金融
金融(きんゆう、英語:finance)とは、資金余剰者から資金不足者へ資金を融通すること。
金融を事業として行っている企業や団体として、銀行や証券会社、保険会社貸金業などがあり、総称として金融業(金融機関)と呼ばれる。空間上のお金の流れを指す為替に対する概念として、時間上のお金の流れを指す場合がある。
概要[編集]
金融は金銭の融通を意味する。様々な経済活動の結果、資金が不足する者と資金が余る者とが発生するが、その両者を結び、資金が必要とされるところへ配分させる機能がある。
資金不足とは、経営状態が悪化したためではなく、投資活動の結果起きるものを指す。融通された資金は何らかの形で貸し手へ利益をもたらすことが前提とされる。
金融は貸手と借手の関係から以下の2つに大別される。
また、同様に借手の調達方法で以下のようにも分類される。
資金を拠出した側の利益は金利、配当が代表的である。これに関連して、株式のキャピタルゲインなど派生的な利益がある。また、金融を仲介した者は、利ざやや手数料などを得る。
また、これらの軸となる資金融通に関連して、株式や債券、デリバティブの取引があり、これも金融に含まれる。
広義では、政府や企業、個人、組織などの経済主体がお金を調達し予算を配分し使用することによって生じるお金の流れ全体のことを金融と呼ぶ。そのため、金融業だけでなく政府に関連する財政、事業会社の活動、個人の家計も金融の一部である。
金融は、お金の「調達」、「配分」、「投資」/「融資」という3つの活動に分けて捉えられている。
金融ビッグバン[編集]
1980年代、イギリスではサッチャー政権により、ビッグバンと呼ばれる大規模な金融規制緩和が行われた。これにより、ロンドン・シティには外資系金融機関が進出。イギリスの金融機関は厳しい競争に見舞われることとなった。買収・合併によりイギリスの金融機関はきわめて少数となり、シティは外国勢による取引所と化した(ウィンブルドン現象)。
日本では、1996年に橋本龍太郎首相の指示により、日本の金融市場を2001年までにニューヨーク、ロンドンとならぶ国際金融市場として再生させるための金融システム改革が行われた。これを、日本版金融ビッグバンと呼び、フリー、フェア、グローバルの3原則が採用された。
この改革により、日本の金融市場は急速にオープンで競争的になり、いまや証券仲介手数料などは世界で最も低コストのクラスになっている。
学問としての金融理論の概要[編集]
ここでは、学問としての金融について述べる。 金融理論とは、経済学の一分野で、資金(貨幣)の概念、時間の概念、リスクの考え方やそれらの相互関係を解明するものである。20世紀以降急速に発達した分野で、以下のようなものを「金融」として論じている。
- 現金と現金以外の資産についての研究
- 経営及び資産の有効活用
- 事業計画についての有利性の判定
- 余資運用の科学的分析
- 金融派生商品、為替の市場分析
- 小口の企業債権や個人のカーリース債権やマイホームローン債権のファンディング
金融理論は経済学の中でも非常に実践的分野(とりわけコーポレートファイナンスやデリバティブズ、資本市場分析など)を含むことから、金融の基礎的な概念の把握を通り越して企業金融の一部としての「資金調達理論」やその中の「信用リスク測定」、「財務格付理論」などに注目されがちだが、本来はマクロ的には家計、企業、政府、国外市場の相互間における資金の有効需給を目的としたものであり、ミクロ的には個人の生涯の貯蓄や投資、ローン、保険の利用の効率化、企業の資金調達、運用の効率化のための科学領域である。
学問分野としてのファイナンス理論は、新しい学問であり、経済学、数学、工学にまたがる学際分野としても位置づけることもできる。なかでも数理的側面や工学的側面の強いものは金融工学と呼ばれる。近年、証券実務、銀行実務に極めて大きな影響を及ぼすため、金融外務員などの公的資格を取得するために学ばれることが多い。
個人金融理論[編集]
家計にまつわる金融について論じる領域で以下のようなものがあげられる。日本では貯蓄と保険によることが多かったが、近年、「貯蓄から投資へ」との政府の方針やフィナンシャル・プランナーの資格取得者が広まり、実践分野での議論や活動が活発化している。
- 将来のライフプランでいつ、どの程度の資金が必要で、必要資金をどのように調達するか
- その資金は貯蓄によるべきなのか、借り入れによるべきなのか
- ライフプランニング上、個人が安全資産として保有すべき資産の量はどの程度か、保険の適正購入レベルはどの程度か
- 家計における遺産相続のあるべき金額とはどの程度か
- 課税が家計の金融行動にどのような影響を及ぼすのか
- 信用収縮が家計の資産形成や運用に与える影響
- 不透明な将来の経済環境における資産形成の方法
個人の金融行動は教育投資、不動産や自動車など高額な生活必需品の購入、保険商品の購入、証券投資、退職後の生活資金のための資産形成などである。なお、金融行動には結果としての借入金の返済が含まれる。
企業金融理論[編集]
企業金融は、企業が経済活動を行う上で必要となる資金をまかなう金融について論じる領域である。大企業だけではなく、CDOなどを通じた中小企業の金融についても論じられる。一般的にリスクの最小化とリターンの最大化を定量的に明示しつつ行うものである。
資本調達[編集]
資本調達の手法[編集]
- 超長期資本調達(最終弁済まで7年超)
- 証券化
- 匿名組合出資
- ベンチャーキャピタル
- 私募債(en:Debenture)
- セールス&リースバック
- プロジェクト・ファイナンス
- 中長期資本調達(最終弁済まで2年超7年以下)
- タームローン
- ファイナンスリース
- ハイヤーパーチェス(en:Hire purchase)
- オペレーティングリース
- 短期資本調達(最終弁済まで2年以下)
資本市場からの調達[編集]
金融市場からの調達[編集]
- 金融市場からの短期資金調達
- オープンアカウントクレジット
- 当座貸越
- ショートタームローン
- コマーシャルペーパー
- 売掛債権等の証券化
借入資本による調達[編集]
- 負債による調達(主として社債)
- 償還社債
- 永久債
- コマーシャルペーパー
- ハードコア債(高利の無期限コーラブルCP)
株主資本による調達[編集]
借入資本と株主資本の違い[編集]
- 借入資本
- リターンについて会社の業績変動の影響を受けない
- 経営参加権がない
- 会社倒産時に優先して弁済を受けられる
- 株主資本
- リターンについて会社の業績変動の影響を受ける
- 経営参加権がある
- 会社倒産時には最後に弁済を受ける
固定資本と運転資本の違い[編集]
運転資本を参照
短期金融資産の管理と運用[編集]
与信(売掛債権)[編集]
与信とは取引先や顧客に対して、財やサービスを提供する際に即時決済せず後日まとめて支払いを受けることを認めることを言う。
与信取引のメリット[編集]
- より多くの取引先、顧客を獲得できる
- 後払いを認めることにより、多少高値でも取引が成立する
- 取引先、顧客に繰り返し利用してもらえることでのれんが発生する
- 取引先や顧客が先に財やサービスを取得でき、後日に支払いができるメリットを享受できる
- 農家でたとえると、種籾や農機具を先に購入して支払いを収穫後に行うようなことができる
- 農産品、工業製品の流通及びサービスを促進する
- 延払いは宣伝ツールとして利用が可能
- 売上高を増加させるように働く
与信取引のデメリット[編集]
- 売掛債権の貸倒リスク
- 高額の金利手数料を負担させる可能性
- 消費者の支払能力を超えて購入させるリスク
- 必要運転資本が多くなる
- 自社の倒産リスクの増加
与信の形式[編集]
- 販売当事者による与信
- 通常の与信販売
- 割賦販売
- 為替手形の利用
- クレジットカードの利用
- 契約当事者の与信
- 小口債権の証券化、ファクタリング
与信に影響を及ぼす要素[編集]
- 企業の業態、業容
- 財政状態
- 製品の耐久性
- 生産から出荷までのリードタイム
- 業界の競合と主要な競争相手の信用状態
- 国の経済情勢
- 金融機関との関係
- 売上割引制度
- 債務者の業種と財政状態
与信の回収[編集]
- 延滞をチェックする
- 顧客リスト、得意先元帳の名寄せをする
- 通常のレシートに延滞についての注意書を添付する
- 請求書を送付する
- 一度の請求で入金がない場合、数回、請求を繰り返す
- 訴訟の可能性について警告する
有効な与信管理のメリット[編集]
- 売上高を増加させる
- 債権の貸倒を減少させる
- 利益を増加させる
- 筋の良い顧客を増加させる
取引信用度の情報筋[編集]
- 信用取引上の照会先
- 銀行信用照会先
- クレジット代理店
- 地元商工会議所
- 雇用先(個人の場合)
- 信用状発行依頼書
与信業務を行う部署の役割[編集]
- 訴訟事務
- 決算書の作成に必要な債権残高の報告や貸倒引当金の見積もり等の手続き
- 与信設定のための方針と手続きの周知徹底
- 個別の与信限度額の設定
- 得意先元帳を管理し請求書を確実に送付する
- 綿密な調査を掛売先に対して行う
- すべての取引記録の管理
- 売掛金の入金を確実にチェックする
- 与信管理情報や改善情報を適時にマネジメントに報告する