落とし穴殺人事件
落とし穴死亡事件とは、2011年8月27日石川県かほく市の海水浴場にて発生した、友人が掘った落とし穴による夫婦死亡事件である。
目次
事件概要
2011年8月27日午後10時ごろ、石川県かほく市大崎の海水浴場で、金沢市の会社員出村裕樹さ ん(23)と妻里沙さん(23)が、砂浜に友人らと掘った落とし穴に転落。通報で駆け 付けた消防署員が2人を引き上げ、病院に搬送したが死亡が確認された。
津幡署によると、落とし穴は約2・4メートル四方で深さは約2・5メートルあった。 2人は落ちた際に砂に埋まっており、死因は窒息死。
落とし穴は裕樹さんを驚かせようと、里沙さんが友人数人と昼間に掘り、カバーをかけ て穴の位置が分からないようにしていたという。なぜ転落したのかなど同署が詳しい状況 を調べている。
解説
喜んでもらうはずのサプライズ演出が信じられない結末を生んだ。誕生日が間近の夫を驚かせようと新妻が友人らと海岸に落とし穴を掘ったが、誤って夫婦ごと落下して共に窒息死。快く手を貸した友人たちも過失致死罪に問われる可能性があるというから、まさに悲劇である。
事故が起きたのは石川県かほく市大崎の海岸。県警津幡署によると27日午後10時45分ごろ、金沢市湖陽の会社員、出村裕樹さん(23)と妻で事務員、里沙さん(23)が掘られた砂浜の穴に転落したと消防に通報があった。駆け付けた救急隊員が2人を引き上げ、病院に搬送したが、死亡が確認された。
転落は27日午後10時ごろだったが、仲間らが救出作業を優先させるなどしたため通報が遅れ、夫妻が引き上げられるまでには2時間近く経過。同署によると、穴は約2・4メートル四方で深さは約2・5メートル。死因は頭から砂に埋まったことによる窒息死とみられる。
9月1日に誕生日を迎える夫の裕樹さんを驚かせようと、里沙さんが27日昼ごろから友人5、6人とスコップやはしごで落とし穴を掘り、ブルーシートで覆って、上から砂をかけて位置が分からないようにしたという。
里沙さんはいったん、海岸から約9キロ離れた自宅に戻り、夫婦で夕食をとった後、午後10時前に裕樹さんを連れて穴のある場所に向かった。
深夜に加え、新月で明かりが乏しく、2人は誤って頭から落下。落ちる際の悲鳴を聞いて、現場近くでスタンバイしていた友人たちがかけ寄った。「発見されたとき、2人は穴の底で足を砂から出している状態だった」(同署関係者)
同署では詳しい状況を調べているが、友人たちは善意で手を貸したとしても、刑事罰を受けかねない状況だ。
日大名誉教授(刑事法)の板倉宏氏は「(痛めつける目的で)故意で行為に及んだというのなら20年以下の懲役の傷害致死罪になりかねませんが、状況から察するに過失致死罪が問われるかどうか。後者なら50万円以下の罰金になります」と話している。
裁判
落とし穴死亡事故、夫の親が妻の両親らを訴える(2012年10月)
金沢市の夫婦(いずれも当時23歳)が2011年8月、石川県の海岸で落とし穴に落ちて死亡した事故で、夫の両親が、穴を掘った夫の友人6人と妻の両親の計8人に対し、計約9100万円の損害賠償を求める訴訟を金沢地裁に起こした。
提訴は10月17日付。訴状などによると、友人と妻は誕生日を控えた夫を驚かせようとして砂浜に深さ約2.3メートルの落とし穴を掘った。妻が夜、夫を連れ出したが、目印を見失って2人とも穴に落下し、窒息死した。
夫の両親は「5時間もかけて掘った大きな穴に転落すれば、人が死亡する可能性があることは十分に予想できた」と訴えている。また、妻が亡くなったため、妻の両親も訴えたという。
この事故で妻と友人6人は重過失致死などの疑いで金沢地検に書類送検されたが、地検は2012年1月、妻を容疑者死亡で不起訴、友人も不起訴(起訴猶予)とした。
落とし穴死亡訴訟、友人らに賠償命令(2014年10月)
石川県かほく市の海岸で3年前、20代の夫婦が落とし穴に転落して亡くなった事故をめぐり、自ら掘った穴に落ちて死亡した妻や一緒に穴を掘った友人らの損害賠償責任が問われた訴訟の判決が28日午後、金沢地裁であった。和田健裁判長は妻の両親と友人6人に計約9100万円の支払いを求めていた夫の両親の訴えを認め、賠償を命じた。
事故は2011年8月27日深夜に起きた。金沢市の会社員出村裕樹(でむらひろき)さん(当時23)と妻(同23)が直径2.4メートル、深さ2.3メートルの落とし穴に転落。崩れてきた海岸の砂に埋もれ、窒息死した。
落とし穴は事故当日の午後2~7時ごろ、「誕生日を迎えた裕樹さんを驚かそう」と考えた妻の発案で掘られ、シートと砂で隠されていた。事故発生時、友人たちはクラッカーなどを持って現場近くで待機していた。
夫の両親は翌2012年10月、「5時間かけて掘った穴に落ちれば死亡する可能性があると予測できたはずだ」として提訴。裕樹さんと一緒に穴に落ちた妻の賠償責任については親が相続している、と訴えていた。これに対し、妻の両親と友人側は「(裕樹さんは)穴の存在に気づきながら、あえて落ちた」「穴の底には安全性を確保するために緩衝材を置いており、転落して死亡するとは予測できなかった」として請求を棄却するよう求めていた。
事故をめぐっては、県警は2011年12月、妻と友人6人を重過失致死と海岸法違反の疑いで書類送検。金沢地検は2012年1月、不起訴処分(妻は被疑者死亡、友人6人は起訴猶予)とした。