「二重スリット実験」の版間の差分
(新しいページ: ''''二重スリット実験'''(にじゅうスリットじっけん)は、単一の量子が波動性と粒子性の二重性を持つことを証明した実験。 こ...') |
(→関連項目) |
||
(同じ利用者による、間の1版が非表示) | |||
18行目: | 18行目: | ||
隠れた変数理論を用いれば、片方のスリットの通過でこの実験結果を説明することが可能である。 | 隠れた変数理論を用いれば、片方のスリットの通過でこの実験結果を説明することが可能である。 | ||
別途、隠れた変数理論の検証は行なわれているが、この実験では、隠れた変数理論の真偽を確認することは出来ない。 | 別途、隠れた変数理論の検証は行なわれているが、この実験では、隠れた変数理論の真偽を確認することは出来ない。 | ||
+ | 尚、今日でも、位置や運動量にだけ隠れた変数を割り当てる限定的隠れた変数理論は否定されておらず、その限定的隠れた変数理論でこの実験を説明することは可能である。 | ||
==注釈== | ==注釈== | ||
23行目: | 24行目: | ||
== 関連項目 == | == 関連項目 == | ||
+ | *[[量子力学]] | ||
*[[ヤングの実験]] | *[[ヤングの実験]] | ||
*[[重ね合わせ]] | *[[重ね合わせ]] |
2010年2月5日 (金) 20:30時点における最新版
二重スリット実験(にじゅうスリットじっけん)は、単一の量子が波動性と粒子性の二重性を持つことを証明した実験。 この実験以前から、単一の量子であっても波動性と粒子性の二重性を持つと予想されていた[1]が、二重スリット実験によって初めて単一の量子の二重性が証明された。 1974年にピエール・ジョルジョ・メルリらによって単一の電子を使った実験が行なわれた。
実験[編集]
検証実験の説明[2]によると、電子は、まず、平行な金属板の間の経路を1ミクロン以下の糸で2分した電子線バイプリズムという装置を通る。その後、電子は、1mの電子顕微鏡の中を通り、光子検出器で検出され、その検出結果をモニターで確認できる。電子は、高速の約40%の速度で1秒に約10個発射され、電子顕微鏡の中を1億分の1秒で通り抜ける。そのため、電子顕微鏡内部には、常に、1個以下の電子しかない。実験が始まると、モニターの各部にランダムに点が現れるが、しばらく観測すると、その点の集合体が波のような干渉縞を形成する。
問題[編集]
この実験では、単一の粒子であっても、波動性と粒子性の二重性を示している。 そして、波動性は干渉縞の広がりと同等の空間的広がりを示す一方で、粒子性は一点にのみ存在する粒子の性質を示している。 これは、一般的な直観に反するので俄には信じ難いが、これこそが量子の本質的な性質であることは実験が示す動かし難い真実である。 尚、波動性と粒子性については、一体不可分の性質と考えるべきであって、どちらが真の姿であるかを論じる意味は全くない。
「粒子が二本のスリットを同時に通過した」と主張する者もいるが、この実験ではその仮説を証明することは出来ない。 不確定性原理があるため、粒子の通ったスリットを確かめようとすると、実験に致命的影響を与える。 また、粒子の通過するスリットを1つに限定しようとすると、波の通過するスリットも1つに限定されてしまう。 よって、「粒子が二本のスリットを同時に通過した」とする仮説は証明不可能である。
誤解されやすいが、この実験の結果は隠れた変数理論の真偽とは無関係である。 隠れた変数理論を用いれば、片方のスリットの通過でこの実験結果を説明することが可能である。 別途、隠れた変数理論の検証は行なわれているが、この実験では、隠れた変数理論の真偽を確認することは出来ない。 尚、今日でも、位置や運動量にだけ隠れた変数を割り当てる限定的隠れた変数理論は否定されておらず、その限定的隠れた変数理論でこの実験を説明することは可能である。
注釈[編集]
- ↑ Colin Bruce著/和田純夫訳「量子力学の解釈問題―実験が示唆する『多世界』の実在」P.35
- ↑ 量子計測:研究ハイライト:研究紹介:研究開発:日立