「シュールストレミング」の版間の差分
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'''シュールストレミング'''(surströmming [sʉ̌ːʂtrœmːɪŋ]} <small>スーシュトレンミング</small>)は、主に[[スウェーデン]]で生産・消費される、塩漬けの[[ニシン]]の[[缶詰]]。その強烈な臭いから、「'''世界一臭い食べ物'''」と評されることもある。 | '''シュールストレミング'''(surströmming [sʉ̌ːʂtrœmːɪŋ]} <small>スーシュトレンミング</small>)は、主に[[スウェーデン]]で生産・消費される、塩漬けの[[ニシン]]の[[缶詰]]。その強烈な臭いから、「'''世界一臭い食べ物'''」と評されることもある。 | ||
2018年2月22日 (木) 23:10時点における最新版
シュールストレミング(surströmming [sʉ̌ːʂtrœmːɪŋ]} スーシュトレンミング)は、主にスウェーデンで生産・消費される、塩漬けのニシンの缶詰。その強烈な臭いから、「世界一臭い食べ物」と評されることもある。
スウェーデン語で「スール (sur)」は「酸っぱい」を、「ストレンミング (strömming)」は「バルト海産のニシン」を意味する。フィンランド語のhapansilakkaも同じ意味で、hapankalaは「酸っぱい魚」を意味する。
概要[編集]
中世ヨーロッパでは肉の代わりに塩漬けの魚(タラ、ニシン)が盛んに流通していたが、保存には塩が必要だった。北欧に位置するスウェーデンではニシンは豊富に獲れたが、製塩に必要な日射も薪も乏しく、塩は貴重品だった。それゆえに用いられた樽で薄い塩水に漬ける保存方法は、固形の塩と層状に詰め込む塩蔵保存に比べ、腐敗は防げても発酵は止められなかった。しかし、塩を節約して(通常では耐え難いほどの臭気を発する水準まで極度に発酵するが)ニシンを保存できることは、14世紀頃にはすでに広まり、17世紀には王軍の主要な糧食とされるに至った。
バルト海で4月から5月にかけて獲れた産卵期直前のニシンを材料とし(これはかつて、勅令で定められていた)、頭とワタを除いたそれを90kg入り樽の薄い塩水に漬け、12-18℃で10-12週間発酵させる。商品によって切り身のままのもの、頭や腸も使っているもの、カズノコが一緒に入っているものなどがあるが、カズノコは食べるべきでないとされている。
発酵食品であるために食べ頃があり、販売の解禁日は8月の第3木曜日とされているがこれは涼しい北欧の場合で、日本の夏の気温下では注意する必要がある。開缶して魚体が液状化したものは、分解が進みすぎている。
缶詰[編集]
19世紀に缶詰が実用化されて以降、缶の中で発酵を継続させる形式のシュールストレミングが出現してきた。缶詰は7月に製造され、9月に食べ頃となる。
通常、缶詰は保存食として製造されるため、内容物は滅菌される。しかしシュールストレミングは、日本の漬け物のように発酵状態を保ったまま缶詰にされ、缶の中で発酵が進行する。密封状態で発酵させるため、発生したガス(二酸化炭素など)圧によって丸く膨らむ。こうした状態の缶はスウェーデン各地のスーパーマーケットでよく見られる。殺菌を行わないことから日本では缶詰の定義から外れ、JAS法などに基づき「缶詰」と標記できない。
開封する際は、そのガスによって汁が噴出すると臭いが広範囲に拡散するため、屋外で開けることが推奨されている[1]。 噴出を抑える手段として、水中で開封することも行われるなど開け方はいくつかあるが、缶を傾け内部にガスだまりを作ってそこに缶切りを突き立てる方法が最も一般的である。
また、発酵食品であるため保管環境により匂いや味が大きく異なり、インターネット上で行われている「試食会」等のレポートでは、その反応にかなりの差が見られる。
2014年2月、ノルウェーにて25年間にわたり放置された缶詰が小屋から発見され、爆発物処理班と缶詰の専門家が出動して処理にあたった。中身は具材の原形を留めず液体状で臭気もひどく食用に堪えられなかった[2]。
入手方法[編集]
多くの航空会社では、飛行中の気圧低下により内圧の高いシュールストレミングの缶が破裂して周辺の荷物に悪臭が染み付く恐れがあるとして、航空機内への持込みを禁じている[3]。 このため、気圧変化が少ない船舶輸送以外では輸入できなくなった。ヨーロッパから日本までの船舶輸送には最短37日から2ヶ月近くかかり、また北欧の低い気温での保存を前提とする本品は、温度管理せずに熱帯を通過して輸送されると日本では発酵しすぎて固形部分が残っていないことがある。
2011年現在、上記の空輸禁止措置と日本政府によるニシンのIQ(輸入割当制度)による輸入量制限などで、日本国内では川口貿易のみ輸入しているが、それ以外にインターネットの通信販売でも購入が可能である。
臭い[編集]
気密性が高い缶の中で二次発酵を進めているのは、ハロアナエロビウム (Haloanaerobium) と呼ばれる嫌気性細菌の一種である。この細菌が醗酵の過程で、強い悪臭を生成している。悪臭物質として、刺激臭のプロピオン酸、腐った卵のような硫化水素、腐ったバターのような酪酸、酸っぱいにおいのする酢酸などである。
その強烈な臭いは、魚が腐った臭い、または生ゴミを直射日光の下で数日間放置したような臭いともいわれる。臭気指数計ではくさやの6倍以上 (8070 Au) の値を示す[4]。
食べ方[編集]
トゥンブロード(薄いパン)を、シュールストレミング、ジャガイモ、タマネギと食べる。
塩気が強いので、ジャガイモ、ニラ、ポテトサラダやトマト、赤すぐりや赤カブを付け合わせにするか、スライスしたタマネギとブラーナ(ヤギ乳のバターにクリームとシナモンを加えたもの)とともにクリスプ(堅パンまたはクラッカー)に載せて食べる。
室内で食べると臭気がなかなか消えないので、屋外で食べることが多い。場合によっては食べる前にウォッカなどの酒類、または牛乳などで洗うこともあり、アクアビット(北欧の蒸留酒)で洗うと3~4割臭みが減る[5]という。
主にスウェーデン北部で食べられ、南部などそれ以外の地域での消費量は少ない。
効果[編集]
目に良いとされており、白内障や緑内障防止になると言われている。民間療法ではあるが実際に効果があったという声は数多い。しかし医学界では未だに認められていない。
公式Tシャツ[編集]
2012年4月、株式会社スペースアイランドが一般公募による「シュールストレミング公式Tシャツ」デザインコンテストの開催を発表。シュールストレミングの日本唯一の正規輸入代理店である川口貿易が公認するTシャツとして、本コンテストでグランプリに輝いた作品が商品化された[6]。 シュールストレミングの体験者のみが購入できるという条件があり、「買ったことがある」「食べたことがある」「においを嗅いだことがある」のいずれかを満たすことが必要。
参照[編集]
- ↑ 小泉武夫『くさいはうまい』毎日新聞社、2003年、192-193頁 ISBN 4-620-31635-0
- ↑ Norway: Potentially explosive 25-year-old tin of fermented herring disarmed but inedible.
- ↑ Airlines ban 'foul' Swedish fish BBC NEWS 2006年4月1日
- ↑ 小泉武夫『NHK人間講座テキスト「発酵は力なり~食と人類の知恵」』日本放送出版協会、2004年5月、ISBN 9784140841839
社会実情データ図録 - ↑ Nicheee!『食欲の秋!世界一臭い食品の食べ方』 2011年10月28日
- ↑ “世界一臭い食品”を着こなそう!「シュールストレミング公式Tシャツ」が本日より販売開始!- 朝日新聞
- 塩の世界史(上)、第八章 北方の夢(マーク・カーランスキー 著、山本光伸 訳、中央公論新社、2014年)