伊能和夫

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伊能 和夫

伊能 和夫(いのう かずお)とは、2009年に発生した「南青山マンション男性殺害事件」の犯人である。

1988年に、妻(当時36)が浮気をしていると疑って詰問、口論となり、包丁で刺殺した。その後、妻を殺したことで将来を悲観、子供と心中しようと、長男(当時8)と二女(当時3)の口に都市ガスのゴムホースを押しつけるなどした上、室内に灯油をまいて放火。二女を焼死させ、自分は自宅ベランダから約15m下の芝生に飛び降り1か月の重傷を負った。長男はベランダから近くの人に助けられ無事だった。

これにより20年間服役したが、出所後わずか半年での殺人であった。

南青山マンション男性殺害事件

事件概要

伊能 和夫

住所不定無職・伊能和夫は2009年11月15日午後3時ごろ、東京都港区マンションで金品を強奪するために飲食店経営の五十嵐信次さん(当時74)方に侵入。部屋にいた五十嵐さんの首を刃物で突き刺すなどして殺害した。

伊能は事件後に地下鉄で台東区内に移動し、同16日夜に上野公園前で酒に酔って暴れているのを上野署員に保護された。

翌17日に上野署を出たが、同署前の掲示板に投石し、器物損壊容疑で現行犯逮捕された。その後、伊能の靴底に男性のものとみられる微量の血痕が付着しており、マンションの手すりには伊能の指紋があり、付近の防犯カメラに伊能と酷似した男が写っていたことから、伊能を強盗殺人容疑で2010年1月20日に再逮捕した。

伊能は2009年5月に出所し、埼玉県内の生活保護受給者用施設で寝泊まりしたり、建設現場で働いたりしていたが、事件当時は仕事をしていなかった。

一審(2011年3月15日 東京地裁 吉村典晃裁判長 死刑判決)

裁判焦点  裁判員裁判。伊能和夫被告は逮捕当初から黙秘している。

2011年2月24日の初公判で、伊能は罪状認否で、名前からすべてについて証言台の前で直立したまま無言を貫いた。このため、吉村裁判長が検察官に、「法廷にいる者と被告の同一性を明らかにしてください」と指示。検察官が、器物損壊容疑で逮捕された際に撮影した伊能被告の写真を提示し、「被告本人です」と述べた。

検察側は冒頭陳述で、伊能が事件当日に包丁を購入し、男性の自宅マンション前をうろついていたと主張。玄関と窓を開けたまま昼寝をしていた男性の部屋へ侵入し、包丁で首を刺して殺害した後、室内を物色して逃走したと述べた。そして現場から被告の指紋などが見つかった、被告の靴底に男性の血液が付着していた、マンション付近の防犯カメラに被告が写っていたことから「被告が犯人である」と主張した。

弁護側は「事件当日、現場には行っておらず、殺害もしていない」と無罪を主張した。

3日の被告人質問では弁護側が「質問はございません」と述べ、検察側質問に移った。伊能被告は裁判長の「椅子に座って」との呼びかけに無言で応じたが、検察官が「声が聞こえているか」「質問されていると分かるか」と呼びかけても、目をつぶり下を向いて黙り続けた。

4日の論告で検察側は、現場室内から被告の掌紋が見つかったことや、被告の靴底に付着していた血液が男性のDNA型と一致したこと、犯行時刻前後に近隣の防犯カメラで撮影された被告とみられる男の映像などから「間接証拠を総合すると被告が犯人なのは明らか」と指摘。その上で「身勝手極まりない動機から何ら落ち度のない男性を殺害した。犯罪傾向は極めて深刻で改悛の情はみじんもなく、死刑選択はやむを得ない」と述べた。

同日の最終弁論で弁護側は、「被害者宅は玄関が無施錠だった。被告は被害者が何者かに殺害された後に空き巣目的で入った可能性がある」などと反論。「黙秘は憲法で保障された権利で、不利に考慮してはならない」と述べた。

判決で吉村裁判長は、現場から被告の掌紋が検出され、被告の靴底に被害者の血痕が付着していたことなどから「状況証拠を総合すると被告が犯人と認められる」と有罪を認定した。そして「出所して半年で冷酷非情な犯行に及んだ。自分の利益だけを考え、人の命という最も重要な価値を軽く見た冷酷非情な犯行。2人殺害の前科は特に重視すべきで、生命をもって罪を償わせるほかない」と述べた。

2012年7月17日の控訴審初公判で、弁護側は「被告と犯行を結びつける直接証拠はない。被告は犯人でない」として無罪を主張。仮に犯人だとしても、「被害者が1人であることなどを考えると、死刑を選択すべき事案ではない」と訴えた。検察側は控訴棄却を主張した。

黙秘の被告に死刑判決。 裁判員4例目「前科を重視」(2011年3月)

妻子に対する殺人や自宅放火などの罪で服役を終えた後、見ず知らずの男性を殺害したとして強盗殺人と住居侵入の罪に問われた無職伊能和夫(60)の裁判員裁判判決で、東京地裁は2011年3月15日、求刑通り死刑を言い渡した。裁判員裁判の死刑判決は4例目。被告は一貫して黙秘していた。裁判員は男女3人ずつ。

吉村典晃裁判長は「出所して半年で冷酷非情な犯行に及んだ。刑を決める上で前科を特に重視すべきだ」と述べた。

弁護側は男性方が無施錠だったとして「被告以外の誰かによる犯行」と無罪を主張していた。即日控訴した。

判決は、現場から被告の指紋が見つかったことや、被告の靴底に男性の血液が付着していたことなどから、被告による男性方への侵入を認定。

さらに、被告が事件直前に購入した包丁の形状と男性が刺された傷の跡は矛盾しないとして「限られた時間帯に被告以外の者が殺害した可能性は極めて低く、被告が強盗殺人の犯人と認められる」とした。

裁判員の死刑破棄。完全黙秘の男、二審は無期―東京高裁(2012年6月)

2009年に東京都港区のマンションで男性を殺害したとして強盗殺人などの罪に問われ、一審東京地裁の裁判員裁判で死刑とされた無職伊能和夫(62)の控訴審判決が20日、東京高裁であった。

村瀬均裁判長は一審判決を破棄し、無期懲役を言い渡した。控訴審が裁判員裁判の死刑判決を覆したのは初めてとみられる。弁護側が控訴していた。

伊能は捜査、一審を通じて完全黙秘し、控訴審にも出廷しなかった。弁護側は無罪を主張していた

一審判決は、現場から採取された伊能被告の掌紋や、靴底に付着した被害者の血液などから犯人と認定。その上で、伊能が過去に妻子を殺害し、20年間服役したにもかかわらず、出所後半年で犯行に及んだことから、死刑はやむを得ないと判断した。