劇中劇
劇中劇(げきちゅうげき)とは、 劇の中に挿入された劇。物語や小説では作中作と称する。劇の中でさらに別の劇が展開する「入れ子構造」によって、ある種の演出効果を生むために良く使われる技法。
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劇中劇の構造[編集]
劇中劇の作例としては、近代演劇の父とも言われるシェイクスピアの作品のうち『真夏の夜の夢』『恋の骨折り損』『ハムレット』などがあげられる。たとえば『真夏の夜の夢』では6人の職工が公爵の結婚式の余興で『若きピラマスとその恋人シスビーの冗漫にして簡潔な一場、悲劇的滑稽劇』なる芝居を練習して演じている。
作中作になると、作例は古くまで遡る。インドの古代叙事詩『マハーバーラタ』『ラーマヤナ』では登場人物たちがまったく別の物語を語るエピソードが頻出し、物語のはっきりとした入れ子構造が現れている。また『千一夜物語(アラビアンナイト)』もシェヘラザード姫が『シンドバッドの冒険』や『アリババと40人の盗賊』などの物語を語る作中作の典型である。チョーサーの『カンタベリー物語』では巡礼宿に同宿した人間たちが順番に物語を語る、という体裁をとっており物語の入れ子構造が見られる。こうした構造で外側の物語を「枠物語」と呼ぶことがある。
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』における「大審問官」なども作中作の例として有名である。ロシアを舞台とするこの物語の中で、登場人物の一人が「キリストとスペインの異端審問官が対決する話」を語っている。しかし、作中作は定義次第で範囲が大きく変化する。あるフィクションの中で、登場人物が起承転結のある噂話をしたという程度でも作中作と認めると、広範な範囲の文芸作品が該当してしまう。
従って、上記の「入れ子構造」がはっきりしたものを作中作とするのが無難であると考えられる。すなわち、演劇の中の演劇、TV番組の中のTV番組、映画の中の映画、小説の中の小説など、枠物語と作中作のジャンル形式が一致しているものに限るのである。こうした入れ子構造は、読者が持っている物語への距離感にゆさぶりをかけて、フィクションをフィクションとして意識させるための技法と考えられている。これについてはメタフィクションの項目も参照されたい。
映画やミュージカルでは「バックステージ(裏舞台)もの」という分野があり、ミュージシャンや俳優などの舞台裏が描かれるのだが、俳優や監督が主要人物の場合はほぼ必然的に劇中劇が出てくることになる。こうした例としてはミュージカルの『雨に唄えば』『コーラスライン』やミュージカル・コメディの『プロデューサーズ』(メル・ブルックス)、フランソワ・トリュフォー監督の映画『アメリカの夜』などがあげられる。
また、物語の終わらせ方の技法として、「それまでの出来事が実は登場人物らにより演じられていた演劇であることが物語の終盤になってから判明する」というものがある。劇オチ(演劇オチ、劇中劇オチ)と呼ばれ、これも劇中劇形式と考えられる。(類似する技法に夢オチがある。)
物語の「入れ子構造」が多層化されることもある。3層なら劇中劇中劇/作中作中作であるが、もっと深い構造になる場合もある。『千一夜物語』はシェヘラザード姫が自分を殺そうとしているシャーリアール王に様々な物語を語って聞かせる枠物語であるが、シェヘラザード姫の物語の中の登場人物も命乞いに物語を語り始め、その中の物語の登場人物も命乞いに物語を語り始めるといった具合に作中作が多い箇所で7層ほどに多層化されている。また、井上ひさし『珍訳聖書』では劇オチを連鎖させて5層ほどに劇中劇を多層化している。
現代日本での、サブカルチャーと呼ばれる諸分野(漫画、アニメ、ゲーム、ライトノベル、TVドラマ、映画)はメディアミックスが進んだ結果、ジャンル間の壁が低い。そのために、漫画の中のアニメ作品だとか、ライトノベルの中の漫画だとかが詳細に描かれると、それを「劇中劇」とみなす読者/視聴者もまた多い。そして、そうした「漫画中アニメ」、「ノベル中漫画」、「アニメ中アニメ」などを独立した作品として実際に作り出してしまうことも盛んに行われている(スピンオフ)。これには、カート・ヴォネガットが複数の自作品の中で登場させた架空のB級SF作家キルゴア・トラウトの架空作品『貝殻の上のヴィーナス』を一冊丸ごと創作して出版したフィリップ・ホセ・ファーマーなどの前例がある。
劇中劇の例[編集]
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台詞劇の中の台詞劇[編集]
ミュージカルの中のミュージカル[編集]
物語の中の物語(小説の中の小説)[編集]
- 『千一夜物語』
- 『シンドバッドの冒険』『アリババと40人の盗賊』『アラジンと魔法のランプ』他多数-[シェヘラザード姫によって膨大な物語が語られます]
- 『冬の夜ひとりの旅人が』イタロ・カルビーノ作
- 『冬の夜ひとりの旅人が』『マルボルグの住居の外で』他8編-[10編の完結しない小説をめぐるメタ・フィクション小説]
映画の中の映画[編集]
- 『アメリカの夜』フランソワ・トリュフォー監督
- 『パメラを紹介します』
TVドラマの中のTVドラマ[編集]
アニメの中のアニメ[編集]
ゲームの中のゲーム[編集]
ゲームの中のゲームについてはミニゲームに関連する記述があります。
- 『moon』
- 『FAKE MOON』
漫画の中の漫画[編集]
- 『サルでも描けるまんが教室』相原コージ、竹熊健太郎
- 『とんち番長』-[ギャグ漫画で漫画批評を行ったとされる作品]
ジャンルをまたがった劇中劇/作中作の例[編集]
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台詞劇[編集]
TVドラマ[編集]
アニメ[編集]
- 『カードキャプターさくら 封印されたカード』
- 『悲しい恋』(台詞劇)
- 『蒼穹のファフナー』
- 『機動サムライ ゴウバイン』(漫画)
ゲーム[編集]
- 『ビューティフル ジョー』
- 『キャプテンブルー』(映画)
- 『逆転裁判』シリーズ
- 『大江戸戦士トノサマン』シリーズ(特撮番組)
- 『こみっくパーティー』
- 『カードマスターピーチ』(アニメ)
漫画[編集]
- 『ガラスの仮面』
- 『紅天女』ほか多数(台詞劇)(※)…[『紅天女』は新作能としてスピンオフ。]
- 『のだめカンタービレ』
- 『プリごろ太』(アニメ)
- 『ライジング!』
- 『レディ・アンをさがして』など(ミュージカル) (※)…[『レディ・アンをさがして』はOSK日本歌劇団の演目となった]
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- 劇中劇ヒーロー大百科(ウェブフー)
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