求職者支援制度

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求職者支援制度とは、「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」に基づき、2011年10月1日にスタートした、雇用保険を受給できない失業者を対象とし、無料の職業訓練(「求職者支援訓練」という)を実施し、本人の収入等の一定の条件を満たす場合は給付金(「職業訓練受講手当」という)として月額10万円が支給され、ハローワークにおける就職支援を実施することにより、安定した就職を実現するための制度である。

「残業は嫌」「通勤時間はドアツードアで30分ぐらいが希望」多くの働ける世代が生活保護

個人のやる気が結果を左右「のんびり探す」緊張感なく

働けるのに仕事がない-。そうした失業者生活保護の手前で踏みとどまるための「安全網」として始まった求職者支援制度。受講者の就職率は厚生労働省の想定を上回ったものの、受講者数は見込み数を大幅に下回った。意欲のある失業者にとっては再チャレンジの機会を得られる場となり得るが、その失業者を受け止める“網の目”は粗く、今もなお多くの働ける世代が生活保護に流れる現状がある。

受講料は無料

東京都中央区雑居ビル。求職者支援訓練の認定校「スリーエスコンサルティングビジネススクール東京校」ではこの日、講師の女性が会計ソフトの使い方を教えていた。受講者は20~40代の約10人。真剣なまなざしで長机に並んだノートパソコンの画面を見つめている。

3カ月で簿記経理の実務など、企業の事務作業の基本を身につける。午前10時から午後5時までの座学を週5日。テキスト代が約9500円かかる以外は、受講料は無料だ。

受講者の男性(33)は高校卒業後、宮城県から上京しゲームセンターパチンコ店アルバイトをしていたが、腰を悪くして働けなくなり退職。

「今は長く安定して働ける仕事がしたくなった」とし、事務職での就職を目指している。「彼女にもきちんとした仕事をしてほしいと言われている。何とか決めたい」

漏れれば無収入

ただ、受講希望者は明確な目標を持つ者ばかりではない。ハローワークで紹介されて面接に訪れる希望者には、酒臭かったり、若くして書類の裏表におさまり切らないほどの転職歴があったり、真剣に働く意欲に疑問符がつく人もいる。この学校では書類審査と面接を行い、「本気で就職したい気持ちがある人を選考している」と説明する。

2012年6月28日に行われた厚労省の協議会でも、想定より高かった就職率に関し、出席者から「就職できそうな人だけを選考している実態があるのでは」との指摘があった。支援制度の利用者は非正規社員など失業手当が給付されない求職者。選考に漏れて収入のあてがなくなれば、生活保護受給につながることも否定できない。

努力促す制度を

訓練を積み技能を手にしても、最終的に就職へ結びつくかどうかは「個人のやる気に大きく左右される」とする声は強い。

「正直、受講者から切迫した雰囲気は感じられない」と話すのは別の訓練機関の関係者。「残業は嫌」「通勤時間はドアツードアで30分ぐらいが希望」「合う仕事が見つかるまでのんびり探します」。 そうした声を聞くこともあり、「少なくとも、就職活動中の大学4年生のような必死さはない」と漏らす。

生活保護制度に詳しい学習院大鈴木亘教授は「現在の制度は受講者に努力を促すようになっていない。受講者や訓練機関に成果を目に見える形で求め、それに応じた報酬を出す仕組みを導入するなど工夫をする必要がある」と指摘。「受講者が仕事に就けず生活保護に流れるのでは意味がない。生活保護と似た制度をもう一つ作ることになってしまう」と話している。

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