ジングシュピール
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元来「ジングシュピール」は、おそらくは18世紀イングランドのバラッド・オペラの翻訳から始まった。フランスのオペラ・コミックもしばしばドイツ語に翻訳された。ジングシュピールは大衆娯楽と看做され、大都市に拠点を置く既成の団体ではなく、旅する一座によって上演されるのが常であった。
ジングシュピールの筋書きは、性格においてはコミカルないしはロマンティックで、しばしば魔術や、空想上の生き物、勧善懲悪のコミカルな誇張を含んでいる。悲劇はあまり頻繁なモチーフではないものの、ジングシュピールの中には、ベートーヴェンの《フィデリオ》やウェーバーの《魔弾の射手》のように、こんにちオペラの標準的レパートリーの一部となっているものがあり、これらは真面目なテーマが扱われているということを憶えておくとよい。
モーツァルトは、皇帝の委嘱でウィーンの新国立劇場のために《後宮からの誘拐》を1782年に作曲して、ジングシュピールに手を染めた。モーツァルトはその後もこのジャンルを手懸け、《ツァイーデ》や《劇場支配人》、《魔笛》のような作品を作曲した。
ジングシュピールは、他のさまざまな音楽ジャンルや演劇ジャンルからかなり多くの要素を取り込んでいると論じる向きもあるけれども、そのような明快な格付けを寄せ付けないのがジングシュピールなのである。ジングシュピールは、ドイツ・ロマンティック・オペラの前身と看做され、(上記のベートーヴェンやウェーバーらのほか、)マルシュナーら多くのロマンティック・オペラの先駆的な作曲家によって、より複雑な歌劇様式への道が拓かれ、ワーグナーやリヒャルト・シュトラウスの楽劇に至った。だがしかし、このような進化の結果として、ジングシュピールそのものは、19世紀末までに、抜本的に時代遅れになってしまった。こんにち古典的な標準レパートリーと認められているジングシュピールは、ごく一握りの作品だけである。
関連項目
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