Mozilla Firefox
Mozilla Firefox(モジラ ファイアフォックス)は、Mozilla Foundation が開発するオープンソース・クロスプラットフォームのウェブブラウザである。
また、Firefox の技術を元にモバイル版の開発も進められ Firefox for Mobile がリリースされている。
目次
特徴
- レンダリングエンジンに Gecko を採用
- Mozilla の開発成果である HTMLレンダリングエンジンの Gecko を引き継いで採用している。そのため、HTML、XML、CSS、canvas要素、SVG などのウェブ標準に対する準拠度が高い。標準技術の採用を主眼としつつも、過去に書かれた多くのページと互換を保つために非標準技術をサポートしている。
- タブブラウズ機能
- 同一ブラウザウィンドウ上に、タブと呼ばれる表示ウィンドウ切り替え機能を搭載することで、複数ページの閲覧や操作性を向上している[1]。また一つのウインドウだけでブラウジングができる「シングルウィンドウモード」という機能や、ポップアップウィンドウの制御を行う機能も実装されており、不要なタブを極力開かないですむような設定を行うこともできる。
- タブブラウズ機能はユーザーの利便性を損いにくい必要最低限の範囲で実装されているが拡張機能のインストールで挙動を変更したり、より細かい設定を行ったりすることができるようになっている。
- マルチプラットフォーム
- Windows ・ Mac OS X ・ Linux の 3 種類の OS 環境が正式にサポートされており、リリースは同時に行われる。Solaris 向けのバイナリも公式サイトの FTP サーバーで配布されている。また、公式ではないものの、BSD やその他の UNIX のバイナリを配布するサイトもある。Firefox が様々な OS に対応している理由としては、XUL や XPCOM といった OS に依存しない技術を採用している点が挙げられる。
- ライブブックマーク
- 標準でフィードに対応している。配信されたデータをブックマーク形式で展開することによりブラウザからそのまま活用することができるようになっている。
- プライバシー管理
- クッキーやページ履歴、入力履歴などの管理を行える。クッキーについては、クッキーの許容・拒絶をページ単位で管理でき、これにより、クッキーによる個人の追跡などを防ぐことができる。
- セキュリティ
- JavaScript の制御機能や SSL、EV 証明書、TLS のサポート機能、証明書管理機能などを備える。特に、SSL/TLS 通信では、信頼するルート証明書を用いて真正性を確認できた場合には、ロケーションバー(アドレスバー)の背景色が変更され、ユーザーに対してサーバー証明書の有無やその真正性を分かりやすく示している。
- アドオン
- Firefox に機能を追加するプログラムの総称。Firefox 1.5 までは拡張機能と外見のみを変更するテーマを別々に管理していたが、Firefox 2.0 より二者をアドオンとして統合し、言語パックとして機能する拡張機能を単独のカテゴリに変更した。また、Firefox 3.0 からはプラグインと拡張機能の検索機能が追加されている。
- 拡張機能
- Firefox の機能を拡張するものである。必要なファイルがパッケージにされた XPI 形式で配布され、クリックするだけで簡単にインストールすることができる。タブブラウズ機能の強化やマウスジェスチャなどの操作性を向上させるものや、FTP クライアントやフィードリーダー機能など他のアプリケーションを統合したものなど、多種多様な拡張が配布されている。このような拡張機能を自由にインストールして、自分にあった構成を作れることは Firefox の大きな特徴である。XPI は XUL アプリケーション共通の規格のため、Mozilla Thunderbird など Firefox 以外の XUL アプリケーションにも対応しているものもある。Google など主要ポータルサイトも従来 Internet Explorer だけに提供していた拡張ツールバーの Firefox 版を提供するようになった。
- テーマ
- JAR のパッケージで配布されるが、これもまた実体は XPI である。自分好みのテーマをインストールすることにより、ブラウザの外観を変更できる。拡張機能と同じように共通で利用できるものも存在するが、Firefox 用と Thunderbird 用などを分けて同じデザインを配布しているものも存在する。
- 言語パック
- ユーザインタフェースの言語を変更することができる。複数の言語パックを導入し、必要に応じて切り替えて使用することも可能である。インストール方法や配布形態などは一般的な拡張機能と変わらないが、言語パックは言語パックとして特別なカテゴリで管理されるようになっている。
- 更新とインストール
- 拡張機能・テーマ・言語パックの更新が検出されたときは更新というカテゴリにまとめてピックアップ表示され、その中からユーザーが選択したもののみを手動で更新させるようになっている。これによりどのアドオンが更新されたかを一目で把握できるだけでなく、仕様などの問題から更新したくないものは更新させないことができるようになっている。また、再起動を行わないと新規インストール・更新が完了しないものに関してはインストールというカテゴリでピックアップ表示され、この画面からセッションを保持した状態での再起動操作を実行できるシステムも実装されている。
- 検索プラグイン
- ナビゲーションツールバー上の検索バーから直接ウェブサイトを検索できる機能。Google や Yahoo!、Amazon などの検索プラグインが登録されている。ウェブ上で公開されている検索プラグインを導入することでさらに多くの検索を利用することができる。Firefox 2.0 からは従来の Sherlock 形式に加え、OpenSearch 形式の XML フォーマットに対応した検索プラグインも提供されている。
- スマートキーワード
- ロケーションバーから直接ウェブサイトを検索できる機能。Google、Yahoo!、Wikipedia などを検索窓に登録しておけば、それらで瞬時に検索することが可能である。また、この機能については簡単な記述で設定の変更が可能であり、内部ウェブサーバーに検索エンジンを使っている場合なら簡単にその検索エンジン向けに対応することが可能である(ただし、Firefox 2.0 以降の初期設定では何も登録されていないため、手動での作業が必要)。
- プラグインサポート
- Flash Player、Java Runtime Environment、Adobe Reader などのプラグインがリリースされており、マルチメディアを利用したウェブページの閲覧が可能である。
- Breakpad
- クラッシュ時のエラー内容を開発元へ自動でフィードバックする機能である[2][3]。Firefox 1.5/2.0 系では Talkback が導入されていたが、Firefox 3.0 にて Breakpad に取って代わられた。
- 自動アップデート
- セキュリティアップデート版や新バージョンに簡単に更新できる。定期的にバージョンの確認を行い、新バージョンが利用可能なら差分ファイルを自動的にダウンロードし、インストールの準備ができたことを通知する。更新作業まで自動的に行わせるように設定することもできる。Firefox 1.5 系 → Firefox 2.0 系など、メジャーアップデートでは差分更新を行わないようになっているが、代わりにアップデートを促すメッセージが表示される。Firefox 1.0 ではソフトウェアの更新を通知してユーザーが手動で上書きインストールを行う仕組みであったが、Firefox 1.5 で機能が強化され、自動インストールが可能となった。
- OS によっては、OS 標準のパッケージ管理システムがアップデートを促す仕組みになっている。
- セッションマネージャ
- Firefox 終了時の状態(開いているウィンドウ・タブやタブごとの履歴など)を保持する機能である。アドオンや Firefox 本体のアップデートによる再起動や、Firefox の異常終了時に次回起動では前回終了したときの状態を復元する。
- フィッシング詐欺サイト警告機能
- フィッシングの疑いのあるサイトにアクセスすると警告画面を表示する。標準状態で使用する詐欺サイトのリストデータは Google が提供しているものを使用している。このリストデータは定期的に更新される。また、Google のサイトに直接サイトデータを送信して確認する設定もオプションで選択できるようになっている。この機能は Mozilla 提供のテストページにアクセスすることで確認可能である。Firefox 2.0 から搭載された。
ウェブ標準のサポート
Firefox は、HTML、XML、XHTML、SVG 1.1 (一部)[4]、CSS、JavaScript、DOM、MathML、DTD、XSLT、XPath, アルファ合成を含む PNG など、多くのウェブ標準をサポートしている[5]。
また Firefox は、例えばクライアント側のストレージ[6][7]や canvas要素[8]などのように、WHATWG によって作成された標準企画案の内容もサポートしている。Firefox 3.5 から HTML5 の video 要素がサポートされたことが話題となった[9]。
Firefox 3 ではレンダリングのテストケースである Acid2 に合格している。</br> Acid3 においては Firefox 6 以降にて100/100スコア達成が確認されている[10]。
セキュリティ
どうか、せめてあなたさんだけでも、この記事のことをいつまでも憶えていて下さいますように。
もしこっそりと編集してくれるならば、新しい内容をちょっとでもいいから加えてくれると嬉しいです。
Firefox はサンドボックスによるセキュリティモデルを使用しており、また、他のウェブサイトから読み込まれたデータやスクリプトについて同一生成元ポリシー[11]に基づく制限を設けている。
ウェブサーバとの通信を強度の暗号化によって守るために、HTTPS プロトコル使用時には SSL/TLS が使われる[12]。これはウェブアプリケーションが認証目的のスマートカードを使用する場合にもサポートされる[13]。
Mozilla Foundationは Firefox の中から深刻なセキュリティホールを発見した報告者に対して報奨金制度を設けている[14]。また概念実証コードの作成が潜在的な攻撃者に短期的な有利性を与えないようにするために、セキュリティバグの取り扱いに関する公式ガイドラインでは早期の情報開示を思いとどまるよう求めている[15]。
Firefox は公に知られている未修正の深刻な脆弱性数が Internet Explorer より少ないことが理由で (en:Comparison of web browsers参照) 、Internet Explorer から Firefox に乗り換える動機としてセキュリティ向上がよく引き合いに出される[16][17][18][19] 。
ワシントン・ポストは、未修正の深刻な脆弱性に関する実証コードが Internet Explorer で利用可能だった期間は2006年は計 284 日だったとレポートしている。これに対して、未修正の深刻な脆弱性に関する実証コードが Firefox で利用可能だったのは Mozilla がこの問題を修正するまでの 9 日間であった[20][21]。
2006年のシマンテックの調査によると、同年9月に他のブラウザと比較して、Firefox はベンダーに認知された脆弱性の数を上回ったが、これらの脆弱性は他のブラウザよりも遥かに素早く処理されていた [22]。また、後にシマンテックは、セキュリティ研究者によって脆弱性の数を Internet Explorer と比較したところ、Firefox の方がより少ないセキュリティに関する脆弱性を有していたことが明らかとなった、と発表した [23]。
脆弱性が発見され、それによって著しい社会的影響を与えたケースもある[24]が、発見から僅かの間に修正されている[25]。 2008年3月26日の時点では Firefox 2.0 には 4 つの未パッチの脆弱性があり、デンマークのセキュリティ調査会社である Secunia の評価によると、そのうちの危険度は less critical (低)が最高である[26][27]。
Firefox はOS と統合されておらず、しばしばセキュリティホールの原因となる VBScript や ActiveX を標準でサポートしていない。そのため、それらを悪用するコンピュータウイルスやスパイウェアが侵入できないことから、Firefox は Internet Explorer よりも安全だと言われている[28][29]。実際に、OS との統合や ActiveX の危険性については Internet Explorer の開発者も認識している[30]。
Firefox は脆弱性の対応が競合製品と比較してきわめて早いため未対応の脆弱性は少ないが、発見される脆弱性の報告数は逆に競合製品より多い傾向がある[31]。そのため、Internet Explorer 等と比較して旧バージョンを使用する危険性が高いといわれる。Firefox のシェアの増加にともなって攻撃にさらされる機会も増えているため、常に最新版を使用することが重要になっている。この点において、パッケージ管理システムが充実している OS では、最新の Firefox に自動的にアップデートすることができる。
また、最新版のウェブブラウザを利用していても、OS やコンポーネント側にセキュリティホールが存在すれば、そこを突かれる可能性がある。例えば、Windows ではアニメーションカーソルの脆弱性[32]により、クラッカーの手によってリモートで制御される危険性があるとの発表がなされている。特にブラウザ等を管理者権限で実行していれば、クラッカーに管理者権限を奪取される危険性がある。この脆弱性は Windows のアニメーションカーソルおよびアイコンのデータ検証方法に起因しているため、Firefox を利用していても攻撃を防ぐことはできなかった[33]。Mozilla Foundation の Schroepfer 氏は、Firefox 2.0.0.3 の次のリリースでの脆弱性の回避策を検討しているとしつつも、全ての Windows 利用者に対して OS のセキュリティアップデート[34]を直ちに行うことを推奨するとの声明を発表した[35]。
このように、ウェブブラウザの種類に関わらず OS に最新のセキュリティアップデート(Microsoft Updateなど)を常に適用しておくことは重要である。
アドオンやプラグインのほとんどは Mozilla ではない第三者より作成されている。よってそれらに関するセキュリティは Mozilla の管轄ではない。プラグインにセキュリティホールが発見されても、プラグインによっては自動でアップデートされないものもあるため、利用しているプラグインのインシデント情報には注意を払うことも必要である。なお、著名なプラグインには自動通知や自動アップデート機能が搭載されている。
また Windows 版 Firefox にビルトインで組み込まれている Windows Media Player のプラグインは自動更新の対象になるものの、コンテンツを取り扱うのは Windows OS 本体なので前述の通り OS のアップデートを必要とする。
2008年5月7日、Mozilla が配布していた Firefox 2 用アドオンであるベトナム言語パックに、ダウンローダが混入されていた事が判明した[36]。Mozilla ではこの問題に対して全てのアドオンについて毎日ウイルススキャンを行う事を検討している事をBug 432406で表明している。
メモリ消費の削減
Firefox はメモリの消費量が多く、アドオンと設定によっては数百MB–1GB以上になることもあるため、それがユーザ離れの原因にもなっていた。
原因としては Firefox 3.x から Firefox 4 へのアップデートの際、UI の変更、大量の新機能の追加、新たな JavaScript エンジンの実装、セキュリティの強化など様々な変更を行い、メモリ消費量は格段に上がったといわれている[37]。
Mozilla Foundation はこの問題を認識しており、2011年6月から MemShrink というプロジェクトを立ち上げ、対策を行っている[38]。 MemShrink は自らの取り組みを、毎週自らのブログで公開している。すでに MemShrink の実績はその後のアップデートに生かされており、記憶領域の使い方、機能の見直しや変更などで、メモリ使用量を減らしつつある[37]。
リリースサイクル
Mozilla は Firefox 4 のリリース以降、Google の開発している Google Chrome のようにラピッドリリースを行うと発表した。そのため、セキュリティーアップデートや脆弱性の修正といったマイナーなアップデートは Firefox 4 で終了する。Firefox 4 の13週間後の2011年6月21日(米国時間)に Firefox 5 がリリースされた。Firefox 5 から 6 の間は例外的に8週間だが、Firefox 6 以降は基本6週間ごとに最新版がリリースされ、2011年中には Firefox 9 までアップデートされた[39]。以後、2013年12月までにバージョン25までのリリースが予定されている。
ラピッドリリース移行後、以下の五種類のエディションがリリースされるようになった[40][41][42]。下の物ほど不安定で更新頻度が高く、Firefox Beta (ベータ版) では正式版の次のバージョン、 Aurora (アルファ2版) ではベータ版のさらに次のバージョン、 Nightly (アルファ1版) ではそのさらに次のバージョンが開発されている。 Firefox Beta は原則毎週更新、 Aurora 及び Nightly は原則毎日更新。開発中の新機能の追加は主にアルファ版で行われ、ベータ版では基本的にアルファ版で加えられた変更へ安定性や互換性の修正が行われる。2014年11月10日より、AuroraからDeveloper Editionに名称が変更された[43][44]。
このラピッドリリースの開始に伴い、企業や自治体などでのブラウザサポートに不安が生じていることから、延長サポート版となる ESR (Extended Support Release) が用意されることになった。最初の ESR は Firefox 10 となり、以後正式版リリース8回ごと(バージョン17、24…)に ESR がリリースされる。ESR はリリースから54週間(約12か月半)のサポートが行われる。その間、通常リリースと同様に6週間毎に修正版のリリースが行われる。バージョンナンバーは XX.0.Y(XXがメジャーバージョン、Yがリビジョン番号、0から8)となる。ESR が用意されるのは Windows 版、Mac 版、Linux 版のみ。詳細はESRのダウンロードを参照。
- Firefox ESR(延長サポート版)
- Firefox(正式版)
- Firefox Beta(ベータ版)
- Firefox Developer Edition(アルファ2版)
- Nightly(アルファ1版)
歴史
ソースコードの公開
1998年当時、Netscape が九割近くのシェアを持っていたが、マイクロソフトの Internet Explorer が無料でかつ Windows にバンドルされていたために、凄まじい勢いでシェアを獲得しつつあった。
そのような背景の中で1998年1月22日、ネットスケープは Netscape Communicator 5.0 のソースコードを公開し、オープンソース化することを発表[45]。1998年2月23日、ネットスケープが公開するオープンソースコードを共同開発するために mozilla.org が立ち上げられた。 そして1998年3月31日、Netscape Communicator 5.0 のソースコードが公開される[46][47]。
Phoenix - ブラウザの分離
オープンソースとして開発されたMozilla スイートは、Netscape Communicatorと同様にウェブブラウザ機能やメール・ニュース機能、ウェブページ作成機能など多くの機能を含んだインターネットアプリケーションスイートであったが、動作が重くソースコードも複雑であった。 そこで2002年中頃から、Mozillaスイートも開発を継続しながら、ウェブブラウザ部分(Mozilla Firefox)とメール・ニュース部分(Mozilla Thunderbird)を個別に開発することになった。
この戦略には、アップルが同年1月に発表したブラウザ、SafariがMozilla Organizationの開発しているGeckoではなく、KDEプロジェクトが開発しているレンダリングエンジンKHTMLを採用したことが同じく絡んでいるとされる[48]。「軽量・高速性」への需要は、アプリケーションスイートとして開発されていたMozillaには満たせないものであった。
そのようにして誕生した軽量なブラウザはPhoenixと名付けられ、2002年9月にリリースされた最初のバージョン 0.1 から 0.5 まで用いられた。しかし、この名称はPhoenix Technologies社の商標権を侵害することが判明したため、変更せざるを得ない状況に追い込まれた。
こうして次項にも述べられる名称、Firebirdという名称が採用されることとなった。プロダクト名としてのPhoenixは放棄されるも、開発ロードマップ上は、継続的にPhoenixという名称が使用された。
Firebird - ブランディング戦略の発表
ユーザからどのような名称がよいかなどを投票で集め、かつ商標権に抵触しない名称を考慮した結果、2003年4月に Firebird という新名称が決定した。しかしこの名称が新たな問題を引き起こしてしまうこととなる。Firebird という名前が、Mozilla と同じくオープンソースで開発されているリレーショナルデータベースプロジェクトの名称であることが判明し、同データベース Firebird プロジェクトから Mozilla Organization に攻撃的な形で強い苦情があった。これを受けて Mozilla Organization は Mozilla Branding というブランディング戦略を発表した。
Mozilla Branding で述べられていたことは次のようなものである。
- Mozilla プロジェクトはメインで開発している Mozilla を 1.4 まで開発する。その後は Firebird 及び同じく Mozilla 派生のスタンドアロンメーラ、Thunderbird をメインに開発していく。
- 開発体制がシフトしたあとは、Firebird/Thunderbird はそれぞれ Mozilla Browser/Mozilla Mailと名称を変えて開発していく。
- それまでの措置として Firebird/Thunderbird を Mozilla Firebird/Mozilla Thunderbirdと呼ぶ。
このブランディング戦略によりデータベース Firebird プロジェクトとの名称問題は沈静化した。2003年5月には、Firebird として初のリリースとなる 0.6 が登場した。
その後、Firefox 1.0 系列のプロダクトは、Mozilla 1.7 系列の基盤に即すものとする方針となった。
Mozilla Firefox
ブランド戦略により、Firebird という名前は一時的なものとなった。しかし Mozilla 1.4 がリリースされた後も依然として Mozilla Browser という名称変更が行われる気配がなかった。Firebird の完成度がメインプロダクトとして機能するほど充分な状態になかったことが原因であったが、さらに Firebird という名称が使われ続ける原因となる Mozilla Foundation の設立である。
2003年5月末に起こった AOL とマイクロソフトの和解により、AOL 傘下のネットスケープとマイクロソフト間で起こっていた反トラスト法訴訟などがすべて取り下げられた。また同時に、Internet Explorer を数年に渡りロイヤリティフリーで使うという契約を結んだことにより、ブラウザを提供するネットスケープの存在価値が危ういものとなった。これはネットスケープのコードベースにもなっている Mozilla の存在価値をも揺るがす問題であった。こうした事態を受けて 2003年7月、Mozilla Organization は AOL から資金提供を受け、Mozilla の開発を支援する団体である Mozilla Foundation を設立した。
Mozilla Foundation の設立により、ネットスケープ社が担っていた「エンドユーザへのソフトウェア提供及びサポート」という目標が Mozilla Foundation にも覆い被さることとなった。それまでネットスケープ社がリリースしたもののサポートを含め、Mozilla Foundation は Mozilla をその後もリリースしていかざるを得ない状況となってしまった。これにより4月に発表されたブランドにおける「Mozilla Firebird/Thunderbird への開発体制移行」が閉ざされてしまうこととなった。
これにより、一時的とされていた Firebird という名称を使い続けることに対する懸念が生まれた。そのため同年11月頃から開発チームが新たな名称への変更をするための動きが水面下で行われた。商標に関するトラブルはもちろん、他のプロジェクトで使われている名称との衝突を避けるため、念入りにリサーチが行われた結果、Mozilla Firefox という名称がこのブラウザの正式名称となることが決定し、2004年2月には Mozilla Firefox 0.8 がリリースされた。
このブラウザの名称にまつわる問題は、Mozilla Firefox という名前に落ち着くことで解決となった。名称の由来はレッサーパンダ (Red Panda) の別名からきている[49]。
市場シェア
バージョン別の市場シェア(Net Applications 社 2013年12月[50])
バージョン | シェア | 前月比 |
---|---|---|
Firefox 3.6 | 0.29 % | |
Firefox 10 | 0.12 % | |
Firefox 11 | 0.12 % | |
Firefox 12 | 0.34 % | |
Firefox 13 | 0.12 % | |
Firefox 15 | 0.14 % | |
Firefox 16 | 0.18 % | |
Firefox 17 | 0.24 % | |
Firefox 18 | 0.12 % | |
Firefox 19 | 0.13 % | |
Firefox 20 | 0.17 % | |
Firefox 21 | 0.21 % | |
Firefox 22 | 0.21 % | |
Firefox 23 | 0.28 % | |
Firefox 24 | 0.48 % | |
Firefox 25 | 7.48 % | |
Firefox 26 | 6.60 % | |
Firefox 27 | 0.39 % | |
全てのバージョン | 18.35 % |
ウェブブラウザ全体でGoogleのGoogle Chrome に続き、3番目のシェアを獲得している。
また多くのLinuxディストリビューションにおいて、Firefox やそれをベースにした Iceweasel 等がデフォルトのウェブブラウザとして採用されている。
表記・略称など
Firefox は「FireFox」「FireFOX」「FIREFOX」「Fire fox」「Fire Fox」などと表記されることがあるが、正式にはこれらは全て誤表記である。また、日本のみならず英語圏などでも「FF」と略記されることがあるが、略称としては「Fx」あるいは「fx」が推奨されている[51]。しかし、日本や中国においては「火狐」や「狐」と称されることもある。また、Mozilla Japan は狐をモチーフとした公認のマスコット「フォクすけ」をプロモーションに使用しており、Firefox 3 公開時には日本では「今度のキツネは」というコピーを含んだ広告を山手線、中央線内で流した[52]。
システム要件
Firefoxのソースコード自体は、様々なプラットフォーム向けにコンパイル可能である。しかし、公式に配布されているバイナリは以下のプラットフォーム向けに限られている。
Windows | Linux デスクトップ | OS X | Android[54] | |
---|---|---|---|---|
CPU | Pentium 4およびそれ以降のSSE2対応プロセッサ | Intel プロセッサ | ARMv7 CPU (ARMv6は2015年以降サポートされない[55]) | |
メモリ | 512 MB | 384 MB | ||
ハードディスクの空き容量 | 200 MB | 24 MB | ||
OS | XP SP2 (デスクトップ) Server 2003 SP1 (サーバ) およびそれ以降 |
以下のライブラリまたはパッケージを含むもの
|
OS X 10.6以降 | 2.2以降[54] |
Android版においては、幅 320 ピクセル×高さ 240 ピクセル以上の画面が必要である[54]。
OSのバージョンごとのサポート
以下は2014年10月現在でのサポート状況である。
OS | 利用可能な最新のFirefoxのバージョン | サポート状況 | |
---|---|---|---|
Microsoft Windows | XP SP2, Server 2003 SP1およびそれ以降 | 34.0.5, 31.3.0esr[53] | 2004年以降 |
2000, XP (RTM, SP1), Server 2003 RTM | 10.0.12esr,[56] 12.0 | 2004年から2013年まで | |
NT 4, 98, 98 SE, ME | 2.0.0.20 | 2004年から2008年まで | |
95 | 1.5.0.12 | 2004年から2007年まで | |
OS X | 10.6 – 10.9 | 34.0.5, 31.3.0esr[53] | 2009年以降 |
10.5 (Intel) | 10.0.12esr, 16.0.2[57] | 2007年から2013年まで | |
10.4 – 10.5 (PPC) | 3.6.28[58][59] | 2005年から2012年まで | |
10.2 – 10.3 | 2.0.0.20 | 2004年から2008年まで | |
10.0 – 10.1 | 1.0.8 | 2004年から2006年まで | |
Linux | デスクトップ | 34.0.5 (i686), 34.0.5 (x86_64),[53] 31.3.0esr (i686), 31.3.0esr (x86_64) | 2004年以降 |
Android 2.3以降 | 34.0 | 2011年以降 | |
Android 2.2 | 31.0[60] | 2011年から2014年まで | |
Firefox OS | 32.0 | 2013年以降 |
CPU アーキテクチャ
2014年10月現在、Firefoxの64ビットビルドはLinuxおよびOS X向けに限られており、Windows向けビルドは32ビットのみである[61]
OS | 32ビット版ビルド | 64ビット版ビルド |
---|---|---|
Linux[1] | はい | |
OS X[2] | はい | |
Windows[3] | はい | Nightlyのみ[62] |
- 注
Linux: Firefox 4以降、Linux向けにはtier 1として64ビット版ビルドが公式に提供されている[61][63][64][65]。SUSE Linux、Red Hat Linux、Ubuntuでは、Mozillaによる公式サポートに先駆けてベンダーによって64ビット版ビルドが提供されていた[66][67][68]
OS X: Firefox 4以降、OS X向けの公式ビルドはUniversal Binaryであり、32ビット版と64ビット版が同梱されている。ブラウザプロセスは64ビット、プラグインプロセスは32ビットで動作しており、64ビットに未対応のプラグインを利用することが可能である[69]。
Windows: 32ビット版ビルドのFirefoxは、32ビット版、64ビット版いずれのWindows上でも利用可能である[53]。2014年10月現在、プラグインの対応状況やそのほかの問題のため、リリース版、Beta、Auroraでは32ビット版ビルドのみが提供されており[61]、Nightlyでのみ64ビット版ビルドが提供されている[70][71]。2012年にWindows向け64ビット版ビルドの提供を取りやめる意向を表明したが[62]、後に撤回された[72]。Mozillaは、2015年3月31日リリースのFirefox 37より、Windows向けの64ビット版ビルドを提供することを予定している[73]。
非公式ビルド
以下のプラットフォームにはMozillaによる公式ビルドは提供されていないが、有志によって非公式ビルドが提供されている。
- FreeBSD[74]。
- NetBSD[75]
- OpenBSD[76]
- OpenIndiana[77]
- HP-UX 11i向けでは、ヒューレット・パッカードによってビルドされたFirefox 3.5.9が最新である[78]
- RISC OS向けに、Firefox 2.0がポートされた[79][80][81][82]
- Metro向けプロジェクトはベータ版のリリースまで到達していたが[83]、2014年3月にキャンセルされた。
ライセンス
Firefoxのソースコードはフリーソフトウェアで使われるライセンスのひとつであるMozilla Public License(MPL)を採用している。Firefoxのソースコードを利用して開発された派生のソフトウェアには後期のNetscapeや、Iceweasel、Songbirdなどがある。
当初はMPL単独のライセンスとして提供してきたが、フリーソフトウェア財団がMPLについて派生物の作成に制約が課せられているなど、コピーレフトの要素が弱いとして批判した[84]。そこでMozillaはMPL/GPL/LGPL のトリプルライセンスで提供し、利用者はいずれかを選択して利用するということでFirefoxのコピーレフトの要素を強めた。
2012年1月3日にMPLをバージョン2.0に改定し、GPLなどのコピーレフトなライセンスとの互換性を強化させた[85]。これを受けて2012年6月5日にリリースされたFirefox 13 から再びMPLの単独ライセンスとして提供されている[86]。
トレードマークとロゴ問題
「Mozilla Firefox」とオフィシャルロゴは登録商標であり、 特定の条件の下でのみ使用が許可される。Firefox の名前とブランドを使ったオフィシャル・バイナリは、改変を加えなければ誰でも配布することができるが、ソースに変更を行った場合制限が課される[87]。このような一部のディストリビューションに「Firefox」の商標を使わせない方針は論争を呼ぶことになった。この論争について Mozilla Foundation の CEO であるミチェル・ベイカー (Mitchell Baker) は2007年のインタビューで「ソースコードを改変しない場合は自由に Firefox 商標を使用できる。Mozilla Foundation の狙いは Firefox のユーザエクスペリエンスを確固たるものにしたいということだけだ」と述べている[88]。
Firefox のソースコードはオフィシャル以外のビルドが作成できるようにブランドの有無が切り替えられるようになっている。ソースコードを改変した派生版や、アルファ版・ベータ版のリリースに使われる。ブランドを付けないビルドでは、自由に配布できる代替ロゴと、元になった Firefox のバージョンに対応する名前が付けられる。Firefox 1.5/2.0/3.0 の派生版はそれぞれ Deer Park/Bon Echo/Gran Paradiso と呼ばれている。
コミュニティ版用の例外を除いては、Firefox の名前をつけた派生版はソースコードの変更に関して Mozilla からの許可が必要であり、またその場合も 全ての ブランディングを適用しなければならない。例えば、オフィシャルロゴは使わずに Firefox の名前だけを使うといったことはできない。Debian は2006年に Debian Free Software Guidelines の制約から、Firefox のオフィシャルロゴを使わないと決定したが、Mozilla Foundation はDebian 版 Firefox においてロゴのみの変更は認められず、商標ガイドラインを遵守しオフィシャルロゴを使うか、Firefox の名前を使わないか選択しなければならないと伝えた[89]。 結局、Debian はこの Firefox を Iceweasel という名前に変更し、独自のロゴをつけることになった。
広告
Firefox は2004年にブレイク・ロス とアサ・ドツレル がマーケティング週間[90]と呼んだ[91]一連のイベントから始まった積極的なマーケティング・キャンペーンに伴って急速に普及し、Firefox 1.0 の登場からの 1 年で 10 億ダウンロードを達成した[92]。
2004年9月12日に Firefox 1.0 のプレビュー版をリリースするとともに、「Spread Firefox」と名付けられたマーケティング・ポータルが開設され、マーケティングについてのいろいろな技術的議論のための中心的な場所が提供された[93]。「Get Firefox」(Firefoxを今すぐ入手)ボタンが改良され、ボタン設置者の「リンク元ポイント」を集計してトップ 250 が閲覧できるようになり、設置者の貢献度が目で分かるようになった。また時には、Spread Firefox チームやメンバーがウェブサイトで結成されたイベントを実行することもあった。
Mozilla Foundation の設立3周年[94]の2006年7月に開始され[95]、9月まで実施された[96]「
脚注
関連項目
外部リンク
- 自由な Web ブラウザ Mozilla Firefox をダウンロード。
- Mozilla Japan(@mozillajp)- Twitter
blakeross.com
2004-07-07 [ arch. ] 2007-02-04