ジョサイア・コンドル
ジョサイア・コンドル（Josiah Conder、1852年9月28日 - 1920年6月21日） はイギリスの建築家。日本人の建築家を育成し、日本の近代建築の基礎を築き、「日本近代建築の父」と言われる[1]。
経歴
1852年9月28日、ロンドンのブリクストン（22 Russel Grove, Brixton, Surrey）に銀行員の父ジョサイア・コンドルと母エリザとの間に生まれる[2]。ベッドフォード・モダン・スクールで学ぶ[3]。11歳のとき、父が急死。奨学金を得て中学校に進学。1869年からロジャー・スミスの建築事務所で働きながら、サウスケンシントン美術学校で学んだあと、ロンドン大学を卒業した。 1873年、ゴシック・リヴァイヴァル建築で知られたウィリアム・バージェス事務所に入所し2年間働いた。バージェスは、当時知られ始めていた日本の芸術品に夢中になっていたことが、コンドルが日本に興味を抱くきっかけになったと言われる。 1875年、バージェス事務所を退職する。 1876年3月、王立建築家協会主催コンペにゴシック風カントリーハウスで応募し、建築界の新人賞であるソーン賞を受賞する。
1876年10月11日、日本政府と5年間の雇用契約を締結。10月日本に出発。フランス、イタリアでスケッチ旅行。 1877年（明治10年）1月28日、25歳で来日、工部大学校造家学教師および工部省営繕局顧問。学校では歴史や計画、構造などを教え、さらに実際の建築設計に学生を参加させて、実地教育を行った。 1879年(明治12年)、第一回卒業生として辰野金吾、曾禰達蔵、片山東熊、佐立七次郎が卒業。日本に住んでいたが、王立英国建築家協会の会員資格を維持し、1874年にアソシエイトとなり、1884年にフェローになった。
1880年(明治13年)8月、長女ヘレン（日本名はる）が誕生。 1883年、絵師・河鍋暁斎に弟子入りし、「英斎」の号を受ける。 1886年(明治19年)、帝国大学工科大学講師。11月、学生17名を引率してドイッ出張。ロンドンに帰省。 1887年6月、ロンドンから帰国。 1888年（明治21年）3月、講師辞任、建築事務所を開設。
1890年、三菱社の顧問となる。 1893年（明治26年）花柳流の舞踊家、前波くめと結婚。前波くめからは、日本舞踊を習っている。前波くめは菊川金蝶の弟子 1891年(明治24年)、濃尾地震の被害をコンドルは視察する。 1894年(明治27年)、勲三等瑞宝章を受ける。 1914年（大正3年）2月、工学博士号を授与される。 1920年（大正9年）6月10日、夫人くめ死去。6月21日、麻布の自邸で脳軟化症により逝去。67歳。 東京大学工学部1号館前の広場に銅像が立つ。
主要建築作品
- 1883年 鹿鳴館（華族会館）
- 1891年 ニコライ堂（重要文化財）実施設計のみ。
- 1894年 旧海軍省本館
- 1896年 岩崎久弥茅町本邸（現・旧岩崎邸庭園洋館および撞球室、英国ジャコビアン様式）
- 1908年 岩崎弥之助高輪邸（現・三菱開東閣）、エリザベス王朝風のルネサンス様式[4]
- 1910年 岩崎弥之助家廟
- 1913年 三井家倶楽部（現・綱町三井倶楽部）、バロック的構成[5]。
- 1917年 古河虎之助邸（現・旧古河庭園大谷美術館）
弟子
一人娘ヘレン
ヘレン(日本名「はる」)は1880年（明治13年）に生まれた。前波くめがコンドルと結婚した時、下町の養家で育てられていた芸者との子を探し出し、手元に引き取って教育を施し育てた。ヘレンは名士の子女が通う東京女学館を卒業した後、ブリュッセルのフィニッシング・スクールに4年間留学した。帰国の船上、デンマークの名門、グルット家の子息ウィリアム・レナート・グルットに見初められ、1906年（明治39年）にグルットと結婚した。コンドルが病死すると、ヘレンは当時の夫の赴任先であったバンコクから急いで帰国し、葬儀を執り行うと、バンコクに戻った。ヘレンはその後再び日本の土を踏むことはなく、1974（昭和49）年、コペンハーゲンで94年の生涯を閉じた。 コンドル夫妻が亡くなった後、ヘレン（はる）はコンドルが収集していた暁斎の絵画を海外に持ち出した。現在、河鍋暁斎の絵画が海外美術館にあるのはそのためである。コンドルは洋館、くめは和館で暮らしており、ヘレンには厳しい母であったため母娘の関係は親密ではなかったとされる。
菊川金蝶
菊川金蝶は「浜町のお師匠」と呼ばれていて、五代目菊五郎とも親しい舞踊家である。六代目菊五郎がまだ丑之助と呼ばれていた時、金蝶が踊りの手ほどきをした。彼女は六代目坂東三津五郎の高弟で小美津であった。幕末には大名家に出入りしていた御狂言師で長州の毛利家藩主夫人に愛されていた。御狂言師は大名の奥方のために歌舞伎芝居をする女役者のことで、品行が良く芸の達者のものが選ばれ、容貌は重要視されていなかったという。金蝶は高輪の毛利邸に通ううち、奥女中の菊川にかわいがれて、芸名を菊川金蝶としたう。（明治38年没）一時は松林伯円の妻だったこともあったとされる。
著作
- ジョサイア・コンドル『河鍋暁斎の絵と習作』岩波書店,1911年
- ジョサイア・コンドル『The Flowers of Japan And The Art of Floral Arrangement』,1891年
- ジョサイア・コンドル『Landscape Gardening in Japan』Kelly and Walsh, Limited, 1893年
- ジョサイア・コンドル『The Floral Art of Japan』 Kelly and Walsh, Ltd,1899年
- ジョサイア・コンドル『造家必携』加藤良吉,明治19年6月
