イギリスの音楽

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この項目、'''イギリスの音楽'''では、[[イギリス]]、[[イギリス人]]の[[音楽]]について述べる。 イギリスは[[ヨーロッパ]]の一部にあり、[[ヨーロッパ大陸]]からいくらか離れた[[グレートブリテン島|グレートブリテン諸島]]にある国である。従って、ヨーロッパの音楽文化圏の一部であって、[[西洋音楽|ヨーロッパ大陸の音楽]]、すなわちイタリアやドイツ、フランスの音楽と、[[リズム]]、音組織([[音階]]や[[和音]])などに基本的な違いはない。常に大陸と密接な関わりを持ちながら、発達してきたと言っていい。しかしながら、民族に独特の音楽も持っている。[[スコットランド]]の[[バグパイプ]]の音楽などは、その代表例である。[[マザーグース]]などの童謡、クリスマス[[キャロル]]、[[スコットランド]]や[[アイルランド]]の民謡などは、日本でもよく知られたものが多い。 歴史的には、イギリスは、中世・ルネサンス音楽期においては、ヨーロッパでもフランスに次ぐ音楽先進国であった。しかし、ドイツからイギリスに帰化したヘンデルが活躍後の[[クラシック音楽]]においては、イギリスの[[作曲家]]は、イタリア、ドイツ、オーストリア、フランスなどの作曲家に比べ、日本語圏で知られているものが少ないのが現状である。数少ない例外は、[[エドワード・エルガー]]、[[グスターヴ・ホルスト]]、[[ベンジャミン・ブリテン]]、[[レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ]]であろうが、それとても日本語圏での演奏機会が多いとは言えない。[[演奏]]を見ると、[[ロンドン交響楽団]]や[[ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団]]といった[[オーケストラ]]、[[サイモン・ラトル]]らの[[指揮者]]が、日本公演や[[コンパクトディスク|CD]]などによってよく紹介されている。[[ルネサンス音楽]]では、タリススコラーズ、ザ・シックスティーンなどの声楽団体が、この分野を代表する演奏団体となっており、極めてレベルが高い。また[[金管バンド]]に特徴があり、[[英国式ブラスバンド]]として他と区別される。 一方、[[ポピュラー音楽]]については、[[ビートルズ]]を筆頭に、日本語圏でも知られているものが多い。 ==中世イギリスの音楽== 中世のイギリスは、ヨーロッパではフランスに次ぐ音楽先進国であった。11世紀以降、[[セイラム]]([[ソールズベリー]]の古名)で[[ソールズベリー聖歌]]が発達し、この[[聖歌]]は[[イギリス国教会]]の成立まで盛んであった。また、13世紀末の「夏は来りぬ Sumer is icumen in」は、発見されている世界最古の[[カノン (音楽)|カノン]]である。13世紀前後のフランスのカロルという舞曲がイギリスに伝えられ、14〜15世紀になると多くの[[キャロル]]が作られた。キャロルは、500編の歌詞と100曲あまりの旋律が残されている。現在、聞かれるクリスマス・キャロルの多くはこのころ作られたものである。 14世紀から15世紀には、イギリス独自の3度や6度和音を利用した美しい多声音楽の方法が開発された。イギリスは島国であり、[[百年戦争]]で大陸との接触が無くなると、大陸で廃れた技法、例えば[[ノートルダム楽派]]の[[イソリズム]]が使用され続けられ、独自に発展した。百年戦争末期になるとイングランド王国が北フランスを占領し、大陸とイギリスの音楽家の交流が始まった。この時代の重要な作曲家が、[[リオネル・パワー]](1375頃-1445)と[[ジョン・ダンスタブル]](1380頃-1453)である。特にダンスタブルは、大陸にイギリスの和音の技法を伝え[[ブルゴーニュ楽派]]を成立させるとともに、イギリスにフランスの新しい技法を伝えた。しかし、百年戦争でイギリスが敗退(1453年)、イギリス国内での[[バラ戦争]](1455〜1485年)などの影響で、イギリスの音楽文化は一時的に衰退する。 * [[ソールズベリー聖歌]] * [[キャロル]] * [[ジョン・ダンスタブル]] * [[リオネル・パワー]] ==ルネサンス音楽== [[テューダー朝]]の[[ヘンリー8世 (イングランド王)|ヘンリー8世]](1491年- 1547年)が、1509年に王位についた頃から、イギリスにおける音楽活動は再び盛んになった。ヘンリー8世は、音楽にも造詣が深く、ヘンリー8世作曲とされる楽譜(合唱曲『Pastime with Good Company』など)が現存する。このころの宗教音楽は、イートン聖歌隊本(Eton Choirbook イートン・クヮイアブック)にまとめられている。また、[[クリスマスキャロル]]として知られる「[[グリーンスリーブス]]」はこの時代からエリザベス朝にかけてよく歌われていた民謡である。中世・ルネッサンス期では緑色には「不倫」という意味があり、6人の妃を持ったヘンリー8世による女性遍歴を揶揄した曲であると言われている。ヘンリー8世は、キャサリン王妃との離婚および、アン・ブーリンとの再婚を巡る問題から教皇[[クレメンス7世 (ローマ教皇)|クレメンス7世]]と対立。1534年には国王至上法を発布し、自らを[[イギリス国教会]]の長として、ローマ・カトリック教会から離脱した。 このような時代背景の中で、[[ルネサンス音楽]]期に活躍した著名な作曲家である[[トマス・タリス]]や [[ウィリアム・バード]]はラテン語(カトリック)と英語(イギリス国教会)による曲を両方作曲している。とりわけ、バードは、カトリック信者として生涯を送り、イギリス国教会との葛藤から生まれたラテン語の[[ミサ曲]]は、ルネサンス期を代表する作品である。[[シェイクスピア]]の劇中にも登場する[[トマス・モーリー]]などの世俗音楽が盛んになるとともに、[[ジョン・ダウランド]]は、優れた[[リュート]]作品や歌曲を作曲した。 エリザベス朝時代後期には、イタリアの[[マドリガーレ]]の刺激を受けて、イングリッシュ・マドリガルが数多く作曲された。トムキンズ、ギボンズ、モーリーなどの作曲家が知られている。また、器楽音楽についても、ルネサンス後期のイギリスでの発展は顕著であった。特にヴァージナルと呼ばれる小型チェンバロが愛好された。タリス、バード、ファーナービー、ギボンズ、ジョン・ブルなどが作ったこの楽器のための曲は、短い歌謡調の旋律を変奏していく「変奏曲」という形式を確立した。 このように中世、ルネサンス音楽の時代には、イギリスはヨーロッパ有数の音楽先進国であった。 *[[ヘンリー8世]] *[[ウィリアム・コーニッシュ]] *[[ロバート・フェアファクス]] *[[ジョン・タヴァナー]] *[[クリストファー・タイ]] *[[トマス・タリス]] *[[ジョン・シェパード]] *[[ロバート・ホワイト]] * [[ウィリアム・バード]] *[[オーランド・ギボンズ]] *[[トマス・ウィールクス]] *[[トマス・トムキンズ]] *[[ピーター・フィリップス]] *[[トマス・モーリー]] *[[ジャイルズ・ファーナビー]] *[[ジョン・ダウランド]] ==バロック音楽== ヘンリー・パーセル(1659年-1695年)は[[バロック音楽]]時代に活躍したイギリスの音楽家である。彼はイタリアやフランスの影響を受けつつ、独自の音楽を生み出したものの、その生涯はわずか36年というものであった。その後、ドイツから移住、帰化した[[ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル]](1685年-1759年)が、イギリスにおいてオペラやオラトリオなど、世俗の劇的な作品で本領を発揮した。イギリスが大英帝国として、世界各地に植民地を広げた時代である。しかし、このころからイギリスの音楽は、新しい音楽を生み出すことより、他国で生まれた音楽を消費する傾向が強まっていった。パーセル死後に生まれたボイス(1711年-1779年)、アーン(1710年-1778年)、リンリー(1756-1778)などの作曲家は、古典派直前のイギリスの作曲家である。 * [[ヘンリー・パーセル]] * [[ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル]] * [[ウィリアム・ボイス]] * [[トマス・アーン]] * [[トーマス・リンリー]] ==古典派以降のクラシック音楽== ルネサンス音楽期までは音楽後進国であったドイツ語圏がバロック音楽期以降、古典派、ロマン派とクラシック音楽の黄金時代を迎えたのに対し、イギリスの音楽が再び世界的影響力を取り戻すには20世紀の[[ビートルズ]]を待たなければならない。19世紀末から20世紀に活躍したエルガー、ホルスト、ブリテン、ヴォーン・ウィリアムズなどの音楽家達は、ベートーベンなどのような歴史的な役割をしたとは言いがたいが、イギリスらしい明解な作品を数多く残している。このころ[[国民楽派]]が、ヨーロッパ各地での民族意識の高揚を背景に盛んになるのにやや遅れて、世界の支配的な地位を占めていたイギリスでも、イギリスの民謡や古楽を作曲の題材にしたヴォーン・ウィリアムズやブリテンなどの作曲家が見られたことは興味深い。 * [[エドワード・エルガー]] * [[グスターヴ・ホルスト]] * [[ベンジャミン・ブリテン]] * [[レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ]] * [[フレデリック・ディーリアス]] * [[カイホスルー・シャプルジ・ソラブジ]] * [[ブライアン・ファニホウ]] == 指揮者 == * [[トーマス・ビーチャム]] * [[ジョン・バルビローリ]] * [[エイドリアン・ボールト]] * [[マルコム・サージェント]] * [[ネヴィル・マリナー]] * [[サイモン・ラトル]] * [[マイケル・トムズ]] == 演奏家 == * [[タリススコラーズ]] * [[ザ・シックスティーン]] * [[ウェストミンスター聖堂合唱団]] * [[キングズシンガーズ]] * [[ナイジェル・ケネディ]] * [[ジャクリーヌ・デュ・プレ]] * [[キャスリーン・フェリア]] * [[デニス・ブレイン]] === オーケストラ === * [[ロンドン交響楽団]] * [[ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団]] * [[フィルハーモニア管弦楽団]] * [[ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団]] * [[BBC交響楽団]] * [[バーミンガム市交響楽団]] * [[ハレ管弦楽団]] * [[ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団]] == 民俗(民族)音楽 == * [[バラッド]] * [[ジーグ]] * [[エコセーズ]] == 関連項目 == * [[アイルランドの音楽]]([[アイルランド音楽]]) * [[アメリカの音楽]]([[アメリカ音楽]]) * [[イギリス人の一覧]] ** [[スコットランド人の一覧]] ** [[ウェールズ人の一覧]] ** [[イングランド人の一覧]] [[Category:イギリスの音楽|*]] [[Category:イギリス|*おんかく]] [[Category:音楽史|いきりすのおんかく]] {{Music-stub}} {{jawp}}