平和
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平和(へいわ)とは、狭義では戦争と対極にある状態で、暴力的な政治的活動が行使されない状態、争いがなく穏やかな状態を言う。また、人間が相互の恒常的な自由と秩序・安寧・平安などを実現・維持している状態であると言える。例えば、具体的な戦闘が終結しているような場合においても、地雷が依然として埋まっているような土地では、生活に対する危険な状態が継続していて、完全に平和になったとは言いがたい。
貧困・飢餓・疾病・教育格差・情報格差などの存在が必然的に闘争へと結びつくという立場からは、これらの無い状態を平和の要件とすることもある。大きな災害も秩序を喪失させることが多いため、これも平和の対極に置く考えもある。
戦争と平和[編集]
トルストイを代表とする多くの作家・表現者が『戦争と平和』と言う題名の作品を著しているように、戦争は平和を破壊する重大な行為であると言う考えから、単純に戦争がない状態を意味して「平和」と呼ばれることがある。イマヌエル・カントの「永久平和のために」が平和に関する古典とされている。
平和の方法論[編集]
平和を実現するためのモデル的な方法論はいくつかあるが、根本的な解決にはさまざまな要素により未だ至っていない。
- 強力な支配者が覇権を維持することによって秩序を保とうという覇権主義の考え方。
- 各人・各国がお互いの独立と権利と自由を最大限に尊重・保障しながら発展しようという国際協調主義の考え方。
- 複数の国家が連合した国際機関を介した集団安全保障によって実現しようという考え方。
例として
などが挙げられる。
日本国憲法における平和[編集]
憲法学などの授業で使用する解釈として「武力による平和」と「武力なき平和」がある。「武力による平和」は武力の行使を「国防・自衛・狭義の安全保障」とする解釈である。これは最低限の武力を持ち必要に応じて行使することで平和を保とうという考え方であり、泥棒などの犯罪者が地域や家屋に侵入すればしかるべき装備で撃退するのは当然だという考え方に基づいていると言える。「武力なき平和」は「武力があるから戦いが起こる」とする解釈である。世界大戦をはじめとするかつての戦争の大半が「自衛」を口実とした侵略戦争だったことに基づき、全ての人々が一斉に武力を放棄することで平和を保とうという考え方である。しかし「武力」とは相対的なものである。現在武力とされているものを撤廃すると、現在のところは兵器ともいえない物(工業製品など)が武力として浮上する。このような武力撤廃を繰り返した先に到達する「武力のない状態」というものがどのような状態であるのか示した具体象は提示されてはいない。大量破壊兵器を廃棄対象に限定するという考え方もあるが、反核運動の現状が示すように、これについても全世界的な廃棄に至る実効的プロセスは提示されていない。
宗教における平和[編集]
仏教やサンスクリット哲学のように、内的状況の浄化によって、あらゆる嫌悪から自らを解き放とうとする形而上学的考え方が古くから在る。例:マハトマ・ガンジー
平和の課題[編集]
人類は歴史において継続的に争ってきた。史料が残っている6000年以内に発生した戦争だけに限ってもその回数は15000回以上であると考えられており、またドイツ社会学者のソローキンによれば12世紀から19世紀の間の戦争は平和期間を超え、その平和期間も軍事力の整備に当てられた。第二次世界大戦が終結した1945年から1990年の間に戦争や内戦は150回以上発生している。戦争が本当に世界から無くなった日は三週間だけであったとも言われている。「平和が普通であって、戦争は異常である」という戦争観が必ずしも正しくないことがここから分かる。
- 国際連合は平和のために創設されたが、多くの問題を内包している。国連憲章にある集団安全保障は冷戦における米ソの対立により機能不全に陥った。現在世界各地で行っている平和維持活動も人材や資金の確保、その権限や任務内容において数多くの問題がある。特にルワンダにおける平和維持活動は国連の限界や平和維持活動の問題を大きな問題を浮上させることとなった。
- テロは近年一般化しつつある手段であり、その社会に与える影響力・破壊力は大きい。しかし社会現象的な側面もあり、軍事力や法律だけの政策では解決が難しい。テロは非常に安価で安易な攻撃方法なので、その対策体制を維持するには高度な費用と手間がかかり、また監視体制や公安活動に対する市民の反発を買いやすく、テロリストが優位に立ちやすい。
- 大量破壊兵器の拡散は核兵器の開発技術、核物質、技術者が世界規模に拡散し、また比較的製造が簡単な生物兵器や化学兵器が世界各地に流通することであり、テロと結びつけば治安が大きく破壊される。また積極的な軍事攻撃を方針とする国家に渡れば、軍事力の不均衡をもたらす可能性がある。
- 民族・宗教・経済格差などの要因による紛争は歴史においても恒常的な戦争の誘因となってきた。国内における民族衝突や経済格差が深化すれば、国家間の戦争だけでなく、国内での内戦やクーデター、革命などに結びつく。しかし、すべての蜂起が最悪の結果に繋がったというわけではなく、民主主義を確立するための王制との争いは歴史的な視点に立てば一定の成果が得られたものである。しかし、いたずらに戦禍だけが拡大していき、結果的には経済的、政治的に大きな被害をこうむることとなった事件も多々ある。その内容、性質、方向性などによって結果は変わる。
- 歴史的、とりわけ近代以前には地域内において戦争のない状態のみをもって平和とされていた。例えば、日本の豊臣政権は、一連の「豊臣平和令」によって村落から大名まで紛争の解決方法として武力による自力救済(戦闘行為)が日常的に行われてきた戦国時代を終わらせる事には成功したが、同政権とこれに続く江戸幕府による「300年の太平」は実際には封建体制と身分制度の強化による民衆への力による強権的支配と一体化したものであった。これに対して現代では、様々な要因によって機会の均等を奪われたり、選択肢を持っていないことで自己実現ができない場合には平和という概念には当たらないと考えられている。要出典
その他[編集]
- 平和の象徴として有名なのが鳩とオリーブである。これについてはノアの方舟が関係している。
- 平和とは言いかねる状態が「交通戦争」「受験戦争」のように戦争になぞらえて表現されることがある。
- 「平和」を含む社名、道路名として、平和(パチンコ・パチスロメーカー)、平和不動産、平和堂、平和交通、平和通りなどがある。
関連項目[編集]
- 安全保障
- 戦争
- 紛争
- 平和学
- 平和運動
- 平和プロセス
- 平和主義
- 平和党
- 平和主義者の一覧
- 非暴力
- 民間防衛
- パックス・ロマーナ
- パックス・ブリタニカ
- パックス・アメリカーナ
- 平和学科
- 日本の平和の鐘 w:Japanese Peace Bell
- 平和宣言
- 不戦条約『戦争ノ抛棄ニ関スル条約』 (パリ条約、ブリアン=ケロッグ規約) (1929年)
- 地球平和監視時計テンプレート:peace stub
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