マットペイント

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マットペイントmatte paint)はSFXのひとつで、映像合成する時に描かれた背景を用いる技術のこと。または、その描かれた背景。

もともとは油絵の具アクリルパステルフェルトペンなど、あらゆる画材を使用して描く、手描きの絵として発展した。

現場でキャメラ前に絵や写真を修整したものをかざして撮影する方法(グラスショット)と、実写撮影後にスタジオに持ち帰って作画しながら完成度を上げていく方法がある。 前者は「撮り切り」で完成する反面、絵を現場で完成せねばならず、現場の天気、陽の傾き等とのシビアな勝負で、短時間で高いクオリティを作る技量が要求されるため、写真の切り抜きや現場の陽を生かしたミニチュアと併用する場合もある。 後者にもいくつか手法があり、最初に現場で撮影したフィルムをすぐに現像せず、本番とは別に余分に回しておいたフィルムを使って短いテスト撮影を繰り返し、実写と絵のなじみを近づける方法を生合成と呼び、オリジナルフィルムに直接合成されるので、仕上がりの鮮鋭度が良い反面、オリジナルをいじるという大きなリスクを負う手法で、それ以外の方法は、実写撮影分は一度現像され、オプチカルプリンタースクリーンプロセスで絵と合成されるので監督は気に入るまで何度でも本番をやり直せる。

マットペイントは主に1m×2m前後の大きなメゾナイトボード(パーティクルボード)に描かれるか、ガラス板に描かれていた。 実写との合成を単純に生合成する場合(この場合は実写撮影時は絵の部分を黒く覆い、作画時に実写が入る場所を黒く塗る)は後者を、実写の映像をリアプロジェクションで投影する場合(この場合は合成するべき場所にスクリーンを置くために絵の具を削り落として透明にする)は前者を採用する。 日本以外の国でポピュラーな画材はリキテックスなどのアクリル絵の具に空や雲などのグラデーションの表現には乾燥の遅い油絵の具、部分的な柔らかい表現にはパステル、シャープなラインを引く場合にはフェルトペンなども使用し、殆どの場合、色を落ち着かせる(特にアクリル絵の具は乾くと色が浅くなってしまう)ために透明なアクリルラッカーを使って仕上げる。 リアルで有機的なムラを描き出すためにを多用し、日本でよく使われるエアブラシは殆ど使われることはない。 昔の日本のマットペイントのリアリティがイマイチなのは、描画サイズがアニメのセル程の大きさしかなく、エアブラシを多用している事もその一因であろう。

マットペイントを作画する際に必要なのはディテールではなく、形、パース色の配置が”それらしいか?”という事に最大の注意を払う。 空気感の表現も非常に重要で、部分的に拡大して凝視しなければ分からないような部分は手を入れなくても仕上がりに問題無い場合が殆ど。 一般に明るい日中より、夜(ナイトシーン)の方が作画が楽で成功しやすい。

1990年代以降パソコンの導入が著しく、Adobe Photoshopなどのツールを使用して写真を加工して描かれることが多い。 アナログの時代と違ってカメラの視点が3次元的に移動したりすることが可能になっており、それは2Dの平面に描かれていた当時と違い、数枚の絵を3次元空間上に配置してCGのカメラで移動することにより非常にリアルで立体的なショットが得られる。 言ってみれば、テクスチャを非常に注意深く描いたCG映像だが、近年いわゆるリアルなCGIとマットペイントの呼び分けが難しくなってきている。 デジタル以前はフィックスが原則だったのが、マッチムーブ技術が完成の域に達した現在、視点が移動する実写にもマットペイントを施すことが出来、ますます表現に幅が出てきている。

CGアーティストは世の中に大勢いるが、内外を問わず優秀なマットペインターは慢性的な人材不足である。

マットペイントを描く人間をマットペインターと呼ぶ。有名なマットペインターにはピーター・エレンショウハリソン・エレンショウ、マイケル・パングラジオ、上杉裕世らがいる。

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