- 波紋法とは対極の技。体から水分を気化させて熱を奪い、触れた相手を一瞬にして凍らせる技。波紋は血液のエネルギーなので、血管ごと凍らせることで波紋を起こせなくするために編み出した。ディオはこの技で攻略不可能といわれた技「稲妻十字空烈刃(サンダー・クロス・スプリット・アタック)」を持つダイアーさえも破り、凍らせたダイアーを冷酷にも砕いた。ディオ独自の考案による技で、他に使用した吸血鬼はいない。Part1でのみ使用。
- 空裂眼刺驚(スペースリパー・スティンギーアイズ)
- 眼球内の体液を弾丸の様に飛ばす攻撃。この技でジョナサンを殺害した。後に吸血鬼と化したストレイツォも使用し、彼により命名された。ジョナサンに致命的な一撃を負わされたディオが執念で咄嗟に編み出した技で、作中で使用した吸血鬼はディオと、その場面を目撃していたストレイツォのみ。気化冷凍法と同じくPart3では使用されていないが、格闘ゲーム版では必殺技として実装されている。ドラマCDにおいても名前を発して使用したことがあるが、名前をつけて使用したのはPart2でのストレイツォが最初。波紋法により、防御が可能。
- 他生物のゾンビ(屍生人)化
- 牙や指先、血管針などから他の生物の血液を吸収する際、「吸血鬼のエキス」を注入してゾンビ化させ、支配する能力。配下となった生物は理性が低下し、多くは凶暴な怪物となってしまうが、稀に知能を残したままゾンビになる者もいる。凶暴化しても変身前だった頃の記憶や嗜好は多少残っており、嗜好については理性の箍が外れて強くなる傾向がある。また死体にエキスを注入し、復活させたり、キメラを作ったりすることもできる。エキスを注入せず吸血のみを行うことも可能。その場合血を吸われた人間は死亡する。
- 屍生人は吸血鬼の能力で生まれた存在なので、波紋や太陽光を受けると消滅する。
- 波紋使いは、少量ならば吸血鬼のエキスを注入されても体外へ排出する事が可能な様子で、戦闘中にディオからエキスを注入されたジョナサンは、自らの力でエキスを体外へ排出している。
- なお、ジョルノなど人間の女性との間に生まれた息子たちには、吸血鬼の能力や特徴は受け継がれていない。
- 第3部では、自ら首を刎ねたヴァニラ・アイスに自分の血液を与えて復活させる描写があり、これはポルナレフいわく「吸血鬼になりかけた状態」で、最終的にヴァニラ・アイスは太陽の光によって消滅している。なお、DIOに血を吸い取られて一時死亡したジョセフは、彼の死体から輸血することで蘇生したが、DIOに奪われた血液を元の肉体に戻したということで吸血鬼にはなっていない。
- 肉の芽
- 吸血鬼であるDIOの細胞。これを額に植えつけられると、以下の特徴が現れる。
- 脳を刺激されて、DIOに対してカリスマに対するそれの様な憧れの感情を抱くようになり、DIOに従う忠実な部下となる。
- 肉の芽を埋め込まれた者は、数年で脳を食いつくされて死ぬ。
- 主であるDIOが死ぬと肉の芽は暴走し、これを埋め込まれていた者は知性の低い不死身の怪物となってしまう。この時、肉の芽を埋め込まれた者がDIOの死を知覚する描写もあり、これはPart4で語られた。
- 摘出しようとすると、動いて脳を傷つけたり、触手を出して摘出しようとする者の脳に進入しようとするため、引き抜くには余程のスピードと精密さ、そして攻撃に屈したりうろたえたりしないだけの精神力が必要になる。
- 吸血鬼の一部であるので、波紋の力で消滅させる事が出来るが、これは引き抜いた後の処置となる(コミック版13巻参照)。同様に、太陽の光で消滅する(コミック版17巻参照。こちらの場合前髪が長い花京院はともかく、髪をアップにして額を出しているポルナレフを操り続けている描写がある)。OVA版ではアヴドゥルの「魔術師の赤」の炎で焼き払われている。
- 当初花京院とポルナレフは、この「肉の芽」を埋め込まれてDIOの刺客として襲ってきたが、承太郎の「スタープラチナ」によって「肉の芽」を抜かれ仲間になった。
その他
吸血鬼になった後の口癖として「UREEEEE」や「WRYYYYYYYYYYーッ」(いずれも「ウリイイイ」と読む)などがある。
ディオのスタンド
- 世界(ザ・ワールド)
【破壊力 - A / スピード - A / 持続力 - A / 射程距離 - C / 精密動作性 - B / 成長性 - B】(『JOJO A-GO!GO!』による)
- タロットの21番目のカード「世界」が名前の由来。逞しい体つきをした人間型のスタンド。デザインの特徴としては三角形のマスクを被ったような顔、背中に付いたタンクのような物体、手の甲にはその能力を象徴するかのような時計のマークがある。
- 承太郎のスタープラチナと同様の近距離パワー型で、高いパワーとスピードを有する。なおかつ近距離パワー型の中では10mと反則的に長い射程を持つ。DIO自身「パワーも精密さもスタープラチナより上」「最強のスタンド」と豪語するほどである。ラッシュ時に「無駄無駄」を連呼することから「無駄無駄ラッシュ」と呼ばれ、凄まじい威力を誇る。
- さらには、自分以外の「時を止める」ことができる(時間停止)。DIOはこの能力を「まさに『世界』を支配する能力」と形容している。初めは一瞬だったが、ジョナサンの体が馴染む度に停止できる時間が延長し、登場時で5秒、ジョセフからジョースターの血を吸血したことで9秒まで伸びた。直後に承太郎に倒されたが、DIO自身はさらに停止時間を延ばせそうだと実感している(なお、厳密には「時間が止まった世界」で「5秒」と言うのはあくまで静止時間内を動ける者達の体感時間にすぎず、時間が止まっているのに時間経過を感じるという妙な表現となっており、DIO本人もそれを口にしている)。また、DIOは不老不死の吸血鬼となっているため、時を止めている間に自分の肉体だけ時間が進んでいても老化の心配がない。ゆえにこの能力を高めたり多用したとしても全く問題がなく、本人もその能力を高めようとしていた。時を止めた場合、同じタイプのスタンドを持つ者以外はその間のDIOの動きを認識できないため、その間にDIO自身が動けば他者はDIOが瞬間移動をしているような錯覚に陥る。この効果を利用して、時間の止まった状態で承太郎の体の周囲に無数のナイフを投げつけ回避不能の状態を作り出したり、頭上からマカダム式ロードローラー(OVA版Part3ではタンクローリー)を叩き付けたりと、数々の衝撃的な攻撃を繰り出した。
- 時を止められる「ザ・ワールド」というスタンドは、DIO自身の「時間の束縛から自由になりたい」という潜在意識の発露からであると、『JOJO A-GO!GO!』の作者インタビューで語られている。
- スタンドのデザインも若干変更されている場合もあり、原作Part3では筋肉質で肘と膝のパッドがハートの形になっているが、『JOJO A-GO!GO!』以降ではスリムな体型になり、パッド部分が「D」のロゴになっている。
- 隠者の紫(ハーミット・パープル)
- 物語の初期にジョセフの「隠者の紫」と同質の念写スタンドを使っている(なお、このスタンドはジョセフのものとは違いカメラを軽く叩くだけで念写ができ、壊さなくてもよい)。
- これについては原作内では特に説明はされなかったが、画集『JOJO A-GO!GO!』の付録では「ジョナサンの肉体が覚醒したスタンド能力である」と説明されている。
- 小説『OVER HEAVEN』では「ハーミット・パープル」と明言され「同じ、または同じでなくとも似たようなスタンドをジョナサンの孫(ジョセフ)も持っている」とされている。