ブードゥー教

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2007年5月23日 (水) 02:31時点におけるキリカ (トーク | 投稿記録)による版

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ブードゥー教(ブードゥーきょう、Voodoo)は、カリブ海の島国ハイチやアメリカ南部のニューオーリンズなどで信仰されている民間信仰

概説

ファイル:VeveOgoun.png
火、鉄、政治、戦争の神格オグン (Ogoun) のシンボル

「ブードゥー(あるいは「ヴードゥー」)」という呼び方は英語で、ハイチ西アフリカではヴォドゥン(Vodun)と呼び習わされている。ヴォドゥンとは西アフリカのフォン語(Fon)で「精霊」の意味。ヴォドゥンはベナンなどの西アフリカで広く信じられており、ベナンの国教となっている。

キューバサンテリアブラジルカンドンブレマクンバといった信仰の仲間である。もっとも近年はカリブから欧米への移民が相次いでいるため、欧米各国でも移民の一世、二世らによって信仰されている。「宗教」と規定されることも多いが、教義教典がなく、また宗教法人として認可された教団も皆無で、布教活動もしないため、民間信仰といった方が現状に即しているといえる。その儀式はドラムを使ったダンスや歌、動物の生贄(いけにえ)、神が乗り移る「神懸かり」などからなる。

ローズマリー・エレン・グィリー・著 荒木正純・松田英・訳/監訳『魔女と魔術の辞典』(原書房 1996年)や檀原照和・著『ヴードゥー大全』(夏目書房 2006年)によると、サンテリアやカンドンブレ、アフリカの民間信仰なども含めたブードゥーならびに類似信仰の信者は、全世界で五千万人にも上るという。これはチベット仏教の三千万人を遙かにしのぐ数字である。

成立の背景

ファイル:IslandSalvationBotanicaPiety.jpg
ブードゥー教のハーブなどの材料を販売店(Salvation Botanica、ニューオーリンズ) キリスト教(カトリック)との習合が見て取れる

ブードゥーは植民地時代の奴隷貿易でカリブ海地域へ強制連行されたアフリカ人の間における伝承・信仰がキリスト教(カトリック)と習合した事によって成立した。したがってブードゥーの中には聖母マリアなどキリスト教聖人も登場する(ちなみにイエスはあまり登場しない)。しかし、あくまでもアフリカの民間信仰の文脈の中にキリスト教聖人信仰が組み込まれただけなので、信仰の骨子はアフリカ時代とほとんど同じである。

(厳密にはアイルランド起源のドルイド教の影響も大きいとみられる。後述するバロン・サムディという神格やフェッテ・ゲデという行事には、ドルイド教の影響が見られる。またカトリックと切り分けのむずかしい「民衆キリスト教」の影響も無視しがたい)

その後、奴隷解放による農民の土地所有により、土地と結びついた祖先崇拝色を獲得したり、コンゴインド中国などからの低賃金労働者の移入により、さらなる信仰の混交がすすんだりと、その成立・発展は複雑である。

ハイチでは1987年、憲法により初めて国に認められたが、カトリック教会植民地時代からブードゥーを黙認していた。というのも、ブードゥーはアフリカにルーツを持つ一方で、土着キリスト教としての側面もあり、なおかつ支配者であるフランス人がこういった面に比較的寛容だったためである。フランス人に限らず、植民地をもっていたラテン系の人々はキリスト教と異教が習合して土着キリスト教化することにさほど抵抗を覚えなかったと見受けられる。そのためサンテリアカンドンブレをはじめ、「ブラック・マジック」と称される信仰は、主にラテンアメリカに広まっている。他方、アメリカやイギリスなどアングロサクソン系の人々はキリスト教の異端化に神経質だったため、アメリカではキリスト教の土着化はさほど進まなかった。(ただし黒人の比率が高いジャマイカではアフロ・クリスチャン教会(ポコメニア)とよばれる土着化したプロテスタント教会が一般的である。)

用語

  • ラダ(rada)/ダホメイ 西アフリカ伝来の神格たちや精霊たち。(主にフォン人の民俗信仰)
    • ダンバラ・ウェドゥ(Dambala We`do):ラダの神格たち(あるいは精霊たち)の長。蛇の化身。シンボルカラーは白。 
    • アイダ・ウェドゥ(Ayida We`do):ダンバラの妻。虹の化身。
    • エジリ・フレーダ(Erzulie Fre'da):愛の神格。ヴードゥー信仰のセックスシンボル。男性版のセックスシンボルであるオグンと対になる。なお、エルズリー(Erzulie)という呼び方も見かけるが、古語なので、現在はつかわれない。
    • オグン(Ogoun):火と鉄の化身。
    • アグエ(Agwe):海の支配者。
    • アザカ(Azaka):農業の神格。気性が荒く行動は粗野。農民の代弁者。
    • ロコ(Loco):薬草の精。司祭が薬草で民間療法や施術を行うため、司祭と寺院の保護者でもある。
    • グラン・ブワ(Gran boir):森の精。
    • シンビ(Simbi):川や泉の精。
    • レグバ(Legba):特別な地位にある神格。扉や街道、運命の支配者にして気まぐれなトリックスター。十字路に棲む。儀式では必ず最初に呼び出される。
  • ペトロ(petro) ハイチ生まれの神格たちや精霊たち。気性が荒い。
    • バロン・サムディ(Baron Samedi):別名をメートル・シミティエ・ブンバ。(フランス語で墓場の主人の意)
    • エジリ・ダント:黒い肌をしたもう一人のエジリ。嫉妬深い。
    • メット・カフー:もうひとりのレグバ。やはり十字路や街道を司る。
  • ゲデ(Gede):ラダにもペトロにも属さない神格。死と生とセックスの精。毎年11月初めから一週間あまりの間、ハイチではゲデを祀るお祭りが催される。この祭りはハロウィンと同じ万霊節のお祝いでもある。

参考文献

  • ゾラ・ニール・ハーストン・著 『ヴードゥーの神々』 新宿書房 1999
  • ゾラ・ニール・ハーストン・著 『騾馬と人』 平凡社 1997
  • ウエイド・デイビス・著 『蛇と虹 ゾンビの謎に挑む』 草思社 1988
  • 檀原照和・著 『ヴードゥー大全—アフロ民俗の世界』 夏目書房 2006
  • 佐藤文則・著 『ダンシング・ヴードゥー ハイチを彩る精霊たち』 凱風社 2003

外部リンク

関連項目

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