大津市中2いじめ自殺事件
大津市中2いじめ自殺事件とは、2011年10月11日に起きた、滋賀県大津市の皇子山中学校2年生がいじめを苦に自宅マンションから飛び降り自殺した事件である。
学校は当初いじめの存在を否定し、市教育委員会は過失責任を否定したが、その後生徒からのアンケートのうち15名の「昼休みに毎日自殺の練習をさせられていた」との証言を市教委が隠していたことが明らかとなった。
担任は体育担当の森山進。主犯は、木村束麿呂(きむらつかまろ。水泳部、京都へ転校、父親は木村真束)、山田晃也(やまだこうや。京都へ転校)、小網武里(こあみたけさと。柔道部、転校せず、祖父が滋賀県警OB、親が小網修で23年度PTA会長)の3人である。
目次
- 1 被害者の受けた数々のいじめ
- 2 隠蔽の露呈経緯
- 2.1 市教委、いじめ認める。大津・中2転落死(2011年11月)
- 2.2 中2のいじめ自殺「過失なし」大津市側が主張へ(2012年5月)
- 2.3 生前に自殺練習強要(2012年7月)
- 2.4 加害者の親が抗議活動
- 2.5 「先生、怖がっていじめ放置してた」自殺生徒の父、3度も被害届→警察は全スルー
- 2.6 皇子山中学校と大津市教育委員会の隠蔽
- 2.7 「暴力」「いじめ」227件「家族全員死ね」
- 2.8 「担任へは泣きながら電話が来ていた」
- 2.9 校長、泣きながら「"自殺の練習"はもともと嘘」「報道にも嘘がある」
- 2.10 市教委が遺族に第三者委設置打診せず
- 2.11 自殺練習、葬式ごっこ「見落とした」大津市教委、学校に責任転嫁「因果不明」
- 2.12 滋賀県警がいじめ捜査の専従チーム 全生徒を聴取へ
被害者の受けた数々のいじめ
- 運動着に精子をかけ体育の時間に臭いと馬鹿にする
- 給食の配膳の際、中に痰・唾・精子をこっそりいれる
- 恐喝した上に親の銀行から現金を引き出し豪遊
- 万引きを強要されて警察に言うと脅される
- 刺激物等(辛子)を陰部に塗りたくり痛がる姿を笑う
- 今日のヘアカットと呼び出し陰毛をライターであぶる
- 死体の画像写真を見せお前はどうなりたい?と聞く
- 毎日のようにズボンをずらし笑いものにする
- 全裸にされ射精を強要される
- 蜂の死骸を食べさせられる
- 雀の死骸を口に入れほお張らせる
- 高所やロープで自殺の練習をさせられる
- 上記の事を携帯で撮影し鑑賞会をする
- ネットに定期的にいじめ写真を掲載し本人に連絡
- 睡眠薬を被害者に盛って服を脱がせて公園に放置した
- 小便付いた雪を食わせる
- 枕投げの時に特大の枕を用意して被害者に集中攻撃
- 真夏の夜に精子が入った水を飲ませる
隠蔽の露呈経緯
市教委、いじめ認める。大津・中2転落死(2011年11月)
大津市内の中学2年の男子生徒(13)が10月11日朝に自宅マンション14階から転落死する事故があり、市教委は11月2日、この生徒が数人の男子同級生からいじめられていたことを確認したと発表した。
市教委は現場の状況から自殺の可能性が高いとみているが、遺書はなく「事故といじめとの因果関係は判断できない」として調査を打ち切る。
学校が10月17日から全生徒にアンケートや聞き取り調査をした結果、いじめが複数の生徒に目撃されていたことが分かった。具体的には、死亡した生徒は数人の男子から
- 教室やトイレなどで繰り返し殴られる
- ズボンをずらされる
- 昼食のパンを食べられる
- ハチの死骸を食べさせられそうになる
- 成績カードを破られる
-などの行為を受けていた。
担任の男性教諭は生徒間でプロレス技のかけ合いをしている場面を目撃し、死亡した生徒に10月に二度声をかけた。
生徒は「大丈夫。お互いにやってることだし、仲良くしたいし」と答えたため、担任はいじめと認識しなかった。
いじめに加わったとされる複数の生徒は暴力行為は認めたが「じゃれあって遊んでいた」と話したという。
死亡した生徒が同級生からお金を取られていたとの情報もあったが、いじめに加わったとされる生徒は否定した。
市教委によると、生徒の父親は9月に二度「家から金がなくなっている」と息子の金遣いを学校に相談。事故後、知人から「息子さんがいじめられていたようだ」との話を聞き、10月13日に「何があったのか知りたい」と学校に調査を依頼。学校がアンケートしていじめが発覚した。
28日に事実を報告された父親は市教委に聞き取りの継続を要望した。父親は本紙の取材に「息子のように、いじめられてしまう子が、二度と出てこないような環境をつくってほしい。一日も早く、いじめの起こらない学校になれば」と話した。
中2のいじめ自殺「過失なし」大津市側が主張へ(2012年5月)
滋賀県大津市のマンションで昨年10月、いじめを受けていた市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が飛び降り自殺したのはいじめが原因だったとして、男子生徒の両親が、いじめ行為をした男子生徒3人とその保護者、大津市に約7720万円の損害賠償を求めた訴訟で、市側が22日に大津地裁で開かれる第1回口頭弁論で「市は自殺に過失責任はない」と主張することが16日、明らかになた。
生前に自殺練習強要(2012年7月)
大津市で2011年10月、同級生からいじめを受けていた市立中学2年の男子生徒(当時13歳)が自宅マンションから飛び降り自殺した問題で、学校が全校生徒に実施したアンケートに対し、15人の生徒が「自殺の練習をさせられていた」と回答していたことが2012年7月3日、関係者への取材で分かった。市教委は2011年11月の記者会見でこの事実を明らかにしていなかった。
【15人の生徒が回答】「死んだスズメを口の中に入れろと言われていた」「昼休みに毎日自殺の練習をさせられていた」
男子生徒の両親が2012年2月、大津市や加害生徒3人と保護者を相手取り、約7720万円の損害賠償を求めて大津地裁に提訴。5月の第1回口頭弁論で市はいじめがあったと認めたが、「いじめを苦にしての自殺と断じることはできない」と主張していた。両親の代理人はアンケートの回答について、17日に開かれる第2回口頭弁論に提出する準備書面で主張する。
アンケートは男子生徒の自殺後にいじめについて実施し、約320人が回答した。15人の生徒は「自殺の練習とか、トイレで殴られていたとか、死んだスズメを口の中に入れろと言われていた」「何回も自殺の練習をさせられていた。先生に相談したけど何もしてくれなかった」などと回答。「昼休みに毎日自殺の練習をさせられていた」「がんの友達に自分の命をあげるなどと言っていたらしい」との回答もあった。
また、13人が「友達なのにお金を恐喝されていた」「脅して銀行の番号を聞き出し、その銀行からとったお金を使っていた」と回答、15人が「万引きを強要されていた」と書いた。
男子生徒は2011年10月11日朝、自宅マンション敷地内で倒れているのが発見され、滋賀県警大津署が自殺と断定した。学校側は当初「いじめは把握していない」としていたが、全校生徒へのアンケートでいじめの事実が判明した。
これまでに明らかになったのは、ヘッドロックをかける▽トレーニングと称して押さえ込む▽毎日のようにズボンをずらす▽蜂の死骸を食べさせようとする--などで、担任が目撃していたが、軽い注意にとどまっていた。
市立中の教頭は「アンケートをしたのは事実。訴訟中であり、コメントは差し控えたい」と話した。
加害者の親が抗議活動
1000人近い大規模校なのに、別の学年を含め全校生徒のほぼ全員がイジメを知っていた。自殺後の緊急保護者会の日、校門前で加害者の親が「ウチの子は被害者です」という内容のビラを配っていた。
主犯格がPTAの会長の息子でその親は うちの息子がやった証拠があるんですか?うちの子の未来はどうなるんですか?と認めなかった。
11月は何度も何度も緊急保護者会があったけど、加害者の親たちが喚き散らして、学校側も言い訳ばっかりでわけわかんない状態だったらしいって、その学校に子供を通わしてる保護者さんから事件当時よく聞いてたよ。
「先生、怖がっていじめ放置してた」自殺生徒の父、3度も被害届→警察は全スルー
生徒が同級生から暴行を受けていた事実があるとして、父親(46)が2011年末にかけ3回にわたり警察に被害届を提出しようとしたが、大津署から受理を拒否されていた。
男子生徒への暴行については、自殺後の2011年10月中旬に学校が全校生徒に実施したアンケートで、44人が記名の上、「体育大会で集団リンチに遭っていた」「万引をさせられ、殴る蹴るの暴行を受けていた」などと具体的な証言を行っている。
男子生徒の父親は、複数の同級生から独自に聞き取った暴行の証言と学校の調査結果を基に、生徒が自殺した後の2011年10月に2回、同12月に1回、大津署に出向き、暴行容疑の被害届を提出したいと申し出たという。しかし、関係者によると、対応した署員は「犯罪としての事実認定ができない」として受理を断ったという。父親は大津署の対応について「真相究明のために、死んだ息子に代わって被害届を出したかった。どうして受理してくれないのか」と憤る。同署は「一切、答えられない」としている。
教諭の放置を示す回答は記名8人、無記名6人で、直接見聞きした内容が1人、伝聞が13人。「先生も見て見ぬふり」や「一度、先生は注意したけれどその後は一緒になって笑っていた」と記されていた。また「先生もいじめのことを知っていたけどこわくて言えなかったらしい」などとするものもあった。 一方、男子生徒が先生にも泣きながら電話でいじめを訴えたが、あまり対応してくれなかったらしい、と指摘する回答も。市教委は昨年、事実確認できたアンケート内容のみを公表し死亡した男子生徒がいじめを受けていたことを認めたが、いじめと自殺との因果関係は不明としていた。しかし「自殺の練習」や教諭の放置を示す回答は、追加調査しても事実確認できないとの理由で公表を見送っていた。
皇子山中学校と大津市教育委員会の隠蔽
学校や教育委員会は、いじめの調査結果を一部しか公表していなかったが、不誠実な対応は、それだけにとどまらなかった。
「(学校は)事件当日から『誰かに聞かれても無視しとけ』」
「このこと(自殺の件)は、あまりしゃべらないようにとか。口止めみたいな」
男子生徒の自殺後、学校は在校生に対し、生徒個人やいじめについて口外しないよう、口止めしていた。大津市の越直美市長も、この口止めを認めた。
「昨年、この事件があったとき、『いろいろ聞かれても無理に話す必要はない』と言ったことは聞いた。新しく何か(口止めについて)言ったという事実はなかったと聞いている」(大津市・越直美市長)
しかし、7月6日。「きょう(校内)放送あった。全校集めた(校内)放送で、『変なことしゃべるなよ』って」(同じ中学の生徒)
「暴力」「いじめ」227件「家族全員死ね」
市教委が自殺直後に全校生徒(859人)を対象に行ったアンケートで男子生徒が「暴力」「いじめ」を受けていたとする回答が、伝聞も含めて計227件あったことが7月7日、分かった。
産経新聞の取材によると「直接目撃した」との申告は、回答全体の約3割となる104件(記名67件、無記名37件)。「男子生徒に『おまえの家族全員死ね』と怒りながら言っていた」「体育大会で集団リンチのようなものに遭っていた」「(いじめたとされる同級生が)亡くなる2週間前に殴ったり頭をふんだりしていた」など、具体的な回答も目立った。
内容別では、伝聞も含めると「暴力」は114件、「いじめ」は113件。「(男子生徒が)口の中にハチとかカエルを入れられた」「(いじめたとされる同級生が)あざができたら先生にばれないように伏せさせた」という回答もあった。
「お金」は13件で、「(男子生徒が)万引をしたくないからお金を渡していたと聞いた」との内容も。その他の項目では、いじめたとされる同級生が「『まだやることがあったのに』『何や、死んだんか』という発言をした」という情報もあった。
大津市教委は集計後、記名回答した生徒からの聞き取りで信憑性が高いと判断した一部の内容しか公表しなかった。今回の問題を受け、越直美市長は、自殺をめぐる一連の事実関係について再調査に乗り出すことを表明している。
「担任へは泣きながら電話が来ていた」
学校が全校生徒に実施したアンケート結果に「担任の森山先生には(自殺した生徒から)泣きながら電話が来ていた」という内容の記名回答があることがわかった。市教委と学校は2011年11月、アンケート回答のうち、「生徒が直接確認した内容」で事実確認ができたものについて公表したが、市教委はこの内容は明らかにしていない。
市教委は7月9日、取材に対し、この回答があったことを認めたうえで、「担任が生徒から電話を受けていたのは事実。学校が担任に確認したところ、いじめについての相談ではなかったと言っており、回答した生徒には内容を確認していない」と説明。市教委は電話の時期は不明とし、内容は「プライバシーにかかわる」と明らかにしていない。
アンケートは自殺6日後の2011年10月17日から3日間、全校生徒約860人を対象にあった。3項目あり、生徒について「知っていることはありますか」との質問には約330人から有効回答があり、 殴る蹴る、手足を縛る、ハチを食べさせるなど、いじめをうかがわせる回答があった。
校長、泣きながら「"自殺の練習"はもともと嘘」「報道にも嘘がある」
テレビ朝日系「モーニングバード」(2012年7月9日)でも、この中学の生徒の証言が放送された。
「(自殺した生徒の)家族がいじめられていることを言ったらしい。でも、先生が軽く流して終わった」「担任の先生もその場にいたけど、見て見ぬふりをしていたということになっていて、この先生は大丈夫なのかと思う」
そして、7月6日に校内放送で、校長が泣きながら全校生徒に語りかけたことも明かした。内容は、報道されている事には嘘が含まれていて、「自殺の練習」は隠していたのではなく、もともと嘘だと言ったというのだ。これについて生徒は、
「何が本当で嘘なのかわからない。ちゃんと本当のことだけ教えて欲しい」
「泣きながら話すのは頼りないと思います。正直はっきりさせて、みんなが安心して過ごせる学校になってほしい」などと訴えていた。
どうしてこのように学校は、事件の解明に消極的で、曖昧な発言を繰り返し、生徒たちの不安と不信を掻き立てることになってしまうのだろうか。
市教委が遺族に第三者委設置打診せず
大津市立中学2年の男子生徒の自殺を巡り、市教委が全校生徒アンケートなどを基にした内部調査の打ち切りを決めた際、原因調査のための第三者委員会を設置するかどうかを、遺族側に打診していなかった。
第三者委員会については、文部科学省が2011年6月、生徒の自殺に際して遺族が望んだ場合などに「設置するのが望ましい」と都道府県教委に通知していた。同省は「近く市教委から経緯を聞き取る」としている。
同省によると、生徒が自殺した場合、教諭や生徒らから迅速な聞き取りを行った上で遺族から詳細調査を求められた場合などに「中立的な立場の医師や弁護士等の専門家を加えた調査委員会を早期に設置することが重要」とする通知を2011年6月に出している。
市教委は「調査打ち切りを決めた際に外部委員会の設置について遺族側に伝えなかったのは配慮不足だった」としている。
一方、生徒の父親(47)は「学校側や市教委からは一切、外部委員会についての説明は聞いていない。提案があれば設置を求めたはずだ」と憤慨している。
自殺練習、葬式ごっこ「見落とした」大津市教委、学校に責任転嫁「因果不明」
「今月6日まで見落としていた」-。大津市で昨年10月、市立中学2年の男子生徒が飛び降り自殺した問題で10日、初めて明らかにされた2回目のアンケート。「自殺の練習と言って首を絞める」「葬式ごっこ」という痛ましい記載があったが、市役所で緊急会見した澤村憲次・市教育長が説明した市教委の対応はずさんきわまりないもので、批判が強まるのは避けられない。
緊急会見は午後8時半に始まり、澤村教育長ら市教委幹部が冒頭「調査が不十分」と謝罪。しかし2回目の回答の内容についても「裁判の中で明らかにしていく」などとして一部分しか答えなかったり、「学校としては調査をがんばっていたと思う」と釈明したりする場面もあった。
市教委によると、学校から2回目のアンケートの結果について報告があったのは2011年12月上旬。市教委の学校教育課が確認作業にあたったものの、「市教委が公表の基準とする、いじめの確証が得られる情報がなかった」として、アンケートの存在自体を公表しなかったという。
ところが、今月6日に市教委で改めてアンケートを見直したところ、「自殺の練習と言って首を絞める」「葬式ごっこ」と具体的な記述を発見したという。なぜアンケートを見直したのかについては明確な説明がなく、会見した幹部からは「学校が『新たな情報』として市教委に報告していなかった」と、学校側に“責任転嫁”するかのような説明もあった。
昨年秋に行った1回目のアンケートで、学校や市教委はいじめの存在を認めながら「自殺との因果関係は不明」と判断。しかし今月に入って「(男子生徒が)自殺の練習をさせられていた」、「教諭が見て見ぬふり」-など問題のある回答が含まれていたことや、男子生徒が「暴力」「いじめ」を受けていたとの回答が伝聞も含め計227件にのぼっていたことなどが判明した。ところが市教委側は10日夜の会見でも、「自殺との因果関係は不明」との主張を繰り返した。
滋賀県警がいじめ捜査の専従チーム 全生徒を聴取へ
大津市立中学2年の男子生徒(当時13)が自宅マンションから飛び降り自殺をした問題をめぐり、滋賀県警は7月11日、生徒に対するいじめの犯罪性や自殺との因果関係を調べる専従捜査チームを立ち上げた。この日から、いじめに関わったとされる生徒のほか、生徒が通っていた中学校の在校生約800人と卒業生の一部、全教職員、市教委の関係者らを対象に事情を聴く方針。
県警によると、チームは少年課や大津署の捜査員ら25人で構成。学校などが実施した全校生徒へのアンケート結果などの提供を受け、いじめについて記入した生徒を中心に事情聴取する。アンケートの記述にあった「自殺の練習」「葬式ごっこ」といった伝聞情報も含めて自殺との関連を調べ、強要や暴力行為等処罰法違反などの容疑での立件の可否を慎重に捜査をするという。
自殺した生徒の父親はこれまで、大津署に3回、暴行容疑の被害届の提出を相談したものの、「被害者が死亡しており、犯罪事実が特定できない」などとして受理されなかった。この事実が明らかになると、同署や県警本部に対応を批判する電話やメールが殺到していた。