在日本朝鮮人総連合会

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在日本朝鮮人総聯合会(ざいにほんちょうせんじんそうれんごうかい)は、在日朝鮮人の日本在留者団体。

1945年結成の在日朝鮮人連盟GHQによって「暴力主義的団体」として解散させられた後、新たに設立された在日朝鮮統一民主戦線を経て1955年に設立。略称は朝鮮総聯(ちょうせんそうれん、ジョソンチョンリョン、조선총련)で一般にこの名称で呼ばれることが多い。報道などでは朝鮮総連とも表記される。

法人格がない「権利能力なき社団」。朝鮮総連中央議長を始めとする幹部は北朝鮮の代議員(国会議員)を兼任している。破壊活動防止法に基づく公安調査庁による調査対象団体でもある。

概要

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の「在日本公民団体」と自称、同国政府・朝鮮労働党指導部とは密接な関係にあるとされる。設立当初は、日本に滞留している「朝鮮籍」朝鮮人を対象とした民族学校の運営や、「朝鮮籍」朝鮮人経営者に対する融資をおこなうなど、一種の互助組織として機能していたが、本国の政治状況に連動して、その実態は変貌していった。

東京都に中央本部を置き、全ての都道府県に本部が設けられ、各地に支部組織がある。中央本部の所在地は東京都千代田区富士見二丁目。周辺には靖国神社遊就館法政大学市ヶ谷キャンパス、衆議院九段議員宿舎がある。警視庁は中央本部の警備を厳重に行っている。

北朝鮮法の上では朝鮮総聯の構成員は「朝鮮民主主義人民共和国公民」であると思われるが、そのうち北朝鮮の国籍を有する者の実数は判っていない。日本では国家承認されていない同国の国籍は認められていない。朝鮮総聯の構成員は日本の法律上「朝鮮籍」にあたる人が多く、また韓国籍や日本籍である人もいるが、その大半は地理的には今の韓国出身であり、北朝鮮とは地縁・血縁を持たないものによって構成されている。北朝鮮政府は事実上在日の自国民に対しては二重国籍を認めているものと考えられる。2006年現在、徐萬述中央本部議長をはじめ6名の幹部が最高人民会議の代議員(国会議員)となっている。朝鮮総連出身者には在日本大韓民国民団の団長になった例もあり、在日韓国・朝鮮人社会で大きな影響力を持っている。

発足当初から社会主義を支持し、その後冷戦期社会主義陣営を支持する団体としての性格を明確にした。このことが日本政府警察などの治安機関との緊張関係を生み出す要因となった。

公安調査庁による調査

非合法な活動を行っている疑いがあるとして、公安調査庁から監視を受けている。

課税減免措置撤廃の流れ

朝鮮総聯は、ビザパスポート発行代理業務を行うなど北朝鮮の窓口として、「外交機関に準ずる機関」という名目の下に課税減免措置がとられていたが、2002年9月の小泉純一郎首相(当時)訪朝で北朝鮮が拉致問題への関与を認めたことを境に、国内の北朝鮮関連組織や施設への優遇措置が見直されるようになった。

東京都による固定資産税減免措置撤廃の発表後、朝鮮総聯施設が「私的施設であり、対日・対南工作機関である」という現状に関心が向けられるようになった。

東京都にある朝鮮総連中央本部の不動産への固定資産税などの課税処分をめぐり、登記上の不動産所有者である合資会社「朝鮮中央会館管理会」が、東京都に課税処分取り消しなどを求め提訴した。一審、二審とも請求を棄却。2009年8月12日、最高裁も上告を退け総連側の敗訴が確定した。

2010年現在、総務省が朝鮮総聯施設があるとしている全国130自治体のうち全額減免している自治体は存在しない。またそのうち94の自治体が「減免措置無し」となっている。

日本の政党との関係

朝鮮総聯創立以前に在日朝鮮人が日本共産党で活動していたこともあって、日本共産党との関係が深かったが、1970年代中盤からは日本社会党に接近し、両党は友好関係を築いた。日本社会党左派を継承した社会民主党とは引き続き友好関係にある。社会党出身の民主党議員へ政治献金を行っていたことも判明している。

地方参政権

永住外国人に対する地方選挙参政権賦与問題に関しては、日本への政治参加が在日同胞の民族意識を稀薄化させ日本社会への同化につながるとして反対の論陣を張り、参政権獲得運動の中心である民団とは正面から対立している。参政権がもたらす党派分裂を危惧する声と結論が一致しているが、あくまで日本への政治参加に反対であるとの議論を、公式には撤回していない。

朝鮮学校の授業料無償化に関する工作活動

2010年6月12日、朝鮮総連が朝鮮学校の生徒の父母らに対し、文部科学省に朝鮮学校への高校授業料無償化の適用を要請する電話攻勢をかけるようノルマを課していたこと、また同時に、複数の日本人になりすまして電話回数を稼ぐよう指示していたことが内部文書から判明した。産経新聞は「総連の無償化運動がモラルを著しく逸脱し、北朝鮮同様に統制された組織動員のもとで展開していた実態が明らかになった」と評している。

北朝鮮政府との関係

同国に対する朝銀信用組合の不正送金には朝鮮総聯関係者の関与が疑われ、北朝鮮による日本人拉致問題の追及も進む中、拉致事件をはじめとする日本国内における同国の非合法活動(スパイ、不正送金、麻薬拳銃売買等)にも、数多くの朝鮮総聯関係者が深く関与していたといわれている。これらの犯罪行為に対する責任追及について朝鮮総聯は「悪質なデマ」と主張し、朝鮮総聯関係の施設に強制捜査が行われるごとに「在日朝鮮人の権利を侵害する」とし抗議行動を繰り返してきた。また、批判記事を書いた報道機関に職員が多数抗議に押しかけたり、北朝鮮に批判的な団体の集会を職員らが暴力的に妨害した例(リード「『救え!北朝鮮の民衆』緊急行動ネットワーク」ウェブサイトより)などがあり、これに反発する人々は「在日朝鮮人の主権を認めれば逆差別などに繋がる」と批判している。

1972年に当時の美濃部亮吉東京都知事が「外交機関に準ずる機関」として認定して以来、多くの自治体が朝鮮総聯の施設を事実上の外交機関や公共施設に準ずるものとみなして、固定資産税不動産取得税の減免措置を行ってきた。これは日朝両国が国交を正常化した時に「朝鮮大使館」として使われるであろうとの指摘があったためとされていた。

2003年東京都は朝鮮総聯の関連施設について「所有者の大半が関連企業(朝鮮総聯が法人ではないため)であったり、外交とは無関係なものがある」などとして方針を変更、これらの一部について固定資産税を課すこととした。他の自治体にもこれに追随して固定資産税の減免を解除する動きがある。一方、従来通り継続する自治体もある。こうした措置に対して朝鮮総聯や一部の法学者は反発し、行政訴訟で争われている。この固定資産税などの減免措置を巡っては、「北朝鮮に拉致された日本人を救出する熊本の会」の加納良寛会長が熊本市長を相手取り、朝鮮総聯施設への課税減免措置の無効確認を求めた訴訟を起こしており、2006年2月2日福岡高裁が、「朝鮮総聯の活動に公益性はなく税の減免措置は違法である」とする判決を出した。熊本市長はこれを不服として上告したため、最終的な決着は最高裁に委ねられることになった。

また防衛庁(現:防衛省)からのミサイルデータの流出に関与した疑いがあると報じられた。朝鮮総聯側はこれを受けて、事実を歪めた報道としている。

拉致事件への関与

  • 1973年に行方不明になった、埼玉県上福岡市(現・ふじみ野市)の女性の2人の朝鮮籍児童が拉致された(2児拉致事件)が、その女性の夫が朝鮮民主主義人民共和国工作員であり、さらに夫が勤務していた東京の貿易会社・ユニバーストレーディングの元女性社員が、警察当局の事情聴取に対し、「北朝鮮本国による判断を仰いだ」などと供述していたことが判った。日本政府は朝鮮総連の関与を明らかにしている。
  • 1978年6月に発生した田口八重子さん拉致事件への関与が明らかにされている。
  • 1980年6月に発生した辛光洙事件(原敕晁さん拉致事件)への関与が明らかにされている。
  • 2007年4月25日、警視庁公安部は、上福岡市の事件に関して、国外移送目的拐取容疑で、事件に関与した疑いの強い工作員らが一時期、活動に参加していた「在日本朝鮮留学生同盟中央本部」(留学同)など、朝鮮総聯傘下の団体や関連先など4か所を家宅捜索した。捜索の際に在日朝鮮人の男性が“公務執行妨害”で逮捕され富坂警察署に連行された(この際容疑事実の告知はされなかった)ものの、5月末に不起訴処分・釈放となっている。これに関し、家宅捜索の際に、捜査員が中に入るのを妨害した人間が複数いたのが、TVでも報道されていた。
    • また、公安部は東京都内の貿易会社に、多数の工作員が入社した経緯などを知る立場にあった可能性があるとして、朝鮮総聯の徐萬述議長、許宗萬責任副議長、南昇祐副議長を参考人として事情を聞く方針で、同日に書面で出頭を求めたが聴取要請を拒否する旨を、高徳羽副議長は同年4月26日にマスメディア向け記者会見で述べた。

在日本朝鮮人総聯合会の主張

対韓国工作への協力

朝鮮総聯は、北朝鮮の韓国への対南工作に協力しているとされている。1974年8月15日、日本からの解放記念日である光復節の祝賀行事をソウルの国立劇場で開催中、当時の大韓民国大統領朴正煕の妻・陸英修が在日韓国人の文世光(ムン・セグァン、문세광)に射殺された(文世光事件)。文の目的は朴大統領の暗殺だったが、韓国の警察による捜査によれば朝鮮総連の関与が明白であるとされた。これは赤化統一を目指した文が朝鮮総連の支援を受けながら、大阪府大阪市中央区の高津派出所から拳銃を窃盗したり、韓国への偽造ビザや偽造パスポートを作成したとされたためである。

この韓国側の主張に対して、日本政府が朝鮮総聯の関与を否定したため、韓国内では反日感情が高まり日韓関係は国交正常化後、最悪の状態に陥った。日本がこのような態度に出たのは中華人民共和国との国交正常化から日が浅かったため朝鮮総連を刺激したくなかったのではないかとされているが、実際にはこの時期の中朝関係は文化大革命の影響や金日成が中ソ論争でソ連側についたことで冷却化しており、真偽は不明である。

なお、朴の娘である朴槿恵が北朝鮮を訪問した際、金正日総書記が北朝鮮の関与を認めて謝罪したため、朝鮮総聯が朴正煕大統領暗殺の工作に関与していた証左とされている。

北朝鮮切手への登場

北朝鮮本国では度々記念切手に登場している。1965年4月27日には「総聯結成10周年」の記念切手が発行され、背景に総聯ビルを配し日韓基本条約締結反対運動をする群衆が描かれるなどしている。また北朝鮮郵政当局は1970年1975年1985年2005年にも総聯ビルを描いた切手を発行している。

北朝鮮への帰還運動

1950年代から1980年代にかけ、朝鮮総連は北朝鮮を「地上の楽園」などと宣伝し、在日朝鮮人とその家族の多くを永住帰国・移住させた。1959年には韓国工作員によって妨害爆破テロや朝鮮総連幹部へのテロ未遂事件が起きた(日赤爆破未遂事件)。これが原因となり、2000年代に入り脱北者を中心に相次いで朝鮮総連に対し訴訟が行われている。

2008年6月には、日本在住の脱北女性が朝鮮総連を相手に大阪地裁に訴訟を起こし、原告女性によると、朝鮮総連の「北朝鮮は地上の楽園」などという嘘の宣伝により北朝鮮へ帰還したが、実際は過酷な労働を強いられ、拷問され、差別され、囚人や奴隷と変わらない生活を強いられ、「(朝鮮総連は)人をだまし、組織的に誘拐した。人権と自由を無差別に奪った悪魔みたいな団体だ」「私1人の問題ではない。今も強制収容所の中で必死で生き延びようとしている人がいる」と訴えた。この訴えに対し、朝鮮総連は「同胞社会と日朝関係に害を与える以外のなにものでもない」と主張した。

映画「東海の歌」

帰還事業50周年を記念して北朝鮮と総連が共同で製作した映画「東海の歌」(2部構成)が2009年12月から北朝鮮で公開された。映画は主人公のモデルとなった韓徳銖前議長をはじめとする総連の第1世代の活動家ら在日朝鮮人が異国の地で「愛国」を胸に人生を歩む契機となった金日成の路線転換方針(1952年)と総連の結成、教育援助費と奨学金による民族教育の発展と帰国実現までの、1940~50年代の在日朝鮮人運動の主な出来事を描いた。韓徳銖前議長が金日成に寵愛されるに至った北朝鮮ではあまり知られていない具体的な業績や生涯、在日朝鮮人の活動について広報するものともなっている。

北朝鮮のスパイとの関係

2008年8月、韓国で、脱北者に偽装した女性スパイが逮捕される事件が発生した。韓国検察の起訴状によれば、このスパイは韓国軍の将兵に対して性的な関係を結んで機密情報を得る「ハニートラップ」を行っていた。

また、日本でも情報収集活動を行っていた事が判明しており、2007年6月から2008年5月まで3回にわたって来日し、長い時には2か月以上滞在している。起訴状には日本における協力者として、朝鮮総連の傘下団体の幹部と同名の人物と、「社長」という肩書を持つ大阪在住の人物の2人が起訴状に実名で記されている。

起訴状に読み上げられた傘下団体の幹部は、「朝鮮総連の関係団体の幹部で、同じ名前は自分しかいない」とした上で、「元被告と会ったこともないし、聞いたこともない。保衛部にも知り合いはおらず、全く関係がない。勝手に名前を使われたのだろう」と関与を否定している。

中央本部ビル売却問題

中央本部(東京都千代田区富士見)の土地と建物が、元不動産会社社長の満井忠男の仲介により、2007年5月31日に元公安調査庁長官緒方重威が代表取締役を務めるハーベスト投資顧問株式会社に売却されていたことが判明した。また仲介者とされる満井には朝鮮総連側から、手数料などの名目で4億9千万円が渡っていた。

中央本部の建物(地上10階、地下2階の鉄骨鉄筋コンクリート造り。延べ床面積約1万1700平方メートル)と土地(約2390平方メートル)は40億円を超えるとみられている(売却代金は35億円とされていた)。東京地検特捜部は当初、朝鮮総聯が整理回収機構から提起されていた訴訟に敗訴した場合に予想される差押から逃れるために脱法・違法行為をおこなう意図があったとして電磁的公正証書原本不実記録等の容疑で捜査していた。

捜査の結果、朝鮮総聯が所有権の売却譲渡後も引き続き賃貸物権として使用を認めてもらえる売却先を探していたことが判明したため、実際には朝鮮総聯側は被害者であったとして、緒方と満井が「資金調達の目処が立っていないにもかかわらず土地と建物と手数料を騙し取ろうとしていた」として、2007年6月28日に詐欺容疑で逮捕された。なお手数料として詐取した金銭のうち半分しか返却されていないと報道された。

脚注・参考文献

関連項目