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原動機付自転車(げんどうきつきじてんしゃ)とは、日本において一般的にエンジンの総排気量が50cc以下の二輪車および三輪車を指し、通称「原付」と表現される事も多い。法的に大別すると、道路交通法ではエンジンの総排気量が50cc以下の二輪車および三輪車の事を指し、道路運送車両法では125cc以下の二輪車を指す(後述参照)。ガソリンエンジンの代わりに電気モーターで動くものも含まれる。この項では、50cc以下の車両を中心に詳述する。
目次
概説[編集]
日本において原動機付自転車は運用する法律によって排気量の定義が異なる。後述するように、道路交通法では50cc以下が原付であるものの、道路運送車両法などでは125cc以下を原付と定義しており、この場合、50cc以下を「第一種原動機付自転車(通称:原付一種)」、50cc超125cc以下を「第二種原動機付自転車(通称:原付二種)」と表現する(詳しくは小型自動二輪車参照)。
原動機付自転車の起源は、自転車に小型のガソリンエンジンを付けた乗り物である。日本でも第二次大戦後大いに流行し、既存の自転車にとりつけるエンジンキットも市販されていた。大手オートバイメーカーであるホンダ等も、最初はこの種の製品を販売していた。これらの原動機付自転車(ペダル付きオートバイ)は日本ではモペッドと呼ばれており、日本国内では衰退しているが、西欧の諸国では、いまも製造販売されている。
一方、現在の原動機付自転車はむしろ、小型のコミューターとしての側面が大きい。スズキ・チョイノリのような特殊な例を除き、現在の市販車両の多くは自転車が持つ軽快な機動性よりも、乗り心地やホンダ・カブに代表される実用的な積載性と経済性、スクーターのように加速力や便利な機能(ヘルメット収納スペース、セルスターター、自動チョーク、自動変速機等)を追求している。またレジャーバイクなるものも存在し、代表的な市販車としてホンダ・モンキーは乗用車のトランクスペースに積載可能でありカブ系エンジンを搭載した超小型バイクである。バイク史の変遷をたどれば、1980年代のバイクブーム時代は100km/h近くに達する最高速を誇るいわゆる「ゼロハンスポーツ」が鎬を削った。その一方で日本では道路交通法から制限速度は時速30kmとされ、自動二輪車に比べ制限速度の制約が大きく、二人乗り禁止、交差点で二段階右折が必要とされる場合があるなど、実用面における原動機付自転車は自転車とオートバイの中間的な位置付け若しくはオートバイとは異なる位置付けにされることがある。現在の市販車は、速度上限装置を設けメーカー自主規制にて60km/h以上の速度が出せないような構造になっているのが一般的である。
このため、自転車の語を外した略称として原付(げんつき)という語がよく使われる。さらに自転車の俗称であるチャリンコを略したチャリと合わせて、「原動機付チャリンコ」の意味で、俗に原チャリ・原チャと呼ばれることがある。報道では「ミニバイク」と呼ばれることが多い。また、三輪のものは原付三輪(げんつきさんりん)やスリーターと呼ばれホンダ・ジャイロなどがこれに当たる。
日本の法律上の定義[編集]
日本の法律上の定義は道路交通法・道路運送車両法・道路法・高速自動車国道法等により複数の区分がある。
道路交通法での原付 50cc以下[編集]
50cc以下(ミニカーを除く)を原動機付自転車とする(道路交通法等)
- 「原動機付自転車 内閣府令で定める大きさ以下の総排気量又は定格出力を有する原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であつて、自転車、身体障害者用の車いす及び歩行補助車等以外のものをいう。」(道路交通法第2条第1項第10号)
- 「道路交通法第二条第一項第十号の内閣府令で定める大きさは、二輪のもの及び内閣総理大臣が指定する三輪以上のものにあつては、総排気量については〇・〇五〇リツトル、定格出力については〇・六〇キロワツトとし、その他のものにあつては、総排気量については〇・〇二〇リツトル、定格出力については〇・二五キロワツトとする。」(道路交通法施行規則第1条の2)
- 原付三輪(道路交通法施行規則第1条の2における「内閣総理大臣が指定する三輪以上のもの」)はさらに以下の要件を満たすものであり、それ以外はミニカーとなる。
- 「車室を備えず、かつ、輪距(二以上の輪距を有する車にあつては、その輪距のうち最大のもの)が〇・五〇メートル以下である三輪の車及び側面が構造上開放されている車室を備え、かつ、輪距が〇・五〇メートル以下である三輪の車」(平成2年12月6日総理府告示第48号)
道路運送車両法などでの原付 125cc以下[編集]
125cc以下を原動機付自転車とする(道路運送車両法、道路法、高速自動車国道法等)
- 「この法律で「原動機付自転車」とは、国土交通省令で定める総排気量又は定格出力を有する原動機により陸上を移動させることを目的として製作した用具で軌条若しくは架線を用いないもの又はこれにより牽引して陸上を移動させることを目的として製作した用具をいう。」(道路運送車両法第2条第3項)
- 「道路運送車両法第二条第三項の総排気量又は定格出力は、左のとおりとする。
一 内燃機関を原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その総排気量は〇・一二五リツトル以下、その他のものにあつては〇・〇五〇リツトル以下
二 内燃機関以外のものを原動機とするものであつて、二輪を有するもの(側車付のものを除く。)にあつては、その定格出力は一・〇〇キロワツト以下、その他のものにあつては〇・六〇キロワツト以下 - 前項に規定する総排気量又は定格出力を有する原動機付自転車のうち、総排気量が〇・〇五〇リツトル以下又は定格出力が〇・六〇キロワツト以下のものを第一種原動機付自転車とし、その他のものを第二種原動機付自転車とする。」(道路運送車両法施行規則第1条)
高速道路を総排気量が125cc以下の自動二輪車やミニカーが走行できない理由は、高速道路の通行可能車両が道路交通法ではなく、道路法・高速自動車国道法により定義されており、これらの法律では前述の車輛が原動機付自転車に分類されていることによる。
免許の区分と車両の区分は同一でないため、50cc超125cc以下の二輪車で公道を走るには、小型限定を含む普通二輪免許あるいは大型二輪免許が必要であり、原付免許や普通自動車免許などで運転すると無免許運転となる。
125cc以下の原動機付自転車は、市町村で登録され、軽自動車税が課せられるにあたって、排気量別にさらに区分される、市町村によって異なる場合があるが、排気量50cc以下を白色、90cc以下を黄色、125cc以下を桃色のナンバープレートを交付して、それぞれ、1種、2種乙、2種甲として登録されることが多い。
区分 | ナンバープレートの色 (異なる市区町村もある) |
---|---|
第1種原動機付自転車 50cc以下 | 白色 |
第2種原動機付自転車(乙)90cc以下 | 黄色 |
第2種原動機付自転車(甲)125cc以下 | 桃色 |
ミニカー | 水色 |
原付三輪の扱いは50ccまでであり、50cc超125cc以下の三輪車両は軽二輪車のトライクとして扱われ、ナンバープレートの交付は市町村ではなく運輸支局となる。
自動車保険(任意保険)においては、自動車の契約に付随したファミリーバイク特約を付帯する場合、原動機付自転車は125cc以下とされているので、第1種、第2種ともに補償の範囲に入る。
- 50cc以下の原付サイドカーの取扱い
ここで述べる「側車付き(サイドカー)」は道路交通法上、二輪車のカテゴリーである。 50cc以下で一軸駆動の原付サイドカーは登録も原付、免許も原付で一人乗り、法定速度は30km/hのままである。昨今、誤った解釈が広く周知され、原付サイドカーが激減している。その間違いの原因は、法律でいう3輪の「輪距」[1]が0.5mを超えれば「ミニカー」登録というものである。その「輪距」の意味を多くが誤解している。サイドカーは法的に三輪ではなく二輪車という大前提があり、「輪距」も存在しない。誤った登録では、法定速度もヘルメット着用義務も異なり危険である。
法規上の運転方法[編集]
道路交通法による原動機付自転車(50cc以下)は、以下の方法で運転しなければならない。
- 二段階右折が必要
- 片側3車線以上の交通整理の行われている交差点(信号交差点、警察官等が誘導を行っている交差点など)では、二段階右折しなければらない。ただし、二段階右折禁止の標識がある場合は、この限りではない。(道路交通法第34条第5項)左折レーンがある交差点で二段階右折するときは、左折レーンから直進することができる。(道路交通法第35条第1項)
- 第一通行帯通行義務
- 片側2車線以上の道路では、第一通行帯を通行しなければならない。ただし、小回り右折しなければならないときはこの限りではない(道路交通法第20条第1項)。
- 30km/hの速度制限
- 原付の法定速度は30km/hである(道路交通法第22条第1項、同法施行令第11条)。
- ただし、リヤカーなど、他の車両を牽引する場合の最高速度は25km/hとなる(同法施行令第12条第2項)。
2008年9月現在標識により法定最高速度を上回る(40km/hなど)指定速度が存在しない唯一の車種である。
特徴など[編集]
これらは道路交通法による原動機付自転車(50cc以下の二輪・三輪など)に関するものである。
- 公道上で走るには小型特殊自動車以外の運転免許が必要である。原動機付自転車免許は16歳から取得が可能である。試験は学科試験のみで、合格後、技能講習を受ける。ただし、事前に警察署等が主催する講習会を受けている場合、免許試験合格後の技能講習は免除される。
- 30km/hしか出せない代わりにヘルメット着用義務が無い手軽な乗り物であったが、1980年代以降、パッソルに代表されるソフトバイクブームや若年層の生活水準向上により、原付の登録台数は急増、それに伴い交通事故が増え、1986年には交差点内の二段階右折やヘルメットの着用義務などの規制強化が行われる。また業界の取り決めによってエンジン出力を7.2psで上限とする馬力規制も行なわれていたが、2007年7月に撤廃された。
- エンジンは2サイクルエンジンが主流であったが、近年は製造メーカーの環境配慮から4サイクルのエンジンが主流になりつつあり、1998年9月からは原付も自動車排出ガス規制の適用を受けることになり、2007年9月からは自動車排出ガス規制が強化され、事実上4サイクルエンジンに限定されるようになった。また規制対策のため燃料噴射装置や三元触媒の使用も不可欠となり、今後は簡易的な構造のエンジンを使用することが難しくなった。なお規制強化時に過去から生産されていた車両の継続販売についてユーザーから深刻な懸念が挙がっていたが、結果的に4サイクルエンジンへのモデルチェンジを受けず生産終了となるケースが多く発生した。
- 50cc以下のマニュアルミッション(MT)車は原付免許でも運転は可能である。しかしMT車は上述の排ガス規制や元から厳格な騒音規制が大きく影響して生産終了が相次ぎ、2009年5月現在日本国内で生産されている原付MT車はホンダ・エイプの1車種のみしかない。
- 電動式立ち乗りスクーター、電動スクーター、電動機のみで走行可能な電動自転車(いわゆるフル電チャリ)は出力がどれほど小さくても第1種原動機付自転車。また出力が600Wを超えると第2種原動機付自転車となり、どちらも公道を走行するには免許(原付免許及び原付以上の免許)が必要である(規制を受けないのは歩行者扱いとなる電動車いすやシニアカーのみ)。また、灯火類の設置、方向指示器、反射材などの保安部品の装備や、自動車損害賠償責任保険の加入が必要である。これに違反して、公道あるいは歩道で走行すると、無保険運行になる可能性がある。実質的に、私有地内あるいは工場の中、公園などで乗る以外はすべて違法となる。公道走行可能と製品に表示されていても、実際には保安部品の装備が無く、公道走行ができない悪質な製品を販売する業者も存在する。安易に購入して走行することは避けたい(無保険運行は6点加算―免許停止となる)。また警察当局はモペッドを原動機を用いずペダルのみで運転する場合も原動機付自転車の運転と見なすとしている。
- 2001年度の交通白書において、二輪車全体における交通事故の割合において、第1種原動機付自転車が過半数を占めている事が報告されている。またその後の交通白書の報告においてその他の二輪車より僅かに下回ったもののほぼ半数を占めている事が報告されている。この分析には走行車両数あたりの割合などについて異論もあるが、いずれにせよ事故が多い事は事実である。これは主に、知識不足のドライバーが国内路面に多数存在するマンホール、橋の接続部の鉄板に雨天に乗り上げスリップ/転倒する事と、車両の流れを無視した低い法定速度制限を守る事により、アスファルトの変形した不安定な路肩に追いやられた結果、転倒し、後続の自動車に轢かれる事に起因する。
- 道路運送車両法等による登録の必要が無い「リヤカー」を牽引して走行することが認められている(ただし積載量・幅・長さ・最高速度等の制限、地域の条例による走行条件はある)。
脚注[編集]
- ↑ 車体中心線に対称な同軸・同径の車輪の中心間の距離
関連項目[編集]
外部リンク[編集]