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主演:チャールトン・ヘストン)までが「フィルム・ノワール」の製作時期といわれる。 | 主演:チャールトン・ヘストン)までが「フィルム・ノワール」の製作時期といわれる。 | ||
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+ | モノクロの犯罪映画で、暗いペシミズムやシニシズムが濃厚であることを特徴とする。 | ||
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登場人物に私立探偵、警官、判事、富裕層の市民、弁護士、ギャング、無法者、ジャーナリストなど登場する事が多い。 | 登場人物に私立探偵、警官、判事、富裕層の市民、弁護士、ギャング、無法者、ジャーナリストなど登場する事が多い。 | ||
あるいは殺人事件が関係するストーリであったりする。しかしギャング映画の全てがフィルム ノワールというわけではない。 | あるいは殺人事件が関係するストーリであったりする。しかしギャング映画の全てがフィルム ノワールというわけではない。 | ||
− | + | 悲観的な人間観、裏切り、冷酷・残酷な行動、支配欲、煙草の煙、男を破滅へ導く女性などがしばしば描かれる。 | |
− | + | 光と闇のコントラストを際立たせる照明法や、観客の心理的不安を煽る強烈な視覚的スタイル、主人公の一人称の語りやフラッシュバックによる回想形式の物語を多用した複雑な表現技法を採用している。 | |
== 代表作品 == | == 代表作品 == | ||
*(20)「キッスで殺せ!Kiss Me Deadly()」(監督:[[ロバート・オルドリッチ]],1955) | *(20)「キッスで殺せ!Kiss Me Deadly()」(監督:[[ロバート・オルドリッチ]],1955) | ||
− | + | 主演:[[ラルフ・ミーカー]],[[アルバート・デッカー]], ポール・スチュワート 残酷な暴力描写と大規模な陰謀 | |
*(19)「復讐は俺に任せろ(The Big Heat)」(監督:[[フリッツ・ラング]],1953) | *(19)「復讐は俺に任せろ(The Big Heat)」(監督:[[フリッツ・ラング]],1953) | ||
+ | 主演:[[グレン・フォード]]、[[リー・マーヴィン]] 警官対ギャング、犯罪告発映画 | ||
*(18)「ビッグ・コンボ(The Big Combo)」(監督:ジョーゼフ・H・ルイス,1955) | *(18)「ビッグ・コンボ(The Big Combo)」(監督:ジョーゼフ・H・ルイス,1955) | ||
+ | 主演:[[コーネル・ワイルド]]、 リチャード・コンティ 刑事が犯罪組織のボスに立ち向かう | ||
*(17)「恐怖のまわり道(Detour)」(監督:エドガー・G・ウルマー,1945) | *(17)「恐怖のまわり道(Detour)」(監督:エドガー・G・ウルマー,1945) | ||
*(16)「ブロンドの殺人者(Murder My Sweet)」(監督:[[エドワード・ドミトリク]],1944) | *(16)「ブロンドの殺人者(Murder My Sweet)」(監督:[[エドワード・ドミトリク]],1944) |
2018年8月21日 (火) 23:48時点における最新版
フィルム・ノワール (film noir) は、フランス語で「暗黒映画」の意味である。 ジャンルとしての「フィルム・ノワール」を正確に定義することは難しい。 特に1940年代前半から1950年代後期にかけて、ハリウッドで製作された、暗い照明を用いた 影を強調するライティング(白黒のコントラスト)、白黒フィルム使用、 独特のカメラアングルなどを特徴とする。 ドイツ表現主義の影響を受けた映画である。
由来[編集]
フランスの映画雑誌「レクラン・フランセ」(仏語:L'Écran Français)1946年8月号でニーノ・フランクが 「フィルム・ノワール」の用語をはじめて用いた。 当初は、第二次世界大戦中にアメリカで製作された「マルタの鷹」「飾窓の女」などの犯罪映画を 指して使われていた。 一般的には1941年製作の『マルタの鷹』から、1958年製作の『黒い罠』(監督:オーソン・ウェルズ、 主演:チャールトン・ヘストン)までが「フィルム・ノワール」の製作時期といわれる。 フリッツ・ラング、ビリー・ワイルダーら、数多くのユダヤ系亡命映画作家たちの貢献 がある。
特徴[編集]
モノクロの犯罪映画で、暗いペシミズムやシニシズムが濃厚であることを特徴とする。 当時は絶望、幻滅的ムードの反映と見る時代の閉塞状況があった。 登場人物に私立探偵、警官、判事、富裕層の市民、弁護士、ギャング、無法者、ジャーナリストなど登場する事が多い。 あるいは殺人事件が関係するストーリであったりする。しかしギャング映画の全てがフィルム ノワールというわけではない。 悲観的な人間観、裏切り、冷酷・残酷な行動、支配欲、煙草の煙、男を破滅へ導く女性などがしばしば描かれる。 光と闇のコントラストを際立たせる照明法や、観客の心理的不安を煽る強烈な視覚的スタイル、主人公の一人称の語りやフラッシュバックによる回想形式の物語を多用した複雑な表現技法を採用している。
代表作品[編集]
- (20)「キッスで殺せ!Kiss Me Deadly()」(監督:ロバート・オルドリッチ,1955)
主演:ラルフ・ミーカー,アルバート・デッカー, ポール・スチュワート 残酷な暴力描写と大規模な陰謀
- (19)「復讐は俺に任せろ(The Big Heat)」(監督:フリッツ・ラング,1953)
主演:グレン・フォード、リー・マーヴィン 警官対ギャング、犯罪告発映画
- (18)「ビッグ・コンボ(The Big Combo)」(監督:ジョーゼフ・H・ルイス,1955)
主演:コーネル・ワイルド、 リチャード・コンティ 刑事が犯罪組織のボスに立ち向かう
- (17)「恐怖のまわり道(Detour)」(監督:エドガー・G・ウルマー,1945)
- (16)「ブロンドの殺人者(Murder My Sweet)」(監督:エドワード・ドミトリク,1944)
- (15)「ローラ殺人事件(Laura)」(監督:オットー・プレミンジャー,1944)
主演:ジーン・ティアニー、ダナ・アンドリュース) 虚栄に満ちた文化人たち同士の歪んだ愛憎関係。
- (14)「殺人者( The Killers)」(監督: ロバート・シオドマク,1946)
主演:エヴァ・ガードナー、バート・ランカスター) 悪女の裏切りによるボクサーの転落と破滅。
- (13)「街の野獣( Night and the City)」(監督:ジュールズ・ダッシン,1946)
出演:リチャード・ウィドマーク, ジーン・ティアニー 一攫千金を夢見た若者が闇に葬られるまで。
- (12)「黒い罠(Touch of Evil)」(監督:オーソン・ウェルズ,1958)
出演:オーソン・ウェルズ,チャールトン・ヘストン,ジャネット・リー 技巧を凝らした画面と演出。
- (11)「成功の甘き香り(Sweet Smell of Success)」(監督:アリグザンダー・マッケンドリック,1957)
出演:トニー・カーティス,バート・ランカスター,マーティン・ミルナー ブロードウェイの暗黒面を描く。
- (10)「現金(ゲンナマ)に体を張れ(The Killing)」(監督:スタンリー・キューブリック,1956)
出演:スターリング・ヘイドン 200万ドル強奪計画が成功に向かうが、最後にドンデン返しが起こる。
- (9)「裏切りの街角(Criss Cross)」(監督:ロバート・シオドマク,1949)
出演:バート・ランカスター 、イヴォンヌ・デ・カーロ 愛してはならぬ女に近づき銃弾に倒れる男
- (8)「悪魔の往く町(Nightmare Alley)」(監督:エドマンド・グールディング,1947)
出演:タイロン・パワー,ジョーン・ブロンデル 詐欺師の没落人生を描く
- (7)「過去を逃れて(Out of the Past)」(監督:ジャック・ターナー,1947)
出演:ロバート・ミッチャム,ジェーン・グリア 裏切りと宿命をテーマとするハリウッドの古典映画
- (6)「アスファルト・ジャングル(The Asphalt Jungle)」(監督:ジョン・ヒューストン,1950)
出演: サム・ジャッフェ,マリリン・モンロー 刑務所から出た知能犯の宝石強盗とその失敗
- (5)「孤独な場所で(In a Lonely Place)」(監督:ニコラス・レイ,1951)
出演: ハンフリー・ボガート、グロリア・グレアム 殺人事件の容疑者との恋と別離
- (4)「マルタの鷹(The Maltese Falcon)」(監督:ジョン・ヒューストン,1950)
主演:ハンフリー・ボガート、メアリー・アスター, ピーター・ローレ 高価な「マルタの鷹」像の争奪戦を描く
- (3)「サンセット大通り(Sunset Boulevard)」(監督:ビリー・ワイルダー,1950)
主演:グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン サイレント映画時代の栄光を忘れられない往年の名女優の妄執と悲劇を描く
- (2)「三つ数えろ(The Big Sleep)」(監督:ハワード・ホークス,1946)
主演:ハンフリー・ボガート、ローレン・バコール)ハードボイルド名作映画。
- (1)「深夜の告白(Double Indemnity)」(監督:ビリー・ワイルダー,1944)
主演:フレッド・マクマレイ、バーバラ・スタンウィック。欲望に囚われたの男女による保険金目的の完全犯罪。
註[編集]