左翼ナショナリズム
左翼ナショナリズム(さよくなしょなりずむ)とは、社会主義国や政党(共産党など)への帰属意識を高めるべく生まれたナショナリズムを指す。植民地においては民族解放闘争を志向するのが特徴。
概説[編集]
左翼ナショナリズムは第二次世界大戦後、人種・宗教・階級対立が問題となった各国で発生した。国によって民族構成から外交関係まで力点が移るので、極めて多様である。
しかし、左翼ナショナリズムは一般的に国民感情を利用し、ヘゲモニーを握ることが根底にあるとされている。
結論としては、イデオロギー(左翼思想)が現実に直面したことによる自己変質の一環であり、変質後の運動形態が狭義の左翼ナショナリズムとなる。
各国の静態[編集]
中国[編集]
中華人民共和国における左翼ナショナリズムの主要な点は、次からなる。
- 香港や台湾省は同胞であり、各方面で結束すべき
- 多民族国家の統合手段として「中華民族」と定義すべき
- 帝国主義やテロの脅威に対応して、大幅な軍備拡張を実施すべき
- 腐敗の原因は政府機能の緩和とイデオロギーの希薄化にあり、中央集権の強化が必要である
- 外資に関しては先端分野対象の導入は容認し、文化を損なう消費財分野対象のものは規制すべき
この内、3.は米国留学の経験がある論客が多いことからRMA(軍事革命)の影響を受けており、新三打三防の様にハイテク兵器の充実がよく唱えられる。5.は情報統制の口実にしばしば用いられる。グローバリゼーションに伴い、この種の勢力が大衆や軍部の背広組を基盤に置き、発言力を強めている。
なお、中国で左翼という言葉はそれが体制として具現されていることから体制派を意味している。従って、中国とは反対の体制が現存する日本でのイメージと異なって然るべきである。また、チベットやウイグルの民族主義は、国際関係から言えば右派に与しているのでこれに含まない。
朝鮮半島[編集]
韓国での左翼ナショナリズムは、「左派新自由主義」を自称する現在の盧武鉉政権の与党ウリ党が代表し、民主労働党が最左派に位置する。
二者は政策的に
- 太陽政策の継続
という共通項が見られる。
また北朝鮮は経済が崩壊した1990年代から主体思想および反帝国主義で国民意識をコントロールして、体制の延命に成功し、事実上の鎖国状態となっている。
中南米[編集]
近年中南米ではアルゼンチンのキルチネル政権、チリのバチェレ政権、ブラジルのルラ政権、ウルグアイのバスケス政権、エクアドルのガルシア政権、ペルーやニカラグアなど左傾化が急速に進んでいる。その一方ではベネズエラにウゴ・チャベス政権、ボリビアにエボ・モラレス政権も成立し、左翼ナショナリストの台頭が顕著である。
ロシア[編集]
ロシアでは左翼ナショナリズムは親プーチンと反プーチンに分かれている。どちらも旧ソ連のイメージを理想とする。
親プーチン側はウラジミール・プーチン大統領による「左への転回」の表明で、左翼的な社会政策を取り入れ、ピオネールやコムソモールを想起させるナージを作り、ロシア連邦共産党の層を二つに割った。
反プーチン側は最大野党のロシア連邦共産党と自由民主党が旧ソ連の復古を扇動している。
インド[編集]
諸民族の団結を唄う国民会議派各派。
シンガポール[編集]
社会民主主義を掲げる人民行動党は、人種・ジェンダーの排他的関係を超越したナショナリズムを奨励している。
ビルマ(ミャンマー)[編集]
かつてのネ・ウィン政権は、反共的な独自の「ビルマ社会主義」を掲げ、華僑やインド人等在留外国人を国外追放し、ビルマ国軍の軍人による企業経営等の経済運営を行い、鎖国的な非同盟体制をとった。
中東諸国[編集]
アラブ民族主義を参照。