線形代数学
線形代数学(せんけいだいすうがく、linear algebra)は、行列や行列式に関する理論を体系化した代数学の一分野である。
概要
行列は種々の変数の一次の関係式で表される関係を記述するものであり、もともとは連立一次方程式の解法の研究である。行列の記法は、連立方程式の解法に関してケーリー、シルヴェスター、フロベニウス、アイゼンシュタイン、エルミートがそれぞれ同時期に提唱した。最も早くこの理論を提唱したのはアイゼンシュタインであるが、皆、学会からはなかなか注目されずケーリーが取り組んでいたものが30年後にシルヴェスターによって再発見されたことで評価され始めるようになった(シルヴェスターが個別に発見したのか、ケーリーの理論を知っていたのかは詳しくは分かっていない)。
連立方程式を一次変換と捉える立場からは、線形代数学は、高次元のまっすぐな空間(現代的にいえばベクトル空間)の幾何について研究する学問であると言うことができる。このようにベクトル空間とその変換の理論として見るとき、線形代数学はしかし高々有限次元のベクトル空間の理論である。これを無限次元のベクトル空間で対象とするためには、多分に空間の位相とそれに基づく解析学が必要となる。無限次元の線形代数学は関数解析学と呼ばれる。これは、無限次元のベクトル空間が、ある空間上の関数全体の集合として典型的に現れるからである。
和算家の関孝和も現在の行列式に当たるものを独自に開発・研究していた。
線形代数学においては線形性が一つの重要なファクターであり、それを意味する述語 linear を冠する概念は多いが、その日本語訳については、"線状"、"線形"、"線型"、"一次" などといった揺れが存在する。例えば、線形代数学は線型代数学と書かれることも多い。
用語
- ベクトル空間(線形空間)- ベクトル - 線形部分空間
- ユークリッド空間 - アファイン空間
- 内積空間
- 内積 - エルミート内積 - 直交補空間 - 直交射影
- 線形結合(一次結合)
- 線形従属(一次従属)- 線形独立(一次独立)
- 基底 - 標準基底 - 次元 - グラム・シュミットの正規直交化法
- 行列
- 実行列 - 複素行列
- 正方行列 - 正則行列(GL(n,R), GL(n,C)) - 逆行列 - 単位行列 (スカラー行列) - 零行列 - 冪零行列
- 対角行列 - 三角行列(上三角行列、下三角行列)
- 転置行列 - 随伴行列
- 直交行列(O(n)) - 特殊直交行列(SO(n)) - ユニタリ行列(U(n)) - 特殊ユニタリー行列(SU(n)) - シンプレクティック行列(Sp(n)) - (行列の)指数関数
- 対称行列 - 反対称行列(歪対称行列) - エルミート行列 - 歪エルミート行列(反エルミート行列) - 正規行列
- 置換行列 - 隣接行列
- 行列式
- 置換 - 小行列式 - 余因子展開 - ヤコビアン - 関数行列
- 線形方程式系(連立一次方程式)
- 行列の基本変形 - クラメールの公式 - シルベスター行列
- 線形変換(一次変換)
- 線形写像(線形変換) - 相似 - 成分行列
- 階数 - 像 - 核(核空間)
- 対角化 - スペクトル分解 - ジョルダン標準形 - 特異値分解
- 固有空間
- 固有値 - 固有ベクトル - フロベニウスの定理 - 固有多項式(固有方程式) - 最小多項式 - ケイリー・ハミルトンの定理 - 縮退
- テンソル
- 双対空間 - 双線型形式 - 対称形式 - エルミート形式 - テンソル代数 - グラスマン代数
関連項目
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