フィギュアスケート
[[Image:フィギュアスケート1.jpg|400px|thumb|フィギュアスケート]] [[Image:フィギュア日本代表.jpg|350px|thumb|2014年[[ソチオリンピック]]にてアイスダンス・フランス代表のナタリー・ペシャラがアップした画像]] '''フィギュアスケート'''は、[[スケートリンク]]の上で[[ステップ (フィギュアスケート)|ステップ]]、[[スピン (フィギュアスケート)|スピン]]、[[ジャンプ (フィギュアスケート)|ジャンプ]]などの技を組み合わせ、音楽に乗せて滑走する[[競技]]。名称はリンクの上に図形(フィギュア)を描くように滑ることに由来するもので、立体造形物の[[フィギュア]]とは関係ない。[[シングルスケーティング]]、[[ペアスケーティング]]、[[アイスダンス]]は[[冬季オリンピック]]正式競技。また、団体で演技する[[シンクロナイズドスケーティング]]も[[世界シンクロナイズドスケーティング選手権|世界選手権]]が行われている。 == 歴史 == {{Main|フィギュアスケートの歴史}} [[スケート]]の起源についてははっきりしないが、すでに[[先史時代]]には[[北ヨーロッパ|北欧]]で動物の骨を[[ブレード]]にした[[スケート靴]]が用いられていた。それが南下して[[オランダ]]に伝わり、[[運河]]の発達により国民各層で行われるようになった。 [[農民]]たちは凍った運河の上で目的地にできるだけ早く到着するスケートに熱心であったが、[[貴族]]たちの間では競技性よりも優雅さやマナーを重んじた芸術的スケートが好まれた。彼らの滑走様式はオランダ人の弧線滑走という意味の「ダッチロール」と呼ばれるようになり、フィギュアスケートの原型となった。これが、やがて[[スコットランド]]に伝わり愛好家らにより図形を描いて滑走する技術が研究されるようになった。一方で[[フランス]]や[[ドイツ]]においては芸術的な滑走動作が研究された。 その後、[[1742年]]に[[イギリス]]の[[エディンバラ]]で世界初のスケーティングクラブが発足して以降、各国においてスケーティングクラブが設立され、その国独自の形態でフィギュアスケート競技会も行われるようになった。初めは[[ヨーロッパ]]全域で盛んになり、[[1882年]]には[[ウィーン]]でフィギュアスケート最初の国際大会が開催された。[[1892年]]には、スケート競技を国際的に統轄する[[国際スケート連盟]]が創立され、[[1896年]]から[[世界フィギュアスケート選手権|世界選手権]]が開催されるようになった。ただしこのときは男子シングルのみであり、女子シングルは[[1906年]]、ペアは[[1908年]]にそれぞれ別個に世界選手権に相当する大会が開かれるようになった。 日本では[[1922年]](大正11年)2月11日、日本初のフィギュアスケート公式試合が[[諏訪湖|下諏訪リンク]]で行われた([[全日本フィギュアスケート選手権]]参照)。なお、それより14年前の[[1908年]](明治41年)には[[下駄スケート]]による[[スピードスケート]]の大会が諏訪湖で開催されている。アイスダンスは[[1952年]]になって初めて世界選手権の種目として加わった。 [[近代オリンピック|オリンピック]]では、[[ロンドンオリンピック (1908年)|1908年の夏季オリンピック]]で初めて実施された。[[夏季オリンピック]]ではこの大会と[[アントワープオリンピック|1920年の大会]]のみで行われており、[[1924年]]に[[シャモニーオリンピック]]が開催されてからは毎回[[冬季オリンピック]]で実施されている。 == 用具・施設 == ; スケート靴 : フィギュアスケートには専用の[[スケート靴]]をはく。男性は黒、女性は白やベージュの靴をはくことが多い。スケート靴は革もしくはプラスチック製の靴の部分とブレードと呼ばれるややカーブした金属部分からなり、重さは約2kg ある。ブレードが氷に直接接する部分をエッジと呼ぶ。エッジの厚さは3-4mm 程度で、中央には溝が入っている。 : フィギュアスケート用のブレードは先がギザギザになっているのが特徴で、このギザギザの部分をトウピック(トウ)といい、ジャンプやスピンのときなどに使われる。トウの部分が小さくかかとの部分が短いアイスダンス用のブレードもある。シングルの[[コンパルソリーフィギュア]]ではトウの小さいブレードやトウのないブレードが用いられた。 ; スケートリンク : フィギュアスケートの[[スケートリンク]]は60m × 30m のサイズが国際規格となっている。国際規格より若干狭い200フィート×85フィートのプロアイスホッケー用のリンクを使用することもある。競技会では屋内リンクを使うのが一般的であるが、屋外リンクで五輪のフィギュアスケート競技が行われたケースもある。競技の前後や合間には氷の表面を滑らかに保つため、整氷車や手作業による整氷が行なわれる。 {{-}} == 競技会 == {{Main|フィギュアスケート競技会}} フィギュアスケートの競技会にはアマチュア資格をもつ選手が出場できる。なお、フィギュアスケートを目にすることのできる場としては、競技会とは別に、[[アイスショー]]もある。 == 競技の技術的要素 == {{Main|フィギュアスケートの技術と得点}} 男子および女子シングルでは、'''ジャンプ'''、'''スピン'''、'''ステップシークエンス'''、'''スパイラル'''などが競技の技術的な構成要素となる。ペアではさらに'''スロージャンプ'''、'''リフト'''、'''ツイストリフト'''、'''デススパイラル'''が加わる。アイスダンスではジャンプやリフトなどに制限がある一方、ステップシークエンスにより重点がおかれる。要素ごとにさまざまな種類があり、その難易度に応じて配点も定められている。 === スケーティングの基本とエッジ === フィギュアスケートは、基本的に片足で、インサイドかアウトサイドどちらかのエッジに乗って滑走する。 氷についているほうの足はスケーティング・レッグ(滑り足)、ついていないほうの足はフリー・レッグ(浮き足)と呼ばれる。右足をスケーティング・レッグとしたとき(右足片方だけで滑るとき)、氷の表面に対してスケート靴のエッジを、 * まっすぐに立てる(フラットに乗る)と、直進する。 * 内側に傾ける(インサイドに乗る)と、左に曲がる。 * 外側に傾ける(アウトサイドに乗る)と、右に曲がる。 滑走には前方(フォワード)と後方(バックワード)の2つの方向があり、また右足(ライト)と左足(レフト)それぞれで滑るので、次の8つのパターンがあることになる。 * ライト・フォワード・インサイド(ライト・フォア・イン、RFI) * レフト・フォワード・インサイド(レフト・フォア・イン、LFI) * ライト・バックワード・インサイド(ライト・バック・イン、RBI) * レフト・バックワード・インサイド(レフト・バック・イン、LBI) * ライト・フォワード・アウトサイド(ライト・フォア・アウト、RFO) * レフト・フォワード・アウトサイド(レフト・フォア・アウト、LFO) * ライト・バックワード・アウトサイド(ライト・バック・アウト、RBO) * レフト・バックワード・アウトサイド(レフト・バック・アウト、LBO) これらの組み合わせによって多様なステップとターンが生み出され、ステップとターンを連続して行うものがステップシークエンスである。 == 競技の演出的要素 == ; 衣装 : 競技会におけるフィギュアスケートの衣装は、スポーツ競技にふさわしい品位を保ったものでなければならない。初期の男子は[[礼装]]に近い格好(黒の背広にネクタイ)であったが、徐々に舞台衣装のように視覚効果を重視したデザインや色のものを着るようになった。競技においては過剰な露出や小道具の使用は禁止されており、エキシビションでのみ容認。 : 男子は長[[ズボン]]の着用が義務付けられている。 : シングルやペアの女子はジャンプなどの動作で邪魔にならないよう、[[レオタード]]にミニ[[スカート]](正しくはスカートではなく[[フリル (服飾)|フリル]]だという。理由は、下半身だけ脱ぐ事は出来ないから)を組み合わせた衣装を着用することが多く、アイスダンスではスカート丈が長い傾向がある。スカートをはく女子選手は[[タイツ]]を着用する。中にはブレードだけを外に出してスケート靴ごとタイツでくるむようにしてはく選手もいるが、これは靴の傷や汚れを隠す、足を長く見せる、など理由はさまざまである。2005-2006シーズン以降、女子選手のスカート着用義務が廃止されたことをうけ、パンツルックで演技するスケーターも増えている。 : 露出を避けるために(レギュレーションに加え、リンク内は氷が張られているので非常に寒い)、肌の色に近い生地を用いて、見掛け上ワンショルダーや露出の多い服装に見えるような工夫も見られる。 : 体に密着せずゆとりのあるデザインの場合は滑走時に布と体の間にはらんでしまう空気をよく通して空気抵抗を減らすために[[絹]]を用いたり、そのほか照明の下で映えるよう光沢のある[[本しゅす|サテン]]や[[レザー]]といった多種多様な生地や[[スパンコール]]なども用いられる。衣装の制作は[[バレエ]]など舞台芸術関連の業者に発注することが多いが、小規模ながらフィギュアスケートの衣装制作を専門とする業者もいる。また選手の家族など周囲の人々が手作りで縫製する場合もある。 ; 化粧 : 女子の場合、きれいに見せるため、[[化粧]](それも濃い)をすることが多い。 ; 音楽 : 音楽を使用することが前提である。 : アイスダンスでは歌詞の入った音楽を使ってもよい。 ; 時間 : 競技においては、[[#各種目におけるプログラムの規定|規定]]に定められている演技時間から逸脱してはならない。動きの停止と音楽を規定時間に合わせて編集しておく必要がある。 ; 振付 : フィギュアスケートの振付は、[[振付師]]をはじめ、コーチや場合によっては選手自身によって行なわれる。フィギュアスケートの競技経験のある者が振付を担当するのが一般的である。 なお、エキシビションでは上記のような制約はない。競技においては演出的要素に違反があったと[[フィギュアスケートの技術と得点#ジャッジ|ジャッジ]]にみなされた場合は[[#ディダクション|ディダクション]]による減点を受けることとなる。 == 各種目におけるプログラムの規定 == 共通事項として、フィギュアスケートのルールは非常に細かく定められており、[[#年齢別クラスと級|クラス毎]]に規定に若干の違いがある。 === シングル === 男子女子ともに、[[シングルスケーティング]]のプログラムには、ショートプログラムとフリースケーティングがあり、先にショートプログラムが行われる。大会によっては、ショートプログラムで所定の順位に入った者のみでフリースケーティングを行うこともある([[冬季オリンピック]]など)。 {{-}} === ペア === ペアのプログラムも、シングル同様ショートプログラムとフリースケーティングがあるが、こちらは男女2人でしか表現できない技に重点が置かれる。演技の中には失敗すると危険な要素も多く、フィギュアスケートの中でも、最もアクロバティックな競技と言われる。 {{-}} === アイスダンス === {{main|アイスダンス}} ペア同様、男女2人で競技されるが、こちらはリフトやジャンプは制限されており、ステップの技術が中心となる。氷上の[[社交ダンス]]とも呼ばれる。2009シーズンまではコンパルソリーダンス、オリジナルダンス、フリーダンスの3つのプログラムが行われたが、2010シーズンより、ショートダンス、フリーダンスの2つのプログラムに変更された。 {{-}} == 採点法 == === 6.0満点方式(旧採点方法) === [[フィギュアスケートの採点法#ISUジャッジングシステム|ISUジャッジングシステム]]施行以前の2002年までに行われていた採点方法の総称である。 === ISUジャッジングシステム === 2003年シーズンからの採点法。以前に用いられていた採点方法に対する呼称として便宜上「新採点システム」と呼ばれることも多い。 {{Main|フィギュアスケートの採点法}} == 選手一覧 == {{Main|フィギュアスケート選手一覧}} == フィギュアスケートを題材とした作品 == === 小説 === * 『レカミエー夫人』([[久生十蘭]]、国書刊行会久生十蘭全集など)登場人物の一人にフィギュアスケート教師がおり、スケートのシーンも書かれる。 * 『[[銀盤カレイドスコープ]]』([[海原零]]、[[集英社]][[スーパーダッシュ文庫]]、本作を原作とした、[[漫画]]・[[アニメ]]・[[ゲーム]]作品もあり) * 『スケーターワルツ』 ([[加賀乙彦]]、筑摩書房) * 『てるてる坊主の照子さん』([[なかにし礼]]、新潮社)ドラマ『[[てるてる家族]]』の原作。 * 『スケーターズ・オン・ザ・エッジ』(小泉あいこ、ブイツーソリューション) * 『走れピンクのシンデレラ』(水城昭彦、集英社) * 『ふれていたい』([[小手鞠るい]]、求竜堂) * 『夢のしずく 短編集』(木崎詳子、健友館) * 『君がいてくれて』(木崎詳子、健友館) * 『Field,wind 青春スポーツ小説アンソロジー』([[あさのあつこ]]他、ジャイブ) * 『マジカル少女レイナ幻のスケートリンク』(石崎洋司、岩崎書店) * 『銀盤を駆けぬけて』 (春原いずみ、キャラ文庫・徳間書店) * 『銀のスケート―ハンス・ブリンカーの物語』(メアリー・メイプス・ドッジ、岩波少年文庫) * 『アンジェリーナはスケーター』(キャサリン・ホラバード著、 ヘレン・クレイグ作画、講談社) * 『サナのはじめてのスケート』(なりたまさこ、ポプラ社) * 『ガラスの森』(小手鞠るい、ポプラ文庫ピュアフル) * 『銀盤のトレース』([[碧野圭]]、[[実業之日本社]]) * 『クリスタルエッジ』([[風野潮]]、[[講談社]]) その他、[[レフ・トルストイ|トルストイ]]『[[アンナ・カレーニナ]]』にスケートをするシーンが出てくる。 === 絵本 === * 『アイススケートペンギン』([[塚本やすし]]、ディスカヴァー・トゥエンティワン) === 漫画 === * [[スポーツ漫画#フィギュアスケート]]を参照のこと。 === 映画 === * [[ソニア・ヘニー#主な出演映画|ソニア・ヘニー出演映画]](1936-1948年、米国) * [[イナ・バウアー#映画出演|イナ・バウアー出演映画]](1961-1962年、米国) * 「[[アイス・キャッスル]](Ice Castles)」(1978年、米国) * 「[[時計 Adieu l'Hiver]]」([[倉本聰]]監督、[[中嶋朋子]]主演、1986年、日本) * 「[[冬の恋人たち]]([[:en:The Cutting Edge|The Cutting Edge]])」(1992年、米国) * 「[[アイス・プリンセス]]([[:en:Ice Princess|Ice Princess]])」(2005年、米国) * 「[[冬の恋人たち2]]([[:en:The Cutting Edge: Going for the Gold|The Cutting Edge: Going for the Gold]])」(2006年、米国) * 「[[俺たちフィギュアスケーター]](Blades of Glory)」(2007年、米国) * 「[[COACH コーチ 40歳のフィギュアスケーター|COACH コーチ]]」(2010年、日本) === テレビドラマ === * 「[[てるてる家族]]」([[連続テレビ小説|NHK連続テレビ小説]] 2003-2004年、日本) * 「[[赤い奇跡]]」(2006年、日本) * 「[[中学生日記]]~溺れる熱帯魚~」(2006年10月16日放送、日本) * 「[[スケート靴の約束]]」(2013年12月25日放送、日本) === ゲーム === * 「[[くるくる◇プリンセス 〜フィギュアできらきら☆氷のエンジェル〜]]」([[スパイク_(ゲーム会社)|スパイク]]、2007年) *「[[くるくる◇プリンセス 〜夢のホワイト・カルテット〜]]」([[スパイク_(ゲーム会社)|スパイク]]、2007年) == 参考文献 == * [http://www.isu.org/vsite/vnavsite/page/directory/0,10853,4844-152055-169271-nav-list,00.html ISU Judging System]([[国際スケート連盟]]{{en icon}}) * [http://www.isu.org/vsite/vnavsite/page/directory/0,10853,4844-130127-131435-nav-list,00.html ISU Communication](国際スケート連盟{{en icon}}) == 外部リンク == * [http://www.isu.org/ 国際スケート連盟 (ISU)] * [http://www.skatingjapan.or.jp/ 日本スケート連盟 (JSF)] * [http://www.geocities.jp/judging_system/index.html フィギュアスケート資料室](現在採点方式についての詳細など) {{フィギュアスケート}} {{DEFAULTSORT:ふいきゆあすけえと}} [[Category:フィギュアスケート|*]] [[Category:オリンピック競技]]