地球
地球(ちきゅう - Earth)は、太陽系の惑星のうち、太陽に3番目に近いものである。太陽系の中では岩石質の「地球型惑星」に分類され、その中で大きさ、質量ともに最大のものである。放射性元素による隕石の年代測定により、誕生してから約46億年経過していると推定される。太陽系の年齢もまた隕石の年代測定に依拠するので、地球は太陽系の誕生とほぼ同時に形成されたとしてよい。10個程度の火星サイズの惑星(原始惑星)の衝突合体によって形成されたと考えられている。
組成は地表面からの深さによって異なる。地表付近は酸素とケイ素が主体で、他にアルミニウム・鉄・カルシウム・ナトリウム・カリウム・マグネシウムなどの金属元素が含まれる。ほとんどは酸化物の形で存在する。対照的に、中心部分は鉄やニッケルが主体である。地表面の70%は液体の水(海)で被われており、地表から上空約100kmまでの範囲には窒素・酸素を主成分とする大気がある。大気の組成は高度によって変化する。
目次
地球の運動
太陽の周りを円に近い楕円形の軌道を描いて1.0000太陽年に1回公転し、また0.9973平均太陽日に1回自転している。
1太陽年とは太陽が春分点から春分点まで一巡りする時間、すなわち季節が一巡する時間をいい、365.2422日である。1平均太陽日とは、天の赤道上を等速運動するとした仮想太陽(平均太陽)が、南中してから次に南中するまでの時間をいう。地球の歳差により春分点が移動するため、1太陽年は、恒星が動かないものとして見た時に地球が太陽の周りを一周する時間として定義される1年(恒星年)より短い。1恒星年は365.25636日である。春分点が南中してから次に南中するまでの時間を1恒星日といい、1日は1平均太陽日以外にいくつか存在している。1太陽年や1恒星年を表現するのに用いられる1日は、太陽系天体の位置計算における時刻引数として使用される力学時 (Dynamical Time) における1日であるが、1平均太陽日と考えても特に問題はない。
地球の赤道面は、公転面に対して23度26分傾いている。この傾きは自転軸の傾きでもある。季節変化の主な要因として軌道離心率と自転軸の傾きが考えられるが、地球の場合、自転軸の傾きが効いている。軌道離心率が0.0167ということは、太陽に最も接近したとき(近日点通過)と太陽から最も遠ざかったとき(遠日点通過)で、太陽約3個分距離が違うことを意味している(0.01天文単位が太陽直径程度である)。光量に直すと約7%の変動ということになるが、これよりも自転軸の傾斜を原因とする太陽高度の変化(光が差し込む角度)と日照時間が効くのである。太陽に最も接近するのは1月2日前後、最も離れるのは7月2日前後である。離心率や自転軸の傾斜は、木星などの引力の影響により数万年周期で変動している(ミランコビッチ・サイクルを参照)。
天の北極から見て、自転、公転ともに反時計回りである。
物理的性質
大きさ、質量、密度
地球は赤道半径が6,378.137km、極半径が6,356.752kmで回転楕円体に近い形である。極半径よりも赤道半径のほうが21.385km大きい。地球の形状を考えるとき、平均的な海水面を大陸にも延長した仮想的な形状ジオイドを想定する。ジオイドは回転楕円体に近いとはいえ、地球内部の物質の分布が均一でないため、ずれが生じる。測地学では、回転楕円体とジオイドの違いをジオイドの高さと表現する。さらに、ジオイドにもっとも近い形状の回転楕円体を地球楕円体、特定の地域のジオイドに近い回転楕円体を最適楕円体と呼び、区別する。最初に計算された地球楕円体はジョージ・エベレストによるインド地方の子午線測定によるもので、1830年に公表された。この地球楕円体構造によりエベレスト山頂(北緯28°標高8,848m)よりも南米のチンボラソ山頂(南緯01°標高6267m)が地球の中心点からの距離が最も長い(アフリカ大陸赤道直下のキリマンジャロは南緯03°標高5,895m)。
地球の質量は5.974 テンプレート:e kgである。大きさと質量から平均密度が求まり、5,515kg/m3 (5.515g/cm3) である。これは水の5.5倍、花崗岩の2倍、鉄の0.7倍程度に相当する。地球は太陽系で最も密度の高い惑星である。逆に、一番密度が低いのは土星である。水星や金星の密度は地球に近い。
地球を構成する物質の種類と分布を探るには、地球内部での圧力上昇によって圧縮される程度を考慮して、1気圧下の密度に直す必要がある。このような補正を加えると地球の平均密度は約4,100kg/m3になる。地球以外の惑星の内部構造は観測データがないのでモデルに依存するが、モデルによる補正平均密度の違いはそれほど大きくない。推定された補正平均密度は、水星は約5,400kg/m3、金星は地球とほぼ同じで約4,000kg/m3、火星は約3,800kg/m3である。これら補正された平均密度の違いは金属の含有量の違いを反映している、金属量は太陽から離れるにしたがって減少するように見えるが、その理由はわかっていない。
構造
以下に、地表からの距離に応じた領域の名称を示す。境界の高度(深度)に幅があるのは、位置又は時間によって境界が変化するためである。
- 80・90 km - 10地球半径 -- 外圏。概ね500km以下が地球大気圏である。
- 80・90 - 1,000 km -- 上層大気。熱圏。
- 10 - 80・90 km -- 中層大気。
- 0 - 10 km -- 下層大気。対流圏。気象現象が生じる。
- 0 km -- 地表
- 0 - 150 km -- 岩石圏
- 0 - 30・35 km -- 地殻
- 6・35 - 2,891 km -- マントル
- 6・35 - 670 km -- 上部マントル
- 670 - 2,891 km -- 下部マントル
- 2,891 - 6,371 km -- コア
- 2,891 - 5,151 km -- 外核
- 5,151 - 6,371 km -- 内核
地球内部の構造は地表面での観測で得るしかない。その中で最も優れた方法は地震波の分析である。 地震波解析によると、地球は外側から、岩石質の地殻、岩石質の粘弾性体であるマントル、金属質流体の外核、金属質固体の内核という大構造に分けられる。岩石質とはいっても、地殻とマントルでは化学組成が違う。外核と内核も金属質とはいうが、化学組成が異なる。
上部マントルには、地表面からの深さ100km付近に、地震波が低速になる層(低速度層、アセノスフェア)がある。この層は部分的に溶融していると考えられ、上部の相対的に冷たく硬い層とは物理的に区別される。アセノスフェアの上にあり、上部マントルの一部と地殻とから成るこの層を岩石圏(リソスフェア)という。岩石圏は10数枚のプレートと呼ばれる板に分かれている。
プレートには2種類ある。大陸を含む大陸プレートと、海洋地域のみを含む海洋プレートである。海洋プレートは中央海嶺で生産され、マントル対流に運ばれて中央海嶺から離れる。その間にも中央海嶺では次々にプレートが生産されるので、海洋底が拡大する。大陸プレートは海洋プレートより相対的に軽いため、海洋プレートが大陸プレートとぶつかるとその境界でマントル中に沈み込み、日本海溝のような沈み込み帯を造る。海洋プレートには海溝を伴うものと伴わないものとがあるが、これは海洋底拡大の期間の違いによると考えられる。海溝があるものは、海洋底拡大が始まってから年月が経っている。前記のように、プレートはマントル対流によって運ばれる。海溝を伴う海洋プレートはそうでないものより拡大速度が速い。これは、マントル対流の他に、沈み込んだプレートに引っ張られる効果が加わるためとされている。
海洋底の年代は、放射性元素による年代測定によると2億年以内である。これは海洋プレートがこの程度の期間を経た後、地球内部に潜り込んでしまうためである。これに対して、大陸プレートは大部分が現代から30億年前までの間に形成されており、地球の歴史を通じて形成・成長してきたものと考えられている。特に古いものは安定陸塊とも呼ばれ、最も古い部分は約44億年前に形成された。
核
中心核とも言う。外核と内核に分かれ、液体の外核の半径は3,480km、固体の内核の半径は1,220kmである。外核は鉄とニッケルが主成分であると推定されているが、水素や炭素などの軽元素を10%以上含んでいるとしなければ、地震波速度と密度の説明ができない。内核は、地球内部の冷却に伴い、外核の鉄とニッケルが析出・沈降してできたとされており、現在でも成長が続いていると考えられている。地球中心部の圧力は約400万気圧と推定されているが、温度はよくわかっていない。これは物質組成とエネルギー輸送過程に依存するためであり、5,000K - 8,000Kであろうと推定されているにすぎない。
対流や地球自転などに起因する外核の金属流体の動きにより、電流が生じ、この電流により磁場が生じると考えられている。これが地球磁場である。このように地球の力学的な運動と結びついた磁場発生・維持機構を、ダイナモ機構という。
マントル
マントルは深さ約2,900kmまで存在し、地球の体積の83%、質量の67%を占めている。マントル全体の化学組成は、必ずしもわかっているわけではない。上部マントルは、カンラン岩または仮想的な岩石であるパイロライトから成るとする考えが主流であるが、下部マントルについては輝石に近い組成であるとする説もあり、定まっていない。マントル対流の様相も含め、マントルは化学的にも力学的にも探究の余地が大きい領域である。
地殻との境には地震波速度が不連続に変化する層があり、モホロビチッチ不連続面(モホ面)という。
地殻
地殻は大陸地殻と海洋地殻に分類される。
大陸地殻は、玄武岩質らしい下部地殻と、花崗岩質の上部地殻から成る。厚さ(モホ面までの深さ)は、地域による差が大きく、おおよそ30 - 60kmである。平均密度は2,650kg/m3である。
海洋地殻は玄武岩質で、厚さは大部分が6 - 7kmである。平均密度は2,950kg/m3である。
地殻表面の構造は、プレート運動による造山運動や火山活動、大気と水による風化や浸食、堆積などによって決まる。
生命
地球は2008年現在のところ、知られている中で唯一生命体の確認されている天体である。生命は地表だけではなく、地下10km程度から上空100kmに至る広い範囲に存在する。大気の組成(酸素の濃度)は植物によって維持されている。
- 生物圏(ガイア)
- 生命、生物、動物、植物
- 人類の活動が与える惑星地球、特に生命圏への影響は大きく悲観的な意見も少なくない。
- 地球を地殻、海洋や大気などのシステムの集合体として捉え、これらシステム相互の物質循環、エネルギー循環によって地球という惑星を捉える考え方もある。このような捉え方では、人類が狩猟採集の生活様式を取り、自然界の一要素として存在している場合には、人類を生命圏というシステム内部の要素として考えておけばよいとする。しかし、人類が農耕など自らのために環境を改変するようになった場合には、人間圏という新しいシステムが地球に誕生したとみなし、新システムと既存のシステムとの相互作用によって地球表層環境が定まるという見方をする[1]。このような見方に立つと、現在の地球は新しいシステムが誕生し、システム相互の新たな均衡に向かって変化しつつある時代に入ったということもできる。
衛星
名前 | 直径 (km) | 質量 (kg) | 平均公転半径 (km) | 公転周期 |
---|---|---|---|---|
月 | 3,474.8 | 7.349 テンプレート:e | 384,400 | 27日 7時間 42.7分 |
地理
総面積は5億1,007万2,000km2で、そのうち海が3億6,113万2,000km2(地球表面の70.8%)、陸地が1億4,894万km2(29.2%)である。
陸地は地球表面全体に均等にではなく北半球に偏って分布しており、陸地の多い側を陸半球(りくはんきゅう)、海の多い側を水半球(すいはんきゅう)と呼ぶ。陸地はランダムに分布するのではなく、大陸という形でまとまって位置している。海洋も深度の分布にはっきりした偏りがあり、深度4,000 - 5,000mに全海洋の31.7%の面積を占める海洋底という構造がある。1,000m単位で深度ごとの分布面積を区分すると、深度3,000mから6,000mにいたる部分が全海洋面積の73.8%を占める。
地球の将来
現在の地球は、海に覆われ自然も豊かではある。しかし今後数十億年の間には、巨大隕石の衝突あるいは、大陸移動に伴う火山活動や気候変動などによる大量絶滅が起きる可能性も高い。人類滅亡後を想定して未来に出現する生態系を予想した作品に『アフターマン』『フューチャー・イズ・ワイルド』などがある。
また、未来にはプレート運動が停止し、海洋はマントルに吸収されて失われていく。いずれは、現在の火星のような姿になると予想されている。そして50億 - 70億年後には太陽が主系列星段階を終え、地球の公転軌道に近い大きさにまで膨張する。地球自体は太陽に飲み込まれるか、そうでなくても表面は融解して誕生時のようなマグマオーシャンに覆われる。太陽が燃え尽きた時に地球がまだ残っていれば、そのまま白色矮星になった太陽と共に冷えて行く。
関連項目
参考文献
- ↑ 松井孝典他編 岩波講座地球惑星科学1 地球惑星科学入門 1996年 ISBN 4-00-010721-6