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'''森嶋 通夫'''（もりしま みちお、[[1923年]][[7月18日]] - [[2004年]][[7月13日]]）は[[経済学者]]。[[大阪府]]生まれ。[[ロンドン大学]][[名誉教授]]。[[大阪大学]]名誉教授。 [[イギリス学士院]]会員。日本を代表する[[経済学者]]。
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'''森嶋 通夫'''（もりしま みちお、[[1923年]][[7月18日]] - [[2004年]][[7月13日]]）は日本を代表する[[経済学者]]。[[大阪府]]生まれ。[[ロンドン大学]][[名誉教授]]。[[大阪大学]]名誉教授。 [[イギリス学士院]]会員。文化勲章授賞。
  
 
== 経歴 ==
 
== 経歴 ==
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[[1923年]]に大阪市に生まれるが幼少期は神戸に在住していた。[[1936年]]に神戸市の本山第一小学校を卒業した。七年制の旧制[[浪速高等学校]]を卒業後、[[1942年]]10月に[[京都帝国大学]]経済学部に進学する<ref name=matsu1>松山直樹「森嶋通夫ロンドン大学名誉教授 : 神戸商科大学Hicks Collection Opening記念講演『Hicksの想い出』」兵庫県立大学,商大論集,vol65,No3,pp.23-64,2014年</ref>。大学在学中の[[1943年]]、[[学徒出陣]]により、20歳で[[徴兵]]される<ref name=komuro>小室直樹『経済学をめぐる巨匠たち 経済思想ゼミナール』ダイヤモンド社,316p,978-4-478-21045-1</ref>。
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[[1923年]][[7月18日]に大阪市に生まれる。幼少期は神戸に在住していた。[[1936年]]に神戸市東灘区の本山第一小学校を卒業し、同年、七年制の旧制[[浪速高等学校]]尋常科に入学した。1938年と1940年に北京赴任中の父親を姉とともに訪問する。[[1942年]][[浪速高等学校]]を卒業し、10月に[[京都帝国大学]]経済学部に入学する<ref name=matsu1>松山直樹「森嶋通夫ロンドン大学名誉教授 : 神、戸商科大学Hicks Collection Opening記念講演『Hicksの想い出』」兵庫県立大学,商大論集,vol65,No3,pp.23-64,2014年</ref>。1943年12月に学徒動員により、[[大日本帝国海軍]]に入隊する。1944年12月末、海軍少尉として、長崎の大村航空隊に着任する。1945年6月始め第22連合航空隊司令部に転勤する。同年7月15日、同隊解散する。
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[[1943年]]12月[[大日本帝国海軍]]に入隊し<ref>[http://diamond.jp/articles/-/1821?page=8 滞日中のシュンペーターに密着した高田保馬と柴田敬]ダイヤモンド社,accessdate:2017-06-24</ref>、[[通信]]学校を出た後、[[長崎]]の[[大村航空隊]]へ配属。[[暗号解読]]を担当する[[少尉]]として赴任した。
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[[1946年]]に[[京都大学]]経済学部を卒業する。京都大学経済学部特別研究生第一期を修了し、経済学部助手に着任する。同大学講師を経て、[[1950年]]27歳の若さで、[[京都大学]]経済学部の助教授となる。1年後の[[1951年]][[大阪大学]]法経学部助教授に転出する。
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大村航空隊では、通信将校として、数多くの[[特攻隊]]との通信、沖縄に向かった[[大和 (戦艦)|戦艦大和]]との通信、[[沖縄戦]]の通信などを担当した。
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1954年、津田瑤子と結婚する。1956年、ロックフェラー財団のフェローとして、[[オックスフォード大学]]の[[ジョン・ヒックス]]（1972年ノーベル経済学賞授賞）に師事した。アメリカをへて帰国する。1958年、[[エコノメトリック・ソサエティー]](計量経済学会)のフェローとなる。1960年、[[エコノメトリカ]]の準編集者となる(1968年まで)。[[1963年]]に、40歳で大阪大学経済学部経済研究施設（後の社会経済研究所）教授となる
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海軍[[中尉]]で[[敗戦]]を迎えた後、[[高田保馬]]・[[青山秀夫]]について[[経済学]]・[[社会学]]を学び、[[1946年]]に京都大学を卒業する。その後は経済学部の助手を経て、[[1950年]]27歳の若さで、[[京都大学]]経済学部の助教授となるが、1年後の[[1951年]]大阪大学法経学部助教授に転出する。[[1954年]]3月、大阪大学経済学部付属社会経済研究室の創設とともに、助教授として併任する。[[1963年]]に、40歳で大阪大学教授となる。[[1966年]]4月、大阪大学附置研究所社会経済研究所に改組され、[[安井琢磨]]とともに日本における近代経済学研究の中心として広く世界に名を轟かせる存在となったと言われる。
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[[1965年]]、エコノメトリック・ソサエティーの会長となる。これは日本人で初めてであった。
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[[1966年]]4月、大阪大学附置研究所社会経済研究所に改組され、社会経済研究所の教授となる。以後、日本における近代経済学研究の中心となる。
 
[[大阪大学社会経済研究所]]（阪大社研）においては、同僚の[[安井琢磨]]、[[畠中道雄]]、[[二階堂副包]]らと共に、阪大社研の黄金期を現出させた。
 
[[大阪大学社会経済研究所]]（阪大社研）においては、同僚の[[安井琢磨]]、[[畠中道雄]]、[[二階堂副包]]らと共に、阪大社研の黄金期を現出させた。
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その後、森嶋は日本を飛び出し、[[1968年]]に渡英し[[エセックス大学]]客員教授となり、その後、、[[1970年]]から[[ロンドン大学]]([[ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス]]（LSE）)の教授に就任し、そのまま定年まで在籍した。森嶋教授の毒舌は有名であり、日本では多くの舌禍を巻き起こしたがイギリスは変わり者を変わり者として受け止めてくれる風土がある<ref name=ida>依田高典「ノーベル経済学賞の忘れもの」放送大学「現代経済学」,2013年</ref>。
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その後、[[1968年]]に渡英して日本を飛び出し、[[エセックス大学]]客員教授となる。[[1969年]]大阪大学を退職する。同年、イタリアのシエナ大学経済学部非常勤講師となる。その後、20年以上非常勤で講義を行う。
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[[1970年]]から[[ロンドン大学]]([[ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス]]（LSE）)の教授に就任した（同大教授は日本人として初めて）。そのまま定年まで在籍した。
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LSEにおいては、1978年に Suntory Toyota International Centres for Economics and Related Disciplines (STICERD - 「スティカード」と発音) という研究所の設立に貢献し、初代所長となる。名前が示すとおり、[[サントリー]]と[[トヨタ]]からの寄付金を元に設立された研究所だが、イギリス学界では私企業からお金をもらって研究をすることは伝統的にタブーとされていて、そうした固定観念を変えるべく同僚の教授たちの説得に奔走した（その後、現在に至るまでSTICERDは、公共経済学、開発経済学、政治経済学の分野で多数の研究成果を経済学界に送り出している）。
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[[1976年]]、文化勲章授賞。
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[[1978年]]、LSEにSuntory Toyota International Centres for Economics and Related Disciplines (STICERD - 「スティカード」と発音) を作り、初代所長となる。
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[[1965年]]に41歳で日本人として初 めてエコノメトリック・ソサエティー(国際計量 経済学会)の会長に就任した(後に[[宇沢弘文]] が[[1976年]]に、[[1994年]]に[[根岸隆]]が会長に就任)に就任した。
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[[1981年]]、英国学士院会員(Fellow of British Academy)となる。
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[[1982年]]、ロンドンスクール・オブ・エコノミクス・サー・ジョン・ヒックス(Sir John Hicks Professor of Economics)教授となる。
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[[1988年]]、LSEを定年退職し、ロンドン大学名誉教授となる。1992年、大阪大学名誉教授となる。パリ第10大学名誉博士となる。
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[2004年]]、7月13日没する。
  
 
== 業績 ==
 
== 業績 ==
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森嶋の業績には3つのカテゴリーがあり、一番目は[[デヴィッド・リカード]]の体系に基づく均衡理論の動学化である。二番目は経済学に社会学的アプローチを加味した交響的経済学を提唱したことである。三番目は[[レオン・ワルラス]]、[[カール・マルクス]]、[[デヴィッド・リカード]]の経済学の学説史研究である。
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*森嶋の業績は一般均衡理論、投入産出分析、経済成長論、経済学説史、近代社会の発展に関する経済理論的考察など研究領域は多岐にわたっている。一般均衡理論では[[デヴィッド・リカード]]の体系に基づく均衡理論の動学化を行った。[[レオン・ワルラス]]、[[カール・マルクス]]、[[デヴィッド・リカード]]等の理論に動学的定式化を図り、[[数理マルクス経済学]]などを理論化した。
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[[数理経済学]]者として[[レオン・ワルラス]]、[[カール・マルクス]]、[[デヴィッド・リカード]]等の理論の動学的定式化に業績を残している。最も影響力を持つ研究はワルラス理論だが、マルクス理論を数理化させた（[[数理マルクス経済学]]）を手掛けている。
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*ワルラス理論の動学的定式化により、ノーベル経済学賞候補に挙がっていたといわれる。
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*Morishima(1984)<ref>Morishima, Michio(1984)"The Good and Bad Uses of Mathematics"in Economics in Disarray edited by P. Wiles and G. Routh. Basil Blackwell. pp. 51-73.</ref>は、経済理論が実証(制度的側面、歴史的事象)を切り捨て、数学的な洗練さを追求するだけで、数学モデルの枠内で完全に閉じてしまっており、現実の経済的事象を説明する役に立たないと主張した。30年後にRomer(2015)<ref>Romer, Paul M. 2015. "Mathiness in the Theory of Economic Growth." American Economic Review, 105(5): 89-93.</ref>は、真の意味で科学ではなくなっており、数学的概念と経済学的概念が乖離して、経済的事象を説明するために役立たないと指摘した。森嶋の指摘は30年後を正しく見ていた。
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ノーベル経済学賞を授賞した日本人はまだいないが、1980年代にノーベル経済学賞の受賞候補となった日本人は2名いた。森嶋通夫と[[宇沢弘文]]である。前者は動学的経済理論により数理経済学を切り開き、世界的な知名度があった。後者は米スタンフォード大や米シカゴ大で投資財と消費財の2部門をモデルとした新古典派経済学の枠組みの中で経済成長の仕組みをモデル化した<ref name=ida></ref>。
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*森嶋の"Equilibrium, Stability and Growth "(1964) は新ワルラス派経済学に大きな影響を与えた。
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依田高典は森嶋教授のもっとも独創的な著書である『動学的経済理論』(1950年)の英訳の刊行が1996年となったため、経済学史上の評価が遅れたことを挙げている。森嶋教授から聞いた話として、ノーベル財団の上層部、ソロー、ハーンと会食する機会があったとき、空気の読めないハーンがノーベル経済学賞をさんざん批判し始めたとき、ソローがテーブルの下でハーンの足をけったという。後年、ソローはノーベル経済学賞を受賞し、ハーンは逃したという<ref name=ida></ref>。
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*フォン・ノイマンモデルの探求に注力し、既存経済理論（特にリカード、マルクス、ワルラス、ヒックス理論) をノイマンモデルの形に仕上げた。
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*晩年の日本や世界全般の歴史、社会、経済条件に関する考察は素人社会学に近くなっている。
  
 
== 人物 ==
 
== 人物 ==
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* 幼少期から正義感が強く、差別を嫌っていたエピソードとして、高校1年の夏休みに北京に住む父親を訪ねたときの列車の中での出来事がある。
 
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* 著作も多く、専門的な経済学書の他に『イギリスと日本』『なぜ日本は「成功」したか』などの日本社会論・『自分流に考える』『サッチャー時代のイギリス』などの政策評論など幅広い。1979年には、専門外の分野ではあるが、[[関嘉彦]]との間で防衛問題論争を行った。
 
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* [[1970年]]の日経賞受賞を辞退した。価値自由論の立場から、新聞社は報道の自由の原則から、文化の内容に立ち入りその優劣の判定を行うべきではないとの信念からであった。<ref name=morish1>森嶋通夫:『終わりよければすべてよし――ある人生の記録』朝日新聞社,p.381</ref>
 
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* [[1976年]]の文化勲章は名誉はできるだけ受けるべきでないとの考え方から、辞退を考えていたが、年金がつくと知って受けることにした。<ref name=morish1></ref>。森嶋はその年金を日本－英国の学術交流に使い、若手社会学者への奨学金にもしていた。
 
 
* [[2004年]]8月には英[[タイムズ]]誌が紙面を半ページ割いて追悼記事を載せた。また英[[インディペンデント]]紙も追悼記事を掲載した。
 
* [[2004年]]8月には英[[タイムズ]]誌が紙面を半ページ割いて追悼記事を載せた。また英[[インディペンデント]]紙も追悼記事を掲載した。
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*森嶋教授の毒舌は有名であり、日本では多くの舌禍を巻き起こしたが、イギリスは変わり者を変わり者として受け止めてくれる風土があるため居続けた<ref name=ida>依田高典「ノーベル経済学賞の忘れもの」放送大学「現代経済学」,2013年</ref>。
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*森嶋は199*森嶋通夫(1984)『無資源国の経済学－新しい経済学入門』岩波全書,岩波書店9年の時点で、日本の没落を予言していた。日本経済の停滞の要因は、人間の質が低下し、日本的「仲良しクラブ」とでもいうべき雇用システムの中で、この危機を引き受けて企業を改革するイノベーションが生まれないと主張した。能率に差があっても、同じ待遇になるなら、人々は手を抜く。自分の能率にふさわしい額の収入をえるために、彼らは悪事を働く。政官財の「鉄の三角形」がモラルの面で衰退する。日本の現在の教育制度は、思考力を育てない画一教育、価値判断の排除、表面的な自由主義・個人主義教育で作られている。日本の戦後教育を憂慮し、技術革新がなければ生産性を向上させることはできないが、その革新する教育がなされていないと指摘した<ref>森嶋通夫(1999)『なぜ日本は没落するのか』,岩波書店</ref>。
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*[[浪速高等学校]]尋常科の受験は父親から勧められたためであった。
  
 
== 学歴 ==
 
== 学歴 ==
 
*1936年 [[浪速高等学校 (旧制)|旧制浪速高等学校]]尋常科入学
 
*1936年 [[浪速高等学校 (旧制)|旧制浪速高等学校]]尋常科入学
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*1943年 旧制浪速高等学校高等科文科乙類卒業
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*1942年 旧制浪速高等学校高等科文科乙類卒業
 
*1946年9月 [[京都大学|京都帝国大学]][[経済学部]]卒業
 
*1946年9月 [[京都大学|京都帝国大学]][[経済学部]]卒業
 
*1948年 京都大学[[大学院]]特別研究生第一期修了
 
*1948年 京都大学[[大学院]]特別研究生第一期修了
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== 職歴 ==
 
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*1948年10月 京都大学経済学部[[助手 (教育)|助手]]
 
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*1950年1月 京都大学経済学部[[講師 (教育)|講師]]
 
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*1950年4月 京都大学[[教養部]][[助教授]]
 
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*1951年 人事に抗議し京都大学退職、大阪大学[[法経学部]]助教授
 
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*1963年 大阪大学経済学部附属社会経済研究施設（現・社会経済研究所）[[教授]]
 
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*1966年 大阪大学社会経済研究所教授
 
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*1968年 英国エセックス大学客員教授
 
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*1969年 同大学ケインズ客員教授
 
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*1969年 大阪大学退職
 
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*1970年 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授
 
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*1982年 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスジョン・ヒックス卿教授
 
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*1989年 停年退官
 
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== 恩師・弟子 ==
 
== 恩師・弟子 ==
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== 著書 ==
 
== 著書 ==
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=== 単著 ===
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*森嶋通夫(1950)『動学的経済理論』,弘文堂
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*『動學的經濟理論』（[[弘文堂]], 1950年）
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*森嶋通夫(1955)『産業連関と経済変動』大阪大学経済学部社会経済研究室叢書第4冊,有斐閣
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:''Dynamic economic theory'',(Cambridge University Press, 1996).
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*森嶋通夫(1955)『資本主義の経済理論』現代経済学叢書,創文社
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*『資本主義経済の変動理論――循環と進歩の経済学』（[[創文社]], 1955年）
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*森嶋通夫(1956)『産業連関論入門－新しい現実文責の理論的背景』,創文社
−
*『産業連関と経済変動』（有斐閣, 1955年）
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*森嶋通夫,篠原三代平,内田忠夫(1961)『新しい経済分析－理論・計量・予測』,創文社
−
*『産業連關論入門――新しい現実分析の理論的背景』（創文社, 1956年）
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*Morishima Michio(1964)Equilibrium stability, and growth: a multi-sectoral analysis,Oxford University Press
−
*''Equilibrium stability, and growth: a multi-sectoral analysis'', (Oxford University Press, 1964).
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*森嶋通夫,河口慎二,熊谷尚夫(1968)『経済学入門』,有斐閣
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*''Theory of economic growth'', (Clarendon Press, 1969).
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*森嶋通夫(1969)『資本主義経済の変動理論　循環と進歩の経済学』,創文社
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*''Marx's economics: a dual theory of value and growth'', (Cambridge University Press, 1973).
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*Morishima Michio(1969)Theory of Economic Growth,Oxford Univ Press
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:『マルクスの経済学――価値と成長の二重の理論』（[[高須賀義博]]訳, [[東洋経済新報社]], 1974年）
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*Morishima Michio(1973)Marx's economics: a dual theory of value and growth, Cambridge University Press
−
*『近代社会の経済理論』（創文社, 1973年）
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*森嶋通夫(1974)『近代社会の経済理論』,創文社
−
:''The economic theory of modern society'', translated by D.W. Anthony , (Cambridge University Press, 1976).
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*森嶋通夫(1974)『マルクスの経済学――価値と成長の二重の理論』高須賀義博訳, 東洋経済新報社
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*『イギリスと日本――その教育と経済』（[[岩波書店]]［[[岩波新書]]］, 1977年）
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*森嶋通夫(1977)『イギリスと日本』岩波新書,岩波書店
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*『続イギリスと日本――その国民性と社会』（岩波書店［岩波新書］, 1978年）
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*Morishima Michio(1976)The economic theory of modern society, translated by D.W. Anthony ,Cambridge University Press
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*''Walras' economics: a pure theory of capital and money'', (Cambridge University Press, 1977).
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*Morishima Michio(1977)Walras' economics: a pure theory of capital and money,(Cambridge University Press
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:『ワルラスの経済学――資本と貨幣の純粋理論』（[[西村和雄]]訳, 東洋経済新報社, 1983年）
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*森嶋通夫(1978)『続 イギリスと日本』岩波新書,岩波書店
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*『自分流に考える――新・新軍備計画論』（[[文藝春秋]], 1981年）
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*森嶋通夫・カテフォレス(1980)『価値・搾取・成長　現代の経済理論からみたマルクス』創文社
−
*''The industrial state without natural resources: a new introduction to economics'', (International Centre for Economics and Related Disciplines The LSEPS, 1983).
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*森嶋通夫(1981)『自分流に考える　新・新軍備計画論』文藝春秋
−
:『無資源国の経済学――新しい経済学入門』（岩波書店, 1984年）
+
*森嶋通夫(1983)『ワルラスの経済学　資本と貨幣の純粋理論』,東洋経済新報社
−
*''Why has Japan succeeded: western technology and the Japanese ethos'', (Cambridge University Press, 1982).
+
*森嶋通夫(1984)『無資源国の経済学－新しい経済学入門』岩波全書,岩波書店
−
:『なぜ日本は「成功」したか?――先進技術と日本的心情』（[[TBSブリタニカ]], 1984年）
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*Morishima Michio(1984)The economics of industrial society, translated by Douglas Anthony, John Clark, and Janet Hunter, Cambridge University Press
−
*''The economics of industrial society'', translated by Douglas Anthony, John Clark, and Janet Hunter, (Cambridge University Press, 1984).
+
*森嶋通夫(1984)『なぜ日本は「成功」したか？　先進技術と日本的心情』ＣＣＣメディアハウス
−
*『学校・学歴・人生――私の教育提言』（岩波書店［岩波ジュニア新書］, 1985年）
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*森嶋通夫(1985)『学校・学歴・人生』岩波ジュニア新書93,岩波書店
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*『サッチャー時代のイギリス――その政治、経済、教育』（岩波書店［岩波新書］, 1988年）
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*森嶋通夫,能勢哲也(1987)『サービス産業と福祉政策－イギリスの経験』,創文社
−
*''Ricardo's economics: a general equilibrium theory of distribution and growth'', (Cambridge University Press, 1989).
+
*森嶋通夫(1988)『サッチャー時代のイギリス－その政治、経済、教育』岩波新書 新赤版49,岩波書店
−
:『リカードの経済学――分配と成長の一般均衡理論』（[[高増明]]・[[堂目卓生]]・[[吉田雅明]]訳, 東洋経済新報社, 1991年）
+
*Morishima Michio(1989)Ricardo's economics: a general equilibrium theory of distribution and growth,Cambridge University Press
−
*『政治家の条件――イギリス、EC、日本』（岩波書店［岩波新書］, 1991年）
+
*森嶋通夫(1991)『政治家の条件－イギリス、EC、日本』岩波新書 新赤版199,岩波書店
−
*『思想としての近代経済学』（岩波書店［岩波新書］, 1994年）
+
*森嶋通夫(1991)『リカードの経済学　分配と成長の一般均衡理論』,東洋経済新報社
−
*''Capital and credit: a new formulation of general equilibrium theory'', (Cambridge University Press, 1992).
+
*Morishima Michio(1992)Capital and Credit:A new formulation of General equilibrium theory,Cambridgr University Press
−
:『新しい一般均衡理論――資本と信用の経済学』（[[安冨歩]]訳, 創文社, 1994年）
+
*森嶋通夫(1993)『思想としての近代経済学』NHK人間大学,日本放送出版協会
−
*『日本の選択――新しい国造りにむけて』（岩波書店［同時代ライブラリー］, 1995年）
+
*森嶋通夫(1994)『新しい一般均衡理論―資本と信用の経済学』(安冨歩翻訳)創文社
−
*『血にコクリコの花咲けば――ある人生の記録』（[[朝日新聞社]], 1997年／朝日文庫, 2007年）
+
*森嶋通夫(1994)『思想としての近代経済学』岩波新書 新赤版321,岩波書店
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*『智にはたらけば角が立つ――ある人生の記録』（朝日新聞社, 1999年）
+
*森嶋通夫(1995)『日本の選択－新しい国造りに向けて』岩波同時代ライブラリ,岩波書店
−
*『なぜ日本は没落するか』（岩波書店, 1999年）
+
*Morishima Michio(1996)Dynamic economic theory,Cambridge University Press(『動學的經濟理論』の英訳)
−
*''Collaborative development in Northeast Asia'', translated by Janet Hunter, (Macmillan Press, 2000).
+
*森嶋通夫(1997)『血にコクリコの花咲けば－ある人生の記録』朝日新聞社
−
*''Japan at a deadlock'' (Macmillan Press, 2000).
+
*森嶋通夫(1999)『智に働けば角が立つ－ある人生の記録』朝日新聞社
−
*『日本にできることは何か――東アジア共同体を提案する』（岩波書店, 2001年）
+
*森嶋通夫(2000)『終わりよければすべてよし－ある人生の記録』朝日新聞社
−
*『終わりよければすべてよし――ある人生の記録』（朝日新聞社, 2001年）
+
*森嶋通夫(2001)『日本にできることは何か　東アジア共同体を提案する』岩波書店
−
*『なぜ日本は行き詰まったか』（岩波書店, 2004年）
+
*森嶋通夫(2004)『なぜ日本は行き詰ったか』岩波書店
 +
*Morishima Michio(2009)Dynamic Economic Theory,Cambridge University Press
 +
*森嶋通夫(2010)『なぜ日本は没落するか』岩波現代文庫,岩波書店
  
 
=== 著作集 ===
 
=== 著作集 ===
 
*『森嶋通夫著作集』（岩波書店, 2003年-2005年）
 
*『森嶋通夫著作集』（岩波書店, 2003年-2005年）
−
#「動学的経済理論」
+
# 第1巻「動学的経済理論」
−
#「均衡・安定・成長」
+
# 第2巻「均衡・安定・成長　多部門分析」
−
#「経済成長の理論」
+
# 第3巻「経済成長の理論」
−
#「資本と信用」
+
# 第4巻「資本と信用　新しい一般均衡理論」
−
#「需要理論――実物と金融」
+
# 第5巻「需要理論――実物と金融」
−
#「リカードの経済学」
+
# 第6巻「リカードの経済学 分配と成長の一般均衡理論」
−
#「マルクスの経済学」
+
# 第7巻「マルクスの経済学 価値と成長の二重の理論」
−
#「価値・搾取・成長」
+
# 第8巻「価値・搾取・成長 現代の経済理論から見たマルクス」
−
#「ワルラスの経済学」
+
# 第9巻「ワルラスの経済学 資本と貨幣の純枠理論」
−
#「ケインズの経済学」
+
# 第10巻「ケインズの経済学 中型工業国の理論」
−
#「計量経済モデルはどう作動するか」
+
# 第11巻「計量経済モデルはどう作動するか」
−
#「近代社会の経済理論」
+
# 第12巻「近代社会の経済理論」
−
#「なぜ日本は「成功」したか?」
+
# 第13巻「なぜ日本は「成功」したか? 先進技術と日本的心情 」
−
#「なぜ日本は行き詰ったか」
+
# 第14巻「なぜ日本は行き詰ったか なぜ日本は没落するか」
 +
# 別巻　「自伝・略年譜・著作目録」
  
 
=== 主要学術論文 ===
 
=== 主要学術論文 ===
 +
*Morishima, Michio(1984)"The Good and Bad Uses of Mathematics" in Economics in Disarray edited by P. Wiles and G. Routh. Basil Blackwell,pp.51-73
 +
 
*"On the Laws of Change of the Price System in an Economy which Contains Complementary Goods", 1952, ''Osaka Economic Papers''.
 
*"On the Laws of Change of the Price System in an Economy which Contains Complementary Goods", 1952, ''Osaka Economic Papers''.
 
*"Consumer Behavior and Liquidity Preference", 1952, ''[[エコノメトリカ|Econometrica]]''
 
*"Consumer Behavior and Liquidity Preference", 1952, ''[[エコノメトリカ|Econometrica]]''

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森嶋 通夫（もりしま みちお、1923年7月18日 - 2004年7月13日）は日本を代表する経済学者。大阪府生まれ。ロンドン大学名誉教授。大阪大学名誉教授。 イギリス学士院会員。文化勲章授賞。

経歴[編集]

1923年[[7月18日]に大阪市に生まれる。幼少期は神戸に在住していた。1936年に神戸市東灘区の本山第一小学校を卒業し、同年、七年制の旧制浪速高等学校尋常科に入学した。1938年と1940年に北京赴任中の父親を姉とともに訪問する。1942年浪速高等学校を卒業し、10月に京都帝国大学経済学部に入学する[1]。1943年12月に学徒動員により、大日本帝国海軍に入隊する。1944年12月末、海軍少尉として、長崎の大村航空隊に着任する。1945年6月始め第22連合航空隊司令部に転勤する。同年7月15日、同隊解散する。 1946年に京都大学経済学部を卒業する。京都大学経済学部特別研究生第一期を修了し、経済学部助手に着任する。同大学講師を経て、1950年27歳の若さで、京都大学経済学部の助教授となる。1年後の1951年大阪大学法経学部助教授に転出する。 1954年、津田瑤子と結婚する。1956年、ロックフェラー財団のフェローとして、オックスフォード大学のジョン・ヒックス（1972年ノーベル経済学賞授賞）に師事した。アメリカをへて帰国する。1958年、エコノメトリック・ソサエティー(計量経済学会)のフェローとなる。1960年、エコノメトリカの準編集者となる(1968年まで)。1963年に、40歳で大阪大学経済学部経済研究施設（後の社会経済研究所）教授となる 1965年、エコノメトリック・ソサエティーの会長となる。これは日本人で初めてであった。 1966年4月、大阪大学附置研究所社会経済研究所に改組され、社会経済研究所の教授となる。以後、日本における近代経済学研究の中心となる。 大阪大学社会経済研究所（阪大社研）においては、同僚の安井琢磨、畠中道雄、二階堂副包らと共に、阪大社研の黄金期を現出させた。 その後、1968年に渡英して日本を飛び出し、エセックス大学客員教授となる。1969年大阪大学を退職する。同年、イタリアのシエナ大学経済学部非常勤講師となる。その後、20年以上非常勤で講義を行う。 1970年からロンドン大学(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス（LSE）)の教授に就任した（同大教授は日本人として初めて）。そのまま定年まで在籍した。 1976年、文化勲章授賞。 1978年、LSEにSuntory Toyota International Centres for Economics and Related Disciplines (STICERD - 「スティカード」と発音) を作り、初代所長となる。 1981年、英国学士院会員(Fellow of British Academy)となる。 1982年、ロンドンスクール・オブ・エコノミクス・サー・ジョン・ヒックス(Sir John Hicks Professor of Economics)教授となる。 1988年、LSEを定年退職し、ロンドン大学名誉教授となる。1992年、大阪大学名誉教授となる。パリ第10大学名誉博士となる。 [2004年]]、7月13日没する。

業績[編集]

  • 森嶋の業績は一般均衡理論、投入産出分析、経済成長論、経済学説史、近代社会の発展に関する経済理論的考察など研究領域は多岐にわたっている。一般均衡理論ではデヴィッド・リカードの体系に基づく均衡理論の動学化を行った。レオン・ワルラス、カール・マルクス、デヴィッド・リカード等の理論に動学的定式化を図り、数理マルクス経済学などを理論化した。
  • ワルラス理論の動学的定式化により、ノーベル経済学賞候補に挙がっていたといわれる。
  • Morishima(1984)[2]は、経済理論が実証(制度的側面、歴史的事象)を切り捨て、数学的な洗練さを追求するだけで、数学モデルの枠内で完全に閉じてしまっており、現実の経済的事象を説明する役に立たないと主張した。30年後にRomer(2015)[3]は、真の意味で科学ではなくなっており、数学的概念と経済学的概念が乖離して、経済的事象を説明するために役立たないと指摘した。森嶋の指摘は30年後を正しく見ていた。
  • 森嶋の"Equilibrium, Stability and Growth "(1964) は新ワルラス派経済学に大きな影響を与えた。
  • フォン・ノイマンモデルの探求に注力し、既存経済理論（特にリカード、マルクス、ワルラス、ヒックス理論) をノイマンモデルの形に仕上げた。
  • 晩年の日本や世界全般の歴史、社会、経済条件に関する考察は素人社会学に近くなっている。

人物[編集]

  • 2004年8月には英タイムズ誌が紙面を半ページ割いて追悼記事を載せた。また英インディペンデント紙も追悼記事を掲載した。
  • 森嶋教授の毒舌は有名であり、日本では多くの舌禍を巻き起こしたが、イギリスは変わり者を変わり者として受け止めてくれる風土があるため居続けた[4]。
  • 森嶋は199*森嶋通夫(1984)『無資源国の経済学－新しい経済学入門』岩波全書,岩波書店9年の時点で、日本の没落を予言していた。日本経済の停滞の要因は、人間の質が低下し、日本的「仲良しクラブ」とでもいうべき雇用システムの中で、この危機を引き受けて企業を改革するイノベーションが生まれないと主張した。能率に差があっても、同じ待遇になるなら、人々は手を抜く。自分の能率にふさわしい額の収入をえるために、彼らは悪事を働く。政官財の「鉄の三角形」がモラルの面で衰退する。日本の現在の教育制度は、思考力を育てない画一教育、価値判断の排除、表面的な自由主義・個人主義教育で作られている。日本の戦後教育を憂慮し、技術革新がなければ生産性を向上させることはできないが、その革新する教育がなされていないと指摘した[5]。
  • 浪速高等学校尋常科の受験は父親から勧められたためであった。

学歴[編集]

恩師・弟子[編集]

恩師に高田保馬、青山秀夫。弟子に久我清（大阪大学名誉教授）、阪大時代の弟子に小室直樹、LSE時代のクリストファー・ピサリデス（ノーベル経済学賞受賞）がいる。

受賞歴・叙勲歴[編集]

著書[編集]

  • 森嶋通夫(1950)『動学的経済理論』,弘文堂
  • 森嶋通夫(1955)『産業連関と経済変動』大阪大学経済学部社会経済研究室叢書第4冊,有斐閣
  • 森嶋通夫(1955)『資本主義の経済理論』現代経済学叢書,創文社
  • 森嶋通夫(1956)『産業連関論入門－新しい現実文責の理論的背景』,創文社
  • 森嶋通夫,篠原三代平,内田忠夫(1961)『新しい経済分析－理論・計量・予測』,創文社
  • Morishima Michio(1964)Equilibrium stability, and growth: a multi-sectoral analysis,Oxford University Press
  • 森嶋通夫,河口慎二,熊谷尚夫(1968)『経済学入門』,有斐閣
  • 森嶋通夫(1969)『資本主義経済の変動理論　循環と進歩の経済学』,創文社
  • Morishima Michio(1969)Theory of Economic Growth,Oxford Univ Press
  • Morishima Michio(1973)Marx's economics: a dual theory of value and growth, Cambridge University Press
  • 森嶋通夫(1974)『近代社会の経済理論』,創文社
  • 森嶋通夫(1974)『マルクスの経済学――価値と成長の二重の理論』高須賀義博訳, 東洋経済新報社
  • 森嶋通夫(1977)『イギリスと日本』岩波新書,岩波書店
  • Morishima Michio(1976)The economic theory of modern society, translated by D.W. Anthony ,Cambridge University Press
  • Morishima Michio(1977)Walras' economics: a pure theory of capital and money,(Cambridge University Press
  • 森嶋通夫(1978)『続 イギリスと日本』岩波新書,岩波書店
  • 森嶋通夫・カテフォレス(1980)『価値・搾取・成長　現代の経済理論からみたマルクス』創文社
  • 森嶋通夫(1981)『自分流に考える　新・新軍備計画論』文藝春秋
  • 森嶋通夫(1983)『ワルラスの経済学　資本と貨幣の純粋理論』,東洋経済新報社
  • 森嶋通夫(1984)『無資源国の経済学－新しい経済学入門』岩波全書,岩波書店
  • Morishima Michio(1984)The economics of industrial society, translated by Douglas Anthony, John Clark, and Janet Hunter, Cambridge University Press
  • 森嶋通夫(1984)『なぜ日本は「成功」したか？　先進技術と日本的心情』ＣＣＣメディアハウス
  • 森嶋通夫(1985)『学校・学歴・人生』岩波ジュニア新書93,岩波書店
  • 森嶋通夫,能勢哲也(1987)『サービス産業と福祉政策－イギリスの経験』,創文社
  • 森嶋通夫(1988)『サッチャー時代のイギリス－その政治、経済、教育』岩波新書 新赤版49,岩波書店
  • Morishima Michio(1989)Ricardo's economics: a general equilibrium theory of distribution and growth,Cambridge University Press
  • 森嶋通夫(1991)『政治家の条件－イギリス、EC、日本』岩波新書 新赤版199,岩波書店
  • 森嶋通夫(1991)『リカードの経済学　分配と成長の一般均衡理論』,東洋経済新報社
  • Morishima Michio(1992)Capital and Credit:A new formulation of General equilibrium theory,Cambridgr University Press
  • 森嶋通夫(1993)『思想としての近代経済学』NHK人間大学,日本放送出版協会
  • 森嶋通夫(1994)『新しい一般均衡理論―資本と信用の経済学』(安冨歩翻訳)創文社
  • 森嶋通夫(1994)『思想としての近代経済学』岩波新書 新赤版321,岩波書店
  • 森嶋通夫(1995)『日本の選択－新しい国造りに向けて』岩波同時代ライブラリ,岩波書店
  • Morishima Michio(1996)Dynamic economic theory,Cambridge University Press(『動學的經濟理論』の英訳)
  • 森嶋通夫(1997)『血にコクリコの花咲けば－ある人生の記録』朝日新聞社
  • 森嶋通夫(1999)『智に働けば角が立つ－ある人生の記録』朝日新聞社
  • 森嶋通夫(2000)『終わりよければすべてよし－ある人生の記録』朝日新聞社
  • 森嶋通夫(2001)『日本にできることは何か　東アジア共同体を提案する』岩波書店
  • 森嶋通夫(2004)『なぜ日本は行き詰ったか』岩波書店
  • Morishima Michio(2009)Dynamic Economic Theory,Cambridge University Press
  • 森嶋通夫(2010)『なぜ日本は没落するか』岩波現代文庫,岩波書店

著作集[編集]

  • 『森嶋通夫著作集』（岩波書店, 2003年-2005年）
  1. 第1巻「動学的経済理論」
  2. 第2巻「均衡・安定・成長　多部門分析」
  3. 第3巻「経済成長の理論」
  4. 第4巻「資本と信用　新しい一般均衡理論」
  5. 第5巻「需要理論――実物と金融」
  6. 第6巻「リカードの経済学 分配と成長の一般均衡理論」
  7. 第7巻「マルクスの経済学 価値と成長の二重の理論」
  8. 第8巻「価値・搾取・成長 現代の経済理論から見たマルクス」
  9. 第9巻「ワルラスの経済学 資本と貨幣の純枠理論」
  10. 第10巻「ケインズの経済学 中型工業国の理論」
  11. 第11巻「計量経済モデルはどう作動するか」
  12. 第12巻「近代社会の経済理論」
  13. 第13巻「なぜ日本は「成功」したか? 先進技術と日本的心情 」
  14. 第14巻「なぜ日本は行き詰ったか なぜ日本は没落するか」
  15. 別巻　「自伝・略年譜・著作目録」

主要学術論文[編集]

  • Morishima, Michio(1984)"The Good and Bad Uses of Mathematics" in Economics in Disarray edited by P. Wiles and G. Routh. Basil Blackwell,pp.51-73
  • "On the Laws of Change of the Price System in an Economy which Contains Complementary Goods", 1952, Osaka Economic Papers.
  • "Consumer Behavior and Liquidity Preference", 1952, Econometrica
  • "An Analysis of the Capitalist Process of Reproduction", 1956, Metroeconomica.
  • "Notes on the Theory of Stability of Multiple Exchange", 1957, Review of Economic Studies.
  • "A Contribution to the Non-Linear Theory of the Trade Cycle", 1958, ZfN.
  • "A Dynamic Analysis of Structural Change in a Leontief Model", 1958, Economica.
  • "Prices Interest and Profits in a Dynamic Leontief System", 1958, Econometrica.
  • "Some Properties of a Dynamic Leontief System with a Spectrum of Techniques", 1959, Econometrica.
  • "Existence of Solution to the Walrasian System of Capital Formation and Credit", 1960, ZfN.
  • "On the Three Hicksian Laws of Comparative Statics", 1960, Review of Economic Studies.
  • "A Reconsideration of the Walras-Cassel-Leontief Model of General Equilibrium", 1960, in Arrow, Karlin and Suppes, editors, Mathematical Methods in the Social Sciences.
  • "Economic Expansion and the Interest Rate in Generalized von Neumann Models", 1960, Econometrica.
  • "Proof of a Turnpike Theorem: The `No Joint Production' Case", 1961, Review of Economic Studies.
  • "Aggregation in Leontief Matrices and the Labor Theory of Value", with F. Seton, 1961, Econometrica.
  • "Generalizations of the Frobenius-Wielandt Theorems for Non- Negative Square Matrices", 1961, J of London Mathematical Society.
  • "The Stability of Exchange Equilibrium: An alternative approach", 1962, International Economic Review.
  • "A Refutation of the Non-Switching Theorem", 1966, Quarterly Journal of Economics.
  • "A Generalization of the Gross Substitute System", 1970, Review of Economic Studies.
  • "Consumption-Investment Frontier, Wage-Profit Frontier and the von Neumann Growth Equilibrium", 1971, ZfN.
  • "The Frobenius Theorem, Its Solow-Samuelson Extension and the Kuhn-Tucker Theorem", with T. Fujimoto, 1974, Journal of Mathematical Economics.
  • "General Equilibrium Theory in the 21st Century", 1991, Economic Journal.

出典[編集]

  1. ↑ 松山直樹「森嶋通夫ロンドン大学名誉教授 : 神、戸商科大学Hicks Collection Opening記念講演『Hicksの想い出』」兵庫県立大学,商大論集,vol65,No3,pp.23-64,2014年
  2. ↑ Morishima, Michio(1984)"The Good and Bad Uses of Mathematics"in Economics in Disarray edited by P. Wiles and G. Routh. Basil Blackwell. pp. 51-73.
  3. ↑ Romer, Paul M. 2015. "Mathiness in the Theory of Economic Growth." American Economic Review, 105(5): 89-93.
  4. ↑ 依田高典「ノーベル経済学賞の忘れもの」放送大学「現代経済学」,2013年
  5. ↑ 森嶋通夫(1999)『なぜ日本は没落するのか』,岩波書店
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