アンコール

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アンコール (encore) とは、コンサートやリサイタルにおいて追加演奏を要望するかけ声のことであり、またその再演奏や、時にはアンコールで演奏された曲目のことも指す。転じて、一度済ませたことを再び行うこと(例えば、「アンコール放映」といった使われ方)。

クラシック音楽におけるアンコール

コンサート

クラシック音楽のコンサート、リサイタルにおけるアンコールはほとんどの場合、プログラムに載った正規の演目がすべて終了した後に行われる。ただし、オーケストラのコンサートの前半で独奏者を招いての協奏曲を組んだ場合、途中休憩前に独奏者単独でのアンコール曲が演奏されることも良くある。

演奏家や声楽家が通常アンコールを行う場合、再登場をねだる聴衆のスタンディング・オベーション拍手喝采(時には拍手が揃うこともあり、それが習慣となっている都市や演奏会場もある)を合図とし、聴衆の好意的な反応に感謝して、アンコールの曲目を披露する。拍手がいつまでも続くような場合に、思いがけずアンコールの曲目が増えて、演奏時間が長引くというケースも起こりうる。

アンコールは、レパートリーの中から、人口に膾炙した小曲(いわゆる通俗名曲)になることが普通だが、当日のプログラムを繰り返したり、あまり有名ではないが印象深い作品がとり上げられることもある。ピアニストやヴァイオリニストは、自分や他人が編曲した作品(原曲が歌曲だったりポピュラー音楽だったりすることも間々ある)を好む。

アンコールの前に、演奏する曲目を聴衆に向かって語りかける演奏家もいるが、演奏会場の空間やエコー、マイク、空調などの理由で、演奏家の声が聴衆に広く行き渡らない場合もしばしばである。このため、演奏会場によっては気を利かせ、演奏終了後にアンコール曲目を掲示することも行われる。

独奏者・独唱者やオーケストラなどのアンサンブルは、アンコール曲目を早く大きく正確に演奏することで、技術的な能力を誇示することがある。あるいは拍手の波が引くように、ゆっくりと静かに、余韻を残して演奏することもある。決まりきった行事に定番のアンコール曲目が習慣づいている場合もある(たとえば、ウィーンのニューイヤー・コンサートにおける《ラデツキー行進曲》や《美しく青きドナウ》。両曲ともプログラムには記載されないが、伝統的に毎年演奏されている)。演奏家が同時に偉大な作曲家でもある場合、自作自演をするまでアンコールを求める拍手が繰り返されることもある(たとえばラフマニノフの《前奏曲 嬰ハ短調》作品3-2)。

オペラ

オペラにおけるアンコールは上記のコンサート、リサイタルのそれとは大きく異なり、独唱者に対してアリアを再唱してほしいとの要求となって現れる。17世紀ヴェネツィアでは既にそれが習慣として確立していたことが知られている。

この習慣は音楽上そしてドラマ進行上の流れを損ねるという点で指揮者に嫌悪されていた。トスカニーニは1910年代頃よりミラノスカラ座やその他の大劇場で一切のアンコールを拒絶する態度に出て、物議を醸した。1950年代以降、オペラ公演における指揮者の、そして演出家の地位が相対的に向上するに及んでこのようなアリアのみのアンコールは次第に減少の傾向にある。

ポピュラー系音楽におけるアンコール

ロックポップスの場合、ミュージシャンがアンコールをいわば第2部のように扱うケースも見受けられる(たとえばボブ・マーリーとザ・ウェイラーズによる、1979年1980年のコンサート)。もっとも、事前に発表されたプログラムに基づいてコンサートを行うという習慣はクラシック音楽におけるほどは確立していないので、「アンコール曲」と「第2部」の区別は必ずしも明確ではないこともある。コンセプト・アルバムに「アンコール」に相当する楽曲を好んで配置するアーティストも見受けられる。

語源について

フランス語encore (もう一度、といった意)に由来する言葉であるが、現在これを再演の要求に用いるのは英語圏の住人がほとんどで、フランスではもっぱらbis (ビス)[1]が用いられている。

英語圏にあってもいつからこの言葉が再演の要求に用いられたのは定かではないが、1711年 - 12年にイングランドで発行されていた日刊紙「スペクテイター」(The Spectator )の1712年2月のある号に

「聴衆がある歌に特に喜んだ場合、彼らはいつでもencore またはaltro volto [2]と叫び、演奏者は親切にもそれを最初から繰り返すことが習慣となっていると記者は発見した」

とあるので、18世紀初めのこの頃の流行ではないかとされている。

脚注

  1. これはラテン語の「2回、もう一回」に由来する。イタリアなど他の大陸ヨーロッパ諸国でも同様。
  2. 伊語altra volta (もう一回)のイギリス人による誤用、あるいは記者の誤記かと考えられる
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