イオンド大学

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イオンド大学(イオンドだいがく IOND University)は、アメリカ合衆国ハワイ州ホノルル市に登記されていた自称・非営利法人である。また、日本登記されている2つの株式会社を指す場合もある。 2007年9月、ハワイ州消費者保護局により、同機関の法的存在が無効である事、州消費者保護法に違反している事の確認を求める民事訴訟が提起された。

2008年10月17日(ハワイ時間)に州巡回裁判所の口頭判決があった。非認定学位授与機関に適用される州法についての違反に関しては、ハワイ校についてハワイ州内での教育や学位授与の実態がないことから、適用を逃れた。その一方、ハワイ州に代理人として登録したイオンド大学役員が登録内容に反して実際にはハワイ在住でなく代理人資格を有していなかったという虚偽登録、ウェブサイトの虚偽表示、印刷されたカタログの虚偽表示について州法違反を認定された。代理人として登録され共同被告となったイオンド大学役員については、別途個人責任が認定された。

以上の州法違反にも関わらず、ハワイ州内での実害が裁判を通して示されなかったためイオンド大学に対する罰金は2万ドルに留まった(代理人登録した役員に対する罰金は別途)。さらに、ハワイ州内での正当な教育活動が確認できないとして、2008年12月1日以降、適用される関連法全てに適合するまでハワイ州内での一切の活動をやめる様命じられた。また、前述のイオンド大学役員を登録代理人とする一切の書類提出については判決をもって即時に禁じられた。

2009年3月2日最終判決に於いてウェブサイト、カタログ等での虚偽表示、虚偽文書提出の事実などが認められて、イオンド大学は敗訴した。イオンド大学のハワイでの営業活動も停止させられ、制裁金2万ドル、代理人登録した役員(中野幾雄)には罰金2500ドルが科された。

概要

イオンド(IOND)とは、 International Organization for Nontraditional Distance Learning の略で、「非伝統的通信教育のための国際組織」という意味であるという。イオンド大学は、その名称のとおり「大学」を自称している。

ハワイ校と日本校からなる。ハワイ校はアメリカ合衆国においては非認定大学であり、かつ日本校は日本における文部科学省所管の大学ではないと、自ら公表している。

日本校事務局本部:東京都杉並区高円寺南2丁目35-15 花月第1ビル4・5階。学長は黒須英治

日本校のウェブサイトにはフィリピンミンダナオ大学姉妹校になり、同時に“フィリピン政府発行の公認校の認定を受けた”と記されている(イオンド側主張)。後者については、ハワイ校のウェブサイトにも記されていた(2008年11月閉鎖)。

イオンド大学が拠っているその法的基盤は、同校が自ら述べているように「非伝統的」であるため、伝統的な大学一般とはかなり異なっている。そこで、以下ではまずその点について詳細に説明し、ついでイオンド大学の活動内容について説明する。

法人としての地位

非営利法人としてのイオンド大学は1999年にハワイ州ホノルル市に登記された。ハワイ州における登記内容によれば、イオンド大学は教育を目的とするDomestic Nonprofit Corporation(国内非営利法人)として現在登記されている。なおこれはハワイ州法に準拠したものであり、日本法に「非営利法人」の定義はない。

イオンド大学の設立は 1999年4月に登記され、その後 2002年11月に Diamond Head University への名称変更を、2002年12月に Hawaii IOND University への名称変更をそれぞれ登記され、その後 2003年3月に再びもとの IOND Universityへの名称変更を登記されている。 なお、最初の名称変更開始から最後の名称復帰までの期間は、IOND Universityの名称は乗っ取り防止のため予約されていた 。登記上の代表者は2006年2月より清水徹となっている。

なお、イオンド大学の説明によると、イオンド大学ハワイ校の設立は1999年4月12日で、設立者は黒須英治となっている。

また、2002年2月よりアメリカ合衆国内国歳入庁(IRS。国税庁)から課税免除団体の認可を受けている。IRSのデータをオンライン提供しているGuideStarでの検索結果によれば、IOND University(EIN 99-0343277)は501(c)(3)のPublic Charityに該当するという。なお、501(c)(3)での免税団体の認可は、団体の財産と収入が一定の額に満たない場合は、年に一度の所定の書式の書類(無料ないし実費以下の手数料での開示が義務づけられている)の提出により自動的に得られる。それを越える額の財産や収入がある場合に限りIRSがさらなる書類をもとに審査を行う。そして、GuideStarでの検索結果によれば、イオンド大学の財産と収入はともに 0ドルと申告されているという。 これは、IRSが提供する課税免除団体のマスターファイルデータによっても裏付けられる。

上記の非営利法人とは別に、日本で登記されている株式会社イオンド大学がある。同大学は投資顧問業者登録を2006年に行った 。非営利法人イオンド大学と株式会社イオンド大学の役員や元役員には、相互に重なりがあるなど、両社は密接に関係している。なお、名称に大学が入っているが、学校教育法における、いわゆる通常の大学とは別物である。

この他、株式会社イオンド大学日本校がある。イオンド大学ハワイ校の設立者である黒須英治が51%の株式を有する。事業としてイオンドshopの商号で通信販売を営んでおり、配送センターは株式会社イオンド大学の本店所在地のビルのすぐ上の階にある。株式会社イオンド大学日本校は、2001年3月27日に設立され、本店は神奈川県三浦市南下浦町金田字地蔵ヶ作1613番地12に置いていたが、現在、その住所に登記は無い。株式会社IOND Universityと改名し、本店を東京都杉並区に移転したようである。なお、旧本店の住所は「南葉山校舎 & 海洋研究所」として紹介されているが、株式会社IOND Universityの支店としては登記されていない。株式会社イオンド大学日本校の代表取締役は、森下功。

イオンド大学ハワイ校と日本校はそれぞれウェブサイトを開設しているが、単一のウェブサーバ上にあり、物理的には日本国内のホスティングサービスを利用して開設されている。そのドメイン IOND-UNIV.ORG の登録者は IOND UNIVERSITY となっているが、住所は株式会社イオンド大学のものである。また、ドメインの登録業者(レジストラ)は、お名前.comを運営しているGMOインターネット株式会社という日本の会社である。なお、株式会社イオンド大学のウェブサイトは、これらとは別に IOND-U-C.COM が存在しており、こちらは登録者も IOND UNIVERSITY CORPORATION である。住所は株式会社イオンド大学のものとなっている。

その存在が法的に無効であるとして、ハワイ州商務省消費者保護局より2008年2月に州巡回裁判所に提訴されており、10月13日に公判(一日結審)。“法人”に20000ドル、出廷した担当者に対して2500ドルの罰金、大学はハワイからの撤退命令を言い渡された。

なお、株式会社イオンド大学日本校はのちに(2006年12月)、「株式会社三浦海洋研究所」と改名し、2008年4月に破産した。

高等教育機関としての地位

序:米国の教育制度について

米国ハワイ州のイオンド大学(ダイヤモンドヘッド大学)は、1999年4月、アメリカ合衆国ハワイ州政府DCCA(Department of Commerce & Consumer Affairs; 商務省・消費者事務局)登録の非営利教育法人として開校した。米国の他の私立大学も同じく非営利教育法人であるが、イオンド大学は高等教育認定評議会(CHEA)団体の認定を受けていない。

合衆国憲法と教育制度の関係

米国の大学について正しく認識するためには、独立宣言にまで遡って、日本とは全く異なっている米国の教育制度を理解する必要がある。1776年に公布された独立宣言をもって、英国の植民地支配から独立した米国は、1787年に制定された合衆国憲法修正10条(1791年)において「この憲法によって合衆国に委ねられておらず、また、それによって州に禁じられていない権限は、それぞれの州または人民に留保されている」とあり、憲法において連邦政府の機能として定められていない権限は各州に留保されている。教育に関する権限は、教育法が連邦法でないため、各州に留保されている。

従って、連邦政府の教育省は存在しているが、資金その他の面で高等教育の支援をしているだけであり、高等教育の監督官庁としての機能は果たしていない。この点で、日本の文部科学省が教育に関する監督官庁として、学校教育法等の法律に基づき一元的に監督している教育環境とは、まったく異なっている。

米国における教育機関の認定制度

間接的なコントロール

以上のように、米国においては連邦政府や州政府が直接に高等教育機関を規制監督することはない。 しかし、一方で、信頼できる高等教育が提供され、その学位が広く通用することも必要であることから、米国においては間接的なコントロールが行われている。 それが、既に述べられている連邦教育省や州政府による資金その他による間接的なコントロールである。 連邦教育省は長官の名義で、信頼できると判断する認定団体を認容し、そのリストを公開する。

連邦教育省の認定団体リストは一部でCHEAの認定団体リストと異なる。 連邦教育省のリストは、政府の補助金の支出先の決定や公務員の採用資格や国家資格の取得要件としての学位を、連邦教育省が認容した認定団体によって認定を受けた大学からのものに限定するのに用いられる。また、民間での採用資格における学位も、しばしばCHEAないし連邦教育省認容の認定団体による認定を受けた大学からのものに限定される。

何が不正に該当するか

俗に言うディグリー・ミルとは、

  1. 大学名・氏名・学位を捏造・偽造してある学位記を発行すること。
  2. 例えば、医療とは 無関係な人物に医学博士号を授与すること。
  3. 無審査・無評価で学位記を発行すること。
  4. 年間数万人の不特定多数に学位記を乱発すること。
  5. 法律に違反している学位記を発行すること。

以上である。

ただし、非認定大学の学位と認定大学の学位には社会的な評価の面で大きな差が作られていることから、 これらを混同させるような行為は消費者保護の観点からしばしば問題となる。 そこで、各州では非認定大学の学位発行や宣伝行為などに一定の枠をはめる規制を行っているが、その規制の内容や厳しさはさまざまである。