オスプレイ

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オスプレイに反対するのはたった14人
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オスプレイは、アメリカ合衆国ベル・ヘリコプター社とボーイング・バートル(現ボーイング・ロータークラフト・システムズ)社が共同で開発した航空機である。

正式名称は「V-22」。愛称のオスプレイ(Osprey、オスプリー、オスプレィ)とはタカ目猛禽類の一種である「ミサゴ」を意味する。

概要

回転翼の角度を変更することによる垂直/水平飛行を可能としたティルトローター方式を採用した垂直離着陸機であり、固定翼機ヘリコプターの特性を併せ持った機体である。従来の方式のヘリコプターに比べ、高速かつ航続距離に勝る特性がある。

1980年代初頭より開発が開始され、技術的困難や冷戦の終結に伴う予算の削減などで開発・量産及び配備計画は当初の予定より大幅に遅延したものの、2000年代よりアメリカ海兵隊を始めとして海軍空軍へも配備が始まっており、2013年からはアメリカ合衆国大統領随行要員の搭乗機としても運用されている。

またも「反対」絶叫の“プロ市民”。オスプレイ配備候補地・佐賀。反原発と同じ顔ぶれ

防衛省は、平成31年度から陸上自衛隊が導入する垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ17機全機を、佐賀空港(佐賀市川副町)に配備する計画を立て、2014年7月22日、佐賀県に要請した。

東シナ海などで力による現状変更を試みる中国を念頭に、離島防衛や沖縄の基地負担軽減に最適だと判断したからだ。だが、現地で目につくのは、県内外の「プロ市民」らが配備反対を声高に叫び、今そこにある危機から目を背けようとしている平和ボケの実態だった。

佐賀市の中心部から南へ12キロ。平地が続く田園地帯を抜けると、有明海をバックに東西2千メートルの滑走路が忽然と現れた。佐賀県が管理する佐賀空港だ。

空港利用は平日で1日8便程度。最近は中国・春秋航空韓国ティーウェイと、海外の格安航空会社(LCC)が相次いで就航した。

この静かな地方空港の周辺で、オスプレイ配備はどう受け止められたのか。

空港ビル前でタクシー2台が乗客待ちをしていた。運転手の真木和子さん(60)は「長い景気低迷もあって、佐賀は中心部でさえ空洞化しているんよ。自衛隊が駐留して、少しでもお金を落としてくれれば、にぎわいも増すんじゃない?」と期待を口にした。

空港ビルの展望デッキに上ると、見渡す限り、緑の農地と遠浅な海が広がる。視界に民家はなかった。

防衛省は滑走路の使用要請に加え、空港西側に新たにオスプレイの駐機場、給油施設の設置を検討している。そちらに目を転じると、農地が延々と広がり、重機が整地作業を進めていた。

オスプレイについて、展望デッキにいた近くの主婦(54)は「沖縄の基地負担軽減に貢献できるのなら、前向きに考えないとね。それに、少しでも地元経済が潤うなら賛成です」と語った。

佐賀市内の主婦(52)も「見ての通り周辺は住民が少なく、騒音は問題にならないでしょ。なにより中国を牽制するには絶好の場所なのかも」と理解を示した。

だが、こうしたオスプレイ配備賛成の声は、絶叫調の反対の声に埋もれがちとなっている。

7月23日、防衛省の武田良太副大臣が、オスプレイの佐賀配備を正式要請しようと佐賀県庁を訪れた際のことだ。武田氏の乗った公用車は佐賀県庁の正門で、配備反対派に取り囲まれた。

「副大臣は来るな」「佐賀空港の軍用化反対!」

武田氏は佐賀県の古川康知事と県庁4階で面談したが、反対派100人の怒声は、面談終了まで続いた。武田氏が帰り際に正門を通る際には、金切り声が庁舎内まで響いた。

この光景は3年前もあった。

平成23年6月、玄海原発を巡り、当時、経産相だった海江田万里民主党代表が、再稼働への同意を古川氏に要請したのだ。この時も県庁前に横断幕が並び、「帰れコール」が起きた。

同じなのは様子だけではない。反対を唱える顔ぶれも似通っている。

佐賀県によると、防衛省の計画公表後、県内外の反原発団体など延べ15団体が、オスプレイ佐賀配備反対の要望書を県知事や防衛相に提出した。

このうち「玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会」(石丸初美代表)が提出した要望書によると、オスプレイ配備で日本による他国への軍事的脅威が高まり、60キロ離れた玄海原発も攻撃目標になりかねないとする。

同様の要望書を出した「さよなら原発!佐賀連絡会」の杉野ちせ子氏は「そもそも、他国が離島を奪うという事態は現実的なのでしょうか?平和構築には相手に脅威を与えないことが大事なんです」と語った。

中国公船が沖縄県尖閣諸島領海への侵犯を繰り返し、南シナ海ベトナムなどに、力を背景に威嚇している事実など、まるで他人事のようだ。防衛力を整備することが軍事的野心を封じ込める抑止力になるという基本的理解も欠落している。

受け入れの可否について古川康知事は「現時点で白紙状態」と強調するが、国の守りはまったなしだ。

佐賀県によると、オスプレイ配備について、7月28日までに約200件のメールや電話が県に寄せられた。賛成派の数が反対派を上回っているという。

オスプレイの佐賀空港への配備計画を巡り、防衛省九州防衛局の槌道明宏局長が7月30日、配備に必要な空港隣接地の地権者を抱える佐賀県有明海漁協(同)を訪れ、徳永重昭組合長らに計画への協力を求めた。有明海漁協は、佐賀空港の利用をめぐり「自衛隊と共用しない」などとする公害防止協定を佐賀県と結んでいる。

面会は非公開で行われた。槌道氏によると、オスプレイ17機を配備し、空港西側の隣接地に駐機場などを整備する計画の概要を説明。漁協側から、土地の権利関係について聞き取りをしたという。

面会後、槌道氏は「漁業者は地権者であり、空港周辺の住民でもある。今後しっかり理解を得ていきたい」と述べた。徳永氏は「防衛局長には、オスプレイの風圧が、ノリ養殖に影響するか尋ねたが、直接の影響はないと思うという回答だった。漁協としての対応は、県や市も絡むので、なかなか返答しにくい」と語った。

開発

ヘリコプターは垂直離着陸・ホバリング(空中停止)・超低空での地形追従飛行ができるが、速度が遅く、また、航続距離も短い欠点がある。対して通常の固定翼機は高速移動や航続距離の面では優れているものの、離着陸のために2,000-3,000m以上の長い滑走路が必須な上、垂直離着陸もホバリングも超低空での地形追従飛行もできなかった。

もしヘリコプターの利点である垂直離着陸・ホバリング・超低空での地形追従飛行をこなしつつ、通常の固定翼機のように高速移動かつ長い航続距離が可能ならば、それは戦略上非常に有用なことであり、このことからアメリカ軍第二次世界大戦直後から両者の利点を併せ持つ航空機を求めていた。

XV-3 開発計画

V-22の2代前にあたる実験機"XV-3"は、アメリカ陸軍空軍共同で進めていた「転換航空機計画」に米ベル社が加わって開発された。ベル社では1940年代からティルトロータ方式の航空機を研究しており、この成果が3つの設計案となって提示され、この内の1案が採用されて開発が進められた。

1955年8月11日にXV-3は初めてホバリングを行い、1956年7月11日にプロップ・ローターを傾けての飛行に成功した。XV-3はエンジン部は固定でローター軸部分だけが傾くデザインになっていた。XV-3は計250回以上の合計125時間の飛行を行い、最大高度3,570m、最大水平飛行速度115ktを記録した。本機は操縦性が悪く、固定翼機モードでの機動を行うとプロップ・ローターが激しいフラッピングを起こすなど、直ちに実用化できる状況ではなかった。

XV-15 開発計画

XV-3での研究は結局、実機の生産へと結びつかなかったが、1971年アメリカ陸軍NASAが共同で「垂直および短距離離着陸機研究」によってティルトローター機の研究を開始し、米ベル社ではティルトローター式の"Model 300"開発案を提示して採用され、1973年4月にはそれに若干改良を加えた"Model 301"が「ティルトローター研究機」(TRRA)という名称となって"XV-15"の製造計画が決定された。

XV-15は1977年5月3日に初めてホバリングに成功し、1979年5月5日にはエンジンとローターを前方に5度だけ傾けての飛行に成功した。1979年7月24日には完全に前方の水平方向に傾けての飛行に成功した。

JVX 開発計画

1981年12月にアレクサンダー・ヘイグ国務長官から、国防総省陸軍海軍海兵隊空軍という全軍が使用する航空機を開発すると発表され、1982年12月には、先進の垂直離着陸可能な航空機とする統合軍運用要求(JSOR)として提示された。これに基づいて4軍共同の「統合垂直離着陸研究」(JVX, Joint-service Vertical take-off/landing eXperimental)という名称の計画で新型機の開発が始められた。JVXはヘリコプターの特性と固定翼機の性能を持ち合わせる航空機の開発計画であり、必ずしもティルトローター機で無くとも良かったが、当時はティルトローター方式以外の選択肢は現実的では無かった。当初は陸軍を中心とした計画であったが、後に4軍の要求を統合し海軍の主導で進めることとなった。

1982年12月に初期設計のための提案要求(RFP)が提示され、アエロスパシアルベルボーイング・バートルグラマンロッキードウエストランドが関心を示した。ティルトローターの実験機を以前にも開発していたベルと、CH-47などの大型ヘリを開発していたボーイング・バートルがパートナーシップを結び、1985年ベルXV-15をベースとする設計案を提出、最終的に提出されたのはこの1件だけでありのまま承認されることとなった。

1985年にはJVXで開発する機体の名称が"V-22 Osprey"(オスプレイ)と決定され、米海兵隊向けをMV-22、米空軍向けをCV-22とした。航空母艦(CV)との重複を避けたため、本来の用途とは名称が反対となっている。

開発の遅れ

1986年5月2日には全規模開発(FSD)が認められ、6機のMV-22試作機が製造されることとなった。開発は電子機器や胴体部分をボーイング・バートルが、ナセルや駆動系を含む主翼部分と尾翼部分をベルが担当した。1・3・6号機(その後予算削減で6号機は中止された)がベル、2・4・5号機がボーイング・バートルで組み立てられることとなった。

初飛行は1989年3月19日であった。当初は1988年に初飛行を行い、1991年頃に量産型の引渡しが予定されていたが、SDI計画や先進戦術戦闘機計画(ATF)(後のF-22)などに比べ優先度が低く、予算の削減が行われた影響で計画が遅れた。

1989年12月には、国防長官であったディック・チェイニーが予算削減の一環として開発の中止を発表するが、その後の審査の結果、計画は続行されることとなった。その後何度か計画の中断が予定されたが結局中止となることはなかった。

量産の決定

試作機段階では2回、重大な事故もあった(後述)が、技術的問題はほとんど解決されたとの結論に至っており、V-22は1994年に量産が認められた。軽量化や製造の効率化などの製造費用の削減を含む再設計が行われ、1995年量産試作機(EMD)が4機製造された。最初の7号機の初飛行は1997年2月5日に行われた。

1997年4月には低率初期生産(LRIP)が承認され、まず5機の生産が決定し、2000年度までにさらに25機の生産が認められた。1999年4月には量産初号機が初飛行し、2000年までには艦上運用試験などが実施され、空軍仕様のCV-22BもEMD7号機と9号機を改修して試作試験が開始された。

機体

回転翼とエンジン

大きな3枚の「プロップ・ローター」(Prop-roter)と呼ばれる回転翼がエンジンと共に固定翼の両端に備わっている。このプロップ・ローターを駆動するターボシャフトエンジンは、減速ギアや補機などと共にエンジンナセル内に収められ、固定翼の両端に取り付けられている。このポッド状のエンジンナセルとプロップローターは一体となって、固定翼内端部のティルト軸ギアボックス(TGAB)での油圧機構によって前方から上方へ向きを変更でき、この全体が「ティルトローター・システム」と呼ばれる。左右のTGABは主翼内のシャフトで連接されており、左右共に角度が同調するようになっている。TGABによる角度変更は毎秒8度で動くため、90度の変更には11秒程度かかる。

左右のエンジンは片発停止となってもすぐには機体が墜落しないように、左右の駆動出力軸が固定翼内のクロスシャフトで連結されており、最大定格出力4,586kWであるところを1基だけでの飛行時には短時間ながら緊急時最大出力5,093kWを得ることができる。エンジン吸気口にはEAPS(エンジン空気/粒子セパレータ)が、排気口にはIRサプレッサーが備わっている。

直径11.61mのプロップローターの3枚のブレードは、ブレード長が4.90m、弦長は付け根部で87.1cm、先端部で66.9cmであり、42度の捻り下げが付いている。この回転翼は長いために、地上に降着した状態でローターを前方に向けて回転させるとブレード先端が地面に接触してしまうので、保守時のような特定の状態を除けば地上で固定翼航空機モードの角度までティルトすることは避けられる。プロップローターはピッチ可変式のハブを持つ。

プロップローターは互いに逆回転するため、カウンタートルクが打ち消しあう。地上駐機時の占有スペースを小さくするために、ローターのハブが定位置に止まり、ブレードが自動で折り畳めるようになっている。同様の機能を持つ他のヘリコプターと異なり、左右各2枚のブレードはハブより少し離れた位置で折れ曲がる。残り左右各1枚のブレードは折り畳み機構を持っていない。つまり、折り畳み可能な2枚のブレードは、折り畳み不可な1枚に沿うよう折り畳まれる。

  • 回転円盤面積(片側):105.36m2

固定翼

固定翼機での主翼に相当する高翼配置の固定主翼はわずかな上反角といくぶん前進翼である点を除けば単純な矩形翼であり、地上駐機時の占有スペースを小さくするために、中央取り付け部を中心に右方向へ90度回転するようになっている。ブレードを内側に折り畳みナセルも水平に倒した状態で右に90度回転するため、ローター半径などをそのまま加えた通常の幅25.78m、長さ17.48m、高さ6.73mから、幅5.77m、長さ19.20m、高さ5.56mにまで小さくできる。

主翼後端には内外に2分割された広いフラッペロンが付いており、航空機モードでの操縦翼面として機能すると同時に、ヘリコプター・モードでは垂直下方へ大きく折れ曲がることで、(回転翼のダウンウオッシュを遮る)固定翼の面積を減じるようになっている。主翼内には片側4個に分かれた燃料タンクが収められ、クロスシャフトやTGAB用のリンク、それに配管類が走っている。

尾翼はテールブームの先に1枚の水平尾翼とその左右に2枚の垂直尾翼がH型に取り付けられており、それぞれには水平安定板と垂直安定板の後端部に動翼としてエレベータとラダーが付いている。

  • 主翼面積(フラッペロン、中央翼部分を含む左右合計):35.49m2
  • フラッペロン面積(左右合計):8.25m2
  • 垂直安定板面積(左右合計):21.63m2
  • ラダー面積(左右合計):3.27m2
  • 水平安定板面積(合計):8.22m2
  • エレベータ面積(合計):4.79m2

燃料タンク

固有の燃料タンクは、主翼内に左右各4個と降着装置のあるスポンソン前部に左右各1個の計10個により、6,513リットルの容量がある。これらは自己防漏対策が施されており12.7mmの装甲貫通弾までは燃料漏れを起こさない。

また、キャビン内にMATを搭載することで搭載燃料を増やすことができる。空中で燃料を捨てる必要が生じれば、右主脚部のベント口から毎分303リットルの割合で空中投棄できる。

降着装置

降着装置は、前脚式の3脚すべてが2輪横並びのタイヤを持ち、油圧による完全引込式になっている。左右に各75度まで操向できる前脚は、後方へ畳んで格納され、胴体左右2本の主脚は前方へ畳んでスポンソン内に格納される。油圧が失われれば窒素ボトルによって19.3MPaの圧力で脚下げを行う。各脚柱には通常時で3.7m/secまで、交換修理を受容する前提でのクラッシュランディング時には7.3m/secまでの着地衝撃から機体を守る衝撃緩衝装置が組み込まれている。

  • ホイールトラック:4.64m
  • ホイールベース:7.62m。

事故

V-22は他の航空機同様、いくつかの事故を起こしている。 以下にその事故の一部または全部の概要を示す。

試作機段階での事故

V-22は試作機段階で2回、重大な事故を起こしている。

1回目の事故

1991年6月11日に試作5号機が初飛行時に左右に揺れながら離陸後、数mの高さから大きく機体を傾けてナセルとローターが接地し、機体は転覆して地上へ落ちた。火災も起きずパイロット2名は脱出して軽傷で済んだが、機体は失われた。

墜落原因は、飛行制御システム(FCS)の3つのロールレイト・ジャイロの配線の内の2つが逆に接続されていたミスと判明し、3ヵ月後に試験飛行は再開された。

2回目の事故

1992年7月に試作4号機が気候試験でエグリン空軍基地からクアンティコ米海兵隊基地へ飛行中の着陸直前に右エンジンナセルから出火した。制御を失った機体はポトマック川に頭から落ちて、乗っていた海兵隊員3名と民間人技術者4名の計7名全員が死亡した。この墜落の影響でFSD機が全機飛行停止となった。

事故原因は、潤滑油が漏れてエンジンナセル内に溜まっていた状態で着陸のためにナセルをティルトしたのでオイルがエンジンの高温部に触れて発火したものとされた。エンジンの一方が停止しても飛行が継続できるように左右を結ぶクロスリンク機構が備わっていたが、火災の熱によって複合素材製のクロスシャフトが強度を失い、破壊されたものとされた。潤滑油漏れ対策が完了するまでの11ヶ月間、飛行停止となった。

この事故はV-22自体の欠陥であった。残り3機には改良が加えられ1993年夏に試験が再開されたが、事故によって2機が失われてしまい、計画に影響を与えることとなった。

低率初期生産段階での事故

3回目の事故

2000年4月8日に14号機が夜間侵攻での兵員輸送を想定した作戦試験時に墜落事故を起こし、乗員4名と米海兵隊員15名の計19名全員が死亡した。

事故機は他のV-22に後続飛行しながらナセルを立てて着陸進入状態にあり、前方機が減速したので衝突を回避するために急減速し急降下を同時に行った。操縦不能になる直前には、対気速度30kt以下で毎分約2,000ft(610m)で降下していた。規定の降下速度である毎分800ft(244m)の2.5倍の急激な降下であったため、自らが生み出したVRS(vortex ring state、ボルテックスリングステート、セットリングウィズパワー、渦輪状態)と呼ばれる下降気流によって揚力を失ったための墜落事故だとされた。事故の再発防止策として、危険な降下率となった場合にはコックピットに「Sink rate」と音声で注意しながら警告灯を点灯する装置が加えられた。

その後も試験は続けられ、運用評価を2000年8月に完了した。

4回目の事故

2000年12月11日に海兵隊訓練部隊VMMT-204部隊所属の18号機(MV-22B)が、夜間飛行訓練中に森林地帯に墜落し、搭乗していた海兵隊員4名全員が死亡した。事故を受け全機が飛行停止になった。

事故原因は、機体の機構的な問題とソフトウェアの問題、そしてパイロットが不適切な操作をしたためという、複合的な事象が重なって起こったものとされた。まず左ナセルの油圧配管が振動によって配線と擦れあい、配管より高圧作動油が噴出した。設計通り油圧システムの安全装置が自動的に作動してシャットオフ・バルブを閉鎖したため、3重の油圧系統の1つを他より切り離して安全に飛行が継続できるようになった。主飛行制御システムは油圧系統の異常を知らせる警告灯を点灯させた。この時、操縦士は着陸に備えてナセルを回転させている途中であり、主飛行制御システム(PFCS)の警告灯の点灯を知って、手順に従ってこれを停止するリセットボタンを押したが警告灯は繰り返し点灯した。PFCSのソフトウェアはこの時点で無用な警告を繰り返すという欠陥があった。パイロットは警告灯に気をとられて操縦がおろそかになり誤って地上に墜落させた。この事故原因が明らかにされた後、油圧システムとPFCSの改良が施された。

2002年5月に飛行停止は解除された。

配備後の事故

量産決定後の2006年から2011年の間に58件の事故が起こっている。 ただしこの58件という数字は空軍仕様のCV-22と海兵隊仕様のMV-22の事故件数を合わせた数字であり、クラスA(重大事故)は計4件、クラスB(中規模事故)は計12件に留まっている。

なお、クラスC(小規模事故)は「整備士が整備中に作業台から転落して負傷」といった、V-22の性能とは直接関係のない事故が多数含まれている。

5回目の事故

2009年5月27日、第204海兵中型ティルトローター訓練飛行隊所属のMV-22が、米国ノースカロライナ州で低空飛行訓練中、燃料切れで国立保護地区に緊急着陸し、その給油中にエンジンの排気熱で草地が燃えだし、機体の外壁を損傷した。

同日発表された海兵隊の声明によると火事は直ちに鎮火されたが、機体の外壁に高熱による損傷が残された。声明では損傷の度合いは明らかにされなかったが、同機は翌28日の昼には所属のニューリバー基地へと帰還した。

6回目の事故

2010年4月8日に空軍特殊作戦軍所属のCV-22が、アフガニスタン南部で夜間に着陸に失敗し横転した。この機体は2009年に初期作戦能力を取得した後に2回目のローテーションとして2010年にアフガニスタンに送られた内の1機であり、CV-22としては通算12号機にあたる。搭乗していた全20名のうち乗員2名と陸軍レンジャーの兵士1名、民間人1名の計4名が死亡し他の搭乗者も負傷した。

事故が起きたのは暗視用ゴーグルを使った夜間の砂漠への着陸の最中だったため、ダウンウォッシュ(垂直揚力による下降気流)によって巻き上げられた砂塵で視界が遮られる「ブラウンアウト」が発生し、パイロットが空間識失調を起こしたのではないかという推測がある。

7回目の事故

2012年4月11日に海兵隊のMV-22、1機がモロッコの南方沖海上で強襲揚陸艦イオー・ジマ」での訓練中、離艦後に墜落した。全搭乗員4名中、2名死亡、2名重症となった。3月29日にノースカロライナ州から派遣されて来た、第24海兵遠征隊(24th. MEU)揮下の第261海兵中型ティルトローター飛行隊(VMM-261)に所属していた当該機は、モロッコの演習地に海兵隊員を降ろした後の、現地時間4時頃に事故を起こした。

8回目の事故

2012年6月13日に空軍のCV-22が、フロリダ州南部で訓練中に墜落事故を起こし、乗員5人が負傷した。

操縦系統

飛行操縦システムは自動飛行操縦システム(AFCS)を含む3重のデジタル式フライ・バイ・ワイヤによって構成されており、機械的なバックアップ・システムは持っていない。AFCSは、ピッチ安定、ロール安定、ヨー安定、機首方位維持、自動旋回調整、昇降速度補正といった機能を有している。

主にピッチとロールの操作を行うサイクリック操縦桿は両足中間にあって右手で操作する。ヨー操作は足先左右のラダーペダルで行う。エンジン出力調整は出力制御レバー(TCL)で行う。通常のヘリコプターにあるコレクティブピッチレバー(を握って捻る)と異なるのは、相当するTCLが固定翼航空機のスロットルレバーと同様に前方に倒すことでエンジン出力が上昇する点である。「ヘリコプターモード」と「固定翼航空機モード」を行き来するためのプロップローターとエンジンの角度調整は、TCLのグリップ内側の回転式ノブ「ナセル制御スイッチ」で制御する。

操縦翼面は、ピッチ可変式プロップ・ローターとフラッペロン、エレベータ、ラダーが存在する。フラッペロンはロール操縦時にはエルロンとして機能し、揚力が必要な場合には高揚力装置のフラップとして機能する。エレベータとラダーは通常の固定翼機と同じ機能を果たす。

操縦操作

離陸
V-22の離陸時には、エンジンとローターを垂直よりも少し前方の75度や60度に傾けて回転翼と固定翼の両方の揚力を得て上昇する短距離離着陸(STOL)を採用することが多い。V-22は回転翼が大きいので完全な「航空機モード」ではローターが地上に接するため、通常の固定翼航空機のように地上滑走によって固定翼面だけで揚力を得る離陸は行えない。また、積載量が少ない。
巡航
ヘリコプターモード
ヘリコプターモードによる飛行制御は、両足中間のサイクリック操縦桿と座席左側の出力制御レバー(TCL)、足先のラダーペダルによって行う。サイクリック操縦桿を左右方向へ倒すことで、2つのプロップ・ローターでコレクティブ・ピッチに差を作ることで左右の揚力差が生じ、また、同時にラテラル・サイクリックによる操作でプロップ・ローターの回転面が傾くことも加わって、ロール操作が行える。サイクリック操縦桿を前後方向へ倒せば、プロップ・ローターが前後に傾きピッチ操作が行える。ラダーペダルの片側を踏み込めば、2つのプロップ・ローターが互いに前方と後方に傾くことで機首の向きが変えられ、ヨー操作が行える。
固定翼航空機モード
固定翼航空機モードでは、サイクリック操縦桿は操縦桿に、TCLがスロットルレバーに相当し、ラダーペダルはそのままラダーペダルとして機能する。サイクリック操縦桿を左右方向へ倒すことで、左右互い違いに動く主翼後縁のフラッペロンが上下運動しロール操作が行える。サイクリック操縦桿を前後方向へ倒すことで、水平安定板後縁のエレベータが上下運動しピッチ操作が行える。ラダーペダルの片側を踏み込めば、垂直安定板後縁のラダー2枚が連動して動くことでヨー操作が行える。
着陸
着陸時も離陸時と同じく「ヘリコプター・モード」と「航空機モード」の2つの飛行モードがあるが、ランディングゾーンが十分に得られれば自らが作る下降気流(ボルテックスリング)によって失速を招く危険を避けられる航空機モードによる短距離進入降下を用いた着陸を行うことが基本となる。ランディングゾーンが狭い場合や重量が軽ければヘリコプターと同様にほぼ垂直に降下して着陸する。
予防着陸
ヘリコプターモードでの緊急時の着陸ではオートローテーションを行えるという情報がある一方で、ヘリコプターモードでは110ノット毎時(約200km/h)以上の速度がないとオートローテーションが行えないという情報がある。航空機モードでは飛行中に両エンジンが停止した場合にヘリコプターモードに切り替えることはできず、着陸には固定翼のみを使用する。回転翼は緊急着陸などで地面に接触した場合には、機体から外れるようになっている。但し、片側のエンジンが作動している場合は、そのまま飛行可能であり、通常着陸及びヘリコプター・モードへの切り替えが可能である。

装備等

アビオニクス

操縦席の計器類は各正面に15.2x15.2cmのカラー液晶による多機能表示装置(MFD)が左右に並んで2枚あり、中央パネルには正面左にMFDより小型のシステム表示用単色液晶画面が、正面右に高度計や対気速度計といった通常の個別計器が配置されている。中央パネルの下部3分の2以上は15.2x20.3cmの横長単色液晶によるEICAS/CDU表示画面1つと多数の操作キーが並んでいる。各2面のMFDには、機体姿勢や飛行諸元といった一次飛行表示や、航法情報、センサー画像情報、搭載システム情報が自由に表示できる。

航法装置としては、軽量慣性航法装置(LWINS)、AN/ARN-147全方位無線標識/計器着陸装置(VOR/ILS)、マーカービーコン装置、OA-8697/ARC VHF/UHF自動方位測定装置(ADF)、VHF FMホーミングモジュール、AN/APN-194(V)波高度計、AN/APN-153(V)戦術航法装置(TACAN)、小型航空機搭載全地球測位システム(MAGR)が備わっている。

LWINSは3重の冗長性を備え、加速度、速度、位置、高度、磁方位、真方位についての情報を得る。

各軍共通の装備として、下方全方位へ指向できる赤外線センサーとしてAN/AAQ-27A(mid-wavelength infrared(MWIR)imaging system)を備える。このMWIRは機首下面に搭載される。

米海軍型と米空軍型は地形追随および地形回避機能を持つAN/APQ-174レーダーを備える。米空軍では低高度での地形追随機能を高めたAN/APQ-186レーダーの搭載も進めている。レーダーは機首部左に搭載される。

自衛装備

自衛装備として以下のものを備える。

全軍共通装備
米空軍
  • AN/ALE-47:チャフ/フレア投射装置(CMDS、対抗手段散布装置)
  • AN/ALQ211:統合型無線周波数対抗手段装置(SIRFC)
  • AN/AVR-2A:レーザー探知装置

増槽・受油・給油装備

増槽
任務補助タンク(MAT)をキャビン内に搭載すれば、燃料を増やし航続距離の延伸ができる。1個で1,628リットルの燃料を収めるMATは、キャビン内に最大3個まで搭載でき、搭載燃料の最大容量は11,397リットルとなる。
受油装備
機首部右側に受油用プローブを装備しており、空中給油機から空中で燃料を受け取ることができる。
給油装備
既に開発済みの給油装備に「迅速地上再給油キット(RGR)がある。これは燃料供給ポンプ、ホース、コネクター、再給油ノズル3個から構成され、地上に駐機した状態で機内のMATから、地上の他の航空機や地上の車両へ燃料を供給するものである。
計画中の装備であるが、MATをキャビン内の前後に2個だけ搭載し、中央にリール式のホース&ドローグ・ユニットを備えることで、機体中央底部からこのホースを空中で垂れ下げ、他機へ空中給油する空中給油キット開発計画がある。これが完成すればV-22は空中給油機として利用できる。回転翼機への空中給油なら120ノットほどで飛行し、固定翼機なら最大250ノットで飛行しながら給油を可能とするものである。一例を挙げると、近接航空支援機に対しては200nm進出して1時間在空し、10,000ポンド(約4,536kg)ほどの燃料を他機に空中給油可能となる。

特殊な装備

救助用ホイスト
捜索・救難ミッションや特殊作戦での隊員の潜入/回収にも使用される救助用ホイストを、キャビンの後部隔壁直前の天井部に備えることができる。76.2mの長さのワイヤで最大272kgまで吊り下げられ、停止から最大1.14m/secでの上下無段階の速度制御が行える。
IDWS
米海兵隊向けの特殊装備としてIDWS(暫定防御兵器システム)がある。IDWSは英BAEシステムズ社製の電子/赤外線センサターレットを備えており、機内搭載も可能なM134 7.62mmミニガン・ターレットと連動させて、機内の液晶ディスプレイとコントローラによって使用する。VMM-365部隊に最初に装備されて、アフガニスタンでの試験運用が行われると考えられている。

搭載

搭載重量

  • 最大離陸重量
    • 垂直離陸時:23,859kg
    • 短距離離陸時:25,855kg
    • 自己展開時:27,442kg

機内配置

降着装置や燃料タンクが機体底部のスポンソンに、主翼構造全体が機体の最上部に位置しており、機内は最前部の操縦室に続いて左右に分かれた電子装置収容区画と通路があり、その後ろが貨物室/客室となるキャビンがある。乗降はキャビン右側前方の乗降口と最後部の貨物扉から行える。機内は非与圧であるが、NBC戦環境下での生残性のために操縦室は6.2kPa、キャビンは4.8kPaの陽圧を掛けることができる。

操縦室
機体先端の操縦室に左右2席ある操縦席は、通常はヘリコプターと同様に右側が機長席、左側が副操縦席であり、その後方中央に予備のジャンプシートが1席ある。操縦席は方向が変化する荷重に対して14.5G、横方向だけなら20Gまでの衝撃荷重に耐えられ、上下方向に40.6cmの緩衝ストロークを持っている。
キャビン
キャビン内は横断面で見れば正方形に近い矩形断面であり、大きな凹凸のない長い機内搭載空間が得られる。このキャビンを兵員輸送仕様にすれば、左右の壁面に背を付ける向きで座面跳ね上げ式のトループシートを24席と右側最前方にクルーチーフ用の1席の計25席を配置することができる。後部の貨物扉は飛行速度240ノットまで空中で開閉できるので、空挺隊員の降下や貨物の空中投下が行える。非常脱出口がキャビン後部天井に1つある。傷病兵輸送仕様では、縦3床x4箇所で12床にする組合せや、縦3床x3箇所での9床に加えて看護員や軽症者などのための5名分のトループシートを配置することもできる。
キャビン最後部の下開き式ランプ兼用貨物扉は尾部側半分が天井方向へ、前方側半分が床方向へ開き、テイルブームが高い位置にあるために水平に大きな開口部が得られ、長尺物の搭載が容易である。
しかしながら日本が既に利用している大型ヘリCH-47に比べるとキャビン寸法は長さ、幅、高さ、のいずれにおいても劣り、キャビン容積が少ない為に、軽くても嵩張る貨物の積載では相対的に不利で、搭乗可能な人員も少ない。

機内搭載

  • 機内最大ペイロード:9,072kg
  • キャビン
    • キャビン長:7.37m
    • キャビン最大幅:1.80m
    • キャビン最大高:1.83m
    • 有効面積:
    • 有効総容積:24.3m3
  • 貨物
    • 貨物最大幅:1.72m
    • 貨物最大高:1.68m

機外搭載

胴体下面の前後に計2個のカーゴフックを備え、機内に搭載できない貨物類を吊り下げて運搬することができる。

  • カーゴフック容量:4,536kg×2(但し2つのフックを合わせた機外吊り下げ最大容量は6,804kgである)

設計

飛行の特徴

V-22は、固定翼面積が小さく固定翼から発生する揚力だけでは上昇・前進ができず、回転翼から発生する揚力のベクトル軸の向きを必要に応じて調整し運用することになる。V-22はその要求通りヘリコプターの利点である垂直離着陸と固定翼機の利点である長い航続距離や速さを持ち合わせている。V-22は主翼の両端に大型の回転翼を装着したターボシャフトエンジンを装備し、このエンジンの角度を垂直にかえることによって垂直離着陸を可能としている。エンジンは垂直より少し後方まで向けることが可能で、低速ながら後退飛行もできる。

また、エンジンを前方斜めに傾けることによって短距離離陸(STOL)を行うことも可能である。ただしV-22の回転翼は大型のため完全に前方に向けてしまうと地面に擦ってしまう。巡航時にはエンジンを完全に水平にすることによって通常の飛行機と同じように飛ぶことが可能である。ただし回転翼は幾分斜め上に向けて飛行する場合が多い。この場合、回転翼は広い面積を有し十分な揚力を得られるので、水平飛行時は通常の固定翼機に比べゆっくりな回転を示している。

なお、2つの回転翼の配置の特性から、垂直離着陸時に片方の回転翼が停止した際の墜落を防ぐために、左右の回転翼駆動軸間を連結シャフトでつなぐことによって、片方のエンジンが止まった場合でも、稼動している側のエンジンによって2つの回転翼を回すことが可能となっている。

性能

ティルトローター機であるV-22の最高速度は300kt(約555km/h)を超える。これは現在米軍が採用している同規模のヘリコプターCH-53E(170kt(約315km/h)自重15t)と比べて実に130kt(約240km/h)ほど高速である。速度に特化した高速ヘリコプター(最大速度200kt(約370km/h)程度)と比べても1.5倍の速度差であり、シコルスキー社が開発している高速ヘリコプターの実験機シコルスキー X2(225kt(約418km/h)程度)よりも速い。

フェリー時(貨物積載無し)の航続距離は1,940nm(3,593km)あり、空中給油などを併用し、さらに延長できる。これはCH-53Eの倍近い距離となっている。 垂直離着陸をした場合の飛行と短距離離着陸をした場合の飛行とでは航続距離が異なり、垂直離着陸をした場合では航続距離は短くなる。

固定翼を併用するために、回転翼だけよりエンジンの単位出力当たり大きな揚力を得られる。また、回転翼機よりも上昇限度が高い。また、海兵隊が使用する強襲揚陸艦などで使用できるよう、ローターと主翼は折りたたむことが可能となっている。サン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦ではヘリコプター甲板に4機・格納庫に1機の積載とヘリコプター甲板から同時に2機の発着が可能とされている。

2007年9月にイラク配備のための輸送では、ワスプ級強襲揚陸艦ワスプ」に10機が積載された。

調達

国防総省では458機のV-22を調達することを計画している。内訳は海兵隊用の輸送機MV-22が360機、アメリカ特殊作戦軍向けの空中突撃用機CV-22が50機、海軍向けのHV-22が48機である。特殊作戦軍の調達については空軍からも予算が支出される。

2000年の開発段階での事故以降は大きな問題も発生せず2005年に運用評価を完了した。2005年9月19日にCV-22量産1号機が空軍に引き渡された。2005年10月28日に国防調達会議は全規模量産(FRP)の開始を承認した。2007年12月からイラク西部の戦闘作戦に初めて参加し、初のヘリボーン作戦は、2008年3月18日にMV-263所属の2機のMV-22Bがイラクにおいて行った。

FY2010までに216機が調達されている(内訳はMV-22が185機、CV-22が31機)2008年3月28日に結ばれた契約ではFY2008からFY2012までに167機を104億ドルで調達することが取り決められた。

米陸軍はUH-60CH-47で十分任務を果たせるとしてV-22を採用していない。

配備

量産された機体はすでに米国海兵隊から順番に海軍空軍へも配備が始まっており、以下に2012年時点の配備状況と配備予定を示す。

米海兵隊

米海軍

米海軍も配備を受けているが48機が装備される予定という以上の情報は不明である。

米空軍

日本国内への配備計画

在日米軍再編沖縄県普天間飛行場の移設に伴う代替施設(名護市辺野古)への配備が計画されていることが、米軍作成資料から明らかになっているが、日本政府は承知していないとしていた。しかし、2008年4月22日外務大臣(当時)の高村正彦参議院外交防衛委員会で山内徳信議員の質問に対して「配備の可能性がある」との認識を日本政府として初めて示した。

その後、鳩山由紀夫内閣下で普天間基地移設問題が混乱し、2014年までの普天間飛行場移設が困難となったため、2011年6月6日、米国防総省は2012年後半に、MV-22を沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に配備すると正式に発表した。それを受けて2011年6月13日北澤俊美防衛大臣は、沖縄県庁で仲井真弘多知事と会談し、米軍普天間飛行場へのMV-22配備を説明した。2012年7月23日にはMV-22が岩国飛行場に搬入され、9月21日、日本国内初の試験飛行が山口県沖や福岡県沖で行われた。10月1日に、6機、2日には3機が普天間飛行場に移され、4日午前に訓練飛行が行われた。これに対し仲井真弘多沖縄県知事は、「これだけ県民が反対しているものを使い出すのは、非常にむちゃな話だ。」と批判した。

派生型

MV-22B
アメリカ海兵隊向けの輸送型。CH-46CH-53の後継とされ、揚陸強襲、地上作戦活動の維持、自軍の自己展開に用いられる。360機が装備される予定
HV-22B
アメリカ海軍向けの戦闘捜索救難型(救難機)であり、戦闘捜索・救難、艦隊兵站支援、特殊作戦に用いられる。48機が装備される予定
CV-22B
アメリカ空軍向けの特殊作戦型。MH-53Jの後継とされ、長距離特殊戦活動、不測事態作戦、脱出および海洋特殊作戦に用いられる。53機が装備される予定
EV-22
イギリス海軍が提案・研究している早期警戒機。現在、インド海軍が導入を検討している

仕様

  • 全長:17.47m(ピトー管含まず)
  • 全幅:25.54m(ローター含む)
  • 全高:6.63m(VTOL時)
  • ローター直径:11.58m
  • 航続距離:
    • (強襲揚陸時):515nm(953km)
    • (ペイロード4,536kg、垂直離陸):350nm(648km)以上
    • (ペイロード2,721kg、垂直離陸):700nm(1,295km)以上
    • (ペイロード4,536kg、短距離離陸):950nm(1,758km)以上
  • フェリー距離: 補助燃料タンク使用時 1,940nm(3,593km)
  • 短距離離陸滑走距離:152m以下
  • 実用上昇限度:26,000ft(7,925m)
  • 上昇率:2,320ft/min(11.8m/s)
  • ホバリング限界高度
    • 地面効果内:3,139m
    • 地面効果外:610m以上(22,680kg時)、1,8290m(20,866kg時)、4,267m(15,422kg時、95%出力)
  • 空虚重量:15.032t
  • 円盤荷重:20.9lb/ft(102.23kg/m2)(自重247,500lb時)
  • 飛行荷重制限:+4G/-1G
  • 最大離陸重量
    • 垂直離陸時:23.981t
    • 短距離離陸時:27.442t
  • エンジン:ロールス・ロイスアリソン社T406(ロールス・ロイス社内名称 AE 1107C-リバティー)×2基(最大定格出力:4,586kW(6,150shp)、緊急時最大出力:5,093kW)
  • 最高速度
    • 通常時:305kt(565km/h)
    • ヘリモード時: 100kt(185km/h)
  • 失速速度:110kt(204km/h)(固定翼モード)
  • 離着陸距離
    • 貨物を載せず24人が乗り組んだ場合はヘリコプターのように垂直離着陸が可能
    • 最大積載量を積んだ場合は垂直離着陸できない。離着陸には約487m(1,600フィート)が必要
    • 上空でエンジンを停止させて着陸する『オートローテーション』飛行訓練や単発エンジン着陸訓練、編隊離着陸などの習熟訓練には、最短で約792m(2,600フィート)、最大で約1,575m(5,170フィート)が必要。

組立て/派生技術

  • 米ベル社がローターシステム、翼部、エンジン取付、変速機を担当し、最終組立もテキサス州アマリロのベル社の工場で行われている。
  • 米ボーイング社では2010年8月より観測用小型UAVである "ScanEagle Compressed Carriage"(SECC)を使って飛行中のV-22の後部ハッチからScanEagleを発射する開発を始めている。

諸問題

2011年、米国国防総省日本沖縄県宜野湾市にある普天間飛行場に従来のCH-46の代替としてMV-22を配備することを発表した。これに対して日本の一部のマスメディアや一般市民は危険性などを理由として批判・非難を起こしたり、事故を報道したり、配備反対運動(No osprey沖縄県民大会など)を起こしたりしている。

以下、指摘されている問題点を示す。

安全性

在日米軍基地に配備が予定されているアメリカ海兵隊所属のMV-22の10万時間当たりの平均事故率は、2012年4月11日の事故後に1.93となっている。事故前は1.12であり、いずれも米海兵隊所属の飛行機平均の2.45を大きく下回っている。配備期間の短さを考慮する必要はあるものの、現在、MV-22の事故率はヘリコプターより低い(在日米軍に配備されているCH-53D(米国内配備開始:1969年)の事故率は4.15である)。

アメリカ空軍向けの特殊作戦型であるCV-22の事故率は2012年6月15日の時点で13.47であり、MV-22より事故率は高いものの、MH-53ペイブロウの十年間平均の事故率が12.34であり、CV-22の事故率が特段に高いとはいえない。また、CV-22は前述のとおり特殊作戦型であり、危険な任務につくことが多いためMV-22と比較して事故率が高いのは当然であるといえる。なお、CV-22は現在、在日米軍基地に配備される予定はない。

試作段階においての事故の多さから『タイム』誌は2007年10月8日号において、同機を「空飛ぶ恥(Flying Shame)」と紹介した。

試験段階ではFAAにティルトローター機の審査基準が無く、1997年にようやくPowered Littというカテゴリーを設置した(ただしFAAの基準は軍用機には適用されない)。また、V-22自体が耐空証明が取得できないため、民間機としては飛行できない。ただし計画当初から民間用に販売する予定がないので、そもそも耐空証明などを取得する必要がない。なおベル社は、オスプレイの開発経験を基にAW609を開発中であり、こちらはFAAの形式証明を取得し、民間向けに販売する予定である。

要人輸送

2008年7月22日、次期大統領候補のバラク・オバマ上院議員(当時)がイラク電撃訪問の際に搭乗した。

アメリカ合衆国大統領を輸送する専用ヘリコプターであるマリーンワンとして用いられているVH-3の後継機として、EH-101、S-92などとともにV-22も候補に挙げられていた。後継機にはEH-101の採用が決定したが、その後予算超過を理由としてEH-101の調達計画はキャンセルされた。ボーイングでは仕切り直しとなったマリーンワン後継機の選定にV-22を再度提案すると報道されている。また、大統領に随行するホワイトハウスのスタッフや報道陣を搭乗させる輸送機として利用されることも決定した。2013年8月10日には大統領専用機仕様のオスプレイによる随行要員輸送が実際の運用として行われた。

エンジン熱に対する懸念

  • オスプレイのエンジン熱、正確には「エンジン排気プルームがもたらす過剰な熱の作用」(excessive heat impact from engine exhaust plumes)が米海軍の一部の揚陸艦フライトデッキを損傷する恐れがあることがわかっている。海軍航空システム司令部NAVAIR)は、エンジンの下に携帯式の耐熱シールドを設置してデッキへの損傷を防止する一時的解決策を考案したが、この問題の長期的解決を図りV-22やF-35Bを運用するには、まずデッキ自体を耐熱コーティングやパッシプサーマルバリアーを施したものへと再設計し、さらに船体の構造も変える必要があるとしている。これを受け、国防高等研究計画局DARPA)では、フライトデッキ上に設置可能な堅牢な冷却システムの開発を産業側に求めたという。
  • 2009年5月27日、ノースカロライナ州において、訓練飛行中のMV-22が燃料切れで国営狩猟区に予防着陸した際、同機を給油して離陸しようとしたところ、エンジンの排気熱で植生が燃え始め、機体の外装を損傷する事故が発生したことがあった。2011年6月24日沖縄県は同事故を含めた「高温排気と周辺への影響」について質問する照会書を防衛省に送付。防衛省は同12月19日の回答書で、過去に火災が発生していることを認めた上で、同機のハワイへの配備に関する環境影響評価書案(DEIS)を引用して、運用措置・手順の改善により安全な運用を確保することを米国側に申し入れる旨回答した。

いずれにせよ、政府としては、過去に火災が発生していることから、米国政府に対して、我が国においてMV-22を運用する場合は (1)パイロットに義務付けられている排気デフレクタの作動確認及び同装置の継続監視の遵守を徹底すること (2)排気デフレクタを含めた機体システムに故障などが発生しないよう確実な整備を行うこと (3)着陸している時間を制限すること などといった運用措置・手順を追求することにより、排気ガスによる火災発生のリスクの更なる低減を図り、安全な運用の確保に万全を期すよう、しっかりと申し入れてまいりたい。

一川保夫防衛大臣 防防日第15061号 23.12.19 『MV-22オスプレイ配備について(回答)』

騒音

  • アメリカでの調査で現用のCH-46Eと比較して、飛行中は全ての領域でより静かであるという結果が出ている。

登場作品

V-22などのティルトローター(ティルトウィング)機は、見た目にも明快に「ヘリコプターの進化系」とも取れる形状であるため、特に近未来を描いたフィクション作品などではV-22、及びそれをモデルにした架空機体が描写される事が多い。以下はV-22そのものとして登場した作品を挙げている。

ドクターミナミが使用している。
槙島聖護を公安局から輸送するのに使用。
「古城編」にて革命勢力の装備として登場。
遠峰一青のドバイの友人とされる人物が保有するV-22(と思われる機種)が遠峰に貸し出されるシーンがある。
NERVが戦闘機輸送機として使用。
OPERATION:4に登場。日本海軍空母「アドミラル56」艦長の記者会見の後、プレス関係者を乗せて同艦より発艦する。
リベンジ・オブ・アースの艦載機として登場。なお、この作品ではV-22は開発中の事故により量産中止となっている設定。
一色登希彦版に、陸上自衛隊機として登場。
二葉あおいが搭乗していたV-22が登場するが、アローンによる攻撃を受けてブルーアイランドに不時着する。また、UDFもV-22を運用している。
POGやオルペウス・オーダーの移動手段として酷似した機体が登場。
ロケット団特務工作部の装備として登場。
ドラマ
映画
ヤシマ作戦のシーンで3機編隊で登場する。
3号機の起動実験の際、リツコが現場に到着するシーンに登場。
物語序盤のミッションでマードックが操縦し、機首の機銃でテロリストのテクニカルを一掃してから、偽造原版と偽札を積んだコンテナを運んだ。
降下部隊の輸送に複数機が使用されている。
V-22をモデルにしたと思われるティルトローター機をアンブレラ社が使用している。
ゲーム
プレイヤーが操作可能。特徴的な姿勢変更を再現。
「V-22B オスプレイII」と名付けられた架空機が民間機として登場。
物語終盤でエルジア軍将校が首都を脱出する際に登場する。
日本を占拠したアメリカ海軍の機体として登場。プレイヤーも購入して使用できる。
ヒューマンシナリオ「追撃:ブレイズ」にて、ラスボスとして登場。
キャンペーンほか、マルチプレイに登場。
MGS2』本編に登場しなかった未使用3Dモデルとして登場。
アメリカ軍を選択すると生産することが可能。
海兵隊の輸送機として登場。

脚注

注釈

出典

参考文献

  • 坪田敦史「V-22初取材レポート」(『JWings』2006年8月号 イカロス出版
  • 真喜志好一、リムピース+非核都市宣言運動・ヨコスカ『オスプレイ配備の危険性』(2012年8月、七つ森書館
  • 赤旗政治部「安保・外交」班『狙われる日本配備 オスプレイの真実』(2012年9月、新日本出版社
  • 青木謙知『V-22オスプレイ 増補版(世界の名機シリーズ)』(2012年10月、イカロス出版)
  • 青木謙知『徹底検証! V-22オスプレイ ティルトローター方式の技術解説から性能、輸送能力、気になる安全性まで』 (2012年10月、サイエンス・アイ新書

関連項目

外部リンク