法人

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法人(ほうじん、juristische Personjuridical person)は、生物学的にヒトである自然人ではないが、法律の規定により「」として権利能力を付与されたものをいう。

日本においては、法人は、一般社団・財団法人法会社法などの法律の規定によらなければ成立することができない(法人法定主義民法33条)。このため、事実上法人となるような実体を備えている場合でも、法の要求する形式をみたしていなければ権利義務の帰属者たる法人とはならない。このため、権利能力なき社団権利能力なき財団が発生することになるが、その法的な権利関係の処理が問題となる。

法人の分類

社団法人(広義)と財団法人(広義)

伝統的な説明によれば、社団に法人格が与えられたものが広義の社団法人であり、財団に法人格が与えられたものが広義の財団法人である。もっとも、通常、社団というためには一定の組織性が要求される(権利能力なき社団を参照)が、現実の社団法人の中には「権利能力なき社団」に要求されるような意味での社団性はないもの(一人会社など)も存在している。むしろ、構成員が存在するのが社団であって存在しないのが財団であるという本来の定義のほうが日本の法人法制度の実態を正しく反映しているのであろう。

営利と非営利、公益と私益(非公益)

法人のうち、 (1)営利を目的とするものを営利法人と呼び、(2)そうでないものを非営利法人と呼ぶ。ここでいう営利とは、法人が外部的経済活動によって得た利益をその構成員(社員)へ分配することを意味する。

(1)営利法人は、構成員への利益分配を予定しているため、常に社団である。財団については、そもそも利益の分配先である構成員が存在しない以上、利益の分配ということはありえず、利益の分配されない営利目的の財団の存在を認める実益がないからである。もっとも、かつては、形式面はともかく、実質的には株式会社は営利財団法人であるとする考え方も存在した。営利社団法人のことを会社といい、会社法株式会社合名会社合資会社合同会社を定めている。なお、会社法における会社の営利性については論争がある。

(2)非営利法人は、一般法である一般社団・財団法人法により設立される一般社団法人一般財団法人と、特別法特定非営利活動促進法など)により設立される社団法人(特定非営利活動法人労働組合農業協同組合など多種)・財団法人(共済組合など)がある。一般社団法人・一般財団法人のうち、公益法人認定法により公益性の認定を受けた法人を公益法人(公益社団法人・公益財団法人)という。

2008年12月の一般社団・財団法人法施行前は、民法が一般法としての法人規定を有していた。そして、民法は、(a)公益を目的とする社団ないし財団に適した法人形態である公益法人のみを規定していた。そのため、(b)公益を目的としない社団には、適当な法人形態を提供する一般法が長らく存在しなかったため、民法に対する特則として特別法がある場合(労働組合農業協同組合など)を除いて、法人格を得られなかった。非営利・非公益の団体が法人格を持てないことは不便であったため、法人格の取得が容易になるよう以下の特別法が制定された。2002年(平成14年)4月1日に施行された中間法人法により、非営利・非公益の社団一般が法人格を取得できるようになった。しかし、(b)非公益目的の (2)非営利財団には、特別法がある場合(共済組合など)を除いて、法人格は与えられてはいなかった。2008年12月に一般社団・財団法人法が施行されたことで、非営利・非公益の社団・財団が一般的に法人格を取得することができるようになったため、法人格を取得できない不都合が広く解消された。

法人格の形態一覧

商法、各種業法での分け方

営利法人

非営利法人

公的法人

法人税法の「内国法人」の一覧

法人の設立と監督

法人を設立するための要件は、法人の種類によって細かく分かれているが、これは、国家がどの程度法人を監督するか、という法政策の問題である。すなわち、国家による監督が必要な活動であれば特許主義や許可主義を採用することになるし(法人の活動が不適切な場合には法律を改廃したり、主務官庁が許可を取り消したりする)、国家が法人の設立にまったく干渉する必要はないと考えれば、自由設立主義を採用することになる。

日本法により設立される法人について、国家の干渉度が強い順に並べると、次のようになる。

特許主義
特殊銀行日本郵政公社都市基盤整備公団国民生活金融公庫などの公社公団公庫
許可主義
設立は、主務官庁の裁量による。
民法が規定していた旧公益法人社団法人財団法人)。
認可主義
設立は、要件を具備し主務官庁の認可による。
学校法人医療法人社会福祉法人生活協同組合農業協同組合健康保険組合中小企業等協同組合
認証主義
設立は、所轄庁の認証による。認可主義より簡易である。
特定非営利活動法人NPO法人)・宗教法人
準則主義
要件を具備すれば当然に法人となる。普通、登記・登録が必要である。
一般社団法人、一般財団法人、会社労働組合弁護士会、マンション組合法人。
自由設立主義
日本法では採用されていない(法人法定主義)。なお、スイス民法で採用されている。

法人本質論

詳細は 法人本質論 を参照

法人の本質には、種種の学説がある。有名なものとしては、「法人擬制説」「法人実在説」がある。もっとも、近年はこの論点自体への疑問も提示されている。

法人擬制説
法人擬制説(ほうじんぎせいせつ)は、もともと法的主体は1人1人の個人だけであり、法人は法によって個人を擬制していると考えるものである。いかなる実体が法人として認められるかは法の裁量による。法人の設立には、政府の関与が大きい特許主義許可主義をとることを主張する。対立する説としては、法人実在説がある。
法人実在説
法人実在説(ほうじんじつざいせつ)は、個人のほかにも社会的になくてはならないものとして活動する団体があり、その団体は法的主体であると考えるものである。法的主体として考え得るものを広く法人として認めようとする。法人の設立には、政府の関与が小さい準則主義をとることを主張する。対立する説としては、法人擬制説がある。

法人の法的主体性

詳細は 法人の法的主体性 を参照

法人の人権享有主体性、権利能力、行為能力については各種の議論がある。

法人の人権享有主体性
日本国憲法には、法人が人権の享有主体になるかどうかの規定がない。この問題について、最高裁判所は、八幡製鉄事件において、憲法第3章の保障する権利は性質上可能な限り内国の法人に保障されると判示した(最大判昭和45年6月24日民集24巻6号625頁)。
法人の権利能力
法人には権利能力が認められる。これこそが、法人が法人たる所以である。もっとも、その範囲が問題となる。日本の民法は、法人の権利能力に対しては極めて謙抑的な態度をとり、民法第34条において「法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う」と規定している。これは、英米法におけるUltra Viresの法理によるものである。判例は、同条のいう「目的の範囲」を柔軟に解釈している。 八幡製鉄事件の判決では、定款に定めた目的の範囲内で権利能力があるが、目的の範囲内とは、明示されたものだけではなく、定款の目的を遂行するのに必要ならすべての行為が含まれるとした。なお、学説においては、民法34条を権利能力についての規定と解さない学説が多数であり、条文の見出しが「権利能力」ではなく単に「能力」となっているのはその点への配慮であろう。
法人の行為能力
法人が単独で法律行為を行うことができるかどうかどうかを法人の行為能力という。これは、法人擬制説と法人実在説で結論が異なる。法人擬制説では、法人とは法が特に擬制した権利義務の帰属点に過ぎないから、行為能力を認める必要はなく、代理人たる理事の行為の効果が法人に帰属するという構成をとる。対して、法人実在説では、法人は自ら意思を持ち、それに従い行為するのであり、法人の行為能力が認められるということになる。

関連項目

ar:شخص اعتباري

ca:Persona jurídica cs:Právnická osoba da:Juridisk person de:Juristische Person el:Νομικό πρόσωποes:Persona jurídica et:Juriidiline isik fi:Oikeussubjekti fr:Personnalité juridique gl:Persoa xurídica he:אישיות משפטית hr:Pravna osoba hu:Jogi személy it:Soggetto di diritto lt:Juridinis asmuo nl:Rechtspersoon no:Juridisk person pl:Osoba prawna pt:Pessoa jurídica ru:Юридическое лицо sl:Pravna oseba sv:Juridisk person th:นิติบุคคล tr:Tüzel kişi zh:法人 zh-min-nan:Hoat-jîn

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