邪視 (中東)
南ヨーロッパそして中東では、 青い瞳を持つ人間には邪視によって故意に、あるいは故意ではなく呪いを人々にかける力があるとして恐れた。ある人物から見られると、自身やその財産に危害が及んでしまう、という呪術的な信仰とも言われる。
いくつかの文化では、邪視は人々が何気なく目を向けた物に不運を与えるジンクスとされる。 他方ではそれは、妬みの眼差しが不運をもたらすと信じられた。
中東では、邪視に対抗するアミュレット、護符として青い円の内側に黒い円の描かれた塗られたボール(または円盤)が用いられた。
また、イスラム教の偶像否定は像に表すことのできない唯一神の冒涜であるとする教義によるのであるが、民間ではイスラム化以前に作られ、また描かれた聖像、偶像の目が邪視をもたらすからとの解釈が生まれ、偶像破壊に際しては、その目の周囲だけが破壊されることが多かった。
アラビア語にはハムサという言葉がある。 ハムサ(خمسة, khamsa [xamsa])とは、 イスラム社会ではまたファーティマの手、ファーティマの目として知られ、中東のユダヤ教徒社会(ミズラヒムなど)ではミリアムの手 Hand of Miriam、あるいはアイン・ハー=ラーア(עַיִן הָרָע ‘ayin hāRā‘、悪い目、「邪視」)として知られる手の形をしたデザイン・シンボルのことである。
ハムサはアラビア語で「5」を意味する数字で、五本指のことであり、ヘブライ語のハミッシャー(חֲמִשָּׁה chamiššāh)、ハーメーシュ(חָמֵשׁ chāmēš)に対応するが、今となっては音素が異なってしまっている(ヘブライ文字でアラビア語通りに書くと כַמְשַׂ のようになってしまう)。
イスラム教徒とミズラヒムの社会では、ハムサを壁などにかけた。
ヨーロッパ
ヨーロッパ人の間では、地中海沿岸がもっとも邪視の信仰が強い。邪視を防ぐ伝統的な方法として地中海沿岸の船の舳先に大きな目が描かれているのをしばしば目にする。また邪視の信仰は北ヨーロッパ、 特にケルトの圏内へ広まった。古代ローマでは、 ファリックチャーム(陽根の魔よけ)が対邪視に有効とされた(cf.金精様:アイヌにも似た迷信があった)。同じく邪視から身を守る動作としてマノ・コルヌート(人差し指と小指を伸ばして後の指は握り込む動作)、マノ・フィコ(親指を人差し指と中指の間に挟んで握り込む動作)がある。
ブラジルでは、 マノ・フィコの彫刻を幸運のチャームとして常に持ち歩く。
ヨーロッパから、邪視への信仰はアメリカに持ち込まれた。1946年、アメリカのマジシャン、ヘンリー・ガマチェが発行したいくつかのテキストはヴードゥー医に影響を与えた。