窃視
窃視(せっし)とは、他人が隠しているものを「ぬすみ見」することである。
目次
意義
「ぬすみ見」には、「見ている者の存在は気づかれているが、見ていること自体を気づかれていない場合」と、「見ている者の存在自体を気づかれていない場合」がありうる。また、客体には、人のみならず、物や情報も含まれうる。
さらに、窃視した場合、犯罪となる場合と、必ずしも犯罪とならない場合がある。窃視症だからといって、疾患だとは必ずしもいえない場合が多い。窃視の目的は、たいてい「わいせつ目的」「わいせつ物販売目的」であるが、そうでない場合も考えられる。
犯罪構成要件としての窃視
軽犯罪法における窃視
- 軽犯罪法第1条23号によると、「正当な理由がなくて人の住居、浴場、更衣場、便所その他人が通常衣服をつけないでいるような場所をひそかにのぞき見た者」は、「これを拘留又は科料に処する。」とされている。
- これらの場所に人がいなくても、同罪は成立する。
- また、直接のぞき見るほかに、カメラなどで撮影する場合も本号に該当する。
各都道府県条例における窃視
- 東京都(平成一六年条例第一七九号・平成17年4月1日施行)
第5条1項において、「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。」とされている。この規定に反した者は「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」(第8条2号)とされるが、「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を撮影した者であるときは、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」(第8条2項)とされている。「常習として」これらの「違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」(8項)とされている。本罪は、公共の場所や乗物で人を著しく羞恥させたり、不安を覚えさせる言動を禁じるものである。この「言動」には、盗撮などの窃視行為が含まれるとされる。
平成13年改正について、2001年9月29日の平成13年警察・消防委員会において警視庁総務部長から次のような旨が説明されている。
それまで、公共の場所または公共の乗り物における卑わい行為は、客体が「婦女」に限定いたものを、男児、男性に対する同種行為による被害実態が認められることから、男女を問わず「人」に対する卑わい行為を禁止する内容に改めるものである。また、第八条、罰則の改正については、刑法第15条及び地方自治法第14条の改正等に伴い、平成3年9月に本条例外三条例につき罰金額を改めるなどの改正を行って以来の改正で、10年を経たことから、条例を初め違反行為の内容または罪質が類似する各種刑罰法令との均衡に配慮するなどして、罰則の整備を行おうとするものである。第8条第1項及び第2項は、本条例違反の各行為に対する基本的な刑罰を定める規定であったが、第1項は、「卑わい行為」について、六月以下の懲役または五十万円以下の罰金に処するとするもので、近年における本条例違反取り締まり状況から、ダフ屋行為及び卑わい行為の二罪種が際立って多発している実態が認められることから、懲役刑を設けることにより、罰則を強化して違反行為の抑止を図ろうとするものである。
平成14年改正は、盗撮行為の罰則を強化するものであった。都議会平成14年警察・消防委員会において、警視庁総務部によると次のように説明されている。すなわち、第八条の罰則の改正について、第五条第一項の卑わい行為の一形態として規制されている盗撮行為の罰則を強化したものである。この罰則の強化は、13年9月に卑わい行為等の罰則を強化したにもかかわらず、盗撮行為の検挙件数が増加していることや、インターネット上に盗撮ビデオを買い取る旨の広告が数多く見られ、盗撮行為を助長する傾向があることなどから、盗撮行為の抑止を図るためのものである。卑わい行為のうち、盗撮行為について、一年以下の懲役または百万円以下の罰金に処し、常習者の盗撮行為について、二年以下の懲役または百万円以下の罰金に処するとするものである。
なお、他の都道府県における同様の条例については、各都道府県における迷惑防止条例の項を参照。
他の犯罪の可能性
- 窃盗罪は、他人の財物を窃取した場合に成立する。「窃取」とは財物の占有を移転することとされるので、窃視したとしても、財物の移転がなければ窃盗罪には当たらない。
例えば、盗む意図なく他人が隠していた開封されていた手紙を勝手に見たとしても、移転を伴わない限り、他の犯罪はともかく窃盗罪は成立しないことになる。
- 住居侵入罪が、一定の場合に適用される可能性がある。住居侵入罪の保護法益や解釈には争いがあるが、住居権者の許諾を得ることなくあるいは平穏を侵害する態様で侵入した場合に、同罪が成立するとされる。窃視目的での侵入の場合、許諾を得ずに、あるいは得ても窃視目的を秘して侵入することが多く、このような場合には同罪の成立することが非常に多いといいうる。
また、法解釈的には男女平等に適用されうるが、劇場などで女性が男性用のトイレに入ったりした場合、同法が適用されることはない。
犯罪に当たらない窃視
性風俗営業における窃視(詳細はのぞき部屋参照)
いわゆる風俗店においては、一般に「のぞき部屋」と呼ばれる客に窃視をさせる形態の営業が存する。これは、壁や部屋で仕切られた場所の内部の者の様子を客に観察させるものである。客が観察する内容としては、着替えや入浴、排尿などの日常行為や、性行為などがある。また、客が内部の者に対して見せる内容を要求したり、より陰部を見えやすくしたり、客の体を触るなどの性的行為をする場合、逆に客に内部の者の陰部を触らせる場合や、内部の者が着用していた下着を客に譲渡する場合もある。
この行為は、犯罪には当たらない。犯罪行為とされるのは、被害者のプライバシーや性的自由や、社会の善良の風俗を侵害するものだからである。しかし、性風俗営業における窃視は、内部の者が観察されることを同意しているためにプライバシー等の侵害がなく、不特定多数人に対し観察させるものでないために社会の善良の風俗を害しないものだからである。とはいえ、不特定人に対し羞恥行為に及ぶものであるから、社会の善良の風俗を害する場合もありうる。その場合は、公然わいせつ罪の適用対象となる場合がある。
救急車内における窃視
多くの都道府県条例では、公共の場での窃視を禁じている。しかし救急車内などは公共の場では無いため、盗撮などを行っても犯罪にはあたらない。2006年5月10日、奈良県警の40代の巡査部長が、救急車内でけがをした小学生の男児の母親のスカートの中をデジタルカメラで盗撮するという事件が発生したが、「公共の場」ではないという理由で立件されなかった。
有効な同意のある窃視
- 性風俗営業による窃視でない場合でも、犯罪行為とならない場合がある。前述のように、窃視が犯罪行為となるのは、被害者のプライバシーや性的自由・社会の善良な風俗を侵害するからであり、被害者がこれらを放棄したり社会の善良な風俗を侵害しない場合には、犯罪行為とならない。
例えば、数人のみが住む会社の寮において男女で浴場が共用されており、被害女性が脱衣所で脱衣している様子を窃視したが、被害女性が予め「脱ぐところを見ても良い」と言っていた場合が考えられる。この場合は、特定の集団内であり社会の風俗は侵害しないし、被害者がプライバシー等を放棄しているからである。
しかし、被害者がプライバシーや性的自由を放棄したといえるためには、有効な同意が必要である。被害者が窃視の意義や同意したことによってどのような効果があるのかを理解しないままに、同意したとしても有効な同意とはいえない。例えば、3歳の男児に「おしっこする所をみせて欲しい」と話しかけて同意を得た上で、男児に触れることなく排尿行為を窃視したとしても、男児が有効な同意をしたとはいえないと考えられる。
疾患としての窃視
- 世界保健機関の設定した『国際疾患分類』改定第10版のGIDの分類基準(訳)
F65.3 窃視症 Voyeurism
- 衣服を脱いでいる性的あるいは私的な行動をしている人びとを熟視する、反復的持続的な傾向をいう。通常、性的興奮および自慰にいたることが多いが、それは見られている人に気づかれることがないことが多い。
疾患に当たらない窃視
- 仮に、「身の不調あるいは不都合であって、いわゆる医療による改善が望まれるもの」を疾患だと定義すれば、窃視をする者あるいは社会によって、その者の改善を望まれる場合が「疾患としての窃視」に当たることになる。
- 窃視をする者によって改善を望む場合とは、窃視でなければ性的興奮を覚えず性行為に及ぶことができなかったり、それによって精神的な問題を惹き起こす場合が考えられる。しかし、そのような場合でも性行為に及ぶ必要がなかったり、精神的問題を惹き起こさない場合には、窃視者自身が改善する必要がない場合もありうる。
- また、社会によって改善が望まれる場合とは、窃視をする者が犯罪行為に及ぶ場合が考えられる。また、故意・過失による犯罪行為に当たらず責任が阻却される場合でも、被害者のプライバシーや性的自由を侵害する場合には、改善が望まれることになる。
- 「社会が改善を望まなくとも窃視をする者自身が改善を望む場合」、あるいは逆に、「窃視をする者自身が改善を望まなくとも社会が改善を望む場合」、また「窃視をする者自身と社会が共に改善を望む場合」は、疾患にあたると考えられる。
窃視の主体
- 窃視する者は男性・女性、高齢者・低年齢者を問わない。また、窃視の対象が、窃視者との関係で異性であるとは限らない。
- 近年、不祥事や強制わいせつ罪や強姦罪等のわいせつ類型の事件において、教師・医師・警察官などの公務員・取材記者が、大きく報道されることが多い。この原因について、はさまざまな考え方において争いがある。一つは、動機付けに求める考え方である。窃視には、「見る」ことを隠す場合と、「見る」ことを隠しているどころか見ている「場にいること」を隠す場合がある。例えば、わいせつ目的の場合、
- 水着の男性や女性のいる海岸・プールは、誰でも侵入できる場所である。
- しかし、下着姿や陰部が見える場所というのは、同性の者しか侵入することを許されないことが多いために、侵入は許されない場である。例えば、女子の公衆トイレは女性でなければ、侵入が許されない場である。
- さらに、会社や学校の女子更衣室・トイレや、身体検査のされている保健室、診療行為のされている診察室は、女性であっても、その会社や学校・病院関係者でなければ侵入すること自体が許されない場合である。
このように、1.は見ることを隠さなければならない場合、2.は同性しか侵入できない場への侵入を隠さなければならない場合、3.は同性しか侵入できない場で、かつその場のある施設への侵入も隠さなければならない場合である。1.や2.よりも3.になればなるほど窃視したことが見つかったときのリスクが大きいために、窃視する事が困難であるが、会社員や生徒や教師・医師は施設への侵入自体が許されている。そのために、他の者よりもリスクが小さいために窃視しやすく、その件数も増えるのではないかという考え方である。
さらに、もう一つの考え方は、報道による印象の大きさやそれを考慮した報道者の姿勢に求める考え方もありうる。社会的地位のある会社員、営利を考えず職務を遂行すべきと一般に言われ聖職者と呼ばれる教師や医師・警察官等の公務員が、窃視行為・盗撮行為に及んだ場合、その印象や社会的影響が大きいために、大きく報道されることで件数が多いという印象をもたらしているという考え方である。これらの場合、高校野球出場の決定した野球部員がエスカレータで女子高校生のスカート内の下着の盗撮に及んだ場合や、女子アナウンサーが男児の着替え姿を窃視した場合に大きく報道されることを説明できる。
また、もう一つの考え方は、これらの人物は、職務が安定的で性的な刺激にかけるために、窃視行為などの破廉恥行為への動機付けが大きいという考え方がありうる。しかし、必ずしも安定的な職業のものであれば、破廉恥行為に及ぶとは考えられないというケースもある。
以上の考え方は、代表的な考え方であって他にもさまざまな考え方がありうる。
窃視のされ方
- 他人が隠しているものを盗み見るのでなければ、窃視とはならない。
- 直接窃視する場合やビデオカメラ・携帯カメラなどの盗撮装置を用いる場合がある。特に後者の場合では自動的に盗撮を開始し、盗撮装置と同じ場所に録画装置があるばかりでなく、盗撮装置から電波を送出し離れた場所で録画装置がある場合もあるとされている。
- また、窃視時にマスターベーションしながらする場合もあれば、窃視後にマスターベーションすることもある。また、窃視を盗撮装置を用いる場合、録画後再生・保存し、その時マスターベーション等の性的行為に及ぶ場合や、記録したものを有償無償で頒布する場合がある。
- 以下は、犯罪の成立や疾患の該当を問わず、窃視に当たるものをあげる。
窃視の目的の多様性
「いやがらせ目的」、「防犯目的」、「わいせつ目的」、「わいせつ物販売目的」がありうる。また、以上を除いた「窃視した事が他人に知れることを避ける目的」が考えられる。
窃視した事が他人に知れることを避ける目的での窃視
この目的は循環論であることを避けられない窃視形態である。
- 窃視の客体
- この場合における窃視の客体としては、物や情報が考えられる。
- 物の例としては、隠していた手紙や写真などが考えられる。情報の例としては、非公知の入札情報や株価の値動きを左右する情報が考えられる。
- 窃視の場所
- これらの場合における窃視の場所としては、立入りを禁じられている場所や、物を窃視する事を禁じられている場所が考えられる。
- 例えば、その部局以外の者が立ち入ることを禁じられている捜査課以外の者が職員の顔を見るために隠れる場合や、机の上に置かれている日記を勝手に見る場合が考えられる。
- 窃視の動機
上記の捜査情報窃視の例では通常知ることが許されていない者が職員の情報を知りたいという場合であるし、日記窃視の例では所有者に窃視したことがばれないようにする必要がある場合である。
いやがらせ目的
- 窃視の方法
- 快くなく思っている者が、いやがらせのために他人の隠している物を、他人に見せたり知らせたりする場合が考えられる。
- 動機としては、自らがいやがらせをしていることを気づかれずに、いやがらせをすることで、発覚を防止することで責任の追及を免れつつ、いやがらせに悩む者の様子を見たり想像して精神的に満足を得ることにあると考えられる。
防犯・不正行為管理目的
- 写されている者が気づかない内に防犯カメラで写される場合や、気つかない内に監視されている場合である。
- 例えば、犯罪の発生に関する情報を早く認識するために防犯カメラを街角に設置する場合や、カンニングやドーピングなどの不正行為を速く認識するために監督者を置く場合が考えられる。
- 動機としては、犯罪の発生直後に犯人に逃げられてしまう場合に監視していることを犯人に分かってしまってはならない場合や、監視者がいることが相手に分かっては相手が萎縮してしまうことにより本来の姿を見せない場合が考えられる。
わいせつ目的
多くの場合、窃視は、わいせつ目的である。
客体
- 窃視の客体
着衣・全裸・下着姿の人、陰部を出した人や、下着・わいせつな写真などの物がありうる。
場所
- 窃視の場所
トイレ・エスカレーター・電車内・更衣室・脱衣所・入浴中・サウナ・ショッピングセンタ試着室・レンタルビデオ・プール海岸・椅子の下・アパート・医療機関身体検査健康診断など、それを窃視することでわいせつ目的を満たすことのできる人がいる場所や、下着や写真の置いてある場所・洗濯物の干している場所などである。また、これら以外でも、窃視する者がわいせつな関心を抱く場所であれば、どのような場所であれども窃視される場所となる。
トイレにおける窃視
駅、商業施設、公園、学校などのトイレを問わず窃視される。トイレにおいてなされる窃視は、排尿・排便をする人を見る場合が多い。
女性の排尿・排便は個室でされることが通常であるため、個室仕切りの下や上から見るために、隣の個室やドア側に窃視者が潜んで見る。仕切りの上から見る場合は行動の様子全体を見ることになるが、それでは潜んでいることが発覚しやすいためや、通常窃視者は尿道口や肛門の排出部を見ることを望むため、仕切りの下から見ることが多い。
洋式トイレの場合は、窃視されるのは下着をずらす時の下着や陰部であり、排出部をはっきりと窃視されない。しかし、和式トイレの場合は、下着をずらす時の下着や陰部の様子だけでなく、排出部が窃視されることになる。特に和式トイレは便器をまたぐ事から、陰唇が広がり内部の尿道口や肛門が窃視される可能性が高い。しかし、和式トイレ便器は前方に飛び散り防止の高さがあるために、陰部が窃視者から隠れる場合があるために窃視者は、斜め前方や横から窃視することが多く、不自然な体勢にある窃視者を発見することができる。
トイレでは、女性が生理用品を交換する姿を窃視される場合もある。ナプキンの交換の場合、下着をずらし下着につけられたナプキンを外し、使用済みナプキンをナプキンの包装ビニールやトイレットペーパーに包み、汚物入れに廃棄。その間、排泄行為等をし、さらに新たなナプキンを下着に装着、ロングタイプのナプキンであれば、フィットする位置に装着するにはさらに時間を要する場合もあり、陰部を出したまま長い間個室内に居ざるを得ない。また、この場合に陰部やナプキン交換の様子を窃視するときは、仕切りの上から窃視されることが多いと考えられる。タンポン交換の場合は、下着をずらし膣内のタンポンを抜いて汚物入れに廃棄し新たなタンポンを膣に挿入、ナプキンを併用する場合もあるのであるから、ナプキンよりも陰部を出す度合いが高くなってしまう。
さらに、トイレでは、女性が自慰行為を行う場合もあり、それも窃視の対象となる。元来、トイレの個室は自慰行為を行うためのものではないが、陰部をさらけだす密室ということで、自慰行為を行う女性も少なくない。その場合には、通常の排泄行為よりも長時間個室に滞在し、また、陰部に限らず、胸部をさらけだすこと、自慰行為に没頭し、窃視されていることに気がつきづらいくなる場合もある。
また、直接仕切りの下や上から見るのではなく、携帯電話やビデオカメラを仕切りの上や下に差し込んだり、便器やトイレットペーパホルダー、汚物入れに設置する場合も多い。この場合、撮影装置の始動のためにトイレに侵入したりする場合もあるが、電波による始動装置を用いられる可能性もある。
さらに、トイレにおいて、窃視することがなくとも排尿や排便の音を聴くために潜んだり録音装置を設置する場合もありうる。特に女性の排尿時の音は大きいことからトイレ外部でも盗聴される場合もある。男性の排便や個室でされる排尿も同様に、窃視される可能性がある。また、男性の排尿は小便器でなされる場合が多いが、この場合の窃視は、隣の小便器に立ち排尿時の陰茎などの陰部を見ることや、小便器に撮影装置を設置することが考えられる。前者の方法による場合は、窃視者は男性であることが通常である。
また、窃視している者が、性器を触ったりしてマスターベーションをしながら窃視する場合もある。窃視にとどまらず強制わいせつ行為に及ぶ場合もあるので、特に警戒が必要である。
トイレでの窃視防止のためには、トイレの入る段階から周囲に警戒し、個室内や便器の様子に不自然な点はないか、トイレを出る段階においても不審な人物が居ないかを確認することが必要である。
エスカレータ・階段や電車内
駅や商業施設でのエスカレータ・階段における窃視は、通常着衣の隙間から見える下着を窃視する場合である。近年、この種の類型における窃視が多く検挙されている。
女性の場合、スカートの内部に着用する下着等を窃視するために、エスカレータ・階段の下の段から、低い位置で窃視される。また、スカートだけでなくキュロットスカートの隙間から下着等が窃視される場合や、ローライズジーンズの腰部分から見える下着等を窃視される場合もある。低い位置から窃視されるために、身長の高い者は窃視される可能性が高くなってしまう。
直接窃視すると、その場にいる他人に分かってしまうことや、よりはっきりとスカート等の内部の様子を窃視するために、多くの場合は間接的な方法によって窃視する。低い位置に鏡を置いて鏡に映ったスカート等の内部を窃視したり、携帯電話・ビデオカメラを低い位置においてスカート等の内部を盗撮される場合が多い。窃視者が盗撮した場合、別の機会に撮影内容を再生することになるが、他人に見られることなく再生できることや、カメラ等のズーム機能を用いるなどして、下着の色・しわ・汚れや尻や陰部へ入り込む様子や、下着からはみ出た陰毛、下着に付けられた生理用品の様子など、明確にスカート等の内部を窃視されることになる。
電車内での窃視は、エスカレータ等のように低い位置から窃視される場合に加えて、座席に着席した状態で窃視される場合がある。着席した状態でスカートの丈が短い場合、両腿の間にある下着を前の低い位置から窃視される可能性がある。多くの場合、窃視者は向かい側の座席に着席した状態である。そのため、本人は気づきやすいといえる。
また、いずれの場合も窃視者は窃視しながらマスターベーションなどの行為に及ぶことは少ないと考えら得る。スカートの隙間からの窃視の場合、本人が足を広げると下着や陰部の窃視される範囲が広がることから、足を広げないようにし、低い位置からの窃視する者がいないかを警戒する必要がある。
電車内での窃視(盗撮の場合)については、平行して痴漢行為が行われる場合がある。この場合の窃視者は「付随痴漢型」と「積極的痴漢型」の2種類に分類される。
- 「付随痴漢型」
最初は痴漢行為を行う意図は全く無い者。これは、自分が現在盗撮しているスカート等の内部を想像し、性的衝動を抑えられなくなって痴漢行為に及ぶ場合である。
- 「積極的痴漢型」
最初から痴漢行為を行う意図で盗撮する者。これは、下着の色・しわ・汚れや尻や陰部へ入り込む様子や、下着からはみ出た陰毛、下着に付けられた生理用品の様子等を窃視するだけでは満足しない場合である。これは痴漢行為自体も目的であるが、多くの場合は次の2つの目的で実行される。
- 痴漢行為によって盗撮対象者の下着クロッチ部分をずらすことにより、その盗撮対象者の性器を窃視する。
- 別の機会に、盗撮対象者の下着、尻、陰部を自分が触っている様を再生観賞することにより、より高い性的興奮を覚える。
更衣室・脱衣所・試着室での窃視
これらは、いずれも着衣を外した状態を窃視されるものである。商業施設での試着室、スポーツ施設・職場・学校での更衣室、公衆浴場の脱衣所が挙げられる。脱衣・着衣の経過によって、「アウターの脱衣→別衣装の着衣」又は「別衣装の脱衣→アウターの着衣」という類型、「アウターの脱衣→インナーの脱衣→別衣装の着衣」又は「別衣装の脱衣→インナーの着衣→アウターの着衣」という類型、「アウターの脱衣→インナーの脱衣」又は「インナーの着衣→アウターの着衣」という類型の3類型に分析できる。
- 「アウターの脱衣→別衣装の着衣」又は「別衣装の脱衣→アウターの着衣」
これは、商業施設での試着室や、スポーツ施設・職場・学校での更衣室において窃視される場合である。いずれも下着姿を窃視されることとなる。つまり、アウターを脱ぎ、下着姿となって、ユニフォームや体操服・試着を着衣するという経過、逆にユニフォーム等を脱ぎ、下着姿となって、元のアウターを着たり別の新たな衣類を着用するという経過である。この下着には、下半身を覆う下着、上半身を覆う下着のいずれもが含まれる。つまり、履き替えればショーツ・ブリーフ等が、着替えればブラジャー等が窃視されることになる。
商業施設での試着室は、カーテン型の場合と個室型の場合がありうる。カーテン型の場合はカーテンが開かれた状態になれば容易に窃視されることになるので警戒が必要である。また、開かれなくともカーテンの下や上から窃視される可能性もある。特に吹き抜け構造となっている場所に設置された試着室の場合、上半身ブラジャー姿を多くの人に見られる可能性がある。個室型の場合は、容易に外側から窃視されることはないが、個室内に窃視の仕掛けがされている場合がありうる。例えば、小型カメラを設置する場合や、姿見の鏡がマジックミラーとなっていてミラーの反対側からは見えるが、試着室側からは窃視者を見えない場合である。この場合は、下着姿が丸見えになってしまう。
スポーツ施設・職場・学校での更衣室の場合、試着室とは異なり複数の者が侵入しても不自然ではない。しかも、通常同性しか侵入できない場合が多いので、同性の者による窃視が考えられる。同性愛者の場合もありうるが、それよりもむしろ前項目の「いやがらせ目的」、次項目の「わいせつ物販売目的」の場合がありうる。さらに、同性でなくとも幼稚園や小学校低学年、場合によっては高学年のような低年齢者の場合、男女混合でこの種の着替えをする場合がある。この場合は、例えばアウターを脱衣しショーツ一枚となった状態で身体検査を受ける女児を男児が窃視する場合や、男児が体操服に着替える際ズボンを脱いで短パン(ジャージ)を履くとき女児がブリーフ(トランクス)姿を窃視する場合が考えられる。
また、試着室や更衣室外から直接窃視される場合としては、例えば、職場の更衣室内のロッカーに潜んで制服から下着姿になりアウターへ更衣する様子を窃視する場合や、学校の女子部室の隣の壁から窃視できるような穴を開けてそこから制服を脱衣し下着姿になりユニフォームを着用する様子を窃視する場合がありうる。さらに、ビデオカメラによる盗撮もありうる。
- 「アウターの脱衣→インナーの脱衣→別衣装の着衣」又は「別衣装の脱衣→インナーの着衣→アウターの着衣」
これは下着を脱いで着用する衣装、例えば、水着やレオタード、下着の更衣の場合に窃視される類型である。これは下着姿のみにとどまらず、胸や性器などの陰部も窃視されることになる。
つまり、「アウターの着衣を脱ぎ下着姿となって、その下着を脱ぎ陰部を露出させ、別衣装を着用する」という経過、逆に「別衣装を脱ぎ陰部を露出させ、下着を着用し下着姿となって、元の着衣を着たり新たな衣類を着用する」という経過を辿るものである。
この場合、別衣装や下着の段取りの状況によっては陰部を露出した状態や下着姿を長く窃視されるおそれがある。例えば、男性がレオタードに着替えようとする場合アウターを脱ぎブリーフ(トランクス)も脱いだはいいものの、レオタードの準備が整っていなかったときは、陰茎などの外性器を露出した状態を長く窃視させる可能性がある。また、着替えるために足を上げる体勢を取るときや、その体勢が不安定なのをさけるためにしゃがんだときは、女性の場合大陰唇が広がり膣口などの内性器を窃視させるおそれもある。
また、別衣装を脱衣した後に水をふき取らなければならないなどの手間が入る場合は、やはり陰部を露出した状態を長く窃視させることになる。例えば、女性が水着を脱いだ後、水着に覆われた部分の水分や水着を脱ぐ際に当たった部分をタオルでふき取るために、大陰唇や陰毛等のある陰部の水分をタオルでふき取った後で、初めてショーツを履くことができる。また、水着が濡れた状態で脱ごうとすると水分を含んでいるために繊維が膨張して脱ぎにくいという事情があるために、水着を脱ぐこと自体に時間をかけなければならなくなってしまう。そのため例えば、女児が水着を肩紐を外し胸を露出した状態から腰までずらしたはいいが、水着が濡れているために腰以下の部分でなかなかずらすことができず、恥丘部・大陰唇の谷下部で長く水着が留まりそれらを露出した状態を長くおかなければならないという場合がある。これらも、直接窃視する場合や、盗撮更衣によって窃視される場合があるのは前記の通りである。
- 「アウターの脱衣→インナーの脱衣」又は「インナーの着衣→アウターの着衣」
これは典型的には、銭湯・温泉・公衆浴場・健康ランド等の脱衣所である。つまり、「着衣を脱ぎ下着姿となって、その後下着を脱ぎ全裸になるという経過」、逆に「全裸の状態から下着を着用し、元の着衣を着たり新たな衣類を着用するという経過」である。
湯につかった後で体温の上昇した体は発汗している。これ不快なために体表面の水分が蒸発するよう長く下着を着用せず陰茎や女性外陰部を露出した状態で、あるいはブリーフやショーツなどの下半身の下着だけを着用した状態で長く居たり、それに加えてブラジャー等の上半身の下着を着用した状態で長く居たりすることがある。窃視者に、その時間の分長く性器や下着姿を窃視されることになってしまう。
また、下着の着用の際に足を上げたり、不安定な体勢になるのを避けるためにしゃがんだりする場合、例えば、女児が床にすわってショーツを履く場合、未発毛で覆われていないために大陰唇が広がり陰核や尿道口・膣口が窃視される危険がある。体が濡れているために、すぐに下着等の着用ができず陰部を露出した状態でいなければならない困難な事情は、上記水着と同様である。
これらの場合、窃視者は直接窃視する場合や撮影装置を用いて窃視することは上記事情と変わりない。窃視されることを避けるためには、これらいずれの類型も、長く下着姿の状態のままでいたり、陰部を露出した状態でいることを避けることが必要である。このためには、タオル等で下着姿や陰部を覆うなどの工夫が必要である。
浴場・サウナでの窃視
この場合は、たいてい着衣を付けていない状態を窃視するものである。例えば、男児が浴場の洗い場で陰茎の包皮を引いて内側をシャワーで流している所を窃視されたりする場合である。
また、浴場にある湯船に浸かろうとする際に、女性が湯船の高さをまたぐときに陰部が広がるところを窃視される可能性がある。これは特に湯船に浸かっている角度からは、タオル等で陰部を覆っていても、タオルの下が見えてしまう場合があるためによる。
また、このような場合でなくとも、女児が男性用浴場に入る場合には、性的意味合いの理解の不十分から陰部を隠すことないときは陰部が窃視されるし、足を大きく広げる姿をした場合陰門の内側の小陰唇や陰核を窃視されてしまう。逆に男児が女性用浴場に入る場合も、性的意味合いを理解していなくとも男児は無意識で陰茎が勃起する場合があり、この陰茎を窃視されてしまう場合がある。
また、タオルで陰部を覆っていても、お湯や水に濡れたタオルが体に密着した状態だと体の様子が透けたり、その様子が分かったりする場合があるため、それを窃視する場合もある。
以上のように、浴場・サウナでは胸や陰部をタオル等で覆っていない場合はもちろん、そうでなくとも、窃視されてしまう様々な可能性に見舞われてしまっている。これらは通常、窃視者もその浴場等にいる同性か、あるいは児童が窃視される場合には浴場等にいる異性であることになる。また、浴場内に携帯電話等を持ち込んで同性や児童の様子を撮影する場合もある。
また、浴場に窃視者が入らず盗撮装置等を用いる場合もありうるが、これらは大掛かりな体制をとるか、容易に盗撮装置を設置できる者でない限り困難である。しかし、屋内に盗撮装置が設置された場合、濡れていて通常は浴場内は照度が明るいとはいえないために、窃視されている者は余程のことがない限り窃視されていることに気づくことが困難となってしまう。
また、屋外にある露天風呂では、建物や浴場の構造上、他の場所から風呂を窃視されてしまう箇所がある場合がある。例えば、修学旅行に来た男子高校生が2階以上にある宿泊部屋から1階の露天風呂の女子の裸体を窃視しながらマスターベーションする場合が考えられる。また、このように屋外を窃視する場合は、離れた場所からも窃視が可能となってしまうために、窃視されていることに気づくことが困難だったり、窃視者が窃視しながら性的行為に及ぶ場合が考えられる。また、盗撮装置が設置された場合も、やはり気づくことが困難となってしまう。
以上のことから、窃視されないようにするためには、盗撮されていることを発見するよりも、むしろ胸や陰部を過度に露出しないようにし、窃視されそうな構造の浴場等には入らないことが必要となろう。
商業施設・店内、公園などの公共・民営施設
これらはエスカレータ・階段や電車内の場合と同様の窃視がされるものである。すなわち、スカート等の衣服の隙間から下着や体が見えるのを窃視される場合である。
これらの場合に顕著なのは、しゃがんだ時に窃視されることが多い点である。例えば、レンタルビデオ店でスカートを履いた女性が陳列棚の下の方にあるビデオを取ろうとしゃがんだ時に、陳列棚の反対側から下の隙間を通してスカート内を窃視する場合である。スカートを履いた女性は、しゃがむとスカートの布の位置が下着を着用している位置よりも高くなるためにスカート内部が見える場合がある。この時に窃視されるものである。窃視者は、ショーツ等の下着の柄や形態・陰部へ入り込む様子や汚れ・生理用品の着用などを窃視して性的な刺激を受ける。
さらに、着席時もスカート内を窃視される場合がある。着席時はスカートの布の位置がひざの上となるために、スカートの内側で両ひざの間から下着を窃視される場合がある。特にひざを開いた場合には窃視される度合いは大きくなる。また、公園などスカートを着用したままで活発に動き回る場合がある。例えば、スカートを着用した女児がジャングルジムや鉄棒で遊ぶ場合、スカートがめくれて内部の下着を窃視される場合がある。特に性的意味合いを理解しない年齢の女児は、下着を窃視されていても羞恥心を抱くことができないために、窃視されないように措置を講ずることができない場合が多いため、問題が多いといえる。
いずれの場合も、窃視する者が直接窃視するばかりでなく、撮影装置を用いて窃視することも多い点は、エスカレータ・階段や電車内での窃視と同様である。窃視されないようにするためには、スカート等から下着が見えないようにすると共に、窃視者が周りにいないか常に警戒することが必要である。
最近問題となっているのが小学生等の男児による窃視である。この場合の一番の問題は窃視対象となる女性側に、窃視されているもしくは窃視されるかもしれないという警戒心が無いということである。よって多くの場合窃視されることを回避できない。子供が窃視行為に及ぶ原因は大きく2点ある。
- 他の友達と一緒にお遊びで窃視行為に及ぶ場合。
- 大人の男性と同様に女性の下着、尻、陰部に対する性的欲求から窃視行為に及ぶ場合。
これらの窃視は鏡等間接的手段で行われる場合も多いが、直接的手段で行われる場合も非常に多い。窃視対象となる女性は20代~30代であるが、学校の教師のスカートの中が窃視対象となる場合が非常に多い。これは、他の女性に比べて窃視する男児が圧倒的に足元に接近し易いからであると考えられる。
プール・海岸
プールや海岸においては、水着姿や着替えの様子を窃視されることがある。水着姿を窃視するとは、体に密着した水着の様子を窃視されることで、胸や陰部の様子を見られるものである。男性の場合、陰茎や睾丸の膨らみを窃視されることになる。あるいは女性の場合、乳房の膨らみや乳頭の様子、陰唇へ水着の布が入り込む様子を窃視されることになる。また、水着の色によっては、体の様子が透けやすい場合がある。例えば、白い水着を着用した女性の水着姿を窃視して陰毛や大陰唇の谷を見られる場合がある。
プールや海岸では、多くの人がその場にいる時には、他人に窃視していることを誰にも気づかれないようにしながら、窃視する場合が多い。また、海岸やプールサイドで横になっている水着姿の人を下半身側から窃視されることで、陰茎・陰部や乳房により接近しているにもかかわらず、本人が気づくことができないという場合がある。
また、事情によって個室等で着替えることができないという場合がある。例えば、更衣室があまりに混雑していて女子小学生がロッカー付近でタオルで隠して着替える場合に履き替えるショーツの様子を窃視される場合や、男性が海岸で着替えているときに隠しているタオルがはだけて陰茎が見える様子を窃視される場合がある。
また、盗撮装置を用いる場合もある。盗撮装置さえ向けておけば窃視者は他を向いていても後で窃視されてしまう。また、盗撮装置を用いられれば、はっきりと窃視されてしまう場合がある。例えば、ズーム機能で用いることで、寒さで乳頭が勃起し水着が突起している様子や男児小学生の水着から陰毛がはみ出している様子、女性がやむを得ず海岸で着替えようとショーツを履き替えるために広げたときに洗濯しても落ちないショーツ内側の汚れの様子まで明確に窃視されるおそれがある。
海岸やプールは夏に多く利用されるので、ビデオカメラ等の盗撮装置を用いていることや窃視者の顔を隠すために長袖やウインドブレーカーなどを着用している場合がある。このような不審な様子であればすぐに窃視されていることを認知できるが、携帯電話等で盗撮される場合には、窃視されていることを認知できない場合がある。
いずれの場合も、窃視される場で着替えることや長くその場に留まることは、差し控えると共に、窃視されているかどうかを常に警戒することが必要である。
住居・アパート・居室
住居や居室で窃視される場合がある。この場合は、さまざまな姿を窃視されることになる。例えば、アウターを着替えたり、ショーツ・ブラジャーやトランクス・ブリーフなどインナーを履き替えたりする様子を窃視されたりする場合がある。また、住居の場合自宅だという安心感からか自宅外よりも陰部を露出させる場合が多い。例えば、女性が自宅にいるという安心感から入浴後に全裸で長くいたり、何気なく陰部を広げて鏡で写している様子を窃視される場合である。また、排便・排尿や、ビデで膣内を洗浄する様子などトイレ内を窃視される恐れもある。
これらのような、着替え・入浴中や後・トイレでの様子などの日常生活のみならず、性的生活まで窃視されてしまう場合もある。例えば、自慰行為や交際相手やパートナーとの性交する様子を窃視される場合である。
思春期以降の人間であれば、誰でも自慰行為を行うが、特にリラックスできる居室では、無警戒で自慰行為を行うため窃視の対象となりやすい。自慰行為がはじめてしまうと自慰行為に没頭してしまうため(特に女性の場合)注意が必要である。 また、いわゆる「ローター」などの性的玩具を郵便ポストに投函しておき、居住者の性的関心を性的玩具に向けさせ、自慰行為を誘発させた上で窃視をするという行為も見られるので、注意を要する。
これらも直接窃視される場合も、盗撮装置を用いる場合もいずれもありうる。直接窃視する場合としては、一人暮らしの女性のアパートのドアスコープを外したり、新聞挿の穴から窃視したり、浴室の換気窓が開いている所から窃視したりする場合である。屋外からの窃視に限らず、同居者が他の同居者を窃視する場合も十分に考えられる。また、盗撮装置を設置する場合は多くの場合、窃視者が一度居室に侵入している場合が多い。盗聴器の設置と同様、電源から電気の供給をうけながら盗撮を続けられてしまう装置や他の電気機器の部品内に組みこまれてしまうケースも見受けられる。
いずれの場合も、自宅で窃視されるとはおよそ思いつかない心理状態から、窃視されていることに気づくことは困難である。また、居宅内の日常生活や性的行為に及ぶ人の様子以外に、物を窃視する場合がありうる。例えば、ベランダや庭に下着や水着を洗濯して乾かす場合に、その下着等を窃視する場合や、女性の居室内にある未使用のタンポンなどの生理用品や、男性の居室内での精液の入ったコンドームなどの避妊具を窃視する場合が考えられる。これらの居宅内での窃視を防ぐことは著しく困難である。むしろできるだけ早く気づき窃視があったか否かを確認すると共に、窃視や盗撮装置の稼動をとめるようにしなければならない。
身体検査や健康診断・医療機関
身体検査・健康診断において、下着姿・着替える様子や胸、陰部の様子を窃視される場合がある。学校や職場における身体検査・健康診断において、ブリーフ・トランクス・ショーツやブラジャーなどの下着姿を窃視される場合がある。また、胸囲測定において、ブラジャーを外した状態で計測している様子や計測される順番を待つために胸を手で隠している様子を窃視される場合がある。
最も幼稚園や小学校低学年・場合によって高学年の身体検査の場合、男女が同じ場所で計測することがある。この場合、低学年男子が測定の順番を座って待っているときにトランクスから陰茎がはみ出している様子を高学年女子が窃視する場合や、女子が身長計に乗っているときに正面からショーツの柄やブラジャーの様子を男子が窃視する場合がある。また、医療機関では、外来患者が他の患者の診察されている姿を窃視されたり、入院患者の日常生活の様子を窃視される場合がある。
多くの場合、下着姿や胸を窃視される。例えば、内科において胸を聴診するために胸を出した女性を他の患者が乳房を窃視する場合や、腹部を触診する医師の横で仰向けに男性がズボンをずらした時にブリーフの様子を看護師が窃視する場合である。また、外性器や内性器が窃視される場合もある。例えば、男性急性盲腸患者が陰毛を剃毛されるときに陰茎を偶々居合わせた他の患者が窃視する場合や、性病女性患者が膣内を診察されている様子を盗撮装置を用いて窃視する場合である。
さらに、入院中患者が着替え等の日常生活やマスターベーションなどの性的行為を窃視される場合がある。医療機関においては、医師や看護師が医療行為の枠外で陰部等を見る場合には窃視となるであろうが、実際に医療行為の枠内か否かが不明確であるために窃視か否かの判断ができない点で、窃視を誘発させる原因がある。また、仕切りなどのプライバシー保護が不十分な場合には他の患者の様子を窃視されてしまうことになる。
学校・職場や医療機関における窃視も盗撮装置を用いた窃視行為がなされうることは、上記の場合と同様である。
動機
- 窃視の動機
下着や陰部・性的行為・性的道具を見ることによって、性的に興奮したいと窃視者が思うことに動機がある。しかし、窃視時と性的に興奮時と性的行為時は重なる場合もあれば、重ならない場合もある。
すべてが重なる場合が、窃視時に興奮しながらマスターベーションや性交する場合である。この場合は、窃視する対象が窃視者よりも弱い立場の者であったり窃視していることに気づかれてもかまわないと考えている場合である。例えば、父親が小学生の娘と入浴しながらマスターベーションする場合である。
窃視時が先行し興奮と性的行為が同時に後行する場合が、盗撮行為時は興奮しないが後でそれを見ながら興奮し性的行為に及ぶ場合である。この場合は、窃視していることに気づかれれば困ったり、窃視しながら性的行為をしていることに気づかれれば困る場合である。例えば、男性がプールで女性の水着が陰部に入り込んでいるのを近くで見つつも、見ていることがばれれば自己の人格に傷が付くのを恐れて、女性に気づかれないように窃視して興奮しながら、その場では自己の陰茎が勃起するのを衣服の上から何気なく押さえるだけにとどめ、後でトイレの個室で水着と陰部の様子を思い出しながら再び勃起した陰茎を堂々と下着から出してオナニーする場合である。
また、盗撮行為などの窃視時にそれ自体に興奮する場合もありうる。そして、将来窃視する時や、窃視する様子を想像して興奮し性的行為に及ぶ場合もありうる。これらの場合、想像し興奮してマスターベーション等はするが、実際には窃視しないという場合もありうる。つまり窃視せずとも満足する者もありうる。例えば、女性が、年少の少年の風呂に入って陰茎を洗っている所を窃視することを想像しながら、陰核を指で押さえてマスターベーションする場合である。しかし、この場合は、実際に窃視していないので、窃視の動機として考える必要がないとも考えられる。
さらに、窃視しその時あるいは後で興奮するが、マスターベーション等の性的行為には及ばない場合もありうる。つまり窃視と興奮だけで満足する者もありうる。例えば、男子小学生が身体検査のときに、女子のショーツ姿を窃視して興奮したが、マスターベーションの方法を知らないためにしない場合が考えられる。
いずれの場合にしても、窃視の目的は、性的行為の有無はともかくとして、性的に興奮する点にある。
わいせつ物販売目的
上記わいせつ目的の者を対象にそれらを撮影・録画したものを販売する目的で窃視する場合がある。これらは通常盗撮装置を用いて記憶媒体に記録され、それ自体やその写しを販売する形で行われる。また、それらは個人として行われる場合もあるが、団体や法人が行う場合が多い。
上記わいせつ目的の窃視の場所における類型では、トイレでの盗撮をはじめ、住居居室から医療機関にいたるまであらゆる場所でなされる。特に、トイレ・更衣室等・浴場等・商業施設等・医療機関等では、自己が管理する場所で盗撮装置を設置しても(撮影行為はともかくとして)設置行為自体は違法とはされない場合になされることが多い。すなわち、それらの場所に侵入する権利をもつ者が、窃視装置を設置することが多い。例えば、学校の女子更衣室にその学校の男性教員が盗撮装置を設置したり、会社の女子トイレにその会社の女性が盗撮装置を設置したり、泌尿器科医師が包茎手術の手術室に装置を設置する場合である。
これらの動機は、盗撮が記憶された媒体等を販売することで、金銭的満足を得ることにある。また、場合によってはそれらの媒体を記録することが困難で希少なものである場合、それらを欲しがるものへの優越感から、より希少なものを記録しようと盗撮に及ぶものもあろう。
各都道府県における迷惑防止条例
- 神奈川県(平成13年12月28日条例第78号・平成14年3月1日施行)
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、第3条において「何人も、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。」とされている。この規定に反した者は、「6月以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(11条1号)とされ、「常習として第1項の違反行為をした者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。」(11条3項)とされている。
「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」では、「何人も、女子に対し、公共の場所又は公共の乗物において、女子を著しくしゆう恥させ、又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も、同様とする。」(第3条2項)とし、これに「違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」(13条1項)、「常習として」これらに「違反した者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」(同2項)とされている。
- 大阪府(平一七条例一四三・平成十七年十二月一日施行)
第6条において「何人も」「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物において、衣服等の上から、又は直接人の身体に触れること。」(1号)、「人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような方法で、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着を見、又は撮影すること。」(2号)、「みだりに、写真機等を使用して透かして見る方法により、公共の場所又は公共の乗物における衣服等で覆われている人の身体又は下着の映像を見、又は撮影すること。」(3号)、「みだりに、公衆浴場、公衆便所、公衆が利用することができる更衣室その他公衆が通常衣服の全部又は一部を着けない状態でいる場所における当該状態にある人の姿態を撮影すること。」(4号)、「前各号に掲げるもののほか、人に対し、公共の場所又は公共の乗物において、人を著しくしゅう恥させ、又は人に不安を覚えさえるような卑わいな言動をすること。」(5号)を「してはならない。」としている。これに反した者は、「六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」(16条1項2号)とされ、「常習として前項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」(2項)とされている。
- 宮城県「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(平成一四年条例第四号・平成十四年五月一日施行)
第3条において、「何人も、道路、公園、広場、駅、興行場、飲食店その他の公共の場所(以下「公共の場所」という。)又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物(以下「公共の乗物」という。)において、「人を著しくしゆう恥させ、又は人に不安を覚えさせるような卑わいな言動をすること。」(2号)を「してはならない。」旨規定している。「違反した者は、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」(第12条1項)とし、「常習として第一項の違反行為をした者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。」(同3項)とされている。