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'''HD DVD'''(エイチディー・ディーブイディー)とは[[DVDフォーラム]]によって議論および承認が行われている青紫色[[半導体レーザー]]世代の[[光ディスク]]の規格である。主に[[東芝]]と[[日本電気|NEC]]が共同で開発した。対応機器を3[[レーザー|波長]]化することで従来の[[コンパクトディスク|CD]]や[[DVD]]も使用できる。青紫色[[半導体レーザー]]世代の[[光ディスク]]の別規格として、本規格との[[規格争い]]で勝利した「[[Blu-ray Disc]](以下、BD)」がある。
  

2022年8月27日 (土) 01:39時点における最新版

HD DVD(エイチディー・ディーブイディー)とはDVDフォーラムによって議論および承認が行われている青紫色半導体レーザー世代の光ディスクの規格である。主に東芝NECが共同で開発した。対応機器を3波長化することで従来のCDDVDも使用できる。青紫色半導体レーザー世代の光ディスクの別規格として、本規格との規格争いで勝利した「Blu-ray Disc(以下、BD)」がある。

概説[編集]

HD DVDはDVD規格をベースにして本格的なハイビジョン放送時代に対応するために開発されたディスクメディアの規格である(「HD」はHigh Definition(高解像度)の意)。DVDと同様、直径12cm/8cm、厚さ1.2mmのプラスチック製の円盤であるが、読み取りに使われるのは波長405nmの青紫色レーザーである。CDやDVDよりも波長の短いレーザーを用いることでより高密度の記録が可能となっている。HD DVDの直径12cmディスクは1層で15GBの容量を持ち、2層で30GBの容量を持つ。直径8cmディスクでは1層で4.7GB、2層で9.4GBの容量を持つ。保護層の厚さはDVDと同じ0.6mmで、DVDの製造機器を一部流用することが可能である。また再生機においても保護層がDVDと同じ0.6mmのため、振動によるレンズとディスクの衝突を回避に使用する、接近検知システムの一部流用が可能である。一方BDは保護層が0.1mmとなっており、HD DVDはこれらの点に関してはBDより優位性が高いと考えられていた。

Blu-ray Disc(BD)との規格争い[編集]

HD DVD規格は東芝が主唱し、ソニー等が提唱するBlu-ray Disc(BD)規格との間でハードウェア・ソフトウェア関連企業、エンタテインメント関連企業、さらには小売業界等をも交えての「規格争い」が繰り広げられた。

HD DVDプロモーショングループ[編集]

HD DVDの規格策定はDVDフォーラムが行うが、商業的推進は別団体であるHD DVDプロモーショングループが行い、BD陣営と対立した。積極的に支持する企業はHD DVDの方が少ないのだが、DVDフォーラムの権威を借りて業界標準にふさわしいフォーマットであると主張する構図となった。

規格争いの顛末[編集]

2008年に入ってから、後述のように米大手映画会社のワーナー・ブラザーズスーパーマーケットチェーン大手のウォルマート等が相継いでBD支持を表明するなどBD支持の動きが広がり、HD DVD陣営は苦境に立たされた。

2008年2月16日には、NHKなどでHD DVDを主唱する東芝が撤退を検討しており、同月中にも決定を発表する見込みと報じられた[1][2]。そして2月19日、東芝はHD DVD事業についての記者会見を開催。東芝社長の西田厚聰は「HD DVD事業を終息する」と正式発表[3]し、「異なる規格が併存することによる自社事業への影響、消費者への影響の長期化をかんがみ、早期に姿勢を明確にすることが重要と判断した」と説明した。HD DVDレコーダーならびにプレーヤーの開発/生産は中止され出荷も縮小し、2008年3月末には事業を終息させる。PCやゲーム機向けのHD DVDドライブについても、量産中止すると発表。出荷されたHD DVD関連製品についてはサポートを継続し、HD DVDドライブを搭載した同社製ノートPCについては「今後の市場ニーズをふまえて、PC事業全体の中での位置づけを検討する」と発表。これで次世代DVDの規格争いに終止符が打たれ、BDへの完全一本化が決定する形となった[4]

東芝のHD DVD事業終息後の対応[編集]

2008年2月19日現在、事業終息後の対応は次の様になるとされている。HD DVDプレヤー(再生専用機)は日本市場で約1万台、海外を含めて約70万台が販売された。テレビ放送を録画できるレコーダーは日本で約2万台販売された。またパソコン用HD DVDドライブは日本で約2万台、海外を含め約30万台を販売した。2008年3月末から開発、製造および販売を順次取りやめ全面撤退となるが補修用部品は製造終了後8年間は保有してサポートするとしている。また、HD DVD記録用メディアはメディアメーカーに継続した製造と販売を要請し調整を図るとしている。

HD DVDメディアの種類[編集]

HD DVDの記録メディアにはDVDと同様に読み取り専用型と記録型の規格が存在する。書き換えができる記録型HD DVD規格はランドグルーブ記録を採用しているHD DVD-Rewritable(HD DVD-RW)の規格策定が行われていたが、2層化が困難なことなどからHD DVD-Rの基本構造を継承したHD DVD-ReRecordable規格を策定し、HD DVD-Rewritableの名称を「HD DVD-RAM」に変更、HD DVD-ReRecordableの名称を「HD DVD-RW」と決定した。

「RW」はデータ用のみ2007年7月からPCメーカー等に向けてサンプル出荷されており、2007年12月に製品化されている。また、ビデオ用「HD DVD-RW」も2008年2月に製品化が発表された[5]が、東芝の撤退により対応するビデオレコーダーは発売中止となり、メディアの発売についても検討中となった。

「RAM」の製品化時期は未定である。

多層化に関しては2005年5月に片面3層45GB(1層15GB)HD DVD-ROMの開発発表が行われており[6]、2007年のCESにて片面3層51GB(1層17GB)HD DVD-ROMの発表が行われた。また、片面3層51GBのHD DVD-ROMについては2007年9月12日にDVDフォーラムによって規格化がなされ[7]11月15日に正式にver.2.0として承認され、規格化を完了した[8]。製品化は未定。

  • HD DVD-ROM:読み取り専用のHD DVD規格。12cm片面1層15GB/片面2層30GB/片面3層51GB、8cm片面1層4.7GB/片面2層9.4GB
  • HD DVD-R:1回だけ書き込み可能な記録型HD DVD規格。片面1層15GB/片面2層30GB
  • HD DVD-RW:繰り返して書き込みおよび消去が可能な記録型HD DVD規格。片面1層15GB/片面2層30GB
  • HD DVD-RAM:繰り返して書き込みおよび消去が可能なPC用途向け記録型HD DVD規格。ランドグルーブ記録を採用。片面1層20GB(2層に関しては未策定)

ビデオフォーマット[編集]

HD DVD-Video[編集]

主に市販ビデオソフトを収録するために策定された規格。従来のDVD-Video規格のHD DVD版とも言えるものだが、コピープロテクションなどではAACS(Advanced Access Content System)とよばれる新技術が使用されている。

映像コーデック[編集]

音声コーデック[編集]

インタラクティブ機能[編集]

HD DVDではHDiとよばれる対話型操作機能が利用可能である。このHDiはマイクロソフトが中心となって開発されており、XMLやECMAScript、SMILといったWWW関連技術からなるものである。HDiはHD DVDにおいて必須機能でありすべてのHD DVDプレイヤーで利用できる。また全てのプレーヤーにネットワーク端子の搭載が必須となり、インターネットを通じた追加コンテンツの配信が可能(対応ソフトのみ)。

著作権保護機構[編集]

DVD-VideoのCSS(Content Scramble System)が破られ違法コピーが蔓延していることから、CSSに代わる新たな著作権保護機構としてより強固なAACSが採用されている。このAACSは再生専用メディアに限らず、記録型メディアにも対応する。

リージョンコード[編集]

2007年6月の段階で市販されているHD DVD-Videoではリージョンコードによる制御は行われていない。しかし、映画会社などからリージョンコード導入に対する要望により導入に向けて検討が行われている。

DVDとHD DVDのツインフォーマットディスク[編集]

片面にDVDとHD DVDの両方の記録層を持つツインフォーマットディスクは記録層の深さが現在のDVDと同じであることから、ピックアップ用のレンズ共用が可能なため、設計製作上の敷居が低いとされる。市販HD DVDソフトの多くで採用されている。

HD DVD-VR[編集]

HD DVDにおいてDVDでのDVD-Videoに対するDVD-VRに相当する規格。映像コーデック、音声コーデック、インタラクティブ機能、著作権保護機構、リージョンコードについては前述のHD DVD-Videoに準拠している。その他の特徴は以下の通り。

  • HD DVDでは、DVDでのビデオ用アプリケーションであるDVD-Videoフォーマットの後日の策定されたDVD-VRフォーマットがDVD-Video用プレーヤーと再生互換が無かったことの反省としてHD DVD-VideoとHD DVD-VRのフォーマット構造を多くの部分で共通化し、HD DVD-VRフォーマットのディスクもHD DVD-Videoプレーヤでは問題なく再生可能なような工夫がされている[9]。この事により、DVDの様に市販レコーダーにHD DVD-Videoフォーマットの記録機能とHD DVD-VRの記録機能を併載する必要が無くなっている。
  • エンコード録画用(DVD-VRに相当)のVideo Object(VOB)モードと、放送ストリーム(TS信号)をそのまま記録するStream Object(SOB)モードの2種類がある。
    • VOBモード:MPEG2-PSシステムを採用し、MPEG2のほか、MPEG4 AVC(H.264)やVC-1(WMV)などの各映像コーデックに対応している。また、VOB(VR VOB)モードで録画したものはHD DVD-ROMのアプリケーションフォーマットであるHD DVD-VideoのVOB(standard VOB)とサブセット扱いとなるため、同モードで記録したディスクは通常のHD DVDプレーヤーでも再生可能。
    • SOBモード:デジタル放送MPEG2-TSをそのまま記録するためのモード。SOBモード録画の映像はHD DVD-Video専用プレーヤーでは再生が出来ない。

HD DVD9[編集]

ワーナー・ブラザーズが提案したDVDメディアにHD DVDのアプリケーションフォーマットで圧縮映像を入れる規格である。「3x DVD」という名称でもよばれDVD-Videoの3倍の帯域幅を持ち、MPEG-2のかわりにVC-1やH.264といったより高圧縮のコーデックを用いることでハイビジョン規格の映像をDVDメディアに保存することが可能である。DVDメディアであるため記録容量がHD DVDに比べ少なく、記録時間や画質の面ではHD DVDに劣る。片面2層8.5GBのDVDに平均ビットレート13Mbpsで85分のハイビジョン映像の記録が可能である。また一般的なDVD-Video規格とは全く異なるため一般的なDVDプレイヤーで再生することはできず、再生にはHD DVDプレイヤーが必要である。

当初ワーナー・ブラザーズが想定していた物は片面2層8.5GBのDVDに平均ビットレート8Mbpsで120分のハイビジョン映像を収録し、青紫色半導体レーザーを用いないHD DVD9(またはBD9)対応のDVDプレーヤーで再生可能にする事である。

BD規格でも同様に、BDのアプリケーションフォーマットを用いたVideo規格としてDVD-Videoの3倍の帯域幅を持つBD9が考えられている。

HD DVD9・BD9の双方とも製品化はなされていない。

HD Rec[編集]

2007年9月12日、DVDフォーラムにてHD Recのロゴを策定した。HD RecはDVD-R/RW/RAMメディアにHD DVDフォーマットを採用することにより、MPEG-4 AVCなどのコーデックでSD~HD映像を記録する規格。レコーダーやカムコーダーでの使用を見込んでいる。詳しくはHD Recの項目を参照。

Total Hi Def[編集]

ワーナー・ブラザーズが独自に開発していた両面ディスクで片面にHD DVD、もう片面にBDを記録する。2規格が店頭に並び混乱を生じることへの解決策として製品化が進められたが2007年秋に開発中止され、2008年1月のワーナーのBD一本化発表により必要性が無くなった。

Blu-ray Disc(BD)との比較[編集]

構造[編集]

HD DVDが読み取りに用いるレーザーは405nmの青紫色レーザーである(BDも同様)。HD DVDはDVDと同様に記録面から0.6mmの深さに記録層がある(BDは0.1mmの深さに記録層がある)。また、DVDとHD DVDとの片面2層ツインフォーマットディスクはDVDとBDのツインフォーマットディスクより製造が容易であった。HD DVD陣営においては「DVDからHD DVDへの橋渡し的役割を果たす」としてコンテンツホルダーに対して採用を呼びかけていた経緯がある。しかしDVD層を不要と感じる一部の消費者は無駄なコストを払うことに抵抗を持っており、賛否両論がある。

容量[編集]

現在の一般的なDVDと同じ12cmディスクにおいてHD DVDは片面1層15GB、2層30GBである。対するBDは片面1層25GB、2層50GBである。

映画スタジオ各社は当初30GBで十分な容量があると感じ、2層HD DVDの30GBと1層BDの25GBをターゲットにコンテンツを制作していた。しかしBD陣営はDVDとの差別化を図るためBDに豊富な特典コンテンツを収録するようになり、また画質の要求も高まって映像ビットレートを高く取るようになったため、2層50GBをフルに活用し始めた。

録画メディアとしても容量の差が大きな要素となっている。BSデジタルハイビジョン放送の最大24Mbpsで換算し、片面1層HD DVD-R(15GB)の収録可能時間は75分、片面1層BD-R/RE(25GB)は130分と表示されている。地上デジタルハイビジョン放送(最大17Mbps)ではより長時間の記録が可能である。

コスト[編集]

記録メディアおよびROMの製造においてHD DVDはDVDの製造機器を一部流用することが可能であり、コスト面で有利と言われてきたが、一定の流通量が見込まれるようになった無機型BDメディアが現時点においては低価格である。また、BDにおいても有機素材を用いることでDVD等の設備を流用できることがわかり、有機素材を用いたBD-R LTHメディアの発売を国内外の各社が発表した(2008年2月下旬から実際に発売)。これによりさらなるBDの低価格化が見込まれている。

ROM規格のディスク製造コストでもBDは不利と言われてきたが、松下電器産業が試験製造ラインをハリウッドに建設するなどして映画スタジオ各社にコストの不安を払拭するよう努めたことが支持の拡大につながった。

ビデオ規格[編集]

インタラクティブ機能[編集]

HDi(旧・iHD)と呼ばれるインタラクティブ機能が採用されている。XML、CSS、SMIL、ECMAScriptなどの技術が使われている。これに対しBDではBlu-ray Java(BD-J)が採用されており、インタラクティブ機能をサポートしている。Blu-ray JavaはJavaを基礎技術としている。当初、マイクロソフトが中心となりHD DVDにiHDが採用されBDでもiHDを採用する提案がなされていたが、採用は見送られた。

著作権保護機構[編集]

HD DVDとBDの両方でAACSと呼ばれるコピープロテクト機能が採用されている。これに加えてBDではAACSが無効化されたことを検知して、再生を停止することが出来るBD+が採用されている。

参入企業[編集]

家庭用AV分野やノートPC分野に強い東芝、DVDドライブシェア世界一でありPCやMPEGといったデバイスに強いNECの2社で次世代大容量光ディスクメディアの主役を握ろうとしていた。

  • 2005年
  • 2007年
  • 2008年
    • 1月4日、米DVD売り上げ1位のワーナーブラザーズがHD DVDへの供給を取りやめると発表し、ブルーレイ1本に絞ることを明らかにした。[12]。HD DVDへの供給は2008年5月まで続けるとしている。これによりHD DVD陣営の割合は2割ほどに落ち込み、規格争い終結のきっかけとなる。又、これに伴いニューライン・シネマは既にBDへの独占供給へと移行した[13]。2008 International CES開催直前の発表だったため業界内への波紋は大きく、北米HD DVDプロモーショングループによるプレスカンファレンスは直前でキャンセル、また1月8日にはHD DVD単独支持を表明していたパラマウント映画をはじめポニーキャニオンなど、約20社がHD DVD陣営からの離脱を準備ないし検討しているとの報道もなされた[14][15]
    • 2月11日、米量販店大手ベストバイと米ネットDVDレンタル大手ネットフリックスが別々にBDを優先的に支持すると発表。
    • 2月15日、米小売り最大手にして米国内のDVDソフトの約4割の販売シェアを誇るウォルマート・ストアーズがHD-DVDソフトの店頭を2008年5月末までに行い、2008年6月以降はBD製品だけを扱うと発表した[16]。米国内における大手小売りのHD DVD取扱停止によりますますBD一本化への流れが加速した。
    • 2月19日、HD DVD陣営の中心である東芝が全面的な撤退を発表。規格争いは事実上終結することとなった。

支持企業一覧[編集]

この支持企業リストは東芝の撤退=実質的な敗北が決まる前のものである。

ハードウェアソフトウェア関連企業[編集]

エンタテインメント関連企業[編集]

注:太字はHD DVDの幹事企業。(※)印はBlu-ray Disc Associationにも参入を表明している企業[19][20]

達成されなかった規格統一[編集]

2005年4月21日日本経済新聞朝刊には、東芝とソニーの間でHD DVD・BDの両者の長所を生かした規格を共同開発することで合意したと報道した。これにより次世代大容量光ディスクは一つに統一された規格となり、ユーザーやコンテンツ製作者のメリットは大きなものになることが期待された。

しかしながらその後の報道によれば、この交渉は難航した末に中断された。以降は互いに譲歩することなく交渉が再開されないまま2005年8月末には両陣営共に『交渉は時間切れ』として自陣営規格の本格的な製品化へ動き出した。これによりベータマックス対VHS戦争の再現は不可避となり、2006年に規格争いが本格化した。規格の主導権争いもさる事ながら、余りにも両者の設計思想に相違点が大きかった事が原因と見られる。

東芝は2005年内にHD DVDプレーヤーを発売する予定としていたが2005年9月、米国の映画産業の意向により米国内での発売を2006年春に延期すると発表した。さらに12月、日本国内での発売も年明けに延期した。著作権保護規格・AACSのライセンスの発行が遅れているためとしている。

2006年になると、当時はまだ形勢がはっきりしなかったため両規格への対応を決めるメーカーが増え、趨勢が決まる前に両規格対応のドライブが主流となる可能性も考えられた。2007年のCESでは、韓国のLG電子からBDとHD DVD両方のディスクに対応できるプレーヤーの発売が発表された。すでにリコーやNECといった企業が両規格対応のための安価な部品開発に成功していたため、他のメーカーからも両規格対応のプレーヤーが発売されることも予想されたが、片方のみのプレーヤーに比べて割高なため普及は進まなかった。ただしパソコン向けには両対応ドライブ(HD DVD-ROM再生およびBD-R/RE記録再生対応)が比較的普及する(このタイプのドライブは容量の少ないHD DVD-Rへの記録はメリットが薄いためか非対応となっている)。

また、ワーナーからはHD DVDとBDを1枚のディスクの裏表に記録することでどちらのプレーヤーでも再生可能なTHDTotal Hi Def)ディスクが発表されたものの製造コストが極めて高く、次世代DVD規格争いは混迷の中にあった。

しかし、2008年に入るとBD単独支持に回る企業が相次ぎ、2月には東芝のHD DVD事業からの撤退表明により規格争いが終結したため、今後、ドライブ開発メーカーはかつてのベータマックス対VHS戦争の時のように、勝ち馬に乗る形でBD規格に流れていく可能性が強まっている。

ハードウェア[編集]

  • 2006年
    • 3月31日、日本国内でHD DVD再生専用機「HD-XA1」が東芝より発売された(HD DVD-RやCPRM対応DVD-RAMDVD-RWの再生には非対応)。
    • 5月には東芝のQosmioG30/697HSを皮切りに、HD DVD-ROMドライブ搭載PCが数社から発売された。HD DVD-ROMドライブはDVDスーパーマルチドライブも兼ねている。再生専用規格に対応したドライブの発売はBDよりも1ヶ月先行したものの、記録型ドライブの投入はBDの方が早かった。このためHD DVD陣営のNECも2006年秋発売の機種でBDドライブを採用する結果を招いている。
    • 7月14日に東芝が録画再生機の「RD-A1」を発売する予定だったが、生産が遅れているとして7月28日発売に延期となった。HD DVDの記録は-Rのみとなる。なお、フロントパネルに「VARDIA」のロゴが入っている。同機はデジタルとアナログのチューナーを1つずつ搭載している。
    • 10月10日、NECエレクトロニクス株式会社がBD、HD DVD両規格の記録と再生に対応し、読み込みや書き込みが技術的には可能になるドライブ向けシステムLSIセットのサンプル出荷が開始された。
    • 11月22日マイクロソフトよりXbox 360用HD DVD-ROMドライブ「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」が20,790円(税込)で発売された。Xbox 360との組み合わせによりHD DVDプレーヤーとして機能するが、発売当初のXbox 360はHDMIに対応していなかったためデジタル転送ができなかった。2007年以降HDMI端子搭載の本体が市場に出回るようになり搭載機ではデジタル転送も可能になっている。既にXbox 360を購入済みのHDTVユーザーには既存のHD DVDプレーヤーに替わる魅力的で安価なHD DVD導入の選択肢であった(東芝が欧米でプレーヤーを大幅値下げするまでは)。
    • 12月下旬
      • 世界初のPC用内蔵ファイルベイ用HD DVD-ROMドライブ「HDV-ROM2.4FB」がバッファローより37,000円で発売された。HD DVD-ROM 2層/HD DVD-R 1層/CDDVDの各種メディアの再生に対応する。
      • 東芝より新型プレーヤー「HD-XA2」が11万円前後(2007年1月下旬に延期)、「HD-XF2」5万円前後で発売された。再生メディアやCPRM未対応等は既存のプレーヤーと同等であるが、ローディング時間の短縮や、上位バージョンの「HD-XA2」でのHDMI Ver.1.3相当に対応(Ver.1.3のどの機能まで対応しているかは不明)等の機能向上がみられる。また、NECエレクトロニクスは12月27日に東芝と協力して開発していたHD DVDレコーダー/プレーヤー用システムLSI『EMMA3』のサンプル出荷を開始した。CPU/映像デコーダー/エンコーダー/音声デコーダー/ストリーム処理/グラフィックスエンジン/ビデオスケーラーの次世代DVDの機能を1チップにしたLSIであり、今回はHD DVDに特化した物で「HD-XA2」と「HD-XF2」に採用されているが、BDにも対応可能なため先に開発されているドライブ向けシステムLSIと同じく、コスト削減と両対応の用途への使用も可能である。また、NECエレクトロニクスは「米国では、映画ソフトでHD DVDがBDの3倍売れてる」と発言していたが、年末時点で拮抗した。さらに2007年第1四半期にはBDソフトのシェアはHD DVDの倍以上となり差を広げている。
    • 年末、東芝はHD DVDプレーヤーの年内販売台数が世界計で約10万台になるとの見通しを発表した。同年3月31日の「HD-XA1」発表時の目標は年度内100万台で「年末に売れてしまえばそこで決まる」と自信を見せていた。またユニバーサルピクチャーズ・ホームエンターテイメント社長のクレイグ・コンブローは2006年はHD DVDプレーヤー、対応PC、Xbox 360向けHD DVDドライブなど北米市場全体で17万5000台のHD DVD機器が普及したと発表した。
  • 2007年
    • 6月12日、東芝は新型HD DVD/HDDレコーダー「RD-A600」600GB HDDと「RD-A300」300GB HDDの2機種を6月末に発売と発表した。基本的には今年2月に発売したDVD/HDDレコーダーの使い勝手を向上させた物にHD DVDの録画再生機能を搭載した物であり、先代のHD DVDレコーダー「RD-A1」に比べると格段に進歩しているが、HD DVD-RWには対応していない。月産1万台でHD DVDとBD世代のレコーダーシェア7割を目標にしている。なお、国内の販売目標はHD DVD製品総計で30~40万台としている。
    • 東芝はこの新型HD DVD/HDDレコーダー発表会で様々な発言や発表を行った。国内の専用プレーヤーが累計で1万台以下、北米で累計15万台と発表。北米の専用プレーヤー累計シェアで6割であることが発表された(この発表を基にすると高価格帯のBD専用プレーヤーは10万台と思われ、両HD世代のプレーヤーの伸び悩みが露見した)。今回の発表会を睨んだとものと思われるキャンペーンでさらなる低価格とバンドル戦略(5本無料クーポンも別途継続中)を行った結果、5月に一時的に専用プレーヤーの単月のシェアで7割程度になったことも発表。しかしこうした低価格戦略にもかかわらず、前回4月の発表時の北米の専用プレーヤー10万台から5万台しか上積みできなかったことも同時に露見した。こうした事から東芝は、今年初めの北米プレーヤーの販売計画を180万台から下方修正し100万台とした。また、ユニバーサルスタジオの発言やHD DVDプロモーショナルグループのプレスリリース[21]において、北米のアタッチレート(プレーヤーあたりのビデオタイトル販売数)が4:1でHD DVDがBDに比べ1台のハードに対するタイトル販売数が多いと発表されたが、アタッチレートが4:1となる根拠であるそれぞれのハードウェア販売数とタイトル販売数のデータは示されていない。これは北米でのビデオタイトル販売数累計でBDがシェア7割を占める事が関係していると思われる。
    • 12月17日、東芝は12月21日に世界初のHD DVD-RW対応ドライブを搭載したノート型パソコンを発売すると発表した。また、HD DVDのアプリケーション規格で記録型DVDに記録するHD Recにも対応している[22]
  • 2008年
    • 1月14日、東芝は2007年9月以降北米で発売した「HD-A3」、「HD-A30」、「HD-A35」の3機種の価格を同13日より最大で半額に値下げしたことを発表した。値下げの理由として、年末に実施していた期間限定割引プロモーションでの販売が好調だったためとしている。同時に、ユーザーに対してHD DVDプレイヤーの操作方法やHD DVDプロモーション情報などを電話で提供する「HD DVD Concierge」サービスを1月よりスタートすることも明らかにした。
    • 2月16日、東芝がHD DVD機器すべての生産中止を決定した(販売は継続)とNHKが報道した[1]
    • 2月19日、東芝がHD DVDレコーダ/プレーヤの開発、生産を直ちに停止し、3月末をめどにHD DVD関連事業から撤退すると発表した[4]

不正コピー問題[編集]

2006年12月18日、Muslix64というハッカーが著作権保護機構であるAACSで用いられているキーを取り出すことに成功、これによりHD DVDの映画などが暗号解除されてBitTorrentなどのネットワークに流出するという事件がおきた。またHD DVDのバックアップツールであるBackupHDDVDが公開され、原理的に2007年1月までのコンテンツは全てコピーすることが可能となった。これに対しAACSのライセンス管理団体である米AACS LAでは想定済み問題であり必要手段を講じるとしたため、今後発売されるコンテンツに関してはこの方法でコピーすることはできなくなる。しかし限定的とはいえAACSが策定されて1年もかからずにコピーが可能となったことがハリウッドを代表とするコンテンツ供給側の方針などに影響を与えるとする懸念がある。また同じAACSを採用しているBlu-ray Discは著作権保護機構としてAACSの他にROM MarkBD+の実装があるのに対し、HD DVDはAACSのみであるために今回の問題による次世代光ディスク規格競争に与える影響が指摘されている(ただしBD+搭載コンテンツは2007年3月からの出荷であったため、2007年1月までのBDコンテンツはHD DVD同様不正コピーされている)[23][24]

脚注[編集]

  1. 1.0 1.1 東芝 HD DVD撤退を決定へ、NHKニュース、2008年2月17日
  2. 東芝がHD-DVD撤退へ 規格争いはBDの勝利、MSN産経ニュース、2008年2月16日
  3. HD DVD事業の終息について、東芝プレスリリース、2008年2月19日
  4. 4.0 4.1 東芝、HD DVD事業撤退を正式発表-3月末を持って終息。DVDレコーダは継続、ウォッチインプレス、2008年2月19日
  5. 日立マクセル、世界初の2倍速記録対応HD DVD-R/RWディスクを発売、ITmedia、2008年2月14日
  6. 記録容量45GBの再生専用次世代光ディスクの開発について
  7. DVD Forum、HD記録DVD用ロゴ「HD Rec」を策定 −3層/ツインフォーマットなどを規定 AV Watch、2007年9月13日
  8. DVD Forum、3層51GB HD DVD-ROMを承認、AV watch、2007年11月16日
  9. 参考出典:次世代光ディスクHD DVD
  10. ドリームワークス、パラマウントから離脱か・米メディア、NIKKEI NET、2007年7月25日
  11. 東芝、HD-DVD支持見返りに170億円・米紙報道、NIKKEI NET、2007年8月22日
  12. WarnerがBlu-rayに一本化。6月以降BDのみ発売-「消費者は明確にBDを選択した」、Impress AV Watch、2008年1月5日
  13. New Line Details Transition to Blu-ray、High-Def Digest、2008年1月8日(現地時間)
  14. 米パラマウント、次世代DVDで「HD DVD」支持撤回へ-FT紙、Bloomberg、2008年1月8日
  15. Blu-Ray takes inside edge in war with HD-DVD、TIMES ONLINE、2008年1月8日
  16. 新世代DVD、米でブルーレイの優位拡大・小売りが支持、NIKKEI NET、2008年2月16日
  17. Two Studios to Support HD DVD Over Rival、The New York Times、2007年8月21日
  18. 米ワーナー、ブルーレイ単独支持・DVD規格争い、早期決着も、NIKKEI NET、2008年1月5日
  19. 会員リスト - HD DVDプロモーショングループ
  20. Blu-ray Disc Association - Supporting Companies
  21. Consumers Drive Record Sales of HD DVD Players to Capture 60% of HD Set-Top Market、North American HD DVD Promotional Group プレスリリース、2007年6月11日(現地時間)
  22. 東芝、世界初のHD DVD-RWドライブ搭載ノートPC「Qosmio」、AV watch、2007年12月17日
  23. Studios’ DVDs Face a Crack in Security、The New York Times、2007年1月1日
  24. 「離陸の矢先に 次世代光ディスク不正複製、災い転じて福になるのか」、日経エレクトロニクス、2007年2月12日号、30-31頁(日経BP、2007年2月12日発行)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]


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