コンピュータソフトウェア倫理機構

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コンピュータソフトウェア倫理機構(コンピュータソフトウェアりんりきこう、通称ソフ倫。英字表記は Ethics Organization of Computer Software、略して EOCS)はアダルトPCゲーム等の倫理的な規制及び審査を行う任意団体。

この団体による審査は、法的拘束力はない自主規制のための審査で、審査を通さなくともアダルトソフトは発売できる。しかしソフ倫側は、審査を通さないソフト(コンテンツ・ソフト協同組合審査済みソフトは除く)は販売しないよう流通業者に通達している。また岩手県など5県では、青少年育成条例でゲームの販売規制を行う際の指定審査団体としてソフ倫を指定している。

家庭用ゲームの審査については「コンピュータエンターテインメントレーティング機構」 (CERO) の管轄となるため、詳しくは同項目を参照のこと。なお、2006年4月より経済産業省の指導で映倫ビデ倫CESACEROJAMMAと共に映像コンテンツ倫理連絡会議(仮称)において審査基準・表示の一本化を協議することが決定している。

設立経緯

ソフ倫設立以前は成人向けゲームの表現については一切規制はなく、たびたび問題視されることはあったが各メーカーの自主性による極めて自由なものであった。

ところが、1991年沙織事件に関連して規制のない業界への非難が出、各メーカーは自主規制を強化するとともにメーカー同士の話し合いを行い、ソフ倫の設立となった。

設立当時は一般ソフトと18禁ソフトという2種類で審査を行っていたが、1994年6月よりR指定カテゴリが追加される(このカテゴリ追加は『卒業II ~Neo Generation~』における性表現以外の理由による18禁指定に対する抗議を受けたものといわれている)。また、PCにおけるビデオCDDVD再生環境の普及に伴い、後にこれらの分野でも審査業務を行うようになった。

DVDは日本ビデオ倫理協会(ビデ倫)でも審査が行われており、両団体には審査基準に若干の違いはあるものの、相互に審査結果を尊重する旨の覚書を交わしているため、市場では同等の扱いを受け、いわゆるインディーズとは区別される。

なお、ソフ倫では、DVDの対話的機能を利用したゲームの統一名称として「DVD PlayersGame」を提唱している。

審査

審査方法には、完成品を元に審査する事前有料審査と、作品の一部分のみを審査し、残りはメーカーの自主規制に任せる自主審査の2通りがある。審査にパスしたタイトルには、18歳未満販売禁止(18禁)・15歳未満販売禁止(R指定)・全年齢対象、の3種類のシールのいずれかを発行しており、このシールが成人向けゲームの目印にもなっている。

加盟会社は販売する全ての作品を(例え性的描写が一切なくとも)審査にかけなければならない。また、審査は暴力,反社会的表現にはまったく行われず、もっぱら性的な表現に対して行われている。

問題点

前述の通り審査方法は2つあるのだが、実際には自主審査を選ぶメーカーが圧倒的に多い。しかし、製作上のミスにより審査に提出しなかった素材からソフ倫の規定に反する表現が出てしまうため、年に数回自主回収となるゲームが出ているのが現状である。

また審査の元となる審査基準があまり一般に公表されておらず、漫画など他の媒体における自主規制と比べた場合により厳しく見えることから、ユーザーサイドからみて不信感を抱かざるを得ない状況になっている。

実際、図画人物であっても、近親間のいかなる性行為、18歳未満の人物の性交渉・生殖器の露出描写を禁止した(それ以前は中学生を取り扱うこともしばしばあった)。この規制は学園ものを大きく変えた。学校名の「○○高校」すら自主規制されるようになった。例としてグリーングリーンの「鐘ノ音学園」である。「高等部」とつけることや「生徒」もNGである。だいたい、97~98年ごろにこの変化は起こった。

しかし、2003年にソフト卸のホビボックスがそれまでアダルトビデオの審査団体だったメディア倫理協会(通称・メディ倫。現・コンテンツ・ソフト協同組合)に加盟したのを契機に、ホビボックスとソフト流通の独占契約を結んでいたアージュニトロプラスなどがソフ倫を脱退し、成人向けゲームの審査を開始したメディ倫の審査を受けるようになった。これにより、今まで成人向けゲームの審査を独占していたソフ倫が、メディ倫の登場により初めて競争にさらされる立場となった。ソフ倫で規制されていた事項のいくつかはメディ倫では認められていることから、ソフ倫からメディ倫への鞍替えを行うメーカーは少しずつ増えている。

上記の事項に関連してか、1999年11月に施行された児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に対応した、ソフ倫基準の一部変更から、親族3親等以内のSEX描写の禁止の緩和など、基準の一部緩和を始めた。

さらに、CEROにおいてもPCゲームのレーティングを開始した。この機構には、昨今メディアミックス展開で一アダルトゲームブランドから急成長を遂げたアクアプラスビジュアルアーツが加盟している。この両者とも最近の作品においてソフ倫、メーカー、ユーザー3者間での軋轢を起こしたこと(有名なものとしてはリニューアル版の設定変更)から、現在腹の探り合いの状態にある。

この為、倫理基準の濫立の危機があるというコメントもある。アメリカにある同種の団体である ESRB (Entertainment Software Rating Board) のような家庭用ゲーム等の倫理基準とも統一した団体の設立を望む声もある。

自主規制団体であること

ソフ倫は「沙織事件」が設立の引き金になったことからもわかるとおり、自主規制団体であり、逮捕者を出さないことを前提に活動している。

その為、親族3親等以内のSEX描写の禁止(現在は解禁)・18歳未満の人物の性交渉表現・5頭身規制など、現状の刑法では犯罪に繋がらないものでも、自主的に規制をしている。これには「表現の自由」の重要性をを不当に貶めるもので行き過ぎとの批判がある。

歴史的にみても、「表現の自由」は国家の弾圧との争いの中から勝ち取ってきたものである。日本で「わいせつ」が問題になった「チャタレー事件」・「悪徳の栄え事件」・「四畳半襖の下張事件」をみても、業界全体で「表現の自由」を守ろうと努力している。その努力の甲斐あってか、当時の裁判でこそ負けているものの、例にあげた3つすべて現代においては「わいせつ」とみられておらず、修正の一切ないそのままのものを書店で手に取ることができる。

ところがソフ倫は警察の摘発を畏れるあまり、「表現の自由」の保護を軽視しており、国家よりの団体となっている。このことから団体の存在意義そのものにも、疑問が呈されている。

その一方で、最近ではバーチャル社会のもたらす弊害から子どもを守る研究会、警察幹部によるテレビ局や国会議員等への直接的働きかけ[1]等、警察、マスコミ主導により「表現の自由を盾に何をしてもよいのか」という声が高まっており、国家の規制による業界の壊滅を防ぐためにも、過激な表現の自主規制はやむを得ないとする事情があるのもまた事実である。

「表現の自由」と国家の規制を予防するための「自主規制」という二つの問題に挟まれるという難しい立場にたっているのが、今のソフ倫の現状である。

ロリータ系作品、キャラクターに対する実質表現規制

2001年、年齢等設定の如何によらず「ランドセル」「園児服」に関する性表現が禁止。

2004年、"高校/高校生/高生/高等学院/高等部/ハイスクール/現役受験生/女高生/女子高生/3年~組18歳/中学/中学生/中学部/中等部/小学生/小学部/児童/初等部/学童/乳児/幼児/幼女/幼稚園児/赤子/稚児/(0~17才・歳)/スチューデント/生徒/生徒手帳/童子/童女/ロリ/ロリータ/ロリコン/修学旅行"がNGワードとして指定。

2005年、5頭身以下に描かれた登場人物による性表現が禁止。この5頭身規制に関する通達文書は当時インターネット上に流出し、ユーザーの間でも話題となった。

また、一連の通達においては、今後の規制範囲拡大の可能性にも含みが残されている。

上記のような見た目やNGワードによる規制は、児童ポルノ禁止法改正によって絵を法規制するべきとする政治勢力の主張を間接的に強化することになり、表現の自由を蔑ろにしているとユーザーからも批判が耐えない。(その一方で、警察、マスコミ主導による社会的批判、規制回避のためにも自主規制はやむを得ないとする声があるのもまた事実である。⇒#自主規制団体であること)この問題はソフ倫体制の瓦解にもつながりかねないことから、ソフ倫によるユーザーの不満への明確な対応は為されず、現在のところメーカー側の主観に任せているのが実状と思われる。一方で、この規制のため、発売が中止になったゲームが存在するのも事実である。

業界団体としての役割

ソフ倫には、自主規制団体の役割だけではなく、アダルトゲーム企業のまとめ役としての機能もある。

例えば、違法コピー対策としてのコピープロテクトアクティベーションの規格をまとめて業界に推奨したり、ゲーム製作者を目指す学生に対して奨学金を支給するなど、業界振興のための活動を行っている。

また、販売店における分別陳列や年齢確認等の販売店における指導等も行っている。

関連項目

外部リンク