ヘロイン
ヘロイン (heroin, diamorphine) は、アヘンに含まれるモルヒネから作る麻薬。塩酸モルヒネを無水酢酸で処理し、生成する。正式には、3,6-ジアセチルモルヒネ (3,6-diacetylmorphine)。化学式は、C21H23NO5。CAS登録番号は、561-27-3。
依存性の極めて強い麻薬であり、麻薬及び向精神薬取締法で、その製造・所持・医療目的を含め、規制対象になっている。現存するあらゆる薬物の中で「快」の面でも「悪」の面でも最も高峰に位置するものとして、「薬物の女王」(The queen of drug) の代名詞を持つ。
歴史
ロンドン・セントメアリー病院医学校のアルダー・ライト (C.R. Alder Wright) によって1874年に調合され、ドイツのバイエル (企業)|バイエル社により鎮咳薬として1898年に発売された。
当初は経口投与が一般的であり、モルヒネよりも依存性は低いと考えられていたが、注射器による投与が広まると、単純にモルヒネよりも脂溶性が高かったため、多く脳に取り込まれ、強烈な麻薬作用を引き起こすことが判明し、各国にて相次いで厳しく規制されることとなった。
日本においては戦後よりコカインが広く知られるようになる1980年代まで、覚醒剤と並んで麻薬の代名詞であった。
作用
アメリカの作家、ウィリアム・S・バロウズを始めとして経験者の多くが挙げるのが、まずもってこの上ないと言われる多幸感である。
主な使用法に吸引、経口摂取、そして静脈注射の3種があり、静脈注射によって摂取した直後から数分間にわたって続く強烈な快感は「ラッシュ」と呼ばれる。
ヘロインは使用者の肉体と精神に依存を形成する。禁断症状として、身体中の関節に走る激痛、小風に撫でられただけで素肌に走る激痛、体温の調節機能に生じる狂いによる激暑と酷寒の数秒ごとの循環、身体中に湧き上がる強烈な不快感と倦怠感、などが挙げられる。
こうした一連の症状は「ほかの何でもない地獄そのもの」などと表現される苛烈なもので、この禁断症状を指していう「コールド・ターキー」(Cold turkey) というスラングが生まれた。なおこのスラングは1969年に歌手のジョン・レノン(プラスティック・オノ・バンド)が発表した楽曲 "Cold Turkey" (邦題「コールド・ターキー|冷たい七面鳥」)によって世界的に有名になった。レノンはこの曲を通して薬物の禁断症状の恐ろしさを世に知らしめようとしたつもりだったが、ドラッグ・ソングと誤解を受け放送禁止にした放送局もあったという。
この症状に対しては、メサドンの定期的投与が有効である。メサドンを投与すると、その禁断症状は短時間で止まり、また、その効果中はヘロインが投与されても麻薬作用は抑制される。