尖閣諸島中国漁船衝突事件

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2010年12月11日 (土) 21:45時点におけるFromm (トーク | 投稿記録)による版 (事件の経過)

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仙谷由人中国外務省姜瑜(Jiang Yu)報道官

尖閣諸島中国漁船衝突事件(せんかくしょとうちゅうごくぎょせんしょうとつじけん)とは、2010年9月7日午前、中国漁船が日本領海である沖縄県尖閣諸島付近で違法操業し、その後日本の海上保安庁巡視船に衝突してきたことに端を発する一連の事件。尖閣漁船事件中国漁船衝突事件とも呼ばれる。

事件の概要

2010年9月7日、尖閣諸島付近の海域をパトロールしていた巡視船「みずき」が、中国籍の不審船を発見し日本領海からの退去を命じるも、それを無視して漁船は違法操業を続行、逃走時に巡視船に衝突を繰り返し巡視船2隻を破損させた。海上保安庁は同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し 、取り調べのため石垣島へ連行し、船長を除く船員も同漁船にて石垣港へ回航、事情聴取を行った。9日に船長は那覇地方検察庁石垣支部に送検された。(#事件発生から逮捕・送検まで)

中国政府は「尖閣諸島は中国固有の領土」という主張を根拠に、北京駐在の丹羽宇一郎大使を呼び出し、日本側の主権に基づく司法措置に強硬に抗議し、船長・船員の即時釈放を要求した。これを受けて13日に日本政府は船長以外の船員を中国に帰国させ、中国漁船も中国側に返還したが、船長に関しては国内法に基づいて起訴する司法手続きの方針を固め、19日に勾留延長を決定した。すると中国側はこれに強く反発し即座に日本に対して様々な報復措置を実施した。(#送検から2度目の勾留延長決定まで#中国政府の報復措置)

24日、国際連合総会開催中で菅直人内閣総理大臣および前原誠司外務大臣不在の中、那覇地方検察庁鈴木亨・次席検事が船長の行為に計画性が認められないとし、また日中関係を考慮したとして、中国人船長を処分保留で釈放すると突如発表。本決定を仙谷由人官房長官は容認。25日未明、中国側が用意したチャーター機で、中国人船長は石垣空港から中国へと送還された。(#船長の釈放)

11月1日、中国への配慮から非公開となっていた漁船衝突時の動画が、那覇地検によって6分50秒に編集された上で、衆参予算委員会所属の一部の議員に対してのみ限定公開された。11月4日、ハンドルネーム「sengoku38」によって漁船衝突時に海上保安官が撮影していた44分間の動画がYouTube上に流出した。(#漁船衝突映像の限定公開と流出

事件の経過

タイムテーブル

  • 2010年9月7日 - 中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突
  • 2010年9月8日 - 中国大使館職員が船長に面会
  • 2010年9月9日 - 石垣海上保安部が船長を、公務執行妨害容疑で那覇地検石垣支部に送検
  • 2010年9月10日 - 那覇地検石垣支部が船長の勾留の延長を請求
  • 2010年9月13日 - 船長以外の船員を帰国させ、漁船を解放
  • 2010年9月16日 - 前原誠司国土交通相は石垣海上保安部に行き、巡視船艇の係留所を視察
  • 2010年9月19日 - 石垣簡易裁判所は逮捕された中国人船長の拘置期間を10日間延長し、20日から29日までとする。
  • 2010年9月20日 - 19日から20日にかけて中国政府が日本に対する複数の報復措置を実行する。  
  • 2010年9月22日 - 早朝、中国首相から釈放要請があり、同日午前、検察首脳会議を24日に行うことが決定された
  • 2010年9月23日 - 外務省職員が仙谷官房長官の了解のもと那覇地方検察庁へ出向き説明
  • 2010年9月24日 - 午前10時、検察首脳会議が開催され釈放が決まる。那覇地方検察庁が船長を処分保留で釈放と発表
  • 2010年9月25日 - 未明に中国のチャーター機で石垣空港から出国し、中国人船長は中国福建省福州の空港へと送還された
  • 2010年10月21日 - この事件で損傷した巡視船「みずき」が修理を終え、試験運転を開始
  • 2010年11月1日 - 6分50秒に編集された漁船衝突時の映像が、衆参予算委員会所属の一部の議員にのみ限定公開される。
  • 2010年11月4日 - 44分に編集された漁船衝突時の映像が、「sengoku38」によってYouTube上に流出する。
  • 2010年11月9日 - 巡視船「みずき」が復帰、「よなくに」も年内復帰に目処。政府ではこの船の修理代を中国へ請求することを決定
  • 2010年11月10日 - 43歳の海上保安官が、自らが「sengoku38」だと名乗り出る。15日には映像の秘密性は低いとして逮捕は免れ、書類送検される。
  • 2010年11月26日 - 尖閣事件処理に対する不満も一因となり、仙谷官房長官と馬淵国交相に対して参議院で問責決議案が可決された。問責可決以後は、当該閣僚は国会答弁できなくなるのが通例。

事件発生から逮捕・送検まで

海上保安庁によれば、9月7日午前10時15分頃、尖閣諸島最北端に位置する『久場島』北西約12キロの付近の海域をパトロールしていた、第十一管区海上保安本部所属の巡視船「みずき」が不審船(中国籍のトロール漁船『晋漁5179』)を発見し、日本の領海で違法操業をしている漁船に退去命令を出した。しかし漁船はこれを無視して違法操業を続行、揚網後に漁船の舳先を巡視船「よなくに」に向けつつエンジンの出力を上げて増速、「よなくに」の左舷後部に衝突して、そのまま逃走を開始した。これを受けて「みずき」が逃走する漁船に対して追跡を開始し、並走して停船を命令するも、漁船は「みずき」の右舷に船体を衝突させて逃走を図り、2隻を破損させた。海上保安庁はこのときの様子をビデオに撮影している。海上保安庁は8日にこの中国漁船を停船させ、同漁船の船長を公務執行妨害で逮捕し、石垣島へ連行した。船長を除く船員も同漁船にて石垣港へ回航、事情聴取が行われた[1]。捜査関係者は「海保職員が船長を連行する際、酒臭かった」と証言している。翌9日には、船長は那覇地検石垣支部に送検され取調べが始まった。

本来なら、外国船舶が領海内で違法操業や目的のない徘徊をしている疑いがある場合は、「外国人漁業の規制に関する法律」違反や「領海等における外国船舶の航行に関する法律」違反等の疑いがあるとして、漁業法に基づいて停船を命令し立入検査の実施を求め、違反していた場合は該当する法律を根拠に、逃走した場合は漁業法違反(立入検査忌避罪)によって逮捕するが、尖閣諸島の領海では中国への配慮から、例外として領海外への退去を命令するだけに収めていた。しかし今回は漁船が2度にわたって衝突してくるなど悪質なことから「公務執行妨害」での逮捕となった。なお、この際、尖閣諸島領海内で100隻程度の中国漁船が領海へ出入りを繰り返し違法操業をしていたことが明らかになっている。

この日本側の動きに対して中国政府の外務報道官は、「日本は司法にのっとって即時に船長を安全に解放すべきだ」と発表した。また、尖閣諸島周辺を自国の領海・領土と強調した上で、「その海域で操業していた自国の漁船に日本の国内法が適用されるなど荒唐無稽だ。非合法で効力はない」と主張・報道し、「関係海域周辺の漁業生産秩序を維持し、漁民の生命・財産を保護する」目的として、同海域に向け漁業監視船を既に派遣したとを発表した。 この漁業監視船は農業部漁業局の「漁政201」と「漁政202」であり、7日に出航した2隻は10日から17日まで尖閣諸島の接続水域に進入・徘徊し、海上保安庁の巡視船やヘリコプター、海上自衛隊P-3C哨戒機の監視と警告を受けた。

送検から2度目の勾留延長決定まで

中国政府は「釣魚島(尖閣諸島)は中国固有の領土」であるという根拠を元に、事件発生の日から4回にわたって北京駐在の丹羽宇一郎大使を呼び出し、日本側の措置に強硬に抗議、船長・船員の即時釈放を要求した。中国政府は呼び出しの度に、胡正躍外交部長助理(次官補)、宋濤外交副部長(次官)、楊潔チ外交部長(外務大臣)戴秉国国務委員(副総理級)と、段階的に高位の人物が対応しており、特に戴秉国国務委員による呼び出しは、12日の未明(午前0時から1時間)ということもあり、きわめて異例とされた。なお、船長逮捕当時、菅首相をはじめとして政府内では逮捕と起訴に積極的だったが、中国が抗議声明が発表したあたりから仙石官房長官らが釈放を主張し始めていたという。

また中国政府は、東シナ海ガス田問題交渉の延期を通告し、7日の農業部漁業局の漁業監視船「漁政」の派遣に続いて、中国国家海洋局傘下の海監総隊の「海監51」等2隻を周辺海域に派遣し、11日から13日まで海上保安庁の測量船と対峙し測量船の海洋調査活動を妨害した。

13日、日本政府は参考人として事情聴取をしていた船員14人を中国政府のチャーター機で帰国させ、差し押さえていた中国漁船も中国側に返還したが、船長に関しては19日に勾留延長を決定し、さらに外国人漁業の規制に関する法律違反の容疑でも調べを進め、司法手続きを続ける意思を明確にした。

政府の見解
  • 日本政府は「尖閣諸島に領土問題は存在しない」としている。前原誠司国土交通相も2010年9月14日の記者会見で「東シナ海には領土問題は存在しない」と発言し、かねての主張を繰り返した。これは2010年5月27日岡田克也外相の「尖閣に日本の領土問題はない。議論の余地はない」と述べたことを踏襲するものである。
  • 蓮舫行政刷新相は尖閣諸島を「領土問題」と述べたが、政府見解と矛盾することを指摘され、同日午後、「尖閣諸島は歴史的にも国際法上もわが国固有のものだ」と発言を修正した。このことを受け、中国のポータルサイト鳳凰網は蓮舫の経歴と出自を紹介した上で、「日本の華僑議員が尖閣諸島は日本領と発言した」と報じた。
野党の反応
  • 自民党は外交・国防部会を2010年9月15日に開き、蓮舫の発言を「とんちんかん」「勉強不足か」と批判した。佐藤正久会長は、中国側が丹羽宇一郎・駐中国大使を夜中も含めて5度も呼び出したことに対して、「外交的には極めて無礼だ」と反発。山本一太参院政審会長も中国の海洋進出の先例を挙げ、「何かあるとエスカレートさせて最後は中国が実をとる。注意しないとかなり大きな問題になる」と指摘した。
中国政府の反応
  • 国務院台湾事務弁公室の范麗青報道官は「釣魚島の主権を守ることは中台同胞の共通の利益で、中華民族の長期的、根本的な利益になる」と述べた。
日中両国の民間の反応
  • 日本国内の民間の反応に関しては、シンガポールの華字紙・聯合早報が「日本の右翼分子が9月16日と17日の両日、兵庫県の神戸中華同文学校に対して『学校を爆破する』との脅迫電話をかけ、神戸中華同文学校は警察に通報し18日午後を休校とした。」と報じている。また、神奈川県横浜市の山手中華学校にも脅迫の手紙が寄せられ、さらに同記事は「東京や大阪などの華人向けの学校でも類似の脅迫電話が相次いでいる」と報じているが、真偽のほどは不明。
  • 中国国内の民間の反応に関しては、9月8日に、中国の反日民間団体のメンバーら30 - 40人が、北京の日本大使館前で中国の国歌を歌ったり、国旗を振ったりするとともに、報道関係者に対して日本側の対応を批判する演説を行い、船長の釈放などを求めた。その上で抗議文書を大使館の郵便ポストに入れ、引き揚げた。
  • 2010年9月15日までに、中国人による北京日本大使館や日本人学校への抗議や嫌がらせが、約30件に達した事が在中日本大使館の調べで分かった。在中日本大使館によると、「広東省広州市の日本総領事館の外壁にビール瓶を投げつけられた」、「北京の日本大使館近くで車のクラクションが5分間鳴り続ける騒ぎが起こった」、「館や各地の総領事館に抗議文が約10通届いた」、「天津日本人学校への鉄球撃ち込み」などが報告されている。
  • 9月17日に、中国大手健康食品メーカーが日本への抗議行動として、予定されていた計1万人の訪日旅行ツアーをキャンセルする。

中国政府の報復措置

  1. 産経新聞2010年9月8日付 夕刊より