ジーンズ

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ジーンズ

ジーンズは、ジーン生地、つまりデニム生地のパンツズボン)のことであるが、デニム以外にもサテンコーデュロイ製のジーンズも存在する。

呼称[編集]

かつて日本では、Gパンという呼び名が一般的であった。これはG.I.(アメリカ軍軍人の俗称)が履いていたパンツでGパンとなったという説、ジーンズを日本に紹介した人物が、ジーン (jean) のパンツの意味で「Jパン」と名づけようとしたが、元の発音に近い「Gパン」を代用したという説、「ジーン生地のパンツ」を略して「ジーパン」となり、「ジー」に「G」を当てて「Gパン」となった説等がある。

デニム生地製の上着はデニム・ジャケットあるいはジーン・ジャケット(jean jacket)であるが、日本ではジーン・ジャケットと言う呼称は一般的ではない、1950年代から1970年代半ばまでのデニム・ジャケット又はデニム・ジャンパーを経て、1980年代に入ると完全にジージャン(ジーンズ・ジャンパーの略)の呼称が定着した。

歴史[編集]

ジーンズ

1870年ゴールドラッシュに湧くアメリカで、仕立て屋のヤコブ・デービスは、既に設立されていたリーバイス社のリーバイ・ストラウスから仕入れたキャンバス生地を元に銅リベットでポケットの両端を補強したワークパンツを発売、鉱夫達に好評を博した。

類似品が出回ることを危惧したヤコブは、このリベット補強済みパンツの特許を取得しようとしたが必要な資金が無く、権利を折半するという条件でリーバイ・ストラウス社に特許申請を依頼する。特許申請は1873年5月20日に受理され、このリベット補強済みパンツはリーバイ・ストラウス社製の製品として製造販売される。このパンツがジーンズの原型である。

その後、素材はキャンバス生地からインディゴ染めのデニム生地へと変遷し、縫製技術の進化等により1940年代には現在のジーンズとほぼ同様のデザインとなった。1953年マーロン・ブランド主演の映画『乱暴者』でLevi's 501XXを、1955年の映画『理由なき反抗』でジェームズ・ディーンLee RIDERS 101を着用する。これを機にジーンズはファッションとして普及していったが、当時アメリカでは反抗的な若者の象徴と見なされたため、ジーンズの着用を禁止する学校が多かった。

1956年、日本で初めてジーンズを輸入販売したのは港区北青山一丁目に在った栄光商事(後のEIKO)である(その後は米軍やその家族の放出品であるセコハンジーンズを扱う店がアメ横に登場)ロカビリー歌手やGS(グループサウンズ)の人気グループ御用達の店として、また長きに渡って一般客にも愛されたが現在は多様な店舗展開により北青山一丁目の本店は閉鎖されている。

日本では1945年の敗戦後にアメリカ軍 (GHQ) が放出した古着の中の大量のジーンズ、そして一気に流入したアメリカの映画や音楽等が普及のきっかけとなった。日本人ではじめてジーンズを着用した人物は白洲次郎である。国産のジーンズ生産の発祥としては、1958年に岡山県倉敷市児島のマルオ被服 (現:ビッグジョン) が受託生産を開始。

1960年にマルオ被服 (現:ビッグジョン) が日本で最初のジーンズの生産発売を開始。同年に千葉県の高畑縫製がジーンズのEIGHT-Gを生産販売した。1961年に東京の常見米八商店(現:エドウィン)が初めての国産ジーンズを販売したという説もあるが、当時アメリカ中古ジーンズの販売を行っていた常見米八商店は息子をジーンズ生産の技術を学ぶために縫製会社の取引先であったマルオ被服 (現:ビッグジョン) に弟子入りさせていたので、エドウィンが初の国産ジーンズを生産販売したという説はあいまいである。

日本の国産ジーンズの起源と確実に呼べるのは、国産ジーンズの歴史上かかせない全国での初ヒットモデル「キャントン」である。「キャントン」は、1965年にマルオ被服(現:ビッグジョン)が、アメリカの中古ジーンズを販売していた大石貿易と取引のあったキャントンミルズ社のデニム生地を買い国内で生産発表したジーンズの名である。当時の日本人には肌さわりが悪くゴワつくジーンズは受けいられなかったため、マルオ被服 (現:ビッグジョン) は「ワンオッシュ」という現在のジーンズ生産に重要となる技術を世界で初めて採用し、現在の日本製ジーンズだけでなく世界のジーンズ技術の礎となった。現在の国産ジーンズ生産量1位は、マルオ被服 (現:ビッグジョン) が所在する岡山県である。ここ最近ではデビッド・ベッカムがはいている事で世界的に人気となった「エヴィスジーンズ」(大阪発) も岡山で生産されている。

1970年代以降は男性のみならず、若い女性もジーンズをはくようになるが1977年大阪大学でアメリカ人講師がジーンズを履いた女学生を教室から退室させたことから「阪大ジーパン論争」が起こる。この論争は「ジーパンは作業着で、女性には似つかわしくない」という講師と「ジーパンはもはやファッションの一部」という女学生の主張が真っ向から対立し、最終的に講師が阪大を去るという結果となった。

デニム[編集]

ジーンズ

直接の語源はフランスのニーム製のサージ、セルジュ(サージ)・ドゥ・ニームであるとされる。またこのセルジュ・ドゥ・ニームと呼ばれる生地はイタリアのジェノヴァから各国に輸出されたことから「ジェノヴァ」と呼ばれることもあった。ジェノヴァは中世ラテン語で Genua、当時のフランス語では Gêne であり、英語の jean の語源となっている。

インディゴ染料[編集]

インディゴ染めのデニム生地が使用される理由として蛇や虫除けの効用を挙げる説がある。しかし微量ながらピレスロイドが含まれている天然には、ある程度の除虫効果があるが、不純物の無い純粋インディゴ(合成インディゴ)にはそのような効果はない。

またインディゴ染料にまつわる俗説として「昔のジーンズには天然インディゴが使用されていた」というものがある。事実は、1900年代のはじめ頃よりインディゴ染料は化学合成されたものがほとんどであり、ヴィンテージ・ジーンズはすべてこの合成インディゴで染色されていた。この説は1990年初頭までは雑誌や古着マニア等の間でまことしやかに流布されていた。逆に現在では高価ながらも少量生産のメリットを生かした天然インディゴ染めのジーンズがいくつかのメーカーから製造販売されている。

2008年9月14日に日本テレビで放送された『世界の果てまでイッテQ!』の企画で、「ジーンズをはいてるとガラガラヘビに噛まれないって本当なの?」というテーマで東貴博福井未菜アメリカ合衆国テキサス州に赴き、東が天然インディゴ染めのジーンズを履いてガラガラヘビ10匹がいるセットを通過すると、当初は襲ってこなかったが、結局飛びつかれた。また、2009年5月23日放送の所さんの目がテン!では合成インディゴ染めのジーンズだと噛まれたが、天然インディゴ染めだと噛まれないとの結果が出ていた。

生地の厚み[編集]

オンス (OZ) 」という単位で表され、ジーンズ1本の重さではなく1平方ヤードの生地の重さを表したもの。1オンス = 28.3グラム弱。1平方ヤード = 0.84平方メートル

一般的には14オンスほどの厚みが多く、しなやかな履き心地がある。厚いほど生地は硬くゴワゴワし、馴染むまで時間がかかる。その硬さは洗濯して天日干しすると、壁に立てかけられるほどである。まさに丈夫で破れにくいのだが、夏場は非常に暑い。過去、1980年代にリーバイス ジャパンが15オンスデニムのモデルを販売していた。一方作業着ではなく、ファッションアイテムとしてのジーンズでは12.5オンス、11オンスなどがある。

洗濯[編集]

ジーンズ

色落ちや不格好な皺ができるのを嫌い、「洗濯しない」者もいる。洗濯しない衣服は、脚の皮脂が付着し、それを栄養にしてカビが発生するなど不衛生である。汗と脂によって生地そのものが傷み、強度が落ちることもある。生地の表面が洗濯機の内側で擦れて不必要な色落ちが起きないように裏返しにしてから、洗剤を使って洗濯機で洗うのが一般的である。

また、色落ちを防ぐために、洗濯石鹸や中性洗剤を使用する者もいる。洗剤の中には、蛍光剤漂白剤が入っている場合がある。ジーンズ専用の洗剤もある。なお、ジーンズの色落ちは洗濯よりもむしろアタリ(後述)によるものの方が大きい。日光に当たると色が抜けたり変色するので、洗濯と同じく裏返したり、陰干しする者もいる。

ダメージ加工[編集]

わざとやすりナイフで傷を付ける、何度も洗濯機で洗う、漂白剤で浸す、接ぎ当てをする、刺繍を入れる、弾痕状の穴を開ける(ショットガン)など様々な方法でジーンズにわざとダメージを与え、個性的なジーンズを作る者もいる。この作業をダメージ加工という。最初から自然な色あせを作ったり(ユーズド加工)、破いたり(クラッシュ)するなどダメージ加工を施す店ないしメーカーもある。ダメージ加工はデニムの生地を傷めるため、通常のジーンズよりも耐久性が落ちる。

手作業による元祖は、ビッグジョンである。

ケミカルウォッシュ[編集]

ケミカルウォッシュ(ケミカルブリーチ)は、洗剤(漂白剤)と砂利大の樹脂塊などを共に洗濯機で攪拌する等したダメージ加工の一種で、日本では1980年代後半に流行した。

一般的なファッション・シーンにおける流行が一巡し終焉を迎えると、ケミカルウォッシュの特徴的な質感が「サシの入った牛肉」のそれに酷似していることから「霜降りジーンズ」などと呼ばれ、時代遅れのアイテムとして侮蔑的に扱われるようになるが、一般の流行を遅れて取り入れる「アキバ系」と呼ばれるオタク系ファッションにおいては90年代に入る頃から普及が始まり、一般的なアパレル業界では今どき入手が困難とされる21世紀の今なお、彼らの間では定番アイテムとして君臨している。

ジーンズブランド一覧[編集]

世界三大ジーンズブランド[編集]

各国のジーンズブランド[編集]

日本三大ジーンズブランド[編集]

その他の日本産ジーンズブランド[編集]

シルエット・スタイル[編集]

  • 5ポケットパンツ
    • 前部に左右のポケットとコインポケット、そして臀部の左右のパッチポケットの計五つのポケットを備えたパンツのこと。いわゆるジーンズの基本デザインであるが、デニム以外の多種多様な素材もよく用いられる。
  • ストレート
  • スリム:膝から裾にかけてストレートよりも細くなるもの。
  • フレア
  • バギー
  • ローライズ
  • ヒップハング
  • スキニー
    • スキニーとは「皮膚のような」という意味を表しており、脚の筒の形が、全体的に肌にぴったり張り付くように細いものを指す。従来のスリムジーンズと比較して、より細く、よりタイトにというイメージの言葉だが、デザインそのものにあまり違いはない。
    • 伸縮性のあるポリウレタンポリエステル等を含む混紡のデニムを使用することが多く、これが従来のスリムジーンズとは違った肌に張り付いたような感触とシルエットをもたらす。近年はコーデュロイサテン製の物も出てきた。
    • 1990年代からヘルムート・ラングラフシモンズといったデザイナーズブランドでタイトなラインを描くジーンズはあったが、2000年代ディオール・オムの裾を溜めるスキニージーンズの流行をきっかけにブームが始まった。その後チープマンデーエイプリル77ドクターデニムジストといったスキニーを代表商品として人気を伸ばすブランドも現れ、ユニクロなどの安価なスキニーも浸透した。
  • ディナー(ディナージーンズ)
  • ブッシュパンツ
    • ブッシュ(やぶ、茂み)で穿くことを想定したアウトドア用途のパンツ。70年代以降からよく見られる。前部の左右のポケットと両膝にフタの付いたパッチポケット、臀部にフタの付いた左右のパッチポケットの計六つのポケットを備えている。主にデニムやコーデュロイが用いられる。ポケット補強用のリベットは使用されない。

用語[編集]

ステッチ
縫製糸または、縫製のこと。ジーンズに用いられる縫製は、バータック(後述)を除くとシングルステッチとチェーンステッチに大別される。黄色またはオレンジ色の糸が大半だが、カラージーンズなどではジーンズの色に合わせたステッチも存在し、そちらは糸の色が目立ちにくい。
パッチ
ウエストバンドの後ろにつく革や紙製のラベルのこと。主にブランド名やサイズなどが表記されている。復刻版でない古着ではそのデザインや字体からおおよその製造年代を判別することができるが、紙パッチの場合消失したりして困難なこともある。
コインポケット(ウォッチポケット)
ジーンズ前面右手ポケット上部に付いている、デニムで出来た小さなポケットのこと。もともとは懐中時計を収納するためのウォッチポケットであり、背広ズボン前面右ポケット内にあるウォッチポケットと同じ目的で付けられているのだが、腕時計の普及に伴い使用されなくなっていった。現在の名前のとおり硬貨を入れるために流用することも出来るが、もともと懐中時計1個をぴったり収めるだけの用途であったためポケットにマチが付けられておらず、実際に硬貨を収納するにはスペースがほとんどないに等しい。よって一種の装飾部位として仕様だけが引き継がれている。
リベット
ポケットの端など力のかかる部分を補強するために打ち込まれた鋲のこと。ジーンズ誕生の要。金属製で(コパーもしくはカパー。赤銅色)が素材として用いられる。ほかには(黒褐色)やアルミニッケル(銀色)、真鍮などの合金が生地の色などに応じて使われることもある。また形状もブランドによって異なる。現在はカンヌキと呼ばれるバータック(ジグザグのステッチ)で代用される場合もあり、リベットが無いジーンズも存在する。1937 - 1966年のリーバイスジーンズでは、鞍を傷つけないためにバックポケットの補強部分については生地の内側から打たれた「隠しリベット」が用いられた。1940年代までには股部分にもリベットが施されていた(クロッチリベット)。
スレーキ
フロントポケットの袋布に使用される素材名。堅牢な綿素材が一般的。
右綾・左綾
デニムの綾目の方向のこと。一般的には右綾が用いられる。左綾のジーンズは Lee が有名。それぞれ色落ちや、収縮率の大きいジーンズでは脚部の捩れなどに違いが出る。
シンチバックル(バックシンチ)
後ろの腰部分に付けられたウエストのサイズを調節するバンド(アジャスターストラップ)。ワークウェアとしての位置付けが強かったジーンズ黎明期ではサスペンダーと共にもっぱら取り入れられていたが、ファッションウェアとして傾向するにしたがってベルトによってウエスト調節をするのが主流となり、リーバイス501では第二次世界大戦中に発売したモデルを契機に仕様から外された。ただし現在でも仕様の一つとして、シンチバックルが取り付けられたジーンズが様々なメーカーから販売されている。
タブ
ヒップポケットの回りなどに縫い付けられたブランドを表す織りネーム。リーバイス・ジーンズでは右ヒップポケット左上に赤、オレンジ、白などのタブが付く。リーのタブは右ヒップポケット口ステッチ内に、ラングラーでは主にバックヨークのダブルステッチ内に縫い付けられている。なお混同され易いが、タグとはジーンズ内部に付けられる品質表示や注意書きのラベル(インサイドネーム)、または外部に付けられるハングタグなどを指す。
大戦モデル
第二次世界大戦中のジーンズのこと。物質統制により簡素化されたディテールが特徴。
バックヨーク
腰の切り返し部分、すなわちウェストバンドとヒップの間の鈍角二等辺三角形の部分のこと。ジーンズ形成の上で重要な部分である。サドルバックとも呼ばれる。
セルビッジ
耳とも呼ばれ、生地の両端のこと。シャットル織機は織り幅が36インチ前後と狭く、ジーンズを縫製するために効率よく生地を裁断するとこのセルビッジが両足の外側に回されることになる。そしてジーンズが脇割り縫い仕様である場合このセルビッジが特徴的な色落ちをもたらす。
赤耳
赤いステッチが入っているデニムのセルビッジのこと。裾の裏側で確認できる。古いリーバイスジーンズの特徴の一つであったが、1990年代以降のオールドリーバイス復刻モデル(レプリカまたはリプロダクト)や、他メーカーでもヴィンテージ様に作られたジーンズでは現在もよく見られる。
脇割り縫い
縫製方法の一つ。ジーンズに限らず一般的なスラックスに用いられる。対義語はインターロック(合わせ縫いの後生地の端を割らずにかがり縫いする縫製)。
バータック
ジーンズの前フライ下股部分やヒップポケット両側上端、ベルトループの縫製などに用いられる棒状の補強縫製のこと。ステッチの形状が棒=バーのようであることからバータックと呼ばれ、日本ではカンヌキ(止め)などの呼び名も使われる。リーバイスジーンズは原型では股の部分やヒップポケットがリベット補強されており、1950‐1960年代にリベットの廃止に伴ってバータックに変わった。横一文字またはそれを平行に並べるのが基本だが、ヒップポケットなどに×印形のバータックを施すブランドもある。
ボタンフライ
フロント部がボタンになっていること。リーバイス501が代表的。防縮加工技術が開発される前は、ほとんど全てのパンツはボタンフライであった。
ジップフライ
フロント部がジッパーになっていること。
トップボタン
ウエスト部を留めるフロントボタンのこと。ジップフライのジーンズではボタンは1つしかないが、ボタンフライの場合は一番上に付くボタンとなるのでこう呼ばれる。表面にブランド名が刻印されるのが一般的。ラングラーはフラットな面のトップボタンを採用し、そこにロープ文字をイメージしたブランドロゴが刻印されている。これに対しリーバイスは表面が複雑なレリーフ状のデザインとなっており、裏側留部には生産工場番号が刻印される。
ヒップポケット
バックポケットとも言う。ヒップの部分に大抵左右一対となるよう設けられた大き目のポケット。五角形のものが多いが、Leeの楯形や、長方形、変則六角形、U字形のもの、また近年はフラップ付き(ダミーも含む)のものも見られる。リーバイスのアーキュエットステッチ(弓引き形)や、ラングラー、エドウインのW字ステッチ、LeeのレイジーS のようにブランドを表すステッチが施されることが多く、これは補強布を縫い付けるためのステッチが起源である。
ヴィンテージ
フランス語でワインの生産年のことである。特に豊作の年の極上ワインを「Vintage wine」と称することから、ジーンズの過去の名品を総称してヴィンテージジーンズと呼ぶことがある。年代や状態にもよるが、ヴィンテージジーンズは一部の愛好家の間で高値で取り引きされ、希少性の高い古い年代のデッドストックでは数百万円という値が付けられる事もある。
ダメージジーンズ
ファッション性を高めるために傷や汚れ、脱色といった加工を加えたジーンズ。
アタリ
ジーンズの腿、膝、ヒップ、裾など突出した部位の色落ちおよびその部分を指す言葉。デニム表面が色々なところに擦れて=当たって色落ちすることから。裾のアタリは纏りがシングルステッチだと縦じわ状に出るが、チェーンステッチでは斜めに出る。
ヒゲ
ジーンズの腿の付け根周辺に出る筋状の履きじわが、履き込む過程で擦れてできる色落ちのこと。形状が猫のヒゲに似ていることから。
蜂の巣
ひざ裏のしわによってできる、ひざ裏部分の色落ちのこと。裏ヒゲとも呼ばれる。
ディナージーンズ
1979年 - 1982年頃にニューヨークやフランスで流行った、主に女性用のディナーの際に着用してもおかしくないドレスアップされたジーンズの総称。高いウエストは締まりヒップラインを強調しサイステッチやバックポケットのステッチに凝っている。サスーンやカルバン・クライン等の製品が有名であった。
リジッド
防縮加工を施していない、未洗いの状態で出荷されたジーンズを主に指す。ノンウォッシュや生デニム等と称される事もある(特性等については下記のLevi's501を参照)。また防縮加工デニムであっても、生地に洗いがかけられておらず糊がついたままの生の状態を表す。
ストーンウォッシュ
ジーンズのユーズド加工の原点である洗い加工の手法。ジーンズを軽石と一緒に洗うことで、石とデニムの表面が擦れてジーンズ全体が中古感のある色落ちとなる。1970年代後半にエドウインが始めたのが最初。なお洗い(ウォッシュ)に関しては、概ね色の濃い方から リジッド - ワンウォッシュ(リンス) - ストーンウォッシュ - ケミカルウォッシュ - ブリーチ という順になる。洗い加工はブルージーンズに限らずブラックジーンズなどにも行われる。近年は部分的に色を落としたり、汚れのような染色を加えるユーズド加工もよく行われる。
後染め
製品染めとも言う。先染めに対する言葉で、布(生地)を織り上げてから染色すること。メーカーから発売されるカラージーンズは大抵、大元がホワイトジーンズでこれを後染めして作られる。ショップによってはブルージーンズをも後染めして販売している。なおブラックジーンズには、全面的に後染めされたリアルブラックと、ブルージーンズの縦糸を黒に変えたブラックデニムで作られるもの(先染め)の2種類がある。
フラッシャー
新品の販売時にジーンズの右ヒップポケットの辺りに取り付けられている、大きな紙製の一種のラベルのこと。正式にはバックポケットフラッシャーと言う。またフラッシャーとは別に、ベルトループから下げ札(ハングタグ)が吊るされたりウェストバンドに縫い付けられることもある。デッドストックにはこれらが残っているものが比較的多い。

特に有名なモデル[編集]

LEVI'S[編集]

501
リーバイ・ストラウス社の代表的な製品。1890年に自社製品へのロットナンバー(品番)付番制度を導入したのをきっかけに誕生。501 は当時の最高品質デニム生地であるXX(ダブルエックス=エクストラ・エクシード)デニムを使用する製品に与えられた品番である。現在、 501 は商標登録(ジーンズカテゴリー)がされており単なる品番ではなく商品名となっている(よって "501(R)"と表記されることが多い)。縫製技術の進化等により細部に変更を加えられながら現在まで製造販売が継続されている。なお日本では主に「ごーまるいち」と呼ばれるが、英語での呼称は「ファイヴ・オー・ワン」である。
特徴は前開きがボタンフライであること、使用しているデニム生地が防縮加工がされていないこと。このため洗うと数インチ(比率で言うと8%または10%)縮むことを考慮して購入するのが 501 を穿く上での常識である。この前時代的な特性をリーバイスは「シュリンク・トゥ・フィット」、つまり洗濯を繰り返すことで身体に馴染んで行くと説明している。このデニム生地はコーンミルズ01デニムと呼ばれ、一時期であるが腰部の紙パッチに 501-0117 (17は色コード。ブルーの 501 では他に13や15もある)などと印字された製品も流通した。しかし1980年代あたりからの多彩なバリエーション(洗い加工:同じ01デニムでも収縮率が小さい、異素材使用:例えばブラック・ホワイトはプリシュランクの06デニム、色コード51(白)‐60(黒))の展開等により、既に「シュリンク・トゥ・フィット」の特徴を備えるオリジナルリジッドの 501 は 501(R) という製品の1バリエーションに過ぎなくなっている。なお、レディスモデルはアメリカ製が 17501または26501、近年のものは W501 という型番になる。また、かつてはステューデントモデルの 701(ヒップポケットが縦長)や、廉価版のオレンジタブ 20502 が生産されたり、ロングレングスのものが 1501や2501と表記された時期もある。
かつては大部分をアメリカ、一部をイギリス、フランスで生産していたが、今ではメキシコ、フィリピン、ドミニカ共和国等に生産が移管されている(2004年1月にアメリカの自社工場は閉鎖)。また旧型501の復刻版等の仕様が特別な製品の中には、アメリカ(外注)や日本で生産されたものもある。
502
1954年 - 1970年代初頭にかけて 501 のジップフライ版の 501Z XX(1966年以降 502-0117)という製品が販売されていた。1954年当時には試作的意味で、まずボーイズ用の 503Z XX やユースモデルの 504Z XX(いずれも後年日本で復刻生産される)を先行販売してから 501Z XX を発売している。それでも、01デニム使用のままジップフライとしたため、デニム生地の縮みに伴いジッパー部が歪み、故障が頻発したという。なお、1990年代に復刻生産された日本製の 502 はプリシュランクデニムのためそのような問題は無いほか、初期のものは隠しリベット付きであることから形態は 501Z XX の復刻版であり、いずれとも異なるモデルである(後期復刻版では隠しリベットを無くして本来の 502 に近付いたが、パッチの型番表記の字体のみは原型と異なる)。なお 502 という型番は、1950年頃 501(R) のビッグサイズのものに付けられたのが最初である。また、ジップフライの 502 はアメリカでの生産停止後も、上記復刻版の登場までは香港などで少量生産されていた。
505
1967年に発売されたジップフライ型モデル。前述の 501(R) や 502 よりもやや細めのストレートジーンズ。前身は 551Z XX( Z は zipper :ジッパーの意)というロットナンバーで1961年、アメリカ東部向けに製造された。1990年代のジーンズブーム時にヴィンテージ物が非常に良く出回った。プロセス686と呼ばれる防縮加工が施された02デニムを使用。発売した頃は「シュリンク・トゥ・フィット」の謳い文句とは対照的に、ぴったりのサイズを買うよう求める文句がフラッシャーやタグに記載された。502 と異なり、素材やシルエットのみならず、ヒップポケットやバックヨークの形状・寸法も 501 とは別物である。特に1990年前後のものはバックヨークが狭くほとんど長方形に近い。517 や 510 など多くのジップフライモデルは 505 を基本としている。このロットナンバーは US505 と 505(俗称・極東505) の2種類が存在した。USバージョンはアメリカ製、USなしはフィリピン・香港・マカオ製である。同じサイズでもアメリカ製はテーパードシルエットでヒップポケットが大きめなのに対し、フィリピン製の方がパイプドステムで腿周りのシルエット、ヒップポケットともに細めだった。なお、アメリカ製には更にタイトな 506、逆にゆったり目の 550、オレンジタブの廉価版 20505、40505 や、ごく短い期間だが股上の短い 805 も存在した。501 と同様にレディスモデルもある。またボーイズ版は 305 となる。
510
1980年代に 505 から派生したテーパードストレートモデル。元々は 505 よりも腿周りをゆったりさせたコンフォートフィットがコンセプトであったが、高めのヒップポケット位置と相まってヒップが上がり足が長く見える「足長ジーンズ」として人気があった。英語での呼称はファイヴ・テン。レディスモデル、スリム版の 610、廉価版の 20510、ボーイズ版の 210 も存在した。レッドタブモデルはテキサス州エルパソ工場でのみの生産であった。
517
「サドルマン」あるいは「ブーツカット」と呼ばれる膝から下にかけ緩やかに広がるシルエットで、見た目の美しさが光るモデル。0217デニムを使用。ラングラーのジーンズと同様に折り目を入れて穿かれることも多い。1971年発売。505 と同様にオレンジタブの廉価版(正式型番 20517 及び 40517)が存在した。コーデュロイ素材(素材コード15)のものも多く出回った。かつては類似した型番で 507 というモデルが存在したが、こちらはフィリピン製のレッドタブ・ベルボトムジーンズであった。
569
リーバイスで一番太いシルエットが特徴、おもにHIPHOP系の人に履かれていたが近年のタイトシルエットブームですっかり影が薄くなってしまった悲劇のジーンズである。なお、アメリカには更に太いバギージーンズとして 570 というモデルも存在した。リーバイスのルーズフィットジーンズは、1980年代に発売された 509 辺りがその起源とみられる。
606
タイトスリム(スーパースリム)のジーンズ。1968年発売。一時期にはレッドタブのブルーとホワイトタブのブラック・ホワイトが生産され、ミュージシャンやアイビー派などの間で人気を博した。現在ではブラックとBIG「E」のオレンジタブ復刻バージョンがある。かつてはフィリピン製で更に細い「スーパータイト」の605というモデルも存在した。
646
膝から下の広がりが517よりも大きい「ベルボトム」と呼ばれるシルエット。1969年発売。オレンジタブでリベット・コインポケットは無い。またコーデュロイ素材などを除いて基本的にパッチ無し。それらの点以外、膝から上は 606 と共通で(但し後ろ両サイドのベルトループがかなりセンターに寄った製品もある)、裾のシルエットだけが正反対となる。ごく初期のものは、インサイドシームをロックではなく脇割り縫製していた。早くから日本製品も存在した。現在、ヴィンテージ・ラインに70646-0010として復刻されている。かつては裾の広がりが一層大きい 684(ビッグベル)や、逆に小さめで 517 との中間的なステューデントモデル 746 も生産された。他にリーバイスのベルボトムにはホワイトタブのカラージーンズ・609や、レッドタブの557というモデルもあった。

Lee[編集]

101
アメリカの3大ジーンズブランドの一つ、 Leeの製品。 Leeではジーンズのことを Riders (この場合は馬の乗り手の意味)と呼称する。 101 はかのジェームズ・ディーンが映画劇中および私生活で愛用した。ボタンフライとジップフライの2タイプが存在。Leeはジーンズにジッパーを導入した初めてのメーカーでもある。

Wrangler[編集]

11MW
1947年に発売。ハリウッドの西部劇スターの衣装をデザインしていたロデオ・ベンがデザインし、世界初のファッションデザイナーによるジーンズとされている。また防縮加工された初めてのジーンズでもある。Wranglerはそれまでウエスト・オーバーオールと呼ばれていたデニム製ワークパンツ(すなわちジーンズ)をジーンズと呼んで販売した初めてのブランドである。
13MW
11MW の後継モデル。全米プロ・ロデオ協会公認ジーンズである。ブロークンデニムを使用。このブロークン(ツイル)デニムは綾織の綾目を崩した織物で、表面がソフトで手触りも柔らかく洗ってもよじれることがない。ロデオ乗りの間ではスラックスのようにアイロンでセンタークリース(折り目)を入れて穿かれる。そのため古着として輸入された 13MW にはセンタークリースが白い線状に色落ちしている物がよく見受けられる。

EDWIN[編集]

400番台
インターナショナルベーシックシリーズのジーンズ。エドウイン社のストレート・スリムジーンズの定番となっている。402 - 405 がストレート、406 - 408 がスリムである。ストレート・スリムともに末尾の数字が大きくなるほど太目のモデルとなる。
503
現在のエドウインにおける定番シリーズ。洗い・防縮加工のみの製品から、甚だしい色落ち・傷つけ加工を施した製品まで、多彩なシリーズ展開を誇る。
505
赤耳付きヴィンテージジーンズが流行した1990年代なかばに一世を風靡した。
1400番台
1980年代のインターナショナルベーシックシリーズ。一世を風靡したブリーチのYT1410(ロンドンスリム)を筆頭にストレート、ルーズスリムまで、現在と同様に多彩なラインナップを誇った。

関連項目[編集]

テンプレート:被服