アンタレス

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2011年12月17日 (土) 20:30時点における松葉裕子 (トーク | 投稿記録)による版

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アンタレスAntares)はさそり座のα星で、よく知られる恒星の一つである。地球からは火星に次いでよく見える赤い星であることから、ギリシャ語で「火星に対抗するもの」を意味する名が付けられている。他に中国語)、大火たいか、中国語)、コル・スコルピイCor Scorpiiラテン語)、ル・クール・デュ・スコルピヨンle Coeur du Scorpionフランス語)、カルブ・アル・アクラブقلب العقربKalb al Acrabアラビア語)と多くの固有名を持つ。そのうち「火」と「大火」は「アンタレス」同様この星の赤い色に由来し、「コル・スコルピィ」「ル・ケール・デュ・スコルピヨン」「カルブ・アル・アクラブ」の3つは「さそりの心臓」を意味する。学名のアルファ・スコルピイ(α Scorpii、略号α Sco)で呼ばれることもある。

物理的性質

非常に美しい実視連星で、0.96等(但しごくわずか変光する)の主星(アンタレスA)から2.6離れたところに5.4等の伴星(アンタレスB)が輝いている。2つの星のスペクトル型はアンタレスAがM1.5Ⅰab-ⅠbでアンタレスBがB2.5ⅤeなのでアンタレスAが赤く、アンタレスBが青白く見えるはずだが、実際にはアンタレスAとの色の対比効果によりアンタレスBは緑色に見えることが多い。またアンタレスAも「赤」とはいっても「真っ赤」というよりはオレンジがかった赤色に輝いて見える。但し2つの星の光度差が大きいため、小望遠鏡では分離できない。

アンタレスはかつては0.9等から1.8等まで変光する脈動変光星といわれていたが、実際はそれほど大きな光度変化は見られず、変光範囲は0.9等から1.2等くらいである。従って眼視観測ではアンタレスの変光はほとんどわからない(ちなみに眼視観測で変光が分かるのは変光範囲が0.5等以上の星である)。むしろジュバ(δ Sco)の方がアンタレスより変光範囲は大きい(ちなみにジュバの変光範囲は1.7等~2.3等なので、眼視観測でも変光が確認できる)。

アンタレスはかつて直径が太陽の230倍とされていたが、実際はもっと大きな星で、直径は太陽の600倍ないし800倍である。以前は明るさと表面温度から大きさを推定していたが、現在は干渉計によって実測しており、過去と現在の直径の違いはこれを反映している。明るさは太陽の8000倍ないし1万倍と考えられている。なお、赤外線を含めて計算すると明るさは太陽の6.5万倍である。非常に大きな直径と太陽よりはるかに明るい光度、そして表面温度が3500Kであることからアンタレスが赤色超巨星であることがわかる。また、地球からの距離は約600光年と考えられている。

アンタレスと関連のある天体

IC4606

アンタレスの周りを取り囲んでいる赤く輝く散光星雲で、別名vdB107とも呼ばれる。散光星雲にはHⅡ領域(自ら発光する星雲)と反射星雲(近くの星の光を反射して輝く星雲)の2種類に分けられるが、IC4606は後者である。HⅡ領域は水素原子が発する6563オングストロームバルマー線Hα線と呼ばれる)を放つため赤く見えるものも多いが(例:ばら星雲)、IC4606はアンタレスの光を反射して輝いているのでHⅡ領域の赤い輝きとは本質的に異なり、HⅡ領域は深紅もしくはピンクがかった赤色のHα線で輝いているのに対し、IC4606はオレンジがかった赤色の連続光で輝いている。

Cr302

アンタレスはさそり─ケンタウルスアソシエーションさそり─ケンタウルス運動星団或いはさそり─ケンタウルス星流とも呼ばれる)の最も明るいメンバーであるが、そのなかでアンタレスを中心としたさそり座周辺(てんびん座へびつかい座も含む)の星を特にCr302さそり座OB2またはアンタレス運動星団とも呼ばれる)と呼ぶ。Cr302は渡部潤一が著した『図説 新・天体カタログ─銀河系内編』(立風書房1994年)によると散開星団に分類されるが、明るい星が多いものの散開星団としてはまばらなので見応えはあまりない。

Cr302の主なメンバー一覧

アンタレスの画像

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