支那

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支那(しな/中国語ピンイン:Zhina)は、中国を指す呼称の一つ。現在はしばしば侮蔑的なニュアンスがあるが、本来は侮蔑語ではなかった。

語源[編集]

」に由来する。サンスクリット語で中国を指す言葉として「チーナ」が用いられ、それが中国語に音訳され「支那」となった。

概要[編集]

中国では王朝が交替するごとに国号を変えるのが慣例であった。「支那」は「中国」、「中華」などとともに時の国号によらず漢民族の地を指す語の一つであり、20世紀初頭までは自称としても用いられた。辛亥革命で共和制が樹立されてからは、「中国」の呼称が一般化し、「支那」の呼称は通常用いられなくなった。

「支那」が侮蔑語だとされている理由[編集]

日本では戦前まで新聞などのメディアを含め「支那」呼ぶのが一般的であった。現在「日本と中国」の意味で「日中」というところは「日支」という語を使用していた。しかし、中国側からは「中国」の呼称がが一般的になり、日本にもそう呼ぶようにという要求があった。それにもかかわらず、「中華民国」をしばしば「支那共和国」に言い換え、日本語における正式名称のように使われた。とくに日中戦争の時期は、中国は敵国で、「支那」という語と中国に対する侮蔑的・敵対的言動がしばしばセットで使われていた。日本が中国を侵略した歴史によって「支那」という語は侮蔑的なニュアンスを含む(あるいは、日本の植民地主義を象徴する、また過去のつらい歴史を思い出させる)語に成り下がり、現在中国を指して支那と呼ぶ行為は、中国人を不快に感じさせることであり、タブーとされている。また、蒋介石は対日戦の最中の対日言論集のなかで「彼ら(日本人)は中国を支那と呼んでいる。この支那とはどういう意味であろうか。これは死にかかった人間の意である」と述べており、日本人に中国を「支那」と呼ばれることを嫌っていた。これは「支那」が中国語の「死拿」という単語と発音が似ていたためだと考えられる。

戦後は右翼嫌中派がことさらに「支那」という語を好んで用いる傾向があり、朝鮮人の蔑称である「チョン」と合わせた「シナチョン」も左翼的な人に対する蔑称として使われることがある。これによって「支那」の侮蔑的ニュアンスを助長しているともみられる。「支那」を好んで使う人の中には、同じく「秦」を語源とする英語の「チャイナ」やイタリア語の「チーナ」、フランス語の「シーヌ」などは非難の対象とならないのに日本語の「支那」がいけないというのは納得いかないということを口実にすることが少なくない。一方、天皇制廃止論者の小谷野敦は著書『天皇制批判の常識』で同様の理由から「シナ」を用いているが、悪意はなくむしろ中国を高く評価している。

一方、「支那」という呼称が侮蔑的で中国の人が不快を感じさせるというのは迷信だという説もある[1]。現在も中国に「支那」名の付く企業も少なくない。しかしながら、中国のポータルサイト運営会社新浪(シナ)は社名が日本語の「支那」と同じ発音であることに対し批判や苦情が寄せられている事実もあり、迷信説が必ずしも正しいとはいえない。韓国で「朝鮮(チョソン)」という呼称は悪くはないが、日本の植民地支配の影響から「チョーセン」という発音に対してはトラウマを持っていることと同じように、中国でも日本語の「シナ」という発音に対して歴史的トラウマを感じさせるおそれがないとはいえない。

また、「支那」が古い呼称だからそれを用いることは卑しめに当たるという見方もある。これに関して例をあげれば、古代日本の呼び名であった「倭」もそうである。朝鮮語の「ウェノム(倭奴)」や、日本人の嫌国的な立場の人が「倭」を使うことがある。

「支那」使用自粛に対する批判的な見方[編集]

「支那」という語が最初から差別用語であったというわけでないことや、現在でも「東シナ海」、「南シナ海」など公式の名称として使われ、またラーメンを「支那そば」と称するラーメン店も少なくないという現状の中で、「支那」の使用に対する過剰な反応は考え物であるという見方もある。

「中国」や「中華」という語は古くから中国人が自国を誇って用いてきた呼称である。「中国」という呼称を使用するのは主に日本、朝鮮半島、ベトナムに限られ、英語の「チャイナ」など西洋の言語をはじめ、東南アジアなどでもそれらに類似した呼称が用いられるにもかかわらず、日本語で「支那」と呼称すると非難の対象となり、「世界の中心」をも意味しうる「中国」を使用しなければならないということこそが差別という意見もある。

戦後、中華民国政府からの要望により「支那」の使用を自粛したにもかかわらず、しばらくの間メディアにおいても中華人民共和国に対して侮蔑的ニュアンスを含む「中共」という語を使用していたことから、差別語の排除という観点では矛盾しているともいえる。

また、「支那」は本来尊称であるという説もある。「支那」の語源は「秦」のほか、異説としてサンスクリット語で「知恵のある」という意味の語から来ているという説もあり、古代インド人が中国に対し敬意を持って呼んだ呼称ではないかとも考えられる。この場合だと、イギリスのことを「英(ひい)でた国」とも読み取れる「英国」と呼ぶときと似たような感覚であろう。次に、仏典の漢訳で用いてきた語であるため、雅語的に用いられてきたという見方もある。「支那」を好んで使うことで知られる石原慎太郎も「シナ」は尊称であるという見方を示している。

戦前は中国に対して「暴支膺懲」というスローガンを用いて差別したのと同様に、アメリカ、イギリスに対しても鬼畜米英をスローガンに敵対姿勢を取り、さらに「米」「英」にけものへんをつけて使用したこともあった。そのことをあげて、「支那」を忌避していながら、アメリカ、イギリスのことを「米(国)」「英(国)」と漢字で表現するのは忌避しないというのはおかしいという論理もありうる。

現在の使用状況[編集]

現在は日本に限らず、漢字圏全体で多かれ少なかれ否定的情緒を込める際に使われる傾向が見られる。

日本[編集]

国家を指してではなく地理的意味合いでは「東シナ海」、「南シナ海」、「インドシナ半島」、「シナ・チベット語族」など、依然として「シナ」の呼称が使用されている。日本海同様、呼称をめぐる議論も一部あり、「東中国海」などに改めるべきだと主張する者もいる。戦前は「東支那海」などと「支那」が漢字表記されたが、戦後は「東シナ海」などと「シナ」をカタカナ表記するのが正式名称となっている。この理由については、侮蔑的意味合いを払拭するため、「支那」の「那」が当用漢字、のちの常用漢字(2010年には追加された)でないためなどが考えられる。

戦前生まれの年配者の中には、当時多く用いられた「支那」の呼称になじんでいて、現在でも中国を「支那」と呼ぶ人も少なくない。

懐かしさをかもし出す目的で、「支那」を使う場合もある(例:「支那そばや」)。

中国大陸[編集]

中華民国建国以来「中国」の呼称が一般化するにつれ「支那」は次第に使用されなくなる傾向にある。特に戦後は「支那」という語が日本による侵略を連想させるとして、その傾向が強い。インドシナ半島は近年まで「印度支那半島」と呼んでいたが「中南半島」と呼ぶようになるなど、言い換えも行われている。

台湾[編集]

台湾では独立派が中国の一部であることを拒絶するということを主張する際、中国大陸をさして「支那」と呼ぶことがしばしばある。「支那」は日本による中国侵略を象徴する言葉でもあるため、台湾においても日本人が不用意に「支那」を用いるのは避けたほうが無難。

香港[編集]

英語の「China」の影響もあってか、香港では「支那」という語が大陸と比較して多く使われる。「日式拉麺」と呼ばれる日本風のラーメンの店で「支那そば」、「支那麺」という表記も見られる。しかしながら、韓国のK-POPの曲『カンナムスタイル』の替え歌で『紅軍 - 核突支那Style』(「核突」は「気持ち悪い」の意)と題し、共産中国を批判した内容のパロディーソングが作られたこともあり、「支那」を侮蔑的意味合いを込めて使用される例が全くないとは言えない。

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  1. 「支那」呼称について

関連項目[編集]