マーケティングミックス
マーケティングミックス(英語:marketing mix)は、マーケティング戦略において、望ましい反応を市場から引き出すために、マーケティング・ツールを組み合わせることである。つまり、企業や非営利組織が顧客や生活者に商品やサービスの販売をしたり、何かを遂行したりするために、マーケティングの使用可能な複数の手段を組み合わせて戦略をたて、計画、実施すること。マーケティングミックス要因にはさまざまなものがあるが、今日、4P理論と4C理論に集約できる。
目次
マーケティング・ミックスの起源[編集]
「マーケティングミックス」という用語を最初に使用したのはニール・ボーデン(Neil Borden)である[1][2]。彼は製品計画、パッケ-ジング、価格、ブランディング、流通経路、物的流通、人的販売の量と質、サービス、販売促進の他の手段の量と質、市場調査情報の種類と質、陳列を含めた広告の量と質をマーケティング・ミックスの要素として挙げた。コトラーによれば、1950年代にリチャード・クルウェットがProduct(製品)、Price(価格)、Promotion(販売促進)、Distribution(流通)の3P1Dを使っており、マッカーシーの4Pの基となったとのこと。[3]
4P:売り手側の視点 (1960年 - 、Marketing 1.0)[編集]
エドモンド・ジェローム・マッカーシー(w:E.Jerome McCarthy)が1960年に提唱し、友人であったコトラー(w:Philip Kotler)等が使っている有名な分類、「4P」を用いてマーケティングミックスが語られることが多い[4][5]。コトラーはこの時代のマーケティングを「マーケティング1.0」と呼んでいる。これ自体は顧客志向のマーケティングであり、その教育的効果が高く評価されている。4Pが売り手側の視点に基づいたツールであると言われるようになったのは、1970年代の終りにコンシューマリズムが台頭し、その視点と比較されたためであり、もともとの4Pは双方の視点である。 4つのPとは
- Product(製品):製品、サービス、品質、デザイン、ブランド 等
- Price(価格):価格、割引、支払条件、信用取引 等
- Promotion(プロモーション):広告宣伝、ダイレクトマーケティング 等
- Place(流通):チャネル、輸送、流通範囲、立地、品揃え、在庫 等
である。これら4つに分類されるツールを組み合わせていく。
4C:買い手側の視点 (1993年 - 、Marketing 2.0)[編集]
4C も参照 ロバート・ローターボ-ンによって、1993年、買い手側の視点による「4C」という分類がなされた。 これは、4Pが売り手側の視点で捉えられているとし、消費者の視点で捉え直そうというものである。4C理論は消費者から始まるIMCが置かれるフレームワークとして作られた。コトラー流の見方で、この時代のマーケティングを「マーケティング2.0」といえよう。 4つのCとは、Consumer(消費者のニーズやウォンツ)、もしくはCustomer solutionまたはCustomer Value(顧客ソリューションまたは顧客価値)、Customer cost(顧客コスト)、Convenience(利便性)、Communication(コミュニケーション)である。4Cは以下のようになっている[6]。
- Consumer(消費者のニーズやウォンツが商品)あるいはCustomer solution(顧客ソリューション)
- Customer cost(顧客コスト)
- Communication(コミュニケーション)
- Convenience(流通は利便性)
4C:双方共生の視点 (1973年 - 、Marketing 3.0)[編集]
スティーブ・ジョブズが買い手のニーズを先取りして皆が待ち望んでいる商品を出したように、今日、売り手買い手双方が共に生きる「共生(価値共創)」の視点が重要。企業と消費者、国と国、人間と自然とが共に生きる共生マーケティングあるいはコ・マーケティング(w:Co-marketing: Commensal marketing,Symbiotic marketing)のミックス要因がもうひとつの4C(オリジナル:1972年度早稲田大学商学研究科修士論文[7])である。これはコトラー流で「マーケティング3.0」に相当するといってよい。4Cは以下のとおりである。[8][9][10]
- Commodity:商品(ラテン語の原義はcommodus:共に便利な)造って売り込むプロダクトアウトではなく、企業と消費者で共に創る(Co・creation)商品。はじめからコモディティ(価値共創商品)をつくれば、最近言われているコモディティ化を懼れることはない。
- Cost:コスト(原義はconstare:共に立ち上がって犠牲を払う)製品価格だけでは狭い。生産・販売コストだけでなく環境を踏まえた社会的コストも含めなければならない。プライスでは狭い。
- Communication:コミュニケーション(原義はcommunico:共に意味を持つ)プロモーションのカテゴリーでは狭く、東北を元気づけているのはコミュニケーションである。広告、販売促進、PR、パブリシティ、CI、人的販売、インターナルコミュニケーション、クチコミ(ソーシャルメディア)、MIS等がある。
- Channel:流通経路(原義はcanalis:運河)陳列場所だけではなく商品の流れが重要。プレイスではなくチャネルなら、リアル店舗とネットとの融合も含めることができる。
以上のマーケティングミックス(w:Marketing mix)の4Cを搭載した共生マーケティング(w:Co-marketing)のフレームワークが“7Cs COMPASS MODEL”である。
脚注[編集]
- ↑ Neil H. Borden and Martin V. Marshall,(1959), "Advertising Management--Text and Cases," revised edition, Richard D. Irwin, Inc., pp.23-24.
- ↑ Neil Borden, (2013), "The Concept of the Marketing Mix". Neil Borden. Retrieved 24 April.
- ↑ P.コトラー(2013)「私の履歴書」日本経済新聞。
- ↑ E.Jerome McCarthy(1960)"Basic Marketing,"Richard D.Irwin,Inc.
- ↑ Philip Kotler(2013)"Marketing Management,"Prentice Hall.
- ↑ Don E. Schullz, Stanley I. Tannenbaum, Robert F. Lauterborn(1993)“Integrated Marketing Communications,”NTC Business Books, a division of NTC Publishing Group.
- ↑ 清水公一「広告媒体モデルにおける露出処理の開発」1972年度早稲田大学商学研究科修士論文。
- ↑ 「日経広告研究所報」第15巻第5号、日経広告研究所、16-23ページ。
- ↑ Brian Solis(2011) Engage!: The Complete Guide for Brands and Businesses to Build, Cultivate, and Measure Success in the New Web, John Wiley & Sons, Inc.pp.201-202.
- ↑ 柏木重秋編著(1982)『マーケティング』、白桃書房、145-146ページ。