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2020年1月17日 (金) 22:29時点における最新版
ホームレス(英:Homelessness)は、狭義には様々な理由により定まった住居を持たず、公園・路上を生活の場とする人々(路上生活者)、公共施設・河原・架橋の下などを起居の場所とし日常生活を営んでいる野宿者のこと。広義には、一時施設居住や家賃滞納、再開発による立ち退き、ドメスティックバイオレンスのため自宅を離れなければならない人など住宅を失う危機にある人のこと。
日本では狭義のホームレスは、「浮浪者」と呼ばれていた。しかし、「浮浪者」という言葉が差別的であるとして放送禁止用語とされたことにより、「ホームレス」という単語で呼び替えられることが多くなった。近年では更に「野宿生活者」「野宿者」「ハウジングプア」という呼称も使われるようになっている。
なお、広義のホームレスは「野宿者」より広い意味で使われ、「ネットカフェ難民」や「マック難民」と呼ばれる人々、車上生活者も含まれる。
目次
概要[編集]
日本のホームレスの自立の支援等に関する特別措置法などの定義は非常に狭義で野宿者・路上生活者のみをホームレスと称している。
さらに広義のホームレスの定義には野宿者・路上生活者と住宅を失う危機にある人に適切でない住居に居住する人(危険だったり修理不能、大修理を要する住居、最低居住水準未満世帯)も含める。テント生活をしていても中東のベドウィンやモンゴルの遊牧民、ロマのような不定住民をホームレスとは呼ばない。金銭的事情等で住居を持てないものだけではなく、米国の実業家ハワード・ヒューズのように、自らの意思でホームレスを選択する場合もある。ベトナム戦争期のアメリカでは、志願してホームレスになる若者が現れた。住所不定になれば、召集令状の送付先がなくなるからである。
かつては乞食・ルンペンなどと呼ばれており、特に日本では浮浪者という名称が定着していたが、差別用語との指摘を受け、海外での同様な状況を指す英語の the homeless に由来する「ホームレス」という呼称がマスメディアを中心に外来語として定着した(とはいえ「ホームレス」も直訳すれば「家無し、宿無し」という意味であり、意味のない言い換えでしかない、とも言える)。
高齢者のホームレスの場合、国民年金の掛け金を払っていた人に対しては年金が受給されるようになり、65歳を期にホームレスを脱することが出来る人もいる。
定住型と移動型[編集]
ホームレスは、定住型と移動型に分類される。
- 定住型は、公園・駅舎などの公共の場を一定期間占拠し、段ボールハウスなどを設置して生活している。しばしば公共の場の不法占拠かどうかを巡り行政と対立する。
- 移動型は、昼間は仕事をしていたり、公共施設などを転々として時間を過ごしていたりするが、夜間になると雨風を凌げる場所を探して睡眠をとっている。都市間を移動する漂泊型のホームレス(行旅人の一種)も存在する。
- 冬季は、凍死を避けるために夜間は起きて過ごし、日中、公共施設や駅構内などで睡眠をとる場合もある。
実態[編集]
日本でも、段ボールやブルーシート等を資材としてテント・小屋掛けをしたりする者が増加し、新たな社会問題となっている。
景気の状況によりホームレス人口の増減があり、バブル崩壊後の不況下でその数は増し、2003年1月~2月の厚生労働省調査では全国で25,296人に達していた。しかし、2007年1月の厚生労働省調査では景気が回復傾向にあるため、全国で18,564人と減少している[1]。
中高年男性が95%を占めており[2]、平均年齢は57.5歳[1]である。まれに子供を伴ったホームレスも確認されているが、開発途上国に見られるような子供単独のホームレス(ストリートチルドレン)は日本では顕在化していない(しかし、2007年に発刊されベストセラーとなった、お笑いコンビ「麒麟」の田村裕による著書『ホームレス中学生』において、一時公園で生活をしていたこと等を明かした事例もある)。
厚生労働省が2007年6月~7月にかけてネットカフェ難民の実態調査を初めて行い、全国で推定約5,400人のネットカフェ難民がいることがわかった[3]。
地理的分布[編集]
ホームレスは、廃屋や山小屋等に無断で住み着いていたり、無人島のようなところでテント生活をしている者も含むので、都市のみに限定して分布しているわけではないが、実数としては大都市に多い。
日本においては比較的冬が寒い東日本に9,225人[4](富山県、岐阜県、愛知県以西を西日本とした場合)、比較的冬が暖かい西日本に9,339人[4]とほぼ同数で、気候条件と分布の相関はそれほどでもない。
都道府県別では大阪府が最も多く4,911人[1]、次いで東京都4,690人、神奈川県2,020人の順。市区別では東京23区が最も多く4,213人[1]、次いで大阪市4,069人、川崎市848人の順となっている。
社会的背景[編集]
ホームレスに至るまでの経歴は人により様々であり、時代とともにその全体像が変移している。
日本に関しては、如何に窮しようとも物乞いは恥ずべきことであるという気質もあり、路上で物乞いをする状態にあるホームレスは少なく、(タバコを1本せびる程度)また、法律上においても物乞いをすることは犯罪行為であり、軽犯罪法1条22号にて禁止されている。 上野公園のテント村で、ホームレス同士が結婚し、家庭を作りホームレスを脱した例もある。
開発途上国等では社会の最貧困層の中に占めるホームレスの割合が高いものと考えられている。開発途上国のホームレスは家族単位で生活している場合が多く、独自のサブカルチャーを形成している。先進国型は高齢・単身世帯であり、社会における異端者・少数派としての地位をかこっている場合が殆どである要出典。
国や地域によっては、短期で貧困に陥りやすい移民や外国人労働者がホームレスとなる例も多く見られる。一例として、イギリスの首都ロンドンにおいては、そのホームレス人口のうちの3割がポーランド人であると言われている[5]。
支援[編集]
西日本、特に大阪では、主にキリスト教系の宗教団体やボランティア組織が多く、それらが炊き出しや援助を行うことがある。
2002年8月ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法が施行され、国による本格的な支援が始まり、2003年2月には厚生労働省による初の全国調査が行われた。
過程・背景[編集]
ホームレスに身を落とす経緯は千差万別である。ホームレス同士がその経緯を相互に詮索することはタブー視される要出典。一般社会からの乖離(かいり)・疎外が見受けられ、経済的背景と個人的背景が複雑に交絡・交錯している。
失業し住居を失った男性は「働くことが可能」「弱者ではない」と福祉担当者に判断され生活保護を受けられないため、路上生活・野宿生活を余儀なくされる。女性は都道府県により設置される婦人保護施設や民間の駆け込み寺(女性団体のシェルター)、子供の場合は児童福祉施設など受け入れ施設がある。このような男女差別意識のある社会環境が、男性に野宿生活や自殺が圧倒的に多い要因となっている要出典。
経済的背景[編集]
失業あるいは事業の失敗・倒産などにより経済破綻することで、住居を最終的に失う場合が多い。ホームレス増加の背景は、景気の長期悪化による影響(景気変動)の他、第二次産業の単純労働の需要の減少や、働き方の変化に伴って第二次産業労働における派遣社員(アウトソーシング)や業務請負登録労働者、外国人労働者の増加、さらに日雇い労働のアルバイト化によって、若くて安価な安定労働力が供給されるようになったことである。その結果、年齢の高い単純労働者は職を失いホームレスになる傾向がある。失業や倒産をした場合、以前であれば建設日雇や住み込み店員になることが可能であったが、最近ではそうした道が閉ざされてしまったことがホームレスの増大を招いている。住み込みで働いていた場合、失業がそのままホームレスになることにつながる。
闇金融被害[編集]
ヤミ金融被害によってホームレスにならざるを得なくなる例も報告されている。非合法な取立や嫌がらせにより、家庭と別離し、路上を漂流する人たちもいる。2005年1月9日の産経新聞の記事にも出ているが、中には、数万円を業者から借りたところ、次々に借り換えさせられ、親兄弟まで取り立てが行き、百万円にもなって、路上生活をして身を隠している例などが報告されている要出典。こういったホームレスは、定職につきたくても、新しい職場にイヤガラセなどを闇金融業者などが行うため、まともに仕事につくことができない。
個人的背景[編集]
個人的背景によるホームレスの達成には、家族関係の悩みやギャンブル依存・アルコール依存など精神疾病を抱えている場合、自分から家を飛び出し家族と別離する場合、夫の浮気や離婚・配偶者からの暴力、親から勘当される場合がある。
そして、親族との連絡が絶たれた状態を何十年も続けることとなる。
歴史[編集]
先史時代[編集]
- 狩猟・採集や農耕開始時代には、集落構成員との間でいさかいが起きて集落外に追われたとしても、所有されていない土地が多くあったため、自力で食べ物を得る方法が見つかれば、雨風を凌げる適当な建物や洞穴などに住み着くことで生き長らえることが出来た。
- この時代においては「ホームレス」という言葉は意味をなさない。
- また、古代国家の成立後、豪族支配下の農業従事者も、その枠外に逃げ出したとしても、所有されていない山間部の土地に隠れ住むことでホームレス化することは無かった。
近代以前[編集]
日本における本格的なホームレス発生は、大化の改新以後である。
- 中央集権体制により、農民による土地の私有が禁じられ(公地公民制)、班田収授の法により戸籍作成と税法が国に一本化されると、租庸調を戸主が都まで自力で納税しに来なくてはならなくなった。
- このとき、旅費は自腹であったため、往復分の旅費が調達できなかった者は都の路上に留まったり、路上で行き倒れになったりし、いわゆるホームレスが大量に発生した。
- 不作の年や飢饉の際には、土地を手放して山や寺に逃げ込む者が続出し(戸籍からの離脱)、都もホームレスであふれかえった。
- これらのホームレスの救済に立ち上がった者として行基が有名だが、国民の9割以上が農民だった明治時代まで、ホームレスは都市につきものとなった。
- 帰農令が出されて農村にホームレスを帰す政策がなされることもあったが、一度都市生活をしてしまうとなかなか農業に戻ることは出来ず、江戸時代には、江戸佃島に職業訓練施設が建設され、ホームレスからの脱皮を促す試みもされた。
西洋におけるホームレスはキリスト教と深くかかわりがある。宗教改革以前、修道院やギルドなどは自発的に「貧しき人々」への救済を行った。キリスト教の伝統は、貧しいことは神の心にかなうこととされ、そうした人々に手を差し伸べることは善行とされた。しかし宗教改革はこうした救貧のありかたを一変させ、マルティン・ルターが1520年に発表した『ドイツ貴族に与える書』で「怠惰と貪欲は許されざる罪であり、怠惰の原因として物乞いを排斥し、労働を神聖な義務である」とした。都市は責任を持って「真の貧民」と「無頼の徒」を峻別して救済にあたる監督官をおくことを提唱した。カルヴァンは『キリスト教綱要』でパウロの「働きたくない者は食べてはならない」という句を支持し、無原則な救貧活動を批判した。
こうした思想はイングランドに持ち込まれ、囲い込みなどによって増えつつある貧民への視線は神とのかかわりにおいて罪と見なされるようになった。16世紀に始まった救貧活動はこの観点からなされ、1531年、王令によって貧民を、病気等のために働けない者と怠惰ゆえに働かない者に分類し、前者には物乞いの許可をくだし、後者には鞭打ちの刑を加えることとした。また矯正院(ブライドウェル)の実態は健常者に強制労働を強いる強制収容所・刑務所と変わらない状態にあった。(⇒救貧法)
近代以降[編集]
明治の産業革命以降は、景気とホームレスの増減が連動するようになる。
- 現代ほど機械化が進んでいなかった当時は、工業のほとんどが労働集約型産業であり、経費の中心をなす人件費を削るため、人件費が安価な都市近郊農村部につくられた(当時は都市部より郡部の方が人口が多い)。
- 不景気に人員整理が行われると、帰農出来ない層が都市に流入して都市人口のほとんどが無産階級で占められるようになり、再就職出来ない一部がホームレスとなった。
- 工業における機械化が進むと、工業は知識集約型が中心となり、他方、第三次産業も進展した。
別の側面[編集]
なお、寺や教会などの宗教施設は、納税の義務が免除されていることが多く、その競争力のある経済基盤と知識の集約により、近代まで医学・薬学・農業・高利貸しなどの産業を担ってきた。
- そのため、寺には失業者を受け入れる経済的土壌があり、また、時期によってはホームレスを僧兵(傭兵)として受け入れてきた。
- 一方、民衆からの寄進もあるため、産業を持たずともある程度の失業者を涵養することが出来た。
行政の自立支援施策(大都市の事例)[編集]
- 東京都による報道発表[6]によれば、「自立支援システム」の第一ステップとして「緊急一時保護センター」があり、第二ステップとして「路上生活者自立支援センター」を設けている。
- 第一ステップ(緊急一時保護センター)は、「路上生活からの早期の社会復帰を促進するため、ホームレスの一時的な保護や心身の健康回復を図るとともに、自立支援センターへの入所など以後の処遇方針を明らかにする」。
- 第二ステップ(路上生活者自立支援センター)では、「緊急一時保護センター入所者のうち、就労意欲があり、心身の状態も就労に問題がないと認められた人を対象に、原則2か月間の入所期間で、食事の提供、職業、住宅等についての相談を行い、ホームレスの就労による自立を促進」する。
- しかし、自立支援センターを経て定職に就いた者が再び一時保護センターから自立支援センターを再び利用するという繰り返しも見られる。
- これらの施設建設に対する周辺住民の反対運動などもあるが、東京都の場合現状では5年毎の都内の他区への移設という手法によって対処しているようである。
- こうした「自立支援」策にもかかわらずホームレスがなくならないのは、行政の側では、結局本人に自立への意思がなく、好きで路上生活をしているのだという態度もある。
- しかし他方では、日本のホームレスの多くは驚くほど労働意欲が高いという調査結果もあり、高齢や病気による就業困難、さらには産業構造の変化や不況による社会自体の構造的要因を無視すべきでないと言われる。
- そもそも「自立支援」とは「法外援護」(生活保護の外での応急援護)をまとめたものだが、これは国籍要件と(他に活用する資産・能力のない)生活困窮だけを要件として適用すべき生活保護法の趣旨に反して、ホームレスなどを同法の保護から不当に排除するものだという批判もある。
- また一方、たとえばアルコール依存症の人――病的に飲酒が止められない人――が、一度の飲酒が見つかり施設から放逐されたという事例もあるように、粘り強く親身な取り組みが欠けている、または福祉担当職員数や資金の不足によりそれを余儀なくされている現状がある。
- 東京都は他にも、野宿者の自立を促すため、2004年度から野宿者に対し2年間住宅を安い家賃で貸す「ホームレス地域生活移行支援事業」を行っているが、自立に成功するのは1割ほどしかいない[7]。
行政の課題[編集]
日本の行政・企業・社会は、失業した人間を受け入れる体制を十分には整えていないため、リストラ(=整理解雇)に伴う生活破綻に備えての消費行動の自発的自粛や日本経済の悪循環を引き起こしている。
- 日本経済を好循環にのせるためにも、政策の見直し、または、行政による失業者の再チャレンジ支援の充実が切望されている。
政策のモデル[編集]
政策の見直しについては、かつてルックイースト政策を提唱したマレーシアのマハティール元首相のように、日本は米国式を脱却する必要があるという意見があり、その論調によりホームレス問題を欧米式の雇用形態に根拠を求める説が主張される。
- その根拠として、欧米流のリストラ→再就職の循環による産業構造は、終身雇用制を基準とする日本文化と日本の社会制度(大企業に勤める一握りの人々に限られる文化と制度とする意見もある)に適合しないことがあげられるとする。
- 欧米式政策を導入したこの10年が日本経済の低迷時期と一致することが、その事実を示していると主張する人がいる要出典。しかし日本のホームレス問題は21世紀に始めて登場した社会問題ではなく、欧米式の雇用形態に理由をもとめるに足る因果関係はない。また失業率は1990年代以降に増加したが、終身雇用が標準的であった1980年代以前においても日本のホームレス問題は存在した。
- ソフトランディング政策について、フランスでは、失業者は社会への貢献活動を行っている間は、手当を受けることができる。カナダでは、失業者も家・医療の保証がある(マイケル・ムーア「ボウリング・フォー・コロンバイン」に描写された)。
高齢化社会の中では[編集]
- 行政による高齢者向けの居住施設の設立が切望されている。
- 現在は、70歳以上の高齢者の受け入れ先が就業支援目的の自立支援センターであるが、高齢のため就職先が殆どない。野外に寝泊りする年金受給者から、暴力団が「居場所代」として毎月数万円を巻き上げている例もある。
- この場合、そもそも毎月何万円もの金額を支払える人がなぜホームレスになっているのかという問題がある。たとえば美人局等、何らかの犯罪や倫理的な弱みを暴力団に握られて脅迫されている可能性もあるので、原因に遡った解決策を考慮する必要がある。
- 公共の場で居場所代を払うこと自体正当性がないので拒否できるが、暴力団の所有地に入り込んだ場合、民事訴訟を提訴されることがあるので、注意する必要がある。
- 高齢化に伴いホームレス化した人々のための、生き甲斐支援の政策、「死を待つ人々の家」などの死を迎えるための施設の設立を望む声もある。
民間における支援活動[編集]
緊急支援[編集]
アメリカなどでは教会を中軸とした市民レベルの支援活動が行われている。
- 日本においても各宗教寺社・教会や民間の支援団体・ボランティア等による炊き出しなどがあり、篤志家・市民から寄せられた衣類等の寄付物品が配られている。
- 北は北海道から南は沖縄県まで炊き出しや医療支援、居住地確保などの自立支援に取り組む支援団体が確認されており、2007年6月9日には全国のホームレス支援団体の連合組織である「ホームレス支援全国ネットワーク[1]」が設立された。
- 炊き出しは行倒れを防ぐための最低限の活動であり、元野宿者が仲間のために行う場合もある。
- ホームレスの生活保護受給に関して、保護適用が適正に行われるよう支援している団体もある。
- 各地の弁護士会がホームレス・野宿者向けのQ&A(一問一答)を公開している例もある。→「弁護士に聞いてみたい 「野宿者からの質問と回答~困ったときのこの一冊 ~京都弁護士会[2]」
自立支援の例[編集]
- ホームレスの人々を販売者とする雑誌を発行することで、現金収入を得る機会を提供し自立を支援する事業が始まっている。
- イギリスのThe Big ISSUEを発祥とし、日本独自の記事を中心とした「ビッグイシュー日本版[3]」が発行されている。
- 東京や大阪などの大都市などでホームレスの人たちが街頭に立ち、道行く人達に直接販売している姿が見られる。
問題点[編集]
以下の内容は著者独自の見解で根拠がないのではないかと言っていた人がいたようです。 |
生活上の問題点[編集]
治安[編集]
ホームレス襲撃事件が後を絶たず、少年等を加害者とするホームレス殺害・傷害事件が発生している(横浜浮浪者襲撃殺人事件など。加害少年たちは「ケラチョ(虫けらっちょ)狩り」「街の掃除」と嘯いており、罪悪感を持たない。東京・北区赤羽では、たまたま公園でごろ寝していたネットカフェ難民の男性が、ホームレスだと思い込んだ少年達にライターオイルをかけられ火を点けられる事件が起きた (男性は火傷で重傷)。また、冬季の凍死など毎年数百人もの路上での死者(官報では行旅死亡人)が出ている。この他に、ホームレス同士による事件(相手を殺害するケースもあり)も発生している。理由は金欲しさ、また住むところがなく困っていることなど。
市民権[編集]
住所不定となるため、住民票が削除されたり(職権消除)、それにともない選挙権が行使できなくなったりすることがある[8]。長年行方不明であったために親族から役所へ失踪の届けがなされ、戸籍が抹消されている例も見られる。住民票を消されると、選挙権・被選挙権を失う他、生活保護や運転免許取得など、行政の手続きが必要な行為のほとんどが実質的に受けられなくなる[9]。さらに、就職でも不利になるため、自力での住民票回復は極めて難しくなる。
釜ヶ崎#住民登録問題 も参照
大阪市では、あいりん地区(釜ヶ崎)の釜ヶ崎解放会館などに便宜上の住所登録を行うことが黙認されていた。市職員が登録を勧めた事例もあるという[10](また、横浜市でも寿町会館に便宜上の住所登録が黙認されているという)。
しかし、2006年12月に、解放会館の住民票を不正利用した男が逮捕された事件により、大阪市の事例が明らかになった。この事件はホームレスは単なる被害者であったが、これをきっかけにマスコミ、特に『讀賣新聞』12月16日号は、市民権行使による参政を「違法投票」と報じるなど、ホームレスへの非難報道を行った。
2007年2月27日、關淳一市長は「居住実態のない」ホームレスの住民票削除を発表。建設労働者の男性が大阪高等裁判所に削除差し止めの仮処分申請を行い、3月1日に認められたことなどから、大阪市は3週間の延期を発表。
大阪市選挙管理委員会は3月26日、早急に住民登録の適正化を図るよう求める依頼書を関市長に提出。選管はホームレスなど側との交渉の席上「野宿者は選挙権を行使できない」と主張したとされる(「緊急抗議行動呼びかけ」)。統一地方選挙による大阪市議選告示前日の3月29日、「選挙が無効となる恐れがある(ホームレスの選挙権行使を理由に、選挙無効で訴えられる恐れがある)」として、大阪市はホームレスら約2,000人の公民権を剥奪した[11]。
日常の困難[編集]
ホームレスになる直前の職業は、日雇い労働を代表とするもともと不安定な就労形態であった者が多く、建設不況などにより日雇い労働市場が縮小した現在、高齢化の問題も手伝って、仕事に就くのに困難な状況が伴っており、職業訓練や新たな雇用の創出などの対策が求められる。また、アルコール依存症などによる心身面の問題を抱える者については、一旦、生活を立て直した後で、また再び野宿に戻る場合があるなどの問題を抱えている。
行政の対応[編集]
法制度的な問題としては、生活保護法によれば、生活に困窮し資産能力を活用し他に手段がない場合には保護の適用を受けて最低限度の生活を営むことが出来るはずである。
- しかしホームレス本人の稼働能力の不活用などの理由で保護の要件に欠けるとされる場合があり、セーフティネットとしての生活保護法が充分機能していないとする意見が一部である。
- 特に、男性の野宿生活者に対しては一律に門前払いしている場合も多い。
- 女性の野宿生活者は性的犯罪の被害者となる危険性が高いので行政側も男性より最優先に対応をしている。
- 働くことを希望しているホームレスが多く、就労による自立が最優先課題であるが、住居・住民票のないことが就職に不利となり、また、アパートなどを借りる際の保証人がいないことが住居を得るうえで障害となっている。住民登録が抹消されている場合は印鑑登録ができず、このため賃貸住宅の契約時に求められる実印の提出ができないことなども障害となる[12]。住み込み労働などについても保証人や現住所が必要な場合が多く、ホームレス脱却の手段とはなり得ない。
ホームレスの裁判[編集]
生活保護の申請に際して、住所不定者の「稼働能力」を争点とした裁判が起こされている。
経緯[編集]
1993年7月、住所不定であった男性(当時55歳)が、名古屋市中村区社会福祉事務所へ医療扶助、生活扶助、住宅扶助といった生活保護の申請をした。
- しかし同事務所は、「就労可能」との医師判断をもとに男性への保護決定を医療扶助のみとしたため、1994年5月、男性はこれを不服とし、同決定の取り消しと慰謝料百万円の支払いを求めて、同福祉事務所と名古屋市を相手取り名古屋地方裁判所へ提訴した。
第一審[編集]
裁判において男性側は「不況で仕事が少なく、能力を活用しても、最低限度の生活は維持できなかった」「稼働能力があっても、生活が困窮している場合は、生活保護が受けられる」と主張。
- これに対し名古屋市側は「稼働能力があり、能力の活用が不十分で、保護の要件を満たさない」「就労の機会を得ることは可能で、申請当日に、職が得られなくても、急迫していたとは認められない」として、処分の妥当性を主張した。
- 1996年10月、名古屋地裁は原告側(男性)の主張を認め、上記決定を取り消す判決を下したが、名古屋市側は控訴した。
控訴審[編集]
1997年8月、名古屋高等裁判所は、1審判決を覆し男性敗訴の控訴審判決を言い渡した。
上告審[編集]
男性は最高裁に上告したが、2001年2月、最高裁判所第三小法廷は男性の上告を棄却した。
ホームレスだった時期のある有名人[編集]
- 吾妻ひでお(漫画家。ホームレス体験を作品化した)
- ロドニー・アノアイ(プロレスラー)
- 浮島とも子(公明党参議院議員)
- 岡田絵里香(タレント)
- 奥田瑛二(俳優、本人自らトーク番組で語っていた)
- クリス・ガードナー(実業家)
- 兼元謙任(オウケイウェイヴ代表取締役社長)
- 川口匠(青年実業家)
- 古賀英彦(千葉ロッテマリーンズ二軍ヘッドコーチ)
- 佐々木剛(俳優。家が火事で全焼してしまい多額の負債を背負った)
- ジュエル(シンガーソングライター)
- 新野剛志(推理作家)
- 荘口彰久(元ニッポン放送アナウンサー、現フリーアナウンサー)
- TAIJI(ミュージシャン。日本のロックバンド、元Xのベーシスト)
- 辰吉丈一郎(プロボクサー)
- 田村裕(お笑いコンビの麒麟)
- トロイ・ドナヒュー(俳優)
- 浜田ブリトニー(漫画家)
- 森川陽一郎(映像作家、書道家山内改行代表)
- ジャイモン・フンスー(ダンサー・ファッションモデル・俳優)
- アン・ヘッシュ(女優)
- 堀之内九一郎(実業家。生活創庫の代表取締役)
- 前橋靖(エム・クルー代表取締役)
- 松崎悠希(俳優・コメディアン)
- 水谷豊(俳優)
- ロドニー・ミルバーン(陸上競技選手)
- ジミー・ツトム・ミリキタニ(画家)
- 山本英夫(漫画家)
- ヘンリー・ロノ(陸上競技選手)
その他[編集]
廃品回収と、その周辺事情[編集]
彼らの僅かな収入源の一つに、回収業者が廃品の買取をする方法や直接販売可能な廃品の買取がある。前者が段ボールやアルミ缶、後者は週刊誌などの雑誌である。段ボール集めの場合、古紙回収業者がホームレスにリヤカーを提供し、安い料金で街中の段ボールを無断で集めさせる。 ホームレスにとってはいつでも好きな時間にマイペースで仕事ができ僅かだが適当な収入になる仕事である。しかし最近では、段ボールも無料での引取りがなくなり、放火の危険性からも街中では見られなくなりつつある。缶に至っては、“資源ゴミは自治体が所有権を留保する有価物”との方針が広まり、集積所からの持ち出しも窃盗罪に問われる可能性が生じ始めている。
段ボール・ハウス絵画[編集]
バブル経済崩壊後の企業倒産激増等により、インテリや芸術家もホームレスとなり、JR新宿駅西口地下街では、ピーク時で300名のホームレスが段ボール・ハウスで寝泊りしていた。1995年からは、若手芸術家(武盾一郎ほか)やホームレスとなった芸術家が、段ボール・ハウスに絵画を描き始め、1998年までに800軒の絵画が描かれた。 2005年には、その10周年を記念して「新宿区ダンボール絵画研究会」が結成され、武盾一郎が会長、深瀬鋭一郎が事務局長、深瀬記念視覚芸術保存基金が事務局となり、美術評論家の中原佑介、毛利嘉孝なども参加して、研究叢書として「新宿ダンボール絵画研究」が発刊された[13]。
まちづくり[編集]
日雇い労働市場(寄せ場)には多数の簡易宿所(いわゆる「ドヤ」)が集まった街があり、日雇い労働者がひしめく独特の雰囲気がある。
非合法勢力との関係[編集]
ホームレスの中には、暴力団など非合法組織による犯罪に巻き込まれてしまったため親族・家族に迷惑をかけないようにと絶縁して家出をし、ホームレスとなり、死亡後に遺体となって初めて家族のもとに帰る人がいる。また近年、ホームレスが中国から覚せい剤の密輸を行う運び屋として利用されるという事件が発生している。
これは、公園等で見知らぬ男から報酬と渡航費や偽造パスポートなどを渡され、詳しいことがわからぬまま覚せい剤を日本に持ち込ます手口といわれる。すでに2004年2月、中国当局によって麻薬密輸罪で日本人1人に執行猶予付きの死刑判決が言い渡されている。2007年、新たに麻薬事犯で2人の日本人男性に対して、執行猶予が付かない死刑が中国で言い渡された(最高人民法院での執行許可待ち状態に置かれている)。
反社会的勢力(暴力団など)が夜の間にホームレスの枕元にそっと食料をおいておき、朝起きたホームレスがそれを誰から受けたとも知らずに食べた後、反社会的勢力が来て名乗りをあげ、以降そのホームレスを勢力範囲下におく(反社会的業務への「雇用契約」が成立したと恐喝する)という手法が取られるという要出典。
世界のホームレス[編集]
インド[編集]
カースト制度が存在し、貧富の差が激しいインドはホームレスの数では世界でも群を抜いており、ホームレスはごく日常的に見られる光景に過ぎない。特に子供のホームレス(いわゆるストリートチルドレン)が多いのが特徴である。彼らの多くは乞食、停車中の自動車の清掃サービス、物売り、ゴミあさり、更には窃盗などの犯罪行為をして糊口をしのいでおり、大きな社会問題となっている。ダージリンなどの高地にもホームレスは存在し、凍死する者も少なくない。
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 厚生労働省 (2007) 厚生労働省 ホームレスの実態に関する全国調査報告書の概要 2007
- ↑ http://www.scn-net.ne.jp/~shonan-n/news/030222/030222.html
- ↑ 厚生労働省 (2007) 厚生労働省 日雇い派遣労働者の実態に関する調査及び住居喪失不安定就労者の実態に関する調査の概要 2007
- ↑ 4.0 4.1 厚生労働省 (2007) 厚生労働省 第2部 ホームレス概数調査の結果 2007 6ページ
- ↑ 第 2 回レポートの結果
- ↑ 東京都 (2006) 東京都 路上生活者自立支援センター「杉並寮」を開設します 2006
- ↑ 毎日新聞2007年4月21日付朝刊6面
- ↑ 選挙人名簿は住民基本台帳をもとに作成される。
- ↑ 生活保護には職権保護(生活保護法第25条)規定があるが、適切に運用されているとは言えない。生活保護そのものは住民登録の有無に関わらず申請が可能であるが、受付側の行政が不正・違法に受理を拒む事例がある(⇒生活保護問題)。運転免許証の新規取得には住民登録が必要であるが、更新には不要。
- ↑ 『産經新聞』2007年1月30日「住民票抹消問題 届出催告書を「返却」」
- ↑ 『日本経済新聞』3月30日号大阪・あいりん地区、2,000人の住民登録抹消──労働者側は反発(3月30日)
- ↑ 賃貸住宅の借入ができないから住民登録ができない、住民登録が無いので印鑑登録ができず賃貸借契約ができない、というジレンマ。
- ↑ 『日本経済新聞』2005年10月7日朝刊最終面文化欄1-8段「文化 ダンボール絵画は芸術だ アーティストの卵と生活者の「ユートピア」再発見」、『月刊ウエンディ』2006年2月15日(第201号)5面1-7段「私の体験 ダンボールハウス絵画」、『美術手帳』2005年11月号「新宿ダンボール絵画研究」
関連項目[編集]
参考文献[編集]
- 青木秀男 編著『場所をあけろ! 寄せ場/ホームレスの社会学』松籟社 1999年1月 ISBN 4879841986
- ありむら潜『カマやんの野塾 漫画ホームレス問題入門』かもがわ出版、2003年12月、ISBN 4876997829
- ネルス・アンダーソン 広田康生 訳『ホーボー ホームレスの人たちの社会学』ハーベスト社 上:1999年5月 ISBN 4938551411、下:2000年11月 ISBN 4938551519
- 原著: Nels Anderson, The hobo
- 岩田正美『ホームレス/現代社会/福祉国家「生きていく場所」をめぐって』明石書店 2000年3月 ISBN 4750312665
- 梅沢嘉一郎『ホームレスの現状とその住宅政策の課題 三大簡易宿所密集地域を中心にして』第一法規出版 1995年6月 ISBN 4474004922
- 笠井和明『新宿ホームレス奮戦記 立ち退けど消え去らず』現代企画室 1999年7月 ISBN 4773899077
- 風樹茂『ホームレス入門 人間ドキュメント 上野の森の紳士録』山と溪谷社 2001年6月 ISBN 4635330346/改題『ホームレス入門 上野の森の紳士録』角川文庫 2005年1月 ISBN 4043778015
- 風樹茂『ホームレス人生講座』中公新書ラクレ 中央公論新社 2002年11月 ISBN 4121500709
- 金子雅臣『ホームレスになった 大都会を漂う』築地書館 1994年2月 ISBN 4806756237 ちくま文庫 2001年11月 ISBN 448003675X
- 北村年子『大阪・道頓堀川「ホームレス」襲撃事件 “弱者いじめ”の連鎖を断つ』太郎次郎社、1997年10月、ISBN 4811806417、[4]
- 櫛田佳代『ビッグイシューと陽気なホームレスの復活戦』ビーケイシー 2004年12月 ISBN 4939051323
- 小玉徹ほか『欧米のホームレス問題 下』法律文化社 2003年2月 ISBN 4589026198
- 小玉徹『ホームレス問題何が問われているのか』岩波ブックレット 岩波書店 2003年3月 ISBN 400009291X
- クリストファー・ジェンクス 大和弘毅 訳 『ホームレス』図書出版社 1995年2月 ISBN 4809901955
- 原著: Christopher Jencks, The homeless
- 社会政策学会 編『日雇労働者・ホームレスと現代日本』御茶の水書房 1999年7月 ISBN 427501765X
- 曽木幹太『Asakusa style 浅草ホームレスたちの不思議な居住空間』文藝春秋 2003年5月 ISBN 4163650105
- 長嶋千聡『ダンボールハウス』ポプラ社 2005年9月 ISBN 4591088308
- 中村健吾 ほか『欧米のホームレス問題 下』法律文化社 2004年3月 ISBN 4589027143
- 中村智志『段ボールハウスで見る夢 新宿ホームレス物語』草思社 1998年3月 ISBN 4794208073/増訂改題『路上の夢 新宿ホームレス物語』講談社文庫 2002年1月 ISBN 4062733501
- 福沢安夫『ホームレス日記「人生すっとんとん」』小学館文庫 2000年12月 ISBN 4094050213
- 藤井克彦、田巻松雄 共著『偏見から共生へ 名古屋発・ホームレス問題を考える』風媒社、2003年4月、ISBN 4833110598
- ふるさとの会 編著『高齢路上生活者 山谷・浅草・上野・隅田川周辺その実態と支援の報告』東峰書房 1997年11月 ISBN 488592040X
- 松繁逸夫 安江鈴子 共著『知っていますか?ホームレスの人権一問一答』解放出版社 2003年6月 ISBN 4759282467
- 松島トモ子『ホームレスさんこんにちは』めるくまーる 2004年2月 ISBN 4839701156
- ジェームズ・D・ライト『ホームレス アメリカの影』三一書房 1993年3月 ISBN 4380932028
- 原著: James D. Wright, Address unknown
- E・リーボウ 著 吉川徹 轟里香 訳『ホームレスウーマン 知ってますか、わたしたちのこと』東信堂 1999年4月 ISBN 4887133251
- 原著: Elliot Liebow, Tell them who I am
- 山崎 克明、奥田 知志 ほか『ホームレス自立支援―NPO・市民・行政協働による「ホームの回復」』明石書店 、2006年9月 ISBN 4750324094
- いちむらみさこ著『Dearキクチさん、ブルーテント村とチョコレート』キョートット出版 2006年10月 ISBN 4990263715
- 田村裕著『ホームレス中学生』 ワニブックス 2007年 ISBN 4847017374
外部リンク[編集]
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