伊東線
伊伊東線(いとうせん)は、静岡県熱海市の熱海駅と静岡県伊東市の伊東駅を結ぶ東日本旅客鉄道(JR東日本)の鉄道路線(幹線)である。
概要
熱海から伊豆半島東岸を走り伊東に至る路線である。熱海駅では東海道本線と東海道新幹線に接続し、また伊東駅以南では当路線を延長する形で伊豆急行線が伊豆半島南部の下田まで延びており、直通運転が行われている。東京方面から東海道本線を経由して多くの特急列車が乗り入れ、観光路線としての役割を担う。
0キロポストは来宮駅に置かれているが、正式な起点は、線路名称上の起点である熱海駅となっている。そのため、熱海駅 - 来宮駅間は併走する東海道本線との重複区間である。ただし東海道本線上に来宮駅のホームはない。
日本国有鉄道(国鉄)の路線として初めて列車集中制御装置 (CTC) を導入した線区である。
伊豆多賀駅 - 網代駅間のカーブはほとんど半径300mから400mである。また宇佐美駅 - 伊東駅間は山地が迫る海岸沿いを走る。全線の約3割がトンネル区間だが、沿線は伊豆半島特有の軟弱地層のため、大雨が降ると土砂崩れの危険性が高く、しばしば運転見合わせになることがある。
当線の来宮駅 - 伊東駅間は単線であるものの、全駅で行き違い可能となっているが、ほとんどY字分岐のため進入時に減速を余儀なくされる。先に普通列車が停車していても、通過する特急列車が運転停車することが多い。
旅客営業規則の定める大都市近郊区間の「東京近郊区間」、およびIC乗車カード「Suica」の首都圏エリアに含まれている。
静岡県内を通るJR線で、唯一県内で完結する路線でもある。
路線データ
- 管轄:東日本旅客鉄道(第一種鉄道事業者)・日本貨物鉄道(第二種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):16.9km
- 軌間:1067mm
- 駅数:6(両端を含む)
- 伊東線所属駅に限定した場合、東海道本線所属の熱海駅[1]が除外され、5駅となる。
- 複線区間:熱海駅 - 来宮駅間(1968年完成)
- 電化区間:全線(直流1500V・架空電車線方式)
- 閉塞方式:自動閉塞式
- 保安装置:ATS-PN
- 運転指令所:熱海CTC
- 最高速度:95km/h
- 最長トンネル:新宇佐美トンネル (2941m)
全区間がJR東日本横浜支社の管轄となっている。
運行形態
伊東駅で伊豆急行線と、熱海駅で東海道線(東京方面)とそれぞれ直通運転を行っている。
普通列車は、早朝と夜間は熱海駅 - 伊東駅間の折り返し運行となるが、それ以外の時間帯は伊豆急行線へ直通運転を行う。また、朝夕には東海道線東京駅発着の普通列車が伊東駅まで直通しており、全列車にグリーン車が連結されている。なお、東京駅発着普通列車は伊豆急行線には定期列車、臨時列車共に直通していない。優等列車は、東海道線東京方面と伊豆急行線を結ぶ特急「踊り子」「スーパービュー踊り子」「リゾート踊り子」「マリンエクスプレス踊り子」が運行されている。
日中の運行間隔は不規則で、毎時1 - 2本の運行である。
熱海駅では、1番線を伊東線列車(熱海駅始発・終着)専用として使用している。東海道線直通列車は、下り列車は1・2・3番線、上り列車は3・4番線に発着する。
使用車両
当路線ではJR東日本の車両だけでなく、伊豆急行の車両が当路線に乗り入れている。当路線では東海道線と直通運転を行う特急列車・普通列車のみがJR東日本の車両で運用され、それ以外の列車は伊東線内完結の普通列車を含む全ての列車が伊豆急行の車両での運用となる。
現在の車両
すべて電車で運転されている。
- 特急列車
- 普通列車
過去の車両
特に記述なければ普通列車用。
- 電車
- E233系(田町車両センター所属) 10両編成。2011年(平成23年)11月12日-2012年(平成24年)3月16日
- 211系(田町車両センター所属) 10両編成
- 113系(国府津車両センター・JR東海静岡車両区所属) 11両編成、8両編成
- 183系(特急「あまぎ」「踊り子」)
- 451系・453系(急行「常磐伊豆」)
- 167系(急行「伊豆」)
- 165系(準急・急行「湘南日光」・急行「伊豆」)
- 157系(特急「あまぎ」・急行「伊豆」・準急「湘南日光」など)
- 153系(準急・急行「伊豆」「いでゆ」など)
- 80系(準急「伊豆」「いでゆ」「おくいず」など)
- 32系・42系
- 伊豆急200系
- 伊豆急100系
歴史
元々は熱海駅 - 下田駅間を複線で結ぶ計画であったが、濱口雄幸の緊縮財政政策により、熱海駅 - 伊東駅間のみが単線で建設されることになった。伊豆半島独特の海岸に山が迫る険しい地勢、断層・軟弱地層などで開通には苦労を要した(宇佐美トンネル掘削時の温泉湧出などは同時期の清水、丹那トンネルなど最新の掘削技術がフィードバックされた)。
1938年(昭和13年)に熱海駅 - 伊東駅間が全線電化で開通した。観光路線として全通するとすぐに東京駅からの直通列車の運転が開始されている。1961年(昭和36年)には伊東駅 - 伊豆急下田駅間を結ぶ伊豆急行線が開業し、同線との直通運転も開始された。当時は伊東駅に田町電車区伊東支区があり、同駅にて増解結を行っていた。2003年(平成15年)に小野田線で最後の運用が終了したクモハ42001も1950年代に伊東線で運用されていたことがある。
国鉄時代より複線化計画があり、熱海駅 - 来宮駅間の線増(複線化)、新小山トンネル、新宇佐美トンネルの建設、線路切替、網代駅 - 宇佐美駅間の路盤改良工事のみを実施し凍結された(トンネルを再整備して使用する計画であったが、旧宇佐美トンネル等は放置状態)。そのため地元で複線化の構想が長年続いたが、2001年(平成13年)に伊東線複線化同盟が解散。現在はJR東日本横浜支社に熱海駅0番線増設と運転本数増強の請願を行っている。
年表
- 1935年(昭和10年)3月30日:熱海駅 - 網代駅間 (8.7km) が開業。来宮駅・伊豆多賀駅・網代駅が開業。
- 1938年(昭和13年)12月15日:網代駅 - 伊東駅間 (8.2km) が延伸開業し全通。宇佐美駅・伊東駅が開業。
- 1958年(昭和33年)5月20日:来宮駅 - 伊東駅間で列車集中制御装置 (CTC) 使用開始。
- 1968年(昭和43年)9月9日:熱海駅 - 来宮駅間が複線化。
- 1984年(昭和59年)2月1日:全線の貨物営業廃止。
- 1985年(昭和60年)2月25日:老朽化した CTC 装置を取替使用開始。
- 1987年(昭和62年)4月1日:国鉄分割民営化によりJR東日本が継承。日本貨物鉄道が全線の第二種鉄道事業者となる(全線の貨物営業再開)。
- 1996年(平成8年)10月1日:横浜支社の発足に伴い、全線の管轄がこれまでの東京地域本社(現在の東京支社)から横浜支社に変更される。
駅一覧
- ◇:貨物取扱駅(定期貨物列車の発着なし)
- 普通列車は全駅に停車。特急列車停車駅については「踊り子 (列車)」を参照
- 熱海駅 - 来宮駅間は複線、それ以外の区間は単線。全駅で列車交換が可能
- 全駅静岡県内に所在
駅名 | 駅間営業キロ | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 |
---|---|---|---|---|
熱海駅 | - | 0.0 | 東日本旅客鉄道:東海道本線(東京方面) 東海旅客鉄道:東海道新幹線・東海道本線(静岡方面) |
熱海市 |
来宮駅 | 1.2 | 1.2 | ||
伊豆多賀駅 | 4.8 | 6.0 | ||
網代駅 | 2.7 | 8.7 | ||
宇佐美駅 | 4.3 | 13.0 | 伊東市 | |
伊東駅◇ | 3.9 | 16.9 | 伊豆急行:伊豆急行線 |
全駅が有人駅でタッチパネル式の自動券売機が設置されているが、熱海駅と伊東駅をのぞいて各駅とも早朝と夜間は駅員が不在で自動券売機は稼動しないため乗車駅証明書発行機が設置されている。駅によっては稼動していないときにはカバーがかけられる。
熱海駅と伊東駅をのぞいて自動改札機の設置はない。代わりにICカード用簡易改札機が4駅に設置されている。
1992年(平成4年)より全駅に駅自動放送や発車メロディが導入されている。
脚注
- ↑ 『停車場変遷大事典 国鉄・JR編』JTB 1998年 ISBN 978-4533029806