稲田朋美
稲田 朋美(いなだ ともみ、1959年2月20日 - )は、日本の政治家、弁護士。衆議院議員(1期)。大場綜が“政治の師匠”と自称するが、当人の認識は不明。
目次
略歴
経歴
- 1977年3月 - 京都府立乙訓高等学校卒業。
- 1981年3月 - 早稲田大学卒業。
- 1982年 - 司法試験合格。
- 1983年 - 司法修習生(37期)。
- 1985年 - 弁護士登録(大阪弁護士会)。
- 1989年 - 弁護士の稲田龍示と結婚。
- 1990年 - 税理士登録、西梅田法律事務所勤務。
- 2004年 - 弁護士法人光明会代表就任。
靖国神社参拝関連訴訟の国側の弁護を手がける。大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判の原告側弁護人(大阪地方裁判所で原告の敗訴)。南京百人斬り競争名誉毀損裁判の原告側弁護人(最高裁判所で原告の敗訴)。自民党国会議員懇談会「伝統と創造の会」会長、中国の抗日記念館から不当な写真の撤廃を求める国会議員の会事務局長、日本会議国会議員懇談会事務局次長、国家基本問題研究所理事、自由主義史観研究会・日本「南京」学会会員、正しい日本を創る会会員、みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会、神道政治連盟国会議員懇談会に所属。
政歴
2005年8月15日、参議院議員の山谷えり子を介し当時自民党幹事長代理の安倍晋三から要請を受け、郵政民営化法案に反対した松宮勲への「刺客」候補として福井県第1区から自民党公認で出馬することを表明。同年9月11日の第44回総選挙では民主党元職笹木竜三や無所属で出馬した松宮らを抑え、次点の笹木に373票差で小選挙区での当選を果たした。後援会「ともみ組」の会長は、渡部昇一。
2006年9月の自民党総裁選では麻生太郎を支持し松本純と立候補届出人を務めた。しかし同年12月に麻生が旗揚げした麻生派ではなく、麻生を破り総理・総裁に就任した安倍の出身派閥であり山谷の所属派閥である町村派に入会。2007年9月の総裁選では福田康夫ではなく、前年に続き麻生を支持。 2006年3月、83会で出版した「UBUDAS」の自身の自己紹介の中で、「総理大臣になりたいか?」との質問に「はい。祖国再建を目標に政治家になった以上、当然目指すべきだと思う。」と回答している。「尊敬する人物は?」との質問には「西郷隆盛」と答えている。
政策・思想信条
自民党国会議員の中では山谷えり子、高市早苗と並ぶ復古主義派の女性政治家。日本の戦争責任については否定的であり[1]、しんぶん赤旗など一部から「靖国派」[2]と呼ばれる一人である。後述の「徴農」発言にみられるように、農本主義的側面も持っている。
東京裁判・南京大虐殺
東京裁判について、「東京裁判はポツダム宣言と近代法の大原則(罪刑法定主義)に違反した二重の意味での国際法違反である。その不当性は、たとえサンフランシスコ平和条約で「受諾」しても減殺されるものではない。」と主張している。 南京大虐殺の否定派である。2007年には映画「南京の真実」製作記者会見に出席し、百人斬りも含め南京大虐殺は虚構であると訴えた[3]。
靖国神社
靖国神社A級戦犯合祀と昭和天皇の参拝中止の間に因果関係がない旨を主張。2006年8月15日靖国神社での日本会議等が主催した集会では、神道に基づく靖国神社の国家護持を提唱し、「首相の靖国参拝を阻止しようとする忘恩の輩(やから)に道徳・教育等を語る資格はない」と発言。『WiLL』9月号では、「靖国神社というのは不戦の誓いをするところではなくて、『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけないんです」と主張。
2008年には映画「靖国 YASUKUNI」制作に文化庁が助成金(750万円)を交付したことに疑義を表明、政治的偏向の有無を確認するため「伝統と創造の会」会長として「平和を願い、真の国益を考え靖国参拝を支持する若手国会議員の会」と共に文化庁に試写会開催を要求した。政治的偏向の無いことが文化庁の助成金交付の要件の一つと規定されているのであるが、「言論の自由を侵す事前検閲ではないか」との批判を報道機関や言論人から受けた。批判について稲田は、税金である助成金が使われており、その基準をクリアした映画なのかどうかを調べるのは国会議員として当然であり、また上映を禁止するものでもなく、批判は事実を捉えていないものであると反論している[4]。
沖縄戦集団自決軍命強制問題
沖縄戦での集団自決が軍命の強制によるものかどうかで、旧日本軍現地指揮官と親族が『沖縄ノート』の著者である大江健三郎と出版社の岩波書店を訴えた大江健三郎・岩波書店沖縄戦裁判において原告側の弁護士であり、また「集団自決」に関する教科書検定の問題に関し、2007年10月15日開かれた自由主義史観研究会のアピール集会で、沖縄県民の要求での教科書修正は政治介入であるとし、「集団自決」は日本軍の強制ではないという認識を示した。
従軍慰安婦問題
2007年6月14日に歴史事実委員会の全面広告に賛同者として名を連ね、米下院121号決議の全面撤回を主張した。
皇室典範改正問題
皇室典範改正問題については、自民党新人議員の中でいち早く反対の立場を表明。慎重審議へ署名した新人議員とともに「伝統と創造の会」を結成し、会長に就任。
選択的夫婦別氏制度の法制化
選択的夫婦別氏制度の法制化は、「家族の崩壊につながりかねない制度は認められない」[5]、「一夫一婦制の婚姻制度を破壊」[6]など反対の姿勢を明らかにしている。男女共同参画社会を見直すべきと主張している。
徴農発言
2006年8月29日、「『立ち上がれ! 日本』ネットワーク」(事務局長・伊藤哲夫日本政策研究センター所長)主催のシンポジウム「新政権に何を期待するか?」でニート問題を解決するために徴農制度を実施すべきだと主張した[7]。「真のエリートの条件は、いざというときに祖国のために命をささげる覚悟があること。そういう真のエリートを育てる教育をしなければならない。若者に農業に就かせる『徴農』を実施すれば、ニート問題は解決する。」と述べ、「徴農」がポル・ポトの独裁や中国共産党による下放を連想させるとして「しんぶん赤旗」で話題になった。
批判
南京百人斬り競争名誉毀損裁判
主任弁護人を務める「南京百人斬り競争名誉毀損裁判」の経過報告を『WiLL』2006年6月号及び8月号に掲載した(最高裁まで争ったが請求棄却、敗訴確定)が、その際「百人斬り」をしたとされる被疑者の刑死写真を原告団(被疑者遺族)に無断で掲載。更に2006年10月13日に九段会館で行われた「(百人斬り裁判を)支援する会の決起大会」においても、同大会配布資料に刑死写真を無断掲載し、「(百人斬り裁判を)支援する会」及び「英霊にこたえる会」より注意を受けたが謝罪を拒否。「英霊にこたえる会」等は、「稲田弁護士は弁護士法第一条(弁護士の責務は人権擁護と社会正義実現)に違反している」として、2006年11月21日大阪弁護士会の綱紀小委員会において懲戒委員会に付託するよう請求した。
加藤紘一実家放火事件に関連して
前出シンポジウムの席上で、靖国参拝反対派の加藤紘一と対談したことが紹介された。その後で、加藤の実家が右翼団体幹部に放火された事件について、「対談記事が掲載された15日『福井新聞』2006年8月15日朝刊に、先生の家が丸焼けになった」と「軽い口調で話し」、「約350人の会場は爆笑に包まれた」という『北海道新聞』2006年9月5日朝刊「自民総裁選の底流 安倍政治の行方1」 ‐ 同紙は会場の様子について「言論の自由を侵す重大なテロへの危機感は、そこには微塵もなかった」と批判した。
人物
- 全国後援会(資金管理団体)「ともみ組」の会長は渡部昇一が務めている。
- 2006年3月、83会で出版した「UBUDAS」の自身の自己紹介の中で、「総理大臣になりたいか?」との質問に「はい。祖国再建を目標に政治家になった以上、当然目指すべきだと思う」と回答している。「尊敬する人物は?」との質問には「西郷隆盛」と答えている。
- 若者の政治教育、人材育成に積極的に取り組んでいる。2008年中川義雄初代塾長のHOKKAIDO政治塾公開講座や2009年TOKYO自民党政経塾・専門政治コースで講師。2010年谷垣総長・古屋圭司学院長の下で丸川珠代・古川禎久・井上信治・松浪健太らと共に中央政治大学院副学院長に就任した。また自身が会長就任した自民党福井県連でふくい政経アカデミー創設し初代塾長務める。
尖閣諸島における民主党の対応について(平成22年10月26日 産経新聞)
≪釈放を検察のせいにするな≫
今回の尖閣事件が政治に突き付けたものは何だったのか。菅直人首相は国会で「中国人船長の釈放については検察当局が国内法に基づいて事件の性質などを総合的に考慮し最終的な判断を行ったところであり、その判断は適切なものであったと認識しております」と繰り返す。国内法とは刑事訴訟法248条「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の情況により訴追を必要としないときは、公訴を提起しないことができる」を指す。この「犯罪後の情況」に当たるというのが検察の説明のようだが、誰も納得しない。たとえそうだとしても、否(いな)、そうだとすれば大問題だ。
まず、那覇地検が釈放の際に示した「わが国国民への影響や日中関係」という政治判断を検察が独自でしたとすれば、検察の越権行為である。柳田稔法相は予算委員会で「その(釈放)報告を聞いて私は指揮権を発動しなかった」と答えている。釈放を事前に知って指揮権を発動しないのは、越権行為を了承し、結果として検察による超法規的な釈放を認めたことになるが、これは、法治国家の法務大臣としてはあるまじき行為であり、その責任は重大である。
さらに、そうした高度な政治判断を政府がしなかったとすれば、民主党の政権交代の大義であった「政治主導」の自殺行為である。いずれにしても、本来なら当然政府が行うべき義務のある政治判断を検察が行ったこと自体に政府は責任を負わなければならない。
≪誤った国際印象与えた重大性≫
判断の中身も間違っていた。事件当初に政府が示した「国内法に基づき厳正に対応していく」との方針で逮捕、勾留(こうりゅう)し、勾留延長までしながら、突如、釈放したことは、日本が中国の不当な圧力に屈したというだけでなく、尖閣諸島領有について中国の言い分にも何らかの根拠があるという印象を世界に与える結果になった。
菅首相は、ASEM(アジア欧州会議)会場で温家宝首相と25分間話したのに、中国漁船事件に抗議せず、当時まだ拘束されていた日本人の解放も要求しなかった。直接会って話をしながら、抗議も要求もしないのは、会わないよりもなお悪い。各国に日本の立場を説明したというが、竹島を不法占拠する韓国に中国の非を訴えてどれほどの意味があったのか。
しかし、今回のぶざまな外交的敗北を、菅政権を責めるだけで終わらせてはならない。これはまさしく、自民党政権下の戦後日本の事なかれ外交のなれの果てと見ることができるからである。
「尖閣諸島は日本固有の領土であり、日中間に領土問題は存在しない」という認識の下に尖閣諸島を「実効支配」してきたというのが政府見解だ。具体的には、政府は尖閣諸島のうち民間人所有の3島を借り上げて賃借権を登記し、維持管理している。ただし、予算委員会で自民党の石原伸晃幹事長の質問に、仙谷由人官房長官が自民党政権下の方針を踏襲して答弁したように、政府は日本人の尖閣上陸を禁じたままである。
今回の事件で、中国は尖閣諸島を実効支配しようとの意思を世界に示したが、日本は、それに対抗できない、すなわち自国領土である尖閣を守る意思と覚悟のない国であるかのような国際発信をしてしまった。中国の東シナ海での行動はますます勢いづくだろう。
≪戦後自民外交の責任も問え≫
こうした状況下では、今の法制度の中でできることをまず行うことだ。自民党政権下の方針を変更して、理由次第では日本人の上陸を許し、普通の国が管理する土地として使用していく。さらには、多くの識者が指摘するように自衛隊を配備し、領土を守る意思を世界に対して鮮明にする。国防上必要な時は外国人の土地取得を制限できる外国人土地法(大正14年制定)を適用できるように政令で尖閣諸島を指定し、外国人が取得できなくすることも可能だ。集団的自衛権行使を可能にする解釈変更も必要だ。
現行法に不備があれば、法整備も急がねばならない。外国人土地法では「なりすまし」外国人の土地取得は防げないので、国防上必要な土地は収用などで国有化できるよう立法措置を講じる。さらに、日本の実効支配の及ぶ範囲で外国人が違法操業すれば罪に問えるようにすることが必要ではないか。共同防衛をうたう日米安保条約5条はあくまで武力攻撃があった場合に発動されるわけで、漁船群が接岸し漁民が大挙、尖閣諸島に上陸するような場合には国内法で対処するしかないのだから。
そして今、自民党がなすべきことは、菅内閣の対応への批判だけでなく、積極的な提言だ。今回の外交的敗北を招いた原因が戦後、自民党政治の事なかれ主義にあった点を真摯(しんし)に反省し、そのうえで自らの領土は自ら守る意思と覚悟を示し、そのための法整備を含めた対策について与野党の議論を呼びかける。まさに、この問題で自民党が保守政党の意思と覚悟をみせることこそ、日本の「保守再生」につながると信じている。(いなだ ともみ)
議員連盟等
- 天皇陛下御即位二十年奉祝国会議員連盟(事務局次長)
- 創生日本(事務局長代理)
- みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会
- 拉致議連
- 伝統と創造の会 会長
- 83会
- 公共放送のあり方について考える議員の会
- 神道政治連盟国会議員懇談会 事務局長
テレビ出演
- 政党は主張する!(日本文化チャンネル桜)
著書
- 『百人斬り裁判から南京へ』 文春新書 文藝春秋 (2007年) ISBN 4166605666
議員連盟
関連項目
脚注
- ↑ 産経新聞 2006年6月3日付け朝刊【正論】「首相の靖国参拝は安全保障問題/本質見極め矮小化した議論排せ」
- ↑ 大日本帝国、特に太平洋戦争当時の状況を美しいもの、侵略戦争であった同戦争を正しかったと考え現在の日本を同様にしようとするグループ。その象徴的行為として靖国神社参拝を推進している
- ↑ 映画「南京の真実」製作発表記者会見の一部(2007年1月24日)
- ↑ 2008年4月9日産経新聞
- ↑ 『読売新聞』2006年1月16日朝刊
- ↑ 『毎日新聞』2007年1月8日朝刊
- ↑ 『産經新聞』2006年9月4日付首相主導で「教育再生」
外部リンク
- 稲田朋美ホームページ(公式サイト)