池袋暴走事故
池袋暴走事故(いけぶくろぼうそうじこ)は、2019年4月19日の昼過ぎに、東京・池袋で、乗用車(トヨタ・プリウス)が150メートルほど暴走し、赤信号の交差点2ヶ所を通過して自転車・歩行者をはね、2人が死亡、事故車の乗員を含めて10人が重軽傷を負った交通事故事件。[1]
事故後、事故車を運転していた飯塚幸三が警察に逮捕されなかったことなどが「上級国民」待遇として、また飯塚本人のSNSサイトや関連する団体のウェブサイトが事故後に削除されたこと、ウィキペディア日本語版に事故の記事が作成できなかったことなどが情報隠蔽工作として、批判された。[1]
目次
事故
2019年4月19日午後0時25分頃、東京都豊島区東池袋の都道(池袋駅の南東約700メートル、豊島区役所近く)で、乗用車が横断歩道を横断中の歩行者を次々とはね、自転車に乗っていた近所の主婦・松永真菜(31歳)と長女の莉子(3歳)が死亡。男女計10人が重軽傷を負った。[2][3]
- 事故車は、道路左側のガードレールに接触した後、赤信号を無視して横断歩道に進入し、自転車1台をはねた。その後も直進し続け、約70メートル先の横断歩道で松永母子の自転車をはね、ゴミ収集車に衝突、その衝撃で更に歩行者4人をはねた後、反対車線のトラックに衝突して停止した。[2]
- 24日に警視庁は、上記のほかに、自転車に乗っていた30歳代の女性と女児(2歳)も横断歩道で事故車にはねられ、軽傷を負っていたと発表した[3]。
- 事故車を運転していた飯塚幸三(87歳、元工業技術院長)は、胸を負傷し、同乗していた80歳代の妻も足を負傷して2人とも入院した[2]。当初、飯塚は軽傷と報じられたが[2]、胸の骨を折る重傷だった[4]。
事故後、現場の交差点にはゴミ収集車が横転し、大破した自転車や買物袋が散乱していた[2]。
同日、警視庁は、入院した飯塚の回復を待って自動車運転死傷行為処罰法違反(過失運転致死傷)容疑で事情を聞く方針、と発表した[2]。
事故の原因
本人の話
4月19日の事故後に、警視庁は、飯塚は「車のアクセルが戻らなくなった」と話している、と発表した[2]。
また入院中に、警視庁が本人に対して行った事情聴取で、運転ミスとの見方を否定した[4]。
ドライブレコーダー
4月19日の事故後に、警視庁は、車のドライブレコーダーに、事故の直前、助手席の妻が「危ないよ。どうしたの」と声をかけ、飯塚元院長が「どうしたんだろう」と驚いた様子で応じる音声が記録されていた、と発表した[2]。
- 読売新聞 (2019-4-21 )は、捜査関係者の話として、助手席の妻の声はカーブを曲がり終えた頃に発せられており、ガードレールに接触した際に、飯塚が「どうしたんだろう」と答え、その後は会話がなかった、と報じた。
読売新聞 (2019-4-20b )は、捜査関係者の話として、ドライブレコーダーの影像では、ガードレールに接触する約50メートル前の緩い左カーブから、徐々に加速し、ガードレールに接触した後も加速が続き、反対車線に停止中のトラックに衝突して停止するまで約150メートル、ブレーキを踏んだ形跡がなかった、と伝えた。
エアバッグ・アクセルペダル
読売新聞 (2019-4-20b )は、捜査関係者の話として、エアバッグが作動したが、異常は確認されなかった、とした[5]。
読売新聞 (2019-4-21 )は、捜査関係者の話として、アクセルペダルの辺りには挟まるような物はなく、車の不具合も確認されなかった、と報じた。
イベント・データ・レコーダー
読売新聞 (2019-4-20b )は、捜査関係者の話として、イベント・データ・レコーダー(EDR、記憶装置)を回収してアクセル・ブレーキの操作状況を調べる、と報じた。
読売新聞 (2019-5-8 )は、4月下旬に警視庁が事故車両を検査した結果、アクセル・ブレーキに異常は見つからなかった、と報じた。
認知機能検査
読売新聞 (2019-4-20a )は、捜査関係者の話として、飯塚は2017年に運転免許を更新しており、その際の認知機能検査では異常はなかった、と伝えた。
近所の住民の話
読売新聞 (2019-4-20a )は、近所の住民の話として、飯塚元院長は、約1年前から足が悪く、つえをついていた。駐車がうまくいかずに駐車場の段差に乗り上げることが多く、前日の18日にも駐車に手間取っていたという、と伝えた。
警視庁の見解
4月19日に警視庁は、(ドライブレコーダーの)映像などから、飯塚がガードレールに衝突してから停車するまでの約150メートル、アクセルを踏み続けていたとみられる、と発表した[2]。
読売新聞 (2019-4-21 )は、捜査関係者の話として、ガードレールへの接触で気が動転し、誤ってアクセルを踏み続けたとみている、と伝えた。
事故後の動向
2019年4月22日朝に警視庁が現場の都道を交通規制し、実況見分を行った[6]。同日、事故で死亡した松永真菜の夫が代理人弁護士を通じてコメントを発表した[6]。
同月24日、都内で松永母子の告別式が行われた[7]。同日、遺族が報道機関に、同月6日に公園で撮影した2人の写真を提供した[8]。
同年5月17日に警視庁が入院中の飯塚に事情聴取を行っていたことが報じられた[4]。
同月18日午前に、飯塚は入院先の東京都新宿区の病院を退院し、退院後に警視庁目白署に入り、任意で事情聴取を受けた[9]。
「上級国民」待遇
警察の処遇
- 読売新聞 (2019-5-17 )は、警視庁が入院中の飯塚に任意で事情聴取を行ったことを伝え、警視庁は、飯塚が聴取に応じていて逃亡の恐れがなく、ドライブレコーダー・EDRなどの物的証拠が確保できていることから、以後も逮捕せず、任意で捜査を続ける方針だと報じた。
マスメディアの忖度
事故発生当初、新聞各紙は、飯塚が逮捕されなかったことから、「さん」付けや匿名で報道し、身元が明らかになった後も「元院長」の肩書で記して、「容疑者」と記していなかった[10]。
情報隠蔽工作
読売新聞 (2019-4-20a )は、出所不明で、飯塚は事故後、息子に電話をし、「人をいっぱいひいてしまった」と話していたという、と伝えた。
事故の後、4月24日時点で、飯塚が団体の評議員を務めていたことがあり、2015年から2018年にかけて、例年の贈呈式に飯塚が出席していたことをウェブサイトで報告していたスガウェザリング技術振興財団が、飯塚の名前と顔写真が掲載されていたウェブページを削除した[1]。(スガウェザリング技術振興財団 第33回 表彰・第34回 研究助成 贈呈式 ウェブ魚拓)
- J-CASTニュースの取材に対して、団体の事務局担当者は、事故後、サイトに掲載されていた写真を使わせてほしいという報道関係の問合せが多かったが、本人の許諾を得る必要があり、現在本人と直接の関係がなく許諾を得るのが難しいことを、ウェブページ削除の理由とした[1]。
こうしたことが、「隠蔽工作」として、一部ネット掲示板などで批判を受けた[1][11]。
評価
これ、下手に隠さずにそのまま捕まってた方が後々のダメージ少なかったんちゃうか?
このおっさんのまとめやアンチサイトめちゃ一杯出来てるやんけ– No.80 名無しさん@涙目です。 2019/04/22(月) 04:26:23.81 [11]
付録
脚注
参考文献
- 読売新聞 (2019-4-20a)「車暴走 母子はねられ死亡 池袋 87歳運転、8人重軽傷」『読売新聞』2019年4月20日 西部朝刊 西社会
- ― (2019-4-20b)「池袋暴走 現場手前カーブで加速 運転の男性 ブレーキ形跡なし」『読売新聞』2019年4月20日 東京夕刊 夕社会
- ― (2019-4-21)「池袋10人死傷 回避せず150メートル暴走 最初の接触で動転か」『読売新聞』2019年4月21日 東京朝刊 社会
- ― (2019-4-22)「池袋暴走犠牲「失意の底」 警視庁実況見分 夫がコメント」『読売新聞』2019年4月22日 東京夕刊 夕社会
- ― (2019-4-24a)「池袋暴走 告別式 母子の友人ら参列」『読売新聞』2019年4月24日 東京夕刊 夕2社
- ― (2019-4-24b)「母娘お気に入りの公園で 池袋暴走犠牲 遺族が写真提供」『読売新聞』2019年4月24日 大阪朝刊 社会
- ― (2019-4-25)「池袋暴走 遺族「未来奪われた」 「運転しない選択考えて」」『読売新聞』2019年4月25日 東京朝刊 社会
- ― (2019-4-26)「加害者呼称 各紙で違い 池袋暴走事故 肩書か敬称か」『読売新聞』2019年4月26日 東京朝刊 3社
- ― (2019-5-8)「池袋暴走 アクセル異常なし 警視庁検査 事故車両 ブレーキも」『読売新聞』2019年5月8日 東京朝刊 社会
- ― (2019-5-17)「池袋暴走 87歳を聴取 過失運転致死傷容疑 運転ミス否定 警視庁」『読売新聞』2019年5月17日 東京夕刊 夕一面
- ― (2019-5-18)「池袋暴走 飯塚容疑者が退院」『読売新聞』2019年5月18日 東京夕刊 夕社会
- NEWSPRESS (2019-4-22) NEWSPRESS > 未分類 > 公益財団法人の飯塚幸三さん紹介ページ 削除される 2021年11月11日閲覧
- J-CASTニュース (2019-4-24) J-CASTニュース > ニュース > 社会 > 池袋暴走で「上級国民の隠蔽工作」説も 運転手のサイト写真削除の理由、関係団体に聞いた 2019年04月24日22時50分、2021年11月7日閲覧