潮吹き
潮吹き(しおふき)とは、オルガスムの前または最中に、女性の尿道から液体が排出される現象。尿失禁とは区別される。名前の由来は鯨の潮吹きのさまに似ていることからきている。英語では、Squirting又はFemale ejaculation、直訳すると「女性の射精」となる。
潮とは何か
性的活動時に女性の射精によって尿道を通じて排出される液体である。少量である場合は、粘液のような性状であり、色は透明であったり、白色ミルク様であったり、黄色であったりする。排出される量が増えるにつれて、透明な水に近くなる。数分の間に数回潮を吹くことができる女性がいる。排出される液体(潮)の性状に、生理周期が影響を及ぼすと報告する女性もいる[1]。
潮の成分
一人の女性において、潮と尿を比較すると、潮の方が、PSA(前立腺特異抗原)、PAP(前立腺酸フォスファターゼ)、ブドウ糖の濃度が高く、クレアチニンの濃度が低い。また尿中PSA濃度は、オルガスム後の尿の方が、オルガスム前の尿よりも高い。
潮の量
女性の射精時に排出される潮の量は、2、3ml からカップ2杯まで、いろいろに変化する。女性の前立腺の大きさは、約5ml ほどの容積であるに過ぎない。女性の前立腺は、性的に刺激された場合に、液体を含んで腫大すると考えられている。1回の射精で排出される上限の量はカップ2杯であり、女性が膀胱に貯める尿の量とほぼ同じである[1]。女性が水分不足の状態にあれば、潮の量は少なくなる。
潮の機能
現在のところ不明である。数ml で白色粘稠の前立腺液と、カップ2杯で水様透明の前立腺液とでは、機能が異なるかもしれない。
- 潮吹きは、尿路感染症の予防に役立っているという見方がある[2]。女性は尿路感染症の頻度が高く、性交渉がきっかけで感染が起きることがある。潮吹きにより尿道が洗浄され、雑菌が洗い流されると主張する。
- 女性の前立腺液は、精子の生存に役立つという見方がある。膣内は強酸性であり、雑菌が体内へ侵入するのを防いでいるが、同時に精子の生存を不可能にしている。男性の前立腺液は弱アルカリ性で、エネルギー源の果糖を含み、精子の生存が可能な環境を提供している。女性の前立腺液も弱アルカリ性でブドウ糖を含み、同じ役割があると主張する。なお、女性のオーガズムは妊娠確率を高くしているという見方がある[3][4]。
- 潮吹きは、相手とのコミュニケーションに役立つとする見方がある。乳首の膨隆、クリトリスの腫大、顔面の潮紅、性器の湿潤と熱感は、性的興奮を相手に伝える機能があり、潮吹きは、オーガズムを相手に伝える機能があると主張する。
女性の前立腺
女性の前立腺を西洋の医学誌に最初に記載したのは、Reinier De Graaf (1672年)である。 Graaf は、「前立腺は、女性の尿道を取り巻く腺と導管の機能的集合である」と正しく記載した。2001年に解剖学用語に関する米国連邦委員会は、「女性の前立腺」という語を次期の組織学用語に加えることに同意した。男性の前立腺と相同の器官であるので、「スキーン腺」ではなく、「女性の前立腺」と呼ぶ科学者が増えている。
女性の前立腺の平均サイズは3.3×1.9×1.0cmであり、平均の重さは 5.2g で、親指大の大きさである[1]。前立腺の周囲には筋組織があり、液体の噴出を可能にしている。
前立腺の組織中に生化学的、免疫科学的方法によりPSAやPAPが検出される。これは女性においても男性の場合と同じように、射精により排出される物質が、前立腺において作られることを示唆している。
男性の前立腺はアンドロジェン(男性ホルモン)の影響を受けるが、女性の前立腺はエストロジェン(女性ホルモン)の影響を受ける。
性機能に関しては、クリトリスと膣壁は主に体性神経系の陰部神経pudendal nerveに支配される(運動性、感覚性)。これに対し、膀胱と尿道と前立腺は主に副交感神経系の骨盤神経pelvic nerveに支配される(運動性、感覚性)[5] [6][7]。
女性の前立腺の機能は2つある。一つは、外分泌腺として前立腺液(潮)を作って導管の中に蓄えることである。前立腺液は、PSA、PAP、ブドウ糖、果糖を含んでいる。もう一つは、内分泌腺としてセロトニンを作って血中に分泌することである[1]。それにより、精神が安定化し、ストレス耐性が増す。
Gスポット
1944年、ドイツの産婦人科医であるエルンスト・グレフェンベルグらが、膣前壁の尿道の内側表面つたいにある性欲を喚起する部位を発見し、1950年に論文発表した。グレフェンベルグの頭文字を取ってその部位はGスポットと呼ばれる。
クリトリスへの刺激だけで射精できる女性は比較的少なく、クリトリスとGスポットの両方への刺激を必要とする女性が多い。
潮吹きの訓練
あるアメリカの調査では、女性の4割が「オルガスムに伴い潮を吹くことがある」と答えている。Lisa Lawless は「すべての女性は射精できる能力がある」と述べている[8]。アメリカでは、女性が潮吹きの仕方を学ぶ講習会が行われている[5]。
- 心身ともに充分にリラックスする。このため当初は一人で練習するとよい。
- まず乳首とクリトリスを充分に刺激する。
- 2本の指で、Gスポットを円形になでる。あるいは、英語の come here の指の動きをする。
- たゆまずに刺激を続けると、次第に快感が蓄積して、前立腺に液体(潮)が溜まり、Gスポットの辺りが内腔に突出してくる。
- 快感が蓄積された後に、2本の指で、Gスポットを前方に(恥骨の方向に)リズミカルに圧迫して、液体(潮)の排出を促す。
- それにより射精(潮吹き)が始まるはずである。もし始まらなければ、少し前に戻って、繰り返す。
- うまく射精するようになれば、Gスポットを圧迫するタイミングを前後させて、射精とオルガスムスが同時に得られるようにする[5]。
クリトリスとGスポットへの刺激を続けて射精が近づくと、女性は尿意を感じるようになる。射精したい気持ちは、尿意とよく似ている。この尿意が心理的な抵抗となって、刺激をやめてしまい、射精に至らなくなる場合が多い。この心理的な抵抗を取り除くために、風呂場でオルガスムと同時に排尿しようとする訓練が行われることがある。
女性は潮を吹くことにより、通常のオルガスムとは別の新しい感覚が得られる。新しい感覚が得られない場合でも、通常より強いオルガスムが得られる[1]。
潮吹きの画像
脚注
- ↑ 1.0 1.1 1.2 1.3 1.4 the-clitoris.com female ejaculation
- ↑ Does female ejaculation serve an antimicrobial purpose? Medical Hypotheses 73 (6): 1069-71.(December 2009)
- ↑ オーガズムの機能の諸学説
- ↑ 女性のオーガズムの研究 4 ディスカバリー・チャンネル
- ↑ 5.0 5.1 5.2 female ejaculation and THE G-SPOT Deborah Sundahl
- ↑ 性機能障害
- ↑ 女性器 外陰部について
- ↑ Female Ejaculation Did you know that ALL women are capable of it?
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