黒磯小2女児誘拐事件
黒磯小2女児誘拐事件(くろいそしょうにじょじゆうかいじけん)は、2001年8月14日に栃木県黒磯市(現・那須塩原市)で発生した誘拐事件である。
事件の概要
無職の男A(当時22歳)と男B(当時21歳)が、女児(当時7歳)を自動車(Aが運転)に押し込み拉致、アパート(Bの自宅)に監禁した。女児は、祖父の家の前の路上で、妹と水遊びをしていたところだった。
アパートでは、女児の目を粘着テープでふさぎ、両手足を布のベルトで縛って「静かにしろ。静かにしないと死ぬことになる」と脅し、逃げられないようにした。少女を持て余した2人は「いっそのこと殺そうか」などとも言い合ったが 結局、翌日正午過ぎに路上で解放した。その後、女児は自分で自宅に電話をかけ、保護された。
逮捕
栃木県警黒磯署(現:那須塩原署)は2001年8月22日、近所に住む男A(当時22歳)、B(当時21歳)2名を未成年者略取容疑で逮捕した。
- Aは犯行から一週間後に母親に頼んで警察に電話をかけてもらい自首をした。
- Bは逃走の末さいたま市内で逮捕される。
- Aは調べに対し女児誘拐はゲーム感覚で「かわいかったので手元に置きたくなった」と述べる。また「趣味はアニメとゲームで、東京で開かれるアニメキャラのコスプレにもよく参加していた。架空の世界の主人公になりきるのが好きだった」と、自らの性癖を明かし、捜査員を呆れさせた。親しい友人に「今度、小学生を狙おうかな」とも漏らしていたことから、現実と虚構の陥穽で“ゲーム”感覚の犯行に及んだとみられた。
裁判
- 裁判中検察官に「新潟の女性監禁事件の(監禁期間であった)9年を超えようと言ったんですね」と問われると「はい」とA被告は答えている。その事件についても「正直、うらやましいと思ったことはあります」と答えている。
- B被告が犯行前に被害者を縛るためガムテープなどを購入したホームセンターで首輪を買うことも提案していた事実が明らかになる。
- B被告が事件前に小学生女児を物色し、小学校の周辺をうろついていたことが明らかになる。
- 検察側は論告で「幼い被害者に与えた精神的影響は重大。少なくとも被害者が高校を卒業するまでは刑に服する必要がある」と述べた。
判決
2003年3月20日に宇都宮地方裁判所[1] にて、主犯格A懲役8年、Bに懲役7年6か月の実刑判決が言い渡された(求刑はいずれも懲役10年)。(現在は出所。)
事件発生当時の報道について
主犯格A(当時22歳)の趣味が美少女ゲームであることや、コミックマーケットに参加し同人誌を頒布していたことなどをマスメディアが報じた。例として、『週刊女性』では主犯格の男が恋愛アドベンチャーゲーム「Kanon」を題材に描いた同人誌を「黒磯誘拐犯が描いたロリコン漫画」として取り上げ、「Kanonのタイトルに深い意味が込められている」「劇中の登場人物である『月宮あゆ』が誘拐された女児にそっくりである」「登場人物の『祐一』と犯人Aの名前の音が似ているため、『祐一』は犯人Aの分身である」などとの記事を掲載した[2]。 これに対し、ゲーム業界などからは「漫画・アニメ・ゲーム愛好者に対する偏見を煽っているのではないか」との批判が発生した。
脚注
- ↑ 本来、黒磯市(現:那須塩原市)は宇都宮地方裁判所大田原支部(大田原市)の管轄であるが、 本事件のように合議事件は取り扱っていないため、宇都宮地方裁判所本庁(宇都宮市)が代行している。
- ↑ 「ゲームラボ」の2001年11月号では、当該記事に対する批判が掲載された。