鷹村守

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鷹村 守(たかむら まもる)は、森川ジョージの漫画作品およびそれを原作とするアニメ『はじめの一歩』に登場する架空の人物。アニメ版での声優は小山力也。ドラマCD版では梁田清之

キャラクター概要[編集]

鴨川ボクシングジム所属のプロボクサー。現WBC世界ミドル級チャンピオン。同ジュニアミドル級も制し(1度防衛後、ミドル級王座挑戦のため返上)2冠制覇を達成、戦績22戦22勝22KO無敗のパーフェクトレコードを更新中。狙うは6階級制覇。生年月日は1969年7月7日。血液型はO型。身長185cm。リーチは189cm。普段の体重は90kgを超えている。トサカのように前髪を上げたリーゼントがトレードマークで就寝時でもこの髪型のまま。野生の熊と戦った際に、胸に三本の傷が付いた。

主人公・幕之内一歩をボクシングに引き込んだ張本人であり、作中色々な騒動を起こす狂言回しの役割を与えられている副主人公的キャラクターでもある。作者はパウンド・フォー・パウンドでは鷹村が作中最強ボクサーであると語っている。

性格・人物[編集]

性格は豪快かつ粗野にして品行下劣。常に自分が一番に注目されていないと気がすまない性分であり、自分を「オレ様」と呼び、他人に負けることなど一片たりとも考えていない唯我独尊な自信家。その無敵の腕っぷしと傍若無人ぶりから一歩達からは「人間じゃない」とまで言われているが、ボクシングにはストイックなほど真剣に取り組んでおり、根は男気溢れる情に厚い心の持ち主。一歩たちにボクシングの厳しさ・素晴らしさを教え「強さ」とは何かを体現する良き兄貴分である。

「理不尽大王」と称される無類のイタズラ好きで、悪知恵に関しては頭の回転が異常に早い。ガキ大将がそのまま大きくなったような人物で、青木を筆頭に鴨川ジムやその関係者が受けた被害の数々は枚挙に暇が無く、たとえ反抗されても力ずくで押さえ込んでしまう。デリカシーはまるで無く、人が一番気にしていることも平気で口撃し、たまに周囲に配慮した言動をしたりやり過ぎを反省しても普段の行いの悪さから裏目にでてしまう。下ネタが大好きな超がつくスケベで、無茶苦茶な女遊びをしており写真週刊誌に報じられたことも。オカルトが絡んでくると、表情が楳図かずお漫画の如く豹変する。

私生活自体は質素。アパート「太田荘」で独り住まいをしており、世界王者になってからも住居は替えていない。部屋は散らかっており、Hな雑誌が散見される。二階級制覇の世界王者であり、圧倒的な観客動員数を誇り、テレビ番組・CM・雑誌出演なども多く、高額のギャラを貰っているハズなのだが、現在のところその金の使い道は謎であり、唯一ファイトマネーを全部使って作ったとされているのがホーク戦前に頼んでおいた世界王者奪取記念の銅像である(後述)。世界チャンプとなってからは試合後に一人旅に出るのを趣味にしている。

傲岸不遜を地でいく性格で誰に対しても対等な物言いと態度を取るが、ダジャレの師匠と(一方的に)仰ぐ板垣父に対してだけは唯一敬語を使い、挨拶にまで伺うほど心酔している。

仲間との絆[編集]

鴨川ボクシングジム会長・鴨川源二には普段は「じじぃ」と呼んで軽口を叩いたり、悪ふざけの末に鴨川に直接被害を与えたりして、怒鳴りつけられてばかりいるが、ボクシングに出会わせてくれたことに大恩を感じており、自らをより洗練し鍛え上げたことには全幅の信頼を寄せている。それゆえに試合の度に壮絶な減量を強いられるがやり抜き、減量中に苛立つことはあっても会長や仲間に対して愚痴や弱音を言うことはない。現役時代の鴨川が世界タイトルに手が届かなかったことを思い、獲ったばかりの世界ベルトを「ベルトに興味はない」とすぐに渡し、さらにはJ・ミドルからヘビーまでの6階級を制覇してそのチャンピオンベルトを全て鴨川にプレゼントしたいと考えているようである。傷害事件の末に警察に没収されてしまった鴨川の杖の代わりを誰にも言わずにこっそり購入してきたり、心の中では高齢の鴨川を何かと気遣っている。ただし鴨川もそんな鷹村を本人のいない所では「孝行息子」と発言したり、鷹村と一歩がいることでジム入門者が飛躍的に増えたこともあり、ある程度の暴走には目を瞑って好きなようにさせている。

また一歩・青木・木村がボクシングを始めたキッカケが鷹村との出会いであり、彼らがボクシングをする上で大きな原動力となっているのが「鷹村への憧れ」である。毎回の如く青木たちに理不尽な要求を突きつけても好かれ続けるのは実績もさることながら、無類の強さと時折のぞかせる男らしい気遣いや優しさゆえ。

一歩とのスパーリング後に鴨川ジムを離れた宮田一郎のことは今でも気にかけている。純粋に一歩と宮田の決着を誰よりも心待ちにしていた一人でもあり、高いレベルでの勝負を見たいという己の願望から、本来敵方である宮田のカウンターを「質が軽い」とあえて指摘して的確なアドバイスを施した。宮田もまた鷹村の眼の異常を疑い一歩を動かしてまで心配するあたり、兄弟弟子として心の奥では深く繋がっている。

家族[編集]

実家はリゾート開発で有名な「鷹村開発」。そこの次男坊という御曹司なのだが、人並み外れた腕力ゆえに幼少期から喧嘩ばかりで、中学時代に兄のラグビーの試合中に野次をいった観客20人を殴り倒した事件で厳格な実家からは勘当された(その後高校には通っていたが、青木・木村と出会った頃に退学)。

身体能力も性格も似ている兄の卓、美人で優しい姉の京香、鷹村を尊敬している弟の渡の3人の兄弟がいる。勤勉でスポーツも出来る優等生な兄・卓とは同じような性格から衝突することも多いが、互いに認め合った関係でもあり、卓は鷹村に対してはボクサーを止めた後は自分と同じ会社で働いて欲しいと考えていた。しかし世界チャンピオンになってからは守の生きる場所がボクシングであることを悟り、以前の考えを捨ててボクサー鷹村守を見守るようになった。また姉の京香と弟の渡は、実家から離れて暮らす鷹村のことを心配しつつ熱心に応援している。

ボクサー・鷹村守[編集]

自他ともに認める天才。パワー・スピード・タフネス・テクニックと全てにおいて極めて高いレベルの実力を持ち、インもアウトもこなせる万能型ボクサー。本来持っている野性的な身体能力・格闘センスに合わせ、鴨川に叩き込まれた科学的な近代ボクシング技術と膨大な練習量に裏打ちされた基本に忠実なボクシングがその強さを支えている。ブライアン・ホークのセコンドのミゲル・ゼールは鷹村を「ボクサーの理想形」「野性と科学の融合」と称していた。普段はオーソドックスなボクシングスタイルで戦うが、本来のスタイルはガードを下げた超攻撃的なインファイトが主体になる(ブライアン・ホーク戦で意識が飛び、このスタイルが発現した)。

鴨川源二が街で喧嘩をしていた学生時代の鷹村に初めて出会った時点で、既に日本チャンピオンクラスの実力の持ち主だったと言われ、器用なボクサーに振り回され空回りしないようにボクシングスタイルを教えたに過ぎないという。基礎練習のみでデビュー戦で当たったインターハイ優勝選手に完勝し、全日本新人王も順調に掴んだ。キャリアにおいては全勝でオールKO勝ちというパーフェクトさである。

本来はヘビー級の体格であるが、日本では同級は認可されてないためにミドル級を主戦場としている。そのため、試合の度に平常時の90kg近い体重からミドル級〜ジュニアミドル級まで約20kgの壮絶な減量を強いられる。日本における重量級の選手数の問題もあり、スパーリングで日本ランカー3人を同時に相手して圧倒するなど、国内ボクサーでは彼の相手になる者は皆無である。そのあまりの強さに多くの対戦相手が逃げ出してしまい、試合が決まらないこともしばしば。また、世界を舞台にしてからは、鴨川ジムの資金力の無さから本来の階級で闘えないなど満足に試合を組めないことも多く、その都度壮絶な減量も強いられるが、それについて鴨川会長に文句を言うことはない。

特別なフィニッシュブローはないが、繰り出される全てのパンチが必殺の破壊力を持つ上に、鴨川の指導で急所に力の集中したパンチである。また、ミドル級でありながらフェザー級の宮田一郎に「俺でもついていけない」と言わしめるほどのスピードを持ち、ランニングでは一歩ですらついていくのがやっと。スタミナも常人の比ではなく、炎天下での練習などは付き添いのトレーナーの方が先に根を上げるほどである。

普段イタズラばかりに使っている悪知恵は、ボクシングの試合では相手を的確にやり込め勝負所を見極める駆け引きに役立っている。試合観戦中のコメントではボクシングに関する含蓄の深さを見せ、時には鴨川でさえ気付けていない点まで指摘するほど。他選手の試合を観戦する際に意外な展開に目を剥くことはあっても、選手の強さそのものに驚愕することは稀である。

網膜剥離の疑いがある。行動の不審さから宮田が右眼の異常を危惧するが、本人は否定している。後のイーグル戦において左眼が塞がった状態でも戦えていたことから疑惑は解消、引退の心配もなかった。だが医者の診察を受けたわけではなく、そもそもイーグル戦では負傷で両眼が見えなくなった状態での勝利のため、真偽は現在のところ不明である。

熊殺し[編集]

合宿中に野生の熊に襲われた際に、胸に傷を負う死闘の末に殴り倒した。発見した仔熊に情がわいてトドメを刺さずに立ち去ったが、事情を知らない猫田が熊鍋にしてしまった。熊が死んだ事を知った鷹村は人目を憚らず涙したが、せめてもの供養のためにと熊鍋を大いに食した。

パフォーマンス[編集]

「ボクシングだけには嘘はつきたくない」との信念から、試合や練習には極めて真摯に取り組んでおり、ボクシングこそが自分の生きる唯一の世界であると感じている。その一方で、目立ちたがり屋ゆえに入場コスチュームやパフォーマンスなどはひたすら派手にしたがり、試合中は意味のない所にこだわって無駄な苦戦をすることも多い。入場曲は『ウルトラセブン』のテーマ。熊をKOした直後の試合では熊の毛皮を被って入場し熊殺しパンチを世に知らしめた。唐突過ぎて観客には作り話に思われるも、毛皮を脱いだ際に胸に刻まれたクマの爪痕を見て観客や対戦相手は最終的に本当の話だとわかったようである。世界戦で使用した鷹の頭と羽根を模したフードつきガウンは好評であったが、カブト虫の着ぐるみを着た際には、リングインの際にツノがロープに引っ掛かって取れてしまい、「ゴキブリじゃねーか」という野次が飛んだこともある。

また、対戦相手との力量があまりに違うとやりたい放題であり、それでも当たり前のように勝ってしまうため、勝ったにもかかわらず観客からブーイングと共に物を投げられることもしばしば。試合中にもかかわらず「自分が引っ掛りそうになったから」と青木の“よそ見”を何の予備動作をせずに使ったり、必殺パンチと称して「ビートルズ・アッパー」という、大振りアッパーを考案して連携もなく連発したり、端から見れば単なるお遊びとも思えるハチャメチャな試合運びに終始して終わることも多い。これにはセコンドとして一緒に恥をかいてしまう鴨川も「実力はともかく人格的に王者には程遠い」「性根が腐っている」と嘆いている。ブライアン・ホーク戦は試合前の挑発的な言動を繰り返していたホークに立ち向かう日本代表のボクサーという期待を背負った試合だったが、勝利後にホークと大して変わらないレベルの下品な発言をしたために台無しにしてしまった。ロナルド・ダック戦には、派手なKOを狙い過ぎて、判定負け寸前まで追い詰められている。

得意技[編集]

ダイナマイトパンチ
具体的なフィニッシュブローではなく、繰り出すパンチがどれも爆発的な威力だという通称。
熊殺しパンチ
熊の眉間に放った右カウンター。この一撃で熊を倒したことから、マスコミに大いに宣伝し、ワイドショーでも取り上げられた。
ビートルズアッパー
後輩たちのような必殺技を欲しがり考案。角で相手をひっくり返すカブト虫を模した、超大振りの左アッパー。鴨川からテレフォンパンチと一喝された。対戦相手も目の前の空気が弾け跳んだと威力に畏怖して見せたが、実際の試合でも連発するも相手に当たらず、意図せぬ中途半端なパンチが運良くカウンターで当たり、試合は終わってしまった。
よそ見
青木とは違い完全にそっぽを向く。ずっと横を向いているので対戦相手からは当然のように殴られる。
零距離ボディブロー
身体の捻りと適切な体重移動により、その場からほぼ移動せずに放たれるパンチ。同じように対戦相手の意識の外から来る凶悪なボディブローで、イーグル戦で活躍した。一歩も使用するが、一歩は主に首相撲からやクリンチに来た相手に対して放つが、鷹村はそれに加えてダウンを装って相手の身体にもたれかかった状態で放つなど、したたかな使い方をする。

鷹村像[編集]

鷹村のWBC世界ジュニアミドル級王座奪取記念に鷹村が頼んだ銅像。一歩によると「薄気味悪いほどよく出来ている」。完成直後に青木が銅像を持ち運ぶ際、誤って左腕を破壊してしまい、青木は1体5万円もする小型版の銅像を路上売りで行商させられるハメになった(ちなみに銅像は2体売れた)。その後は鴨川ジムのシンボル(?)として屋上に置かれ、ジムの遠景が描かれるときしばしば登場している。しかし、鴨川はこの銅像が気に障るようで、一歩と宮田の試合が流れた際には「何の悩みもなさそうな顔をしおって!」と怒りをあらわにしていた。

なお、作品の大型版とほぼ同デザインのものが実在しており、作者の経営するJBスポーツクラブのシンボルとしても同じく飾られている。

備考[編集]

  • 外見などは「高村」という作者の友人がモデルとなっている。ただし鷹村ほど強烈な人物ではなかったとのこと。豪放磊落な性格などは、実在するプロボクサーのロベルト・デュランがモデル。
  • アニメ一期の第76話『ボクサーの拳』は、原作での断片的な描写を基にした鷹村と鴨川の出会いからプロデビュー戦までを描いたオリジナルストーリーとなっている。
  • 作者は当初、ミドル級は日本人には手の届かない一種の聖域であり天才の鷹村としてもあまりに非現実的ではないか、と考え、鷹村の世界挑戦は前例のあるジュニアミドル級のみにする予定だった。が、竹原慎二がWBA世界ミドル級王者になったことをきっかけに自身の発想を少年漫画家としては夢が無かったと猛烈に反省、鷹村に夢の6階級制覇への挑戦を続行させることを決意した。

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