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唐沢 貴洋(からさわ たかひろ、1978年 - )は、東京都港区虎ノ門にて法律事務所クロスを共同経営する日本の弁護士。正式な名字の表記は「唐澤」であるが、新聞記事では「唐沢」と略表記されることが多い。インターネットにおける名誉毀損の問題に取り組む弁護士として知られており[1][2][3][4][5]、ネット上の名誉毀損事件に詳しいとされる[6][7]。以前は恒心綜合法律事務所として活動していた。
経歴[編集]
1978年に東京都済生会中央病院において出生。幼少期は世田谷区に居住しており、小学生の時に横浜市へ移住し聖ヨゼフ学園小学校を卒業。中学生の時に再び東京へと戻り、法政大学第二中学校を卒業している。その後は都立新宿山吹高等学校を経て慶應義塾大学総合政策学部に進学。大学生時代には政治学者廣瀬陽子のゼミに所属しており、湘南台で一人暮らしをしていたという[8]。
その後早稲田大学法科大学院に進学し法務博士の学位を取得。2009年の司法試験に合格し[9]、2010年に第一東京弁護士会所属の弁護士として登録される[10]。2011年7月4日に恒心綜合法律事務所を品川区五反田に開設して活動していたが、2015年2月16日に弁護士山岡裕明と共同で新たに法律事務所クロスを設立している[11]。
唐沢はキリスト教徒ではないが、聖ヨゼフ学園で学んだ「キリスト教が教える倫理」は自分の中で生きていると述べている[8]。また中学生の時に1歳下の弟が非行グループによる暴行を苦に自殺しており、その経験から自分の力で弟のような犠牲者を出さない社会を作りたいと考えるようになり、のちに司法試験を受ける動機にもなったとしている[8][5]。
標的化[編集]
2012年3月、2ちゃんねるにおいて中傷の被害を受けていた少年の相談を受け、唐沢が2ちゃんねる運営者に対してIPアドレス等発信者情報の開示を求めた際、依頼者である唐沢の情報が公開された。この件がネット上で話題になって以降、唐沢に対する殺害予告や誹謗中傷、無言電話やストーカー行為等の嫌がらせが多発するようになり[2][12][3][4][7][6][5]、五反田にあった事務所も虎ノ門への移転を余儀なくされたという[2]。
2013年12月には、同年の7月13日に唐沢の殺害と事務所の爆破を予告する書き込みをスマートフォンから2ちゃんねるへ行ったとして、少年1名が脅迫の疑いで警視庁サイバー犯罪対策課によって書類送検された。同年には唐沢に対する脅迫の書き込みを行ったとして、他に2名の少年も書類送検されている[2][12][3][4][7][6]。
また2014年5月には、同年の3月3日に「逮捕者第一号」なるスレッドを2ちゃんねるにおいて作成し、「唐沢貴洋弁護士をナイフでメッタ刺しにして殺す」との書き込みをパソコンから行った脅迫の容疑で逮捕者が出ている[3][4][7][6]。2012年3月以降、95万件以上もの唐沢に対する殺害予告が確認されていたことから、唐沢は警視庁に相談していたという[7]。5月9日放送の「グッド!モーニング」では唐沢が当事者として出演している[13]。
同年12月には恒心綜合法律事務所を騙ったKRSWLockerと称するランサムウェアが出現[14][15]。また2015年3月17日放送の「FNNスーパーニュース」では、同年2月にTwitterにおいて数千件の殺害予告が書き込まれた事件に関連し唐沢が出演している[13]。同年4月のグーグルマップ改ざん騒動では、マップ内に「恒心教」支部や「唐沢貴洋記念館」といった虚偽の表示が確認されている[16][17]。
なお2014年12月6日に技術評論社のウェブサイトが改竄された事件[18]に関連して、翌2015年の6月30日に不正アクセス禁止法違反の疑いで少年が逮捕されている[19]。容疑者はサイバー攻撃について「都内の特定の弁護士を誹謗中傷すること」が目的であったと供述しており[20]、殺害予告ツイートを大量にさせた痕跡も発見されたという[21]。この少年は0Chiaki(ZeroChiaki)名義で活動しており、「悪質な書き込みを行ったユーザーの個人情報をサイト管理者に開示請求したことを機に、悪質なネットユーザーの中で標的」になっていた弁護士の名前や似顔絵を、サイバー攻撃の度に用いていたとされる[20]。
主張[編集]
2013年8月26日に発生した2ちゃんねる個人情報流出事件では、職務において2ちゃんねるビューアを利用していた唐沢も被害を受けており、暗号化も行わず個人情報と書き込み履歴を紐付けて保存していたことについて「データ管理があまりにずさん」であると運営者を批判した。事件が発覚した際には、唐沢の元に十数件の相談が寄せられたという[1]。
ネット上の事件に関わる法制度については、加害者の発信者情報を得るまでには時間とコストがかかるが、現状では被害者の側がそれを負担しているとした上で、「加害者の責任をより追及しやすくする制度」の必要性を訴えている。また被害者が平常な生活を取り戻すために、支援を行う公的な制度を整備する必要もあると主張している。そして「誹謗中傷をはじめとする権利侵害」は他人ごとではなく、「安易に誹謗中傷を繰り返すことで、人生を棒に振るようなことがないようにしてほしい」とも述べている[5]。
脚注[編集]
- ↑ 1.0 1.1 「2ちゃんねる個人情報流出の波紋 『書き込み主』特定の戦慄」『AERA』2013年9月23日号63頁。
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 「2ちゃんで弁護士殺害予告 高校生を書類送検 警視庁、脅迫容疑」『東京新聞』2013年12月9日付夕刊9面。
- ↑ 3.0 3.1 3.2 3.3 「弁護士脅迫容疑で派遣社員逮捕 2ちゃんねるに『殺す』」『共同通信』2014年5月8日。
- ↑ 4.0 4.1 4.2 4.3 「弁護士脅迫で男逮捕 2ちゃんに殺害予告容疑」『東京新聞』2014年5月8日付夕刊9面。
- ↑ 5.0 5.1 5.2 5.3 「インターネットの闇は深い」 匿名の「誹謗中傷」と戦う唐澤貴洋弁護士インタビュー 弁護士ドットコム 2015年5月25日
- ↑ 6.0 6.1 6.2 6.3 「ネット上 弁護士殺害予告 2ちゃんねる 書き込み容疑 20歳逮捕 東京」『読売新聞』2014年5月9日付朝刊29面。
- ↑ 7.0 7.1 7.2 7.3 7.4 「2ちゃんねるに殺害予告 弁護士脅迫、容疑で男逮捕」『産経新聞』2014年5月9日付朝刊27面。
- ↑ 8.0 8.1 8.2 恒心綜合法律事務所 弁護士 唐澤 貴洋 プロフィール 恒心綜合法律事務所
- ↑ 「新司法試験合格者」『福島民報』2009年9月11日号21面。
- ↑ 法律事務所クロス 唐澤 貴洋 弁護士(男性) 弁護士・法律事務所データベース
- ↑ 弁護士紹介 法律事務所クロス
- ↑ 12.0 12.1 「『2ちゃん』に殺害予告 脅迫容疑 少年3人を書類送検 東京」『読売新聞』2013年12月10日付朝刊33面。
- ↑ 13.0 13.1 G-Searchデータベースサービス「テレビ番組放送データ」
- ↑ プライバシーを換金する無料サービス、政府が作るウイルス--オンライン「負の問題」 CNET JAPAN 2015年4月16日
- ↑ 日本語ランサムウェア「犯人」インタビュー YOMIURI ONLINE 2014年12月19日
- ↑ 脆弱性ととるか、柔軟性ととるか、グーグルマップにしかけられたイタズラ Mocosuku Woman 2015年4月21日
- ↑ グーグルマップ書き換えで登場した「恒心教」とは 過去に何度も同様手口でハッキング繰り返してきた? J-CASTニュース 2015年4月21日
- ↑ 技術評論社サイトが改ざん被害 フィッシング原因でサーバOSを入れ替えられる ITmediaニュース 2014年12月8日
- ↑ 日本初の「身代金要求型ウイルス」作成? ホームページ改竄容疑の17歳逮捕 警視庁 産経ニュース 2015年7月1日
- ↑ 20.0 20.1 衝撃事件の核心 お手軽にサイバー攻撃?! 犯罪ツール売る「闇サイト」の拡大で少年も独学で… 産経ニュース 2015年7月25日
- ↑ 出版社サイト乗っ取り容疑、17歳少年を逮捕 警視庁 朝日新聞 2015年7月1日