ナルシシズム
ナルシシズム(英語 narcissism)、ナルシシスム(フランス語 narcissisme)(自己愛)とは、防衛機構の一種である。自己の容貌や肉体に異常なまでの愛着を感じ、自分自身を性的な対象とみなす状態をいう。ナルシシズムを呈する人をナルシシスト (narcissist) という。
ナルシズム (narcism)、ナルシスム (narcisme)、ナルシスト (narcist) と訛ることがあり、いくつかの言語ではこちらの形のほうが一般的である。
日本では「うぬぼれ」「耽美」といったニュアンスで使われることが多い。 思春期から青年に見られる。
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目次
ナルシシズムの動態
原始的防衛機構
ナルシシズムは分離と関連した防衛機構である。ナルシシストは他の人、環境、政党、国家、民族といったものを、よい要素と悪い要素が混じったものとして見ることができず、観念化かデバリュエーションのどちらかに偏る。すなわち、対象を完全な善か完全な悪に振り分けてしまうのである。悪いアトリビュートは常に投影されるか、別のもので置き換えられるか、外的要因に帰せられる。よいアトリビュートは、膨張した(誇大に考えられた)自己認識を支持し、自信喪失や幻滅を遠ざけるものとして内面化される。
ナルシシストは自己愛備給、すなわち注目されることを求める。それによって傷つきやすい自尊心を制御するのである。
家族の機能障害
ナルシシストの多くは正常に機能していない家庭に産まれる。ナルシシストを生み出す家族の特徴は、家族に問題があることを内外に対して強く否定することである。このような家庭では虐待が珍しくない。子供は優秀になることを望まれるが、それはナルシシズムの目的に至る手段としてでしかない。両親は、貧困や未熟な感情、そしてナルシシズムといった素因をもち、そのために、子供の能力の限界と感情の要求を正しく認識し尊重することができない。その結果、子供の社会化は不完全になり、アイデンティティーに関わる問題が起こる。
分離と個体化
精神動態理論によると、両親、特に母が社会化を促す最初の要素になる。子供はもっとも重要な、人生のすべてに関わる疑問の答えを母に見出す。その疑問とは、自分はどれくらい愛されているのか、世界はどれくらい理解できるのか、といったことである。より後の段階では、精神的な結合に加えて身体的な結合を漠然と望む初期の性欲が、男の子なら母に向けられる。ここで母は概念化・内面化され、精神分析で「超自我」と呼ばれる良心の一部になる。
成長は母から離れることとエディプス・コンプレックスの解決、つまり性的関心を社会的に適切な対象へ向けなおすことを含む。これらは自立して世界を探求し、自我を強く意識するために重要である。どの段階が妨げられても、正常に分化することはできなくなり、自立した求心力のある自我は形成されず、他人への依存と幼稚症を呈する。ときには子離れしない母によってその障害が起こされることもある。
子供が親から離れ、それに続いて個体化をとげることは広く認められている。ダニエル・N・スターンは、著書“The Interpersonal World of the Infant” (1985年)で、子供は最初から自我をもち、自分と親を区別するといっている。
幼年期のトラウマと自己愛型の発達
幼年期の虐待とトラウマは、模倣戦略と、ナルシシズムを含む防衛機構を働かせる。模倣戦略のひとつは、内面に引きこもり、絶対に信頼できる源泉から、つまり自らの自我から満足を得ようとすることである。拒絶と虐待を恐れる子供は、他人に触れることを避け、愛と充足の妄想に逃げ込む。繰りかえし傷つけられることが自己愛性人格障害の誘引になる。
研究の流派
フロイトとユング
ジークムント・フロイトはナルシシズムについて初めて一貫した理論を唱えた。フロイトは主体指導型リビドーから客体指導型リビドーへの移行が両親の働きに媒介されると説明した。この移行がうまく進まないと、神経症が引き起こされる。だから、子供は両親から愛されず軽んじられると、ナルシシズムに退行する。
一次性ナルシシズムの発生は、子供が頼るべきものを探して、手元にある自我を選び、満足したと感じるという、適応的な現象である。しかし、後の段階から二次性ナルシシズムに退行することは適応的でない。それはリビドーを「正しい」対象に向けられなかったことの現れである。
ナルシシズムが遷延すると、自己愛性神経症が成立する。ナルシシストは自我を刺激して喜びを得ることに慣れ、現実よりも妄想を、現実的な評価よりも誇大な自己認識を、普通の性行為よりもマスターベーションと性的妄想を好むようになる。
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関連項目
参考文献
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外部リンク
- A Primer on Narcissism
- Self-Esteem and Narcissism: Implications for Practice
- Self-Love and Narcissism
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