辻元清美秘書給与流用事件
辻元清美 秘書給与流用事件(つじもときよみひしょきゅうよりゅうようじけん)は、2002年(平成14年)に発覚した、社会民主党(社民党)国会議員やその秘書らによる議員秘書給与詐欺事件である。辻元清美ら4名が逮捕され、後に全員が有罪判決を受けた。
事件の概要
2002年3月20日発売の「週刊新潮」は、辻元の秘書給与流用疑惑を報道した。その内容は、以下の通りである。
- 照屋寛徳参院議員(社民党所属)の常勤の私設秘書Hを、辻元は自身の政策担当秘書とした。
- その後、H秘書は照屋の公設第二秘書になったため、辻元の政策担当秘書を辞任した。
- その間のH秘書は「辻元の秘書」としての勤務実態がないにもかかわらず、辻元は「辻元の政策担当秘書としての給与」を月5万円の「名義料」としてH秘書に支払い、それ以外を流用した。
辻元は同日に記者会見を開き週刊新潮の報道を否定したが、3月24日のテレビ朝日の「サンデープロジェクト」では、一部が事実であることを認めた。そして社民党の調査委員会は3月25日に調査報告を発表し、週刊新潮の記事がおおむね事実であることを認めた。辻元は翌日の3月26日に責任を取って議員辞職をした。
4月23日、衆議院参考人質疑について政策秘書らと事前打ち合わせを行い、実際とは異なり政策秘書に勤務実態があったかのように答弁すると決めた。 そして4月25日、衆議院は辻元疑惑を取り上げ、参考人の辻元は「政策担当秘書としての勤務実態はある」と答弁した。
8月19日、元政策秘書(佐々木美枝、邊見眞佐子)に支給された給与全額に利子を加えた 2331万7972円を自主返還。
2003年6月に警視庁が辻元本人や元秘書らに事情聴取。 2003年7月18日、辻元本人と初代政策秘書の佐々木美枝、元公設秘書の梅澤桂子、名義借り指南役とされる土井たか子の元政策秘書の五島昌子の4名が秘書給与詐欺容疑で逮捕された。この逮捕に関しては、疑惑発覚から1年4ヶ月が経過しており、総選挙が近いといわれる時期だったことから、何らかの政治的思惑が絡んでいるのではないかとして筑紫哲也などの著名人や、市民団体が逮捕に疑問を投げかけた。この疑問に対して、東京地検特捜部は、衆議院での答弁から証拠隠滅の恐れがあったため逮捕に踏み切ったと主張した。逮捕後は、逮捕前の任意聴取での「政策秘書に勤務実態はあった」という主張が一転し、辻元、五島をはじめとする4人全員が口裏合わせをして証拠隠滅を図った事実と詐欺容疑を全面的に認めた。
2003年11月20日、東京地裁で公判開始、2004年2月12日、懲役2年執行猶予5年の判決。同月26日に判決が確定した。
裁判では、国民の負託ないし信頼に真っ向から背く背信行為であって悪質というほかない。現職の国会議員で社会的に注目される立場にあったのに両名が共謀して、本件のような悪質な詐欺事件を敢行し,しかも,その犯行後には,辻元が後にみるように虚偽内容の弁解を強弁するという国会議員としてあるまじき無責任な対応をしたため,国民に強い政治不信を招いたこともうかがわれるのであり,本件各犯行が社会に及ぼした悪影響も深刻なものがあるというべきである。と犯行形態・犯行の重大性について位置づけられた。
2009年2月26日、執行猶予期間が満了し、刑の言い渡しが効力を失った。
事件が与えた影響
辻元は本事件の釈明の際に「(秘書給与流用は)一種のワークシェア」と述べ、また落合恵子や佐高信などが辻元逮捕を「国家権力の陰謀」であると発言した。 この事件は、社民党が凋落する大きな要因となった。